4.いろいろな半導体レーザとカオス 4-1 構造の違いによるレーザダイナミクス 4-2 縦多モード半導体レーザ 4-3 自励発振半導体レーザ 4-4 縦モードと横空間モードのおさらい 4-5 面発光半導体レーザ − VCSEL − 4-6 ブロードエリア半導体レーザ − BAL − 4-7 レーザアレイ 4-8 量子ドット半導体レーザ − QDL − 4-9 量子カスケード半導体レーザ − QCL − 構造の違いによるレーザダイナミクス おさらい 狭ストライプの半導体レーザ 活性層幅 ~2~3 µm LD 活性層厚 ~0.2 µm 光出力 ~200 µm ~300 µm 共振器長 端面発光半導体レーザ 異なる構造の半導体レーザ − 狭ストライプ単一モード半導体レーザに対して - ・多モード発振 ・過飽和吸収層付き ・基板に垂直発光 ・ブロードストライプ ・レーザアレイ ・量子ドット活性層 ・サブバンド光遷移 などなど 付加的構造 → 自由度の追加 狭ストライプ半導体レーザは2変数安定系であるが 自由度の追加により3変数以上のカオス系 したがって、外部要因がなくても不安定になる 縦多モード半導体レーザ P o = 5m W 多モード半導体レーザ 構造は、狭ストライプ半導体 レーザと同じ 相対光出力 P o = 3m W P o = 1m W たとえば利得導波路などでは、 縦多モード化しやすい P o = 0.5m W 778 780 波長 λ (nm ) 光スペクトル 782 レート方程式 光電場 キャリア密度 多モードレーザの光スペクトル モードごとの発振 5縦モード発振の数値計算 Power [mW] 2 total mode 3 mode 2 mode 4 (a) 1.5 1 0.5 0 0 100 200 300 400 Time [ns] 単独発振 戻り光によるカオス発振 自励発振半導体レーザ 自励発振半導体レーザ 戻り光雑音を軽減する目的で 開発され一時期使われた 自励発振レーザ (SPL: Self-Pulsating Laser) 活性層 キャリア密度 光プロファイル 過飽和吸収層 活性層 過飽和吸収層 光出射端、活性層の断面 SPL レート方程式 光電場 dE(t) 1 = (1 − iα )[Gn1{n1 (t) − n th1} + Gn 2 {n 2 (t) − n th 2 }]E (t) + E sp1 dt 2 活性層キャリア密度 € dn1 (t) J n1 (t) n1 (t) − n 2 (t) = − − − Gn1{n1 (t) − n 01} | E(t) |2 dt ed τ s1 τ12 過飽和吸収層キャリア密度 € € dn 2 (t) n (t) n (t) − n1 (t) =− 2 − 2 − Gn 2 {n 2 (t) − n 02 } | E (t) |2 dt τ s2 τ 21 SPLの時間波形(実験) I nt e ns i ty [ a . u .] ある電流値での単独発振 異なる電流値での単独発振 戻り光があるとき 0 2 5 T i m e [ n s ] 5 0 相対雑音(RIN) 縦モードと横空間モードのおさらい 縦モード c 2L λ 2 ν レーザ共振器 利得分布と縦モード 利得分布内の縦モードがレーザ発振可能 横(空間)モード (1,5) (2,5) (3,5) (1,4) (2,4) (4,5) (1,3) (3,4) (2,3) (1,2) 1次元空間モード スラブ導波路 2次元空間モード 2次元導波路 空間モード 点対象共振器の場合 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 面発光半導体レーザ − VCSEL − 面発光半導体レーザ(VCSEL) Top View 16µm Light output Index guided region Active region 端面発光半導体レーザ 特徴 ・ 低しきい値 ・ 広帯域変調 ・ 対称なビーム波形 etc… DBR mirror VCSEL 実際にレーザプリンタなどで使われている VCSELー実際の構造 電流狭窄層 活性領域 VCSEL断面 VCSEL断面図 活性層厚 λ 以下 VCSELチップ(top view) VCSEL の特性 ☞ 他のレーザと異なり… 空間多モード発振 偏光スイッチング特性 空間・偏光ダイナミクス ☞ 戻り光にも敏感 高い共振器内部光反射率 ~99% しかし 共振器内のフォトン数は少ない 少ない戻り光量でも影響がでる 戻り光効果は、他の半導体レーザと同じ程度 VCSEL レート方程式 (空間モードモデル) 各空間モードの電場 トータル電場(偏光を含む) eˆ j : 偏光ベクトル キャリア密度 € VCSELsの空間モード発振 6µm VCSEL. (a) 3.0mA, (b) 6.2mA, (c) 14.7mA, and (d) 18mA. 