潜在成長曲線モデルにおける変化係数の同時信頼区間について 参考文献

潜在成長曲線モデルにおける変化係数の同時信頼区間について
広島大学大学院 理学研究科 伊森 晋平
広島大学 原爆放射線医科学研究所 佐藤 健一
経時的に観測されたデータに対するモデルとしてしばしば用いられる, 潜在成長曲線モデルに
対し i 番目の個体に対する m 次元目的変数ベクトルを yi , p 次元目的変数ベクトルを xi とすると,
Curran, Bauer & Willoughby (2004) により, 潜在成長曲線モデルは以下のように表すことが出
来る.
yi = Λγ0 + ΛΓxi + Λξi + εi .
ただし, Λ = (λ1 , . . . , λm )′ : m × q 因子負荷量行列, γ0 : q 次元未知パラメータ, Γ = (γ1 , . . . , γp ) :
i.i.d.
i.i.d.
i.i.d.
q × p 次元未知パラメータ行列, xi ∼ Np (µx , Φ), ξi ∼ Nq (0q , Ψ), εi ∼ Nm (0m , Θ), µx は p
次元未知パラメータ, Φ, Ψ, 及び Θ はそれぞれ p × p, q × q, 及び m × m 未知共分散行列, そして
xi , ξj , εk は全ての i, j, k について独立である. 今, j 時点目に得られた k 番目の説明変数に対する
ˆk と与えられる, k = 0, 1, . . . , p. ただし, γ
ˆk は γk の最尤推定量であり, 適
回帰係数の推定量は λ′j γ
ˆk 漸近正規性を持つ.
当な条件の下で γ
本研究では, 因子負荷量行列の各列が時刻と共に変化する場合, すなわち, λj = λ(tj ) の場合を
ˆk の値から要因の経時
考える. ただし, tj は j 番目の時点を意味する. このような状況において, γ
的な効果を直接考察することは容易ではない. そこで, Curran, Bauer & Willoughby (2004) は各
時点ごとの説明変数の係数の信頼区間を導出することで, 要因の効果の変化を図示した. しかしな
がら, この信頼区間では説明変数の時間に対する一様な効果を測ることは出来ない. そこで本研究
ˆk の漸近正規性を基に, Satoh
では, この結果を拡張し同時信頼領域の構築を試みる. 具体的には, γ
and Yanagihara (2010) の方法をこのモデルに適用することで, 以下の不等式を得る.
max
t∈R
ˆk − λ(t)′ γk }2
{λ(t)′ γ
d
2
ˆ −1 (ˆ
≤ (ˆ
γk − γk ) ′ Ω
k γk − γk ) → χq .
ˆ k λ(t)
λ(t)′ Ω
ˆk はγ
ˆk の漸近分散 Ωk の一致推定量である. この不等式により, 時間に関する関数として
ここに Ω
次の同時信頼領域を得ることが出来る.
ˆk −
Ik,α (t) = λ(t)′ γ
ˆ k λ(t), λ(t)′ γ
ˆk +
cq,α λ(t)′ Ω
ˆ k λ(t) .
cq,α λ(t)′ Ω
ただし, cq,α は P r(χ2q ≤ cq,α ) = α を満たす定数であり,
P r(λ(t)′ γk ∈ Ik,α (t),∀ t ∈ R) ≥ P r(χ2q ≤ cq,α ) = α,
を満たす. 本発表では, 数値実験を基に有限標本での精度を確かめる.
参考文献
Curran, P. J., Bauer, D. J. & Willoughby, M. T. (2004). Testing Main Effects and Interactions
in Latent Curve Analysis. Psychological Methods, 9, 220–237.
Satoh, K. & Yanagihara, H. (2010). Estimation of Varying Coefficients for a Growth Curve
Model. American Journal of Mathematical and Management Sciences, 30, 243–256.