情報数学基礎論演習問題解答

情報数学基礎論 演習問題解答
木村泰紀∗
2014 年 5 月 12 日出題
問題 1. H をヒルベルト空間とし, y ∈ H とする. 線形連続作用素 T : H → C を, 内積を用いて, 各 x ∈ H
に対して
T x = x, y
で定義するとき, T = y が成り立つことを示せ.
解答 y = 0 のときは, 任意の x ∈ H に対して T x = 0 となるので, 作用素ノルムの公式より
T = sup |T x| = 0 = y
x =1
となる. y = 0 のときは, z = y/ y とすると
y
,y
y
T = sup |T x| ≥ |T z| = | z, y | =
x =1
=
y
y
一方, シュワルツの不等式より, 任意の x ∈ H に対して |T x| = | x, y | ≤ x
ノルムの定義より T
2
= y .
y が成り立つので, 作用素の
= inf{K ∈ R : |T x| ≤ K x (∀x ∈ H)} ≤ y . したがって T = y が成り立つ
ことが示された.
∑∞
k p
p
1 < p < ∞ に対し複素数列の空間 lp = {x = (xk ) :
k=1 |x | < ∞} と l 上のノルム
(∑∞
)
1/p
k p
=
を考える. 実数 q が 1/p + 1/q = 1 をみたすとき, 次の問いに答えよ.
k=1 |x |
問題 2.
x
p
(i) 複素数列 y = (y k ) に対し, z = (z k ) を各 k ∈ N に対して y k = 0 ならば z k = |y k |q /y k , y k = 0 ならば
∑∞
∑∞
z k = 0 と定義する. このとき k=1 |z k |p = k=1 |y k |q を示せ.
(ii) 各 n ∈ N に対し, 複素数列 en = (ekn ) ∈ lp を各 k ∈ N に対し n = k ならば ekn = 1, n = k ならば
ekn = 0 で定義する. f ∈ (lp )∗ に対し, 各 k ∈ N に対し y k = f (ek ) ∈ C として複素数列 y = (y k ) を定
義するとき, y ∈ lq であることを示せ.
(iii) 任意の f ∈ (lp )∗ に対して y = (y k ) ∈ lq が存在して, f (x) =
∑∞
k=1
xk y k が任意の x = (xk ) ∈ lp で成
り立つことを示せ.
解答
(i) 1/p + 1/q = 1 より p + q = pq である. よって q = pq − p = (q − 1)p. 一方, (z k ) の定義より
|z k | = |y k |q−1 が各 k ∈ N で成り立つので
∞
∑
k=1
∗
|z | =
k p
∞
∑
|y |
k (q−1)p
k=1
=
∞
∑
|y k |q .
k=1
東邦大学理学部情報科学科. http://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/is/kimura/yasunori/
1
(ii) y に対して (i) のように z = (z k ) を定義する. さらに, 各 n ∈ N に対して zn = (z 1 , z 2 , . . . , z n , 0, 0, . . . ) ∈
lp とする. このとき (i) と同様にして
(
zn
p
=
n
∑
)1/p
(
|z |
k p
=
k=1
となる. さらに zn =
∑n
k=1
n
∑
)1/p
|y |
k q
k=1
z k ek であり, z k f (ek ) = z k y k = |y k |q であることから
( n
)
n
n
∑
∑
∑
k
f (zn ) = f
z ek =
z k f (ek ) =
|y k |q .
k=1
k=1
k=1
よって
n
∑
(
|y k |q = |f (zn )| ≤ f
zn
= f
p
k=1
となり, したがって
n
∑
)1/p
|y k |q
k=1
(
n
∑
)1−1/p
|y |
k q
(
=
k=1
n
∑
)1/q
|y |
≤ f
k q
k=1
が任意の n ∈ N で成り立つ. よって n → ∞ とすると
(
∞
∑
)1/q
|y |
≤ f <∞
k q
k=1
となり, y ∈ lq が示された.
(iii) 任意の f ∈ (lp )∗ に対して y = (y k ) を (ii) のようにとると y ∈ lq である. x = (xk ) ∈ lp とする. 各
n ∈ N に対して xn = (x1 , x2 , . . . , xn , 0, 0, . . . ) ∈ lp とすると
(
lim
n→∞
x − xn
p
= lim
n→∞
)1/p
∞
∑
|x |
k p
=0
k=n+1
より xn → x である. これを用いると, f は連続かつ線形だから
(
f (x) = lim f (xn ) = lim f
n→∞
n→∞
n
∑
k=1
)
k
x ek
= lim
n→∞
が任意の x ∈ lp で成り立つ.
2
n
∑
k=1
xk f (ek ) = lim
n→∞
n
∑
k=1
xk y k =
∞
∑
k=1
xk y k