活性層における電子スピン状態の違い J Conduction Band -1/2 1/2 1/ 1/ s s E+ E- -3/2 3/2 Valence Band Left (-) circular light Right (+) circular light 活性層厚がきわめて薄いため (z<<l/4)、 z方向に沿った電子スピンの縮退が解ける スピンフリップ(Spin-Flip)モデル レート方程式 偏光電場 dE x (t) 1 = (1− iα )Gn [{n(t) − n th }E x (t) − in J (t)E y (t)] − (γ a − iγ p )E x (t) dt 2 dE y (t) 1 = (1− iα )Gn [{n(t) − n th }E y (t) + in J (t)E x (t)] + (γ a − iγ p )E y (t) dt 2 € キャリアの合計密度 € 2 dn(t) J n(t) − n 0 2 = − − Gn {n(t) − n 0 }{ E x (t) + E y (t) } dt ed τs * * + iGn n J (t){(E y (t)E x (t) − E x (t)E y (t)} Spin-Flip を考慮したキャリア密度差 € 2 dn J (t) n(t) 2 =− − Gn n J (t){ E x (t) + E y (t) } dt τJ * * + iGn {n(t) − n 0 }{(E y (t)E x (t) − E x (t)E y (t)} L-I 特性 x-mode y-mode 0.8 0.4 0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 Injection Current [mA] 実験 1.2 Intensity [a.u.] Output Power [mW] 1.2 x-mode y-mode 0.8 0.4 0 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 μ (Injection Current) 計算値 1.8 2.0 高次モードの励起 (free running laser) (a) (b) (a) (c) (d) (c) (d) (e) (f) (e) (f) y 偏光モード (a) → (f): 低電流→ 高電流 (b) x 偏光モード 逆位相発振はカオスの特徴 VCSELにおける戻り光効果 y-polarization x-polarization (a)→(f) increase of feedback 高反射率DBRミラーを備えているが → 戻り光に弱い フォトニック構造による空間制御 高次空間モードを抑制 VCSELの課題 ・空間モード制御 ・偏光制御 ・出力パワーの増大 ・高密度アレイ化 ・さらなる低しきい値化 ・戻り光対策 ブロードエリア半導体レーザ − BAL − ブロードエリア半導体レーザ (BAL) z y x Bottom B Electrode ストライプ幅 Ws ~ 100 µm レーザ加工で使われる High Power Semiconductor Laser (Laser Package) BAL は高出力レーザではあるが… ☞ ストライプ幅は広い ~100 µm ストライプ幅に沿った空間依存性 (自由度の追加) 時空間カオス ☞ 発振ビームの質の低下 低コヒーレンス 空間多モード発振 縦多モード発振 ピコ秒フィラメント発振 etc. 基本特性 50 µm インデックスガイドBAL (1.5Jth) Intensity Intensity [dBm] 0 -25 Width [μm] 時間平均近視野像(NFP) ビーム特性は悪い 25 -10 -20 -30 -40 -50 -60 774 776 778 780 Wavelength [nm] 光スペクトル 戻り光による瞬時光学損傷(COD) 出射端面 50µm 出射パターン 近視野像 (NFP) (時間分解ダイナミクス) フィラメント発振 理論 実験 (ストリーク像) 電球の二重 フィラメント構造 電場の式の導出について y Maxwell 方程式 (Starting Point) z x Coordinates 分極 伝搬定数 