半導体レーザ — 複雑系物理と応用 — 静岡大学大学院 工学研究科機械工学専攻 大坪 順次 http://www.sys.eng.in.shizuoka.ac.jp/~ohtsubo1/ 3日目 半導体レーザカオスと応用、 結合半導体レーザネットワーク 5.半導体レーザカオス安定化と計測応用 5-1 半導体レーザの発振線幅の狭窄 5-2 フィードバック制御(強制制御) 5-3 カオス制御の方法 5-4 半導体レーザカオスの制御方法 5-5 戻り光、光注入による安定化 5-6 フォトニック構造 5-7 周期1を使う干渉計測の方法 5-8 干渉計測の具体例 5-9 レーザ端子電圧を用いる計測 5-10 ドップラー計測 5-11 Chaotic Lidar 半導体レーザの発振線幅の狭窄 半導体レーザの戻り光による安定化 戻り光量(光振幅)によるダイナミクス・カテゴリ I 極微弱戻り光 ~10-7 安定 II 微弱戻り光 ~10-6 不安定 III 弱い戻り光I ~10-4 カオス的 IV 弱い戻り光II ~10-2 カオス的 V 強い戻り光 ~10-1 安定 光強度としては、-40dBくらいから不安定化 半導体レーザは小さい戻り光 により不安定化するが... FEEDBACK COEFFICIENT C 発 振 10 線 幅 0.5 5 戻り光により一旦線幅は小さくなる ↓ 10-4くらいから不安定化 ↓ 10-1を超えると線幅狭窄が起こる LINEWIDTH [kHz] 戻り光量が多いと安定化する 1 5 10 50 II I III IV 10 MHz 104 103 Phase 0 0º 45º 90º 99.46º 135º 180º 225º 279.46º / in( 102 10 10 8 10 7 s s =2 tan-1 =0º) 10 6 10 5 FEEDBACK FRACTION r2 帰還光量 10 4 発振線幅の狭窄 カオス領域 25 GHz Output Power [dB] 0 25 kHz -20 -40 -60 40 60 80 100 Frequency [MHz] (a) (b) (c) II III IV V コヒーレンス崩壊 安定 安定 120 この他、光電検出帰還でも安定化 LD Lens Fabry-Perot Interferometer Laser Diode Current Controller Detector A 光 光−電気帰還システム 電気 フィードバック制御 通常の制御系 Input Output u(t) System y(t) y(t) dy(t) = f (y, x) + Ky(t) dt Feedback フィードバック信号は、通常大 € フィードバックには時間遅れがあることも... カオス制御の方法 カオス制御 (a) xf xn カオスは制御できる! 初期状態 (b) xf (µ0+!µ) xn xn : 初期の動作点 xf : ターゲット点 小摂動 vn (c) xf xn xn+1 es サドルノードへの制御 カオス制御の例 連続制御 Chaotic System y(t) u(t) y(t) !" y(t-$) $ # + dy(t) = f ( y, x) + K{y(t − τ ) − y(t)} dt τe: カオス系に含まれる時間遅延成分 € フィードバック信号は小さい (信号×~1%) 制御終了時には制御信号は零になる(K=0) カオス制御 € € 制御信号 u(t) = K{y(t − τ ) − y(t)} F 2 1 -1 10 0 -10 -20 制御を含むシステム € dy = f (y,x) + u(t) dt 制御が成功すると、u→0 € 制御信号 0 y システム dy = f (y,x) dt dx = g(y,x) dt 制御on カオスから周期へ 0 100 50 150 200 t 250 300 350 400 レスラー・システムの制御例 dy = f (y,x) dt 450 半導体レーザカオスの制御方法 数学的な方法では、事前にすべてのパラメータ値が必要 半導体レーザでは、すべてのデバイスパラメータを知ることは困難 そこで、遅延時間を推定し、その周期の微小正弦波変調(~数%) Occasional Proportional Feedback OPF法という 実際、有効な方法 RIN [dB/Hz] 半導体レーザ戻り光相対雑音RIN (実験) -130 -140 0.1 1 Optical Feedback [%] 10 戻り光システムにおけるカオス制御 システムにおける安定、不安定モードの計算 不安定サドルノードへのアトラクション アトラクションの方法は注入電流への変調など このときの変調は非常に微小(振幅の1%とか) 光ディスクシステムにおけるレーザ高速変調“雑音”抑制のエッセンス 制御可能な不安定サドルノード ターゲットモード u(t) = uo {1 + msin(2πf0 t)} Re[ ] n -1] 小信号変調 ~数% € Im[!]