物理数学 I 第1回 レポート

物
理
数
学 I
担当 岡村 隆
第 1 回レポート問題 (14/12/5 出題, 12/23 講義開始時 までに 提出)
Q1 - Q3 のすべてに答えよ.
Q1.
基本
(1) 同じ高さの音を鳴らしても, 楽器によって異なって聞こえるのは何故か?
(2) 実数 u に対し, eiu := cos u + i sin u と定義する.
(a)定義より, u1 , u2 ∈ R に対し, ei(u1 +u2 ) = eiu1 eiu2 が成立することを示せ.
また, これより 1/eiu = e−iu が成立することを示せ.
(b)複素数 z = x + i y (x, y ∈ R) に対し, z の複素共役を z ∗ := x − i y で定義する.*1
このとき, 実数 u に対し (eiu )∗ = e−iu が成立することを示せ.
(c)実数 u に対し
d iu
e = i eiu を示せ.
du
∫ 2π
(d)整数 n に対し, 次式を示せ:
{
du einu =
0
2π
0
for n = 0
.
for n =
̸ 0
(3) 複素数 z = x + i y (x, y ∈ R) に対し, ez = ex+iy := ex (cos y + i sin y) と定義する.
(a)定義より, z1 , z2 ∈ C に対し ez1 +z2 = ez1 ez2 が成立することを示せ.
∗
(b)(ez )∗ = ez が成立することを示せ.
(4) 複素数 z = x + i y (x, y ∈ R) を, z = r (cos θ + i sin θ) = r eiθ (r > 0, θ ∈ R) と表すことを z
の極形式という. r, θ は z に依存して決まるので, それを明記したいときは, r の代りに |z| を,
θ の代りに arg(z) を用いる. つまり, z = |z| ei arg(z) である.
そして, r = |z| は z の絶対値, θ = arg(z) は z の偏角とよばれる.
(a)絶対値と偏角の (複素平面上での) 幾何学的意味を答えよ.
(b)|z ∗ | = |z| ならびに |z|2 = z z ∗ を示せ.
(c)z1 , z2 ∈ C として, |z1 z2 | = |z1 | |z2 |, arg(z1 z2 ) = arg(z1 ) + arg(z2 )
(mod 2π) を示せ.*2
(d)|1/z| = 1/|z|, |z1 + z2 | ≤ |z1 | + |z2 | を示せ.
(5) 以下を証明せよ. なお, δij はクロネッカーのデルタである.
(a)
α
N
∑
i=1
(c)
N
∑
j=1
*1
*2
ai =
N
∑
α ai ,
(b)
i=1
δij aj = ai ,
(N
∑
) M 
N ∑
M
M ∑
N
∑
∑
∑


ai
bj =
ai bj =
ai bj ,
i=1
(d)
N
∑
j=1
i=1 j=1
j=1 i=1
2π
ei N (k−l)n = N δkl .
n=1
数学の講義では, z の複素共役を z¯ と記していたかも知れない. 物理では, z¯ ではなく z ∗ と記すことが多い.
a = b (mod p) は, a − b = (p の整数倍) を意味する. つまり, a を p で割った余りと b のそれとが等しいこと. 例えば,
7 = 4 = −2 (mod 3) や 9π = π = −7π (mod 2π) などである. もともと, 偏角には 2π の整数倍の任意性があるので,
偏角が登場する式において 2π の整数倍の違いを云々することは意味がない.
1
Q2. 1 次元完全結晶
一つの直線に沿って, 質量 m の質点が同じバネ (ばね定数 γ m, 自然長 a) で連結されている. 静止状態
において, 全てのバネは自然長の状態にあり, 質点は等間隔 a で並んでいるとする. 各質点は直線上の
みを運動し, 時刻 t における n 番目の質点の平衡点からの変位を zn (t) として, 以下に答えよ.
(1) 運動方程式を求めよ.
(2) 運動方程式を解くために, まず, 変数分離形の特解 zn (t) = T (t) Zn を探そう. 前小問より,
1 d2
Zn+1 + Zn−1 − 2 Zn
T (t) = γ
=: C ,
2
T (t) dt
Zn
を導け. また, この等式の値 C は, t と n の両方に依存しない定数となることを説明せよ.
(3) 定数 C が正の場合, その特解がどのような時間変化をするか, 概略を答えよ.
(4) 前小問の結果より, 物理的に C < 0 と予想される.*3 そこで以下では, ω を正の実数として
C = −ω 2 とおく. このとき, T の一般解を求めよ.
次に, Zn を求めよう. 小問 (4) で導入した ω を用いると, Zn は次式を満たす*4 :
(
)
ω2
Zn+1 − 2 1 −
Zn + Zn−1 = 0 .
2γ
(A)
˜ + 1 あり, それらが円環状に(バネで連結さて)並んでいるとする.
以下では, 質点は奇数個 N = 2N
この状況は周期境界条件 zn+N (t) = zn (t) で表現される.
(5) K を定数とし, 解を Zn = eiKn と予想する. このとき, 周期境界条件を満たす K を求めよ. ま
た, K は α < K ≤ 2 π + α の範囲を考えれば十分である. その理由を述べよ.
(6) Eq.(A) を満たすには, ω と K との間に関係 (分散関係という) がなければならない. つまり, ω
は K の関数 ω(K) となる. このグラフの概形を描け.
(7) 以上により得られた特解 T (t) Zn = T (t) eiKn を用いて一般解を構成せよ.
(8) この特解は進行波とよばれる. その理由を図解せよ.
小問 (7) の結果は, バネで連結された質点系の一般的な振動を特解に分解して理解できることを示す.
そこで, これら特解のことを基準振動 や固有振動などという.
(9) 小問 (5) で, 解を Zn = cos(Kn) や Zn = sin(Kn) と予想したらどうなるか?この場合につい
て小問 (5) ∼ (7) を再考せよ.
(10) 小問 (7) と同様, 前小問 (9) で求めた特解 T (t) cos(Kn) や T (t) sin(Kn) を用いて一般解を表
すことができ, これらも基準振動 (固有振動) とよばれる. これらの振動パターンを図示せよ.
*3
*4
本来は示す必要がある. 本問の場合, 実際に示すことが可能であるが, 以下では C < 0 を認めて考察する.
この方程式 (A) は (定数係数をもつ) 3 項漸化式であり, その一般解の求め方は良く知られているが, 以下では簡単の為, あ
らかじめ解の形を予想して解くことにする. (一昔前は高校で履修した問題なので, 興味がある人はあらかじめ解の形を予
想せずに解を求めてみよ.)
2
Q3.
前問 Q2. で考察した系が, 周期境界条件ではなく固定端の境界条件 z0 (t) = zN +1 (t) = 0 を満たす
とする. (この場合も, 前問 Q2. の小問 (1)∼(4) の結果, および Eq.(A) は同じである.)
Q2. (5) で予想した解の形を上手く選び直し, 固定端の境界条件の場合の分散関係と特解を求め, それ
らを図示せよ.
3