SVWA (Slowly Varying Wave Approximation:ゆっくり波近似) and RWA (回転波近似) z 方向への一定振幅伝搬 → BAL 狭ストライプの場合 (x 依存は省略可能) → 狭ストライプレーザ レート方程式 光電場 ∂E(x,t) ∂2 E (x,t) 1 = iDe + (1 − iα )Gn {n(x,t) − n th }E(x,t) + E sp 2 ∂t ∂x 2 光の回折効果 € キャリア密度 ∂n(x,t) ∂ 2 n(x,t) J n(x,t) 2 = Dn + − − G {n(x,t) − n } | E(x,t) | n 0 ∂t ∂x 2 ed τs キャリア拡散 € ストライプ方向の空間特性が重要 BALのフィラメント発振 30.0 Intensity[a.u.] 1 29.6 0 29.4 29.2 29.0 -25 0 Width[µm] 25 -8 1.2 1.2 1.0 1 Intensity [a.u.] Intensity [a.u.] Time[ns] 29.8 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -25 -6 -4 -6 -4 -2 0 2 4 6 Angle[degree] 8 0.8 0.6 0.4 0.2 0 Stripe Width [µm] 25 0 -8 -2 0 2 Angle [degree] 4 6 8 近視野像NFP 遠視野像FFP 戻り光を用いたBALのビーム整形 partial mirror feedback 1.2 30.0 Intensity [a.u.] 1 0.8 29.8 0.6 0.4 0.2 0 -25 0 25 Stripe Width [µm] Time[ns] NFP Intensity [a.u.] 1 29.6 0 29.4 1.2 29.2 FFP Intensity [a.u.] 1 0.8 0.6 29.0 -25 0.4 0 Width[µm] 25 0.2 0 -8 -6 -4 -2 0 2 Angle [degree] 4 6 8 時間平均ビームプロファイル 高分解フィラメント発振パターン (NFP) 光注入によるBALのビーム整形 (numerical) J=1.5Jth, rinj=1.2, Δf=0 GHz 1.2 30.0 0.8 29.8 0.6 0.4 0.2 0 -25 0 Stripe Width [µm] 25 Time[ns] NFP Intensity [a.u.] 1 29.6 29.4 1.2 FFP Intensity [a.u.] 1 0.8 29.2 0.6 0.4 29.0 -25 0.2 0 -8 -6 -4 -2 0 2 Angle [degree] 4 6 8 時間平均ビームプロファイル 0 25 Width[µm] 高分解発振パターン (NFP) 量子ドットBALおけるフィラメント抑制 平均 NFP 理論 平均 NFP 実験 Gehrig et al. APL Vol.84 p.1650 (2004) フォトニックBAL (b) Output power [W] 2.0 60 50 1.5 40 1.0 30 20 0.5 0.0 Patterned Reference 0.0 0.5 1.0 Current [A] 活性層上面の構造 L-I 特性 1.5 10 2.0 0 Efficiency [%] (a) レーザアレイ VCSELアレイ 1次元アレイ 250 µm 2次元アレイ 高出力BALレーザ・バー レーザー ダイオード バー 水冷 〜1cm レーザ加工に応用 レーザアレイにおけるカオス発振と制御 34 Contact Stripes Active Layer t [ns] 32 w s Cladding 30 x ストライプ・レーザ・アレイ 戻り光制御on 28 -30 -20 -10 0 x [ m] 10 20 5レーザ・アレイ 30 量子ドット半導体レーザ − QDL − 量子ドット半導体レーザ (QDL: Quantum Dot Laser) Dot Structure レーザ共振器 QDs ドット層 活性層 20 nm 50 nm (a) (b) Top View Cross-Section View 量子ドットレーザの特性 ☞ エネルギー状態の量子化 高コヒーレンス発振 高帯域変調 低周波数チャープ 低 α パラメータ値 戻り光耐性 広い光注入領域 ☞ 作成の難しさ 自己集積法 将来の光通信用レーザとして期待されているが... QDとQW