熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title Recycling of Carbon Fiber and Epoxy Resin from Carbon Fiber Reinforced Plastics Author(s) 柴田, 勝司 Citation Issue date 2014-03-25 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/31435 Right 氏 名 柴田 勝司 主論文審査の要旨 本論文は,従来では高強度ゆえに埋め立て処理や焼却処理が主流であった炭素繊維複合材料を , “常圧溶解法”および“ソルボサーマル処理法”を利用して炭素繊維(CF)とエポキシ樹脂(E P)とに分離し,当該画分を新規な複合材料成形品の製造に利用する「ケミカル・マテリアルリサ イクル」技術の確立を目指した成果をまとめたものである。 本論文は全5章から構成される。各章の記載事項については以下にまとめる。 第一章では,炭素繊維複合材料がその強度ゆえリサイクルされず埋立て処理や焼却処分されて いる現状を概説するとともに,著者が構築を目指す「ケミカル・マテリアルリサイクル」の概念 について説明した。 第二章では,「ケミカル・マテリアルリサイクル」技術の確立のための先行研究について整理 し,著者が提案する“常圧溶解法”および“ソルボサーマル処理法”の新技術としての優位性を 明確化した。この際,工業的利用の観点から,発火点が400℃強と高く安全性に優れていること, 多くの溶媒の中で最も樹脂溶解能に優れていること等から,ベンジルアルコールを採用すること で炭素繊維強化プラスチック(CFRP)だけでなく,プリント基板中のエポキシ樹脂(EP)の解重 合による可溶化,ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)中の樹脂解重合によるガラス繊維やフ ィラーを分別回収することを実現している点を整理した。 第三章および第四章では, “常圧溶解法”を利用してCFRPからCFとEP解重合物を分離回収す る反応条件の策定に関する実験結果をまとめた。その結果,①使用済みテニスラケットを原料と した常圧溶解処理において,CFとEP解重合物を効率的に分離回収する最適条件が温度200℃,処 理時間10hであること,②前記処理により得たCFを不織布にして,CFRP成形に再利用したとこ ろ,新品と同等の機械的性質を有することを明らかにした。 第五章では,常圧溶解処理により得た酸無水物硬化EP解重合物のケミカルリサイクルの可能 性について調べるため,解重合物の詳細分析を実施した。その結果,ジベンジルエステルとビス -ジオールが主として含まれていることを見出し,かつ,これらがいずれもEPの原料として再生 できる可能性を見出すことに成功した。さらに,高圧条件下での“ソルボサーマル処理法”を用 いることにより, “常圧溶解法”と比較して処理時間を短縮し得ること, “常圧溶解法”では解重 合が困難であるアミン系エポキシ樹脂より製造されたCFRPを250~400oC,0.5~4hで完全に分離 ・回収し得ることも明らかにした。現在は,これらの知見に基づき,回収したCFとEPの用途開 発を中心に研究を進めている。 第六章は本論文の総括であり,これまでリサイクル率が数%であったCFRPをはじめとする炭 素繊維複合材料を,上記2手法を利用することで,高選択的に分離・回収し,新品へ利用する従 来にはない「ケミカル・マテリアルリサイクル」システムを確立する可能性を見出した成果,お よび今後の課題と展望についてまとめた。 最終試験の結果の要旨 審査委員会は、学位論文提出者に対して、本論文の内容および専門分野についての口頭 試問を行った結果、論文提出者は当該研究分野について十分な知識、理解力および研究遂 行能力があり、外国語による論文作成能力と口頭発表能力についても研究者として十分な 能力を有すると認めた。学位論文提出者は、これらの内容を査読付き国際誌論文2編に掲 載済、国内学術論文10報以上に公表している。また、これらに関連する国際会議論文にも 2報公表されている。さらに国際会議を中心に15件(国際会議発表5件、国内学会発表 5件、招待講演5件)の発表を行っており、本専攻講座の学位審査基準を十分に満たして いる。 以上より、審査委員会は、学位論文提出者の最終試験を合格と判定した。 審査委員 複合新領域科学専攻複合新領域科学講座 准教授 佐々木 満 審査委員 名古屋大学大学院工学研究科・化学・生物工学専攻 教授 後藤 元信 審査委員 産業創造工学専攻物質生命化学講座 准教授 坂田 眞砂代 審査委員 産業創造工学専攻物質生命化学講座 助 教 キタイン アルマンド T 審査委員 産業創造工学専攻物質生命化学講座 教 授 栗原 清二 審査委員 産業創造工学専攻物質生命化学講座 教 授 木田 徹也
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