心筋マーカーについて

けんさの豆知識
2014 年 3 月発行
[43]心筋マーカーについて
●心筋マーカーって?
心臓が障害を受けると血液中に出てくる物質のこと。
下記のように①~③の原因で血中に心筋マーカーが出てきます。
①細胞膜の障害がおこる
②心臓が損傷を受け、心筋細胞内から物質が血中へ逸脱する
出てくる物質は以下の 2 つに分けられます。
細胞質
1)心筋細胞中の細胞質に存在する物質
AST、CK,CK-MB、LDH、ミオグロビン、H-FABP 等
核
2)蛋白分解酵素より筋原線維が分解され出てくる蛋白
トロポニン、ミオシン軽鎖
③心臓に負荷がかかると生合成が亢進され、病態を改善しようとする物質が血中に増加する
BNP など (ストレスマーカーとも呼ばれます)
心筋細胞肥大
炎症性サイトカイン発現
心臓
BNP
(ストレスを減らそうと増加)
血管収縮
●当院で行っている心筋マーカーの項目とその特徴(心筋梗塞の場合)
心筋マーカー
異常値発現
ピーク
正常化
保険点数
H-FABP
発症後 1~2 時間
5~10 時間
12~24 時間
150 点
トロポニン T
発症後3~4時間
12~18 時間
約 10 日以降
130 点
CK/CK-MB
発症後 4~6 時間
12~24 時間
4~6 日
11/55 点
AST
発症後 3~6 時間
12~30 時間
3~5 日
17 点
LDH
発症後 4~8 時間
2~3 日
1~2 週間
11 点
BNP(*)
発症後直後
約 20 時間
140 点
3~5 日に第 2 ピークあり
*BNP は心臓に負荷がかかっただけでも増加するので心筋梗塞だけが原因でない場合があります
発症後すぐは H-FABP,数時間から 24 時間はトロポニンが有用です
2013 年 8 月より H-FABP の検査を院内で始めました。
●H-FABP(Heart type fatty acid-binding protein:H-FABP )和名:ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白
【臨床的意義】
心筋細胞の細胞質に存在する低分子可溶性蛋白。遊離脂肪酸の細胞内運搬をしている。
心筋に障害を生じると極めて短時間のうちに血中に逸脱→急性心筋梗塞の早期診断マーカーとして有用
【測定方法】
血清を用いて生化学の機器で測定。(測定時間は採血してから約 60 分が目安)
昼間(12:00~13:30)、機器のメンテナンスで結果報告が遅れる場合がある。
*今後、測定法の変更があるかもしれません(現在検討中)
【基準値】
6.2 以下(ng/ml)
【診断上の注意】
1.偽陽性がでる疾患との鑑別に留意してください。
① 腎機能障害あるいは低下の場合 →腎排出性蛋白のため
② 横紋筋融解症等の重篤な骨格筋障害を伴う症例の場合 →心筋のほか骨格筋にも存在するため
2.胸痛発症後の時間と採血の時期、臨床症状など考慮して判断して下さい。
→急性心筋梗塞発症後1時間未満や 24 時間以降では上昇しない場合あり
3.急性心筋梗塞以外での微小心筋障害を伴う症例で上昇することがあります。他の検査とあわせて
判断して下さい。
→不安定狭心症・大動脈解離・心不全・肺血栓塞栓症など
4.自己免疫疾患患者の検体は非特異的反応が起こる場合があります。
他の検査や臨床症状等を考慮して判断してください