レーザのバンド構造 QD Laser QW Laser 量子ドット半導体レーザのレート方程式 光電場 dE(t) 1 1 = (1− iα )[g0ϑ {2 ρ (t) −1} − ]E (t) dt 2 τ ph ドットにおけるキャリア占有率 € dρ(t) ρ (t) =− − g0 {2 ρ (t) −1)} | E |2 +F dt τd Carrier Exchange Rate: €キャリア密度 dn(t) J n(t) € = − − 2N d F dt e τs € F = Rcap (1− ρ ) − Resc ρ 戻り光による分岐図 Intensity [a.u.] QD Laser QW Laser 0 0.1 0.2 Optical Feedback [%] 0.3 J=2.0Jth, 外部共振器長=30 cm QDLは戻り光耐性がある! 光注入特性マップ(安定境界) Stable 実験 Stable 理論 光注入特性はクラスAレーザに近い → 安定なレーザ より詳しい解析には、5変数モデルが必要 ΔEe:190meV ΔEh:69meV バンド構造 厳密なレート方程式 (5変数モデル) e-Density in WL e-Density in QD Photon n-Density in QD n-Density in WL Sin, Sout NQD Nsum Rind Rsp : Scattering Rates : Number of Active QDs : Total QD density : Linear Gain : Spontaneous Emissions 量子カスケード半導体レーザ − QCL − 量子カスケード半導体レーザ (Quantum Cascade Laser) 導波路 高ARコート 共振器 ~mm 超格子構造 4 QW×N ~10µm 電極 基板 THz 光 金属層 THz 光放出 量子カスケードレーザ ☞ サブバンド間光遷移 THz光発振 高速キャリア緩和 (~ps) 高変調帯域特性 低 α パラメータ値 狭発振線幅 クラスAレーザのような振る舞い ☞ 光検出器、光学部品の入手が難しい ☞ 広い応用範囲(通信、計測、特に薬物検査など) 光の遷移 伝導帯 光 禁止帯 光 荷電子帯 Quantum-Cascade Laser サブバンド間遷移 Quantum-Well Laser バンド間遷移 電子 サブバンド間遷移 Barrier 4 3 2 hν 4 1 Active Region Injection Region One Period 超格子構造におけるサブバンド間遷移モデル レート方程式 光電場 dE(t) 1 1 = (1− iα )[N p G{n 3 (t) − n 2 (t)} − ]E(t) dt 2 τ ph Level 3 におけるキャリア密度 € dn 3 (t) J n 3 (t) = − − G{n 3 (t) − n 2 (t)} | E(t) |2 dt ed τ3 Level 2 におけるキャリア密度 € € dn 2 (t) n 3 (t) n 2 (t) = − + G{n 3 (t) − n 2 (t)} | E(t) |2 dt τ 32 τ2 QCL と QWL の相違 QWLs 光の遷移 キャリア バンド間 電子とホール α parameter 大 発振波長幅 広 (~10 MHz) 偏光モード TE 光出力 電流に比例 ストライプ幅* few µm 活性層厚* less than 1 µm キャリア緩和時間 ~1 ns * 幅、厚は発振波長に強く依存 QCLs サブバンド間 電子 小 狭 (~100 kHz) TM 電流と層数に比例 larger than 10 µm larger than 10 µm ~1 ps Normalized Modulation Response [dB] 小信号変調特性 0 3.0 -4 2.0 -8 J=1.2Jth -12 -16 0.1 1 10 Frequency [GHz] 100 緩和振動がない 光注入マップ 光注入特性は、クラスAレーザに近い Stable Injection Locking λ=9 µm, α=1 課題2:レーザ以外のカオス系について、具体的例を 挙げ、その系のカオス的振る舞いや、カオスの特徴 について調べよ。物理的モデル式などもある場合には、 その式のそれぞれの項の意味について説明せよ。 平成26年2月4日(第3回特別講義のときに提出)
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