/2" [GH ] 適当なデバイスパラメータを設定し、小信号解析により振動モードを推定 カオス制御の例 制御前 制御後 アトラクタ カオス振動が周期に 低周波雑音が低減 制御前 制御後 微小信号によるカオス雑音制御の例 戻り光 制御結果 単独発振 光ディスクピックアップ と光ディスク 光ディスクでは、実際に正弦波変調 ただし、大振幅制御 RIN [Hz-1] 自励発振半導体レーザの戻り光安定性 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 10-15 10-16 103 L=4 cm L=2 cm 104 105 No Feedback 106 107 108 Frequency [Hz] 109 自励発振は、一種のモード変調 システムに依存して、最適周波数が決まる → カオス安定モード周波数がシステム依存 1010 戻り光、光注入によるビーム波形整形 戻り光を用いたBALのビーム整形 partial mirror feedback 1.2 30.0 Intensity [a.u.] 1 0.8 29.8 0.6 0.4 0.2 0 -25 0 25 Stripe Width [µm] Time[ns] NFP Intensity [a.u.] 1 29.6 0 29.4 1.2 29.2 FFP Intensity [a.u.] 1 0.8 0.6 29.0 -25 0.4 0 Width[µm] 25 0.2 0 -8 -6 -4 -2 0 2 Angle [degree] 4 6 8 時間平均ビームプロファイル 高分解フィラメント発振パターン (NFP) 光注入によるBALのビーム整形 (numerical) J=1.5Jth, rinj=1.2, Δf=0 GHz 1.2 30.0 0.8 29.8 0.6 0.4 0.2 0 -25 0 Stripe Width [µm] 25 Time[ns] NFP Intensity [a.u.] 1 29.6 29.4 1.2 FFP Intensity [a.u.] 1 0.8 29.2 0.6 0.4 29.0 -25 0.2 0 -8 -6 -4 -2 0 2 Angle [degree] 4 6 8 時間平均ビームプロファイル 0 25 Width[µm] 高分解発振パターン (NFP) レーザアレイの戻り光制御 34 t [ns] 32 制御on 30 28 -30 -20 -10 0 x [ m] 10 20 30 フォトニック構造による安定化 フォトニック構造によるVCSEL空間モード制御 量子ドットBALおけるフィラメント抑制 平均 NFP 理論 平均 NFP 実験 QDも一つのフォトニック構造 フォトニックBAL (b) Output power [W] 2.0 60 50 1.5 40 1.0 30 20 0.5 0.0 Patterned Reference 0.0 0.5 1.0 Current [A] 活性層上面の構造 L-I 特性 1.5 10 2.0 0 Efficiency [%] (a) 周期1を使う干渉計測 カオス性を含むので本来計測には向かいなが... 限定的範囲で非常にコンパクトな計測器ができる この方法以外に装置化が難しい例 自己混合半導体レーザ振動計 戻り光半導体レーザを自己混合半導体レーザともいう カオス発生直前の周期状態の利用を考える 安定 周期 カオス ロジステックの分岐例 波長程度の外部鏡変化に対するレーザ出力 Output Power (a) !/2 (b) (c) 戻り光量増加方向 External Mirror Position 外部鏡の速度、振動、変位、絶対位置などが測定できる Normalized Photon Number 周期的変化の例 外部鏡の時間変化 ω0τ [rad] Normalized Photon Number (a) 戻り光量増加方向 ω 0τ [rad] (b) 計算 実験 外部鏡の位置、変位だけでなく、方向までわかる 干渉計測の具体例 戻り光半導体レーザにおけるカオス計測 戻り光による周期1状態の応用計測 l/2周期の振動 ・振動 ・変位 ・速度 ・応力 などなど ただし、戻り光量を周期1状態に保つ必要がある。 多モード化すると、λ/4、λ/6・・・の周期振動 計測回路 Laser Diode Target Reflector PD レーザ内部 光検出器 Amplifier High-Pass Filter Discriminator Monostable Multivibrator UP Monostable Multivibrator DOWN Up-Down Counter Display 基本的には、フリンジ・カウンティング パルスカウンティングの例 光検出器の出力 パルス出力 変位測定(ΔL) S S Monitor PD S0 S t Self-Mixing Waveform 2 Interferometer P/I Characteristic I Voltage-Controlled Y Current Source Trans-Z Amplifier =2kL Z Target Displacement Laser Diode S0+SI /2 L Servo-FeedbackLoop VPD + A + VREF VOUT LP Filter - L OUTPUT L DC Offset + + - t (a) Compensation Loop ΔL = N λ λ + O(λ ) ≈ N 2 2 N: フリンジカウント数 € 現在位置からどれだけずれたか (b) 振動計測 外部鏡の駆動信号 実際の外部鏡振動 絶対位置計測 dS/dt Δk⋅ 2L = N + O( N ) 2π € S N: フリンジカウント数 電流変調 J → 光(S)変化 = 光周波数変化 応用装置 マイクロ光ディスクヘッド、近接場顕微鏡検出ヘッド 光ピックアップ ピックアップ 動作原理 戻り光があるときの特性 (実験結果) レーザ端子間電圧を用いる計測 VCSELやQCLのように内部PDが得られないレーザがある → 戻り光によるダイオード端子間の電圧変化を使う 8 40 Voltage [V] 6 電 圧 30 4 20 2 0 0 10 0.2 0.4 0.6 Current [A] 0.8 電流 Optical Power [mW] 50 光 出 力 0 1.0 VCSELのLIとLV特性 発振しきい値以上では、光出力と電圧は比例 半導体レーザはダイオード J = J s{exp( βV ) −1} ≈ J s exp( βV ) 、 β = q/ ηkBT € € 戻り光によるキャリア数の変化は、レーザ両端の電圧の関数 n = ns + Δn = n0s exp{β (Vs + ΔV )} € キャリア変化(電流=光出力)は、電圧変化に比例 Δn = exp( βΔV ) −1 ≈ βΔV ∝ J ns € 要するに、ダイオードのVI特性 VCSEL戻り光 PZT 30 外部鏡変調 15 0 0 2 4 6 8 10 0.1 外部光検出器 IPD 0 -0.1 0 2 4 6 8 10 VLD 0.02 VCSEL電圧 0 -0.02 0 2 4 6 Time [ms] 8 10 VCSELを使った表面計測 (a) 通常の干渉計測 (b) 外部PD自己混合計測 (c) 自己混合電圧計測 段差のある資料の表面形状 QCLを使った不透明体を通した形状計測 (a) (b) 1 MTF (c) 0.5 0 1 1.5 2 0.5 Spatial Frequency [l/mm] ドップラー計測 自己混合によるドップラービート 時間信号 ×1020 (a) Photon Number Density [m-3] 5.72 (d) 30.0 20.0 5.71 10.0 5.70 (b) 5.72 0 45.0 (e) 戻り光大 30.0 5.71 15.0 5.70 11.0 0 45.0 (c) 8.00 30.0 5.00 15.0 2.00 0 400 t [ns] 800 1200 0 0 (f) 400 t [ns] 800 1200 ドップラー信号 0 MHz (a) 散乱体からのドップラービート 1.22 MHz 2.44 MHz (b) ビート周波数→移動速度 Chaotic Lidar Chaotic Lidarの構成例 質の良い不規則信号発生器 PBS HWP Chaotic Laser OI PD Target PD Correlator Lidar: Laser Imaging Detection and Ranging 大気観測、公害監視、気象観測など Lidarによる反射体の測定 高分解能 1 3.3 ns (49.5 cm) Correlation 原信号 0.5 エコー 0.2 ns (3 cm) 0 0 1 2 3 4 5 Delay Time [ns] 6 7 8 Lidar OTDR (Optical Time Domain Reflectometry) にも応用できる
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