' ' Title 乳汁中コーチゾール値を指標とするウシの副腎皮質予 備能検査について Author(s) 相馬, 要, 宮澤, 清志, 三宅, 勝, 丸尾, 芳彦, Soma, Kaname, Miyazawa, Kiyoshi, Miyake, Masaru, Maruo, Yoshihiko Citation 帯広畜産大学学術研究報告. 第I部, 13(4): 237-241 Issue Date URL Rights 1984-06 http://ir.obihiro.ac.jp/dspace/handle/10322/1435 帯広畜産大学 帯広畜産大学学術情報リポジトリOAK:Obihiro university Archives of Knowledge 帯大研報,13(1984):237∼241. 237 乳汁中コ←チゾール値を指標とするウシ の副腎皮質予備能検査について 相馬 要・宮澤清志・三宅 勝・丸尾芳彦 (受理:1983年11月30仁]) Determination of CortisoIConcentrationin Milk as anlndex of the Adrenocortical Function in Dairy Cows KanameSoMA,KiyoshiMIYAZAWA,Masaru MIYAKE−YoshihikoMARUO 要 約 ウシの副腎皮質予備能は.ACTH負荷後の血中コーチゾール〔以下コーチゾールをFxと 記述する)値の上昇率によって判定されてきた。しかし血中FK値は.小さな刺激によって変 動しやすいこと,また検査手技が煩雑であることから,日常の臨床検査項目の1つに加えられ るまでには至っていない。そこで膏者らは,これに代わる検査法として乳汁中FK値を指標と する副腎皮質予備能検査法について検討を加えた。 臨床的に健康と認められた乳牛2帽を2群に分け,ユ群にはACTHO.25mgを.他の群に はACTH−Zlmgそ投与したn血液はACTH投与前.30分後およぴ4時間後に尾静脈から, また,乳汁はAC「rH投与前,ユ2時間乳24時間後に採取した。血中および乳汁中FK侶はラ ジオイムノ7、ソセイ法により測定Lた。 その結果.ACTH−Z投与群における4時間後の血中p’K値(4時間値30分値)と乳汁巾Flく 値上昇倍率(12時間値/前値)の閤に相関関係(r=0.細)がみられた。 以上の結果から,乳汁中1√Ⅹ値を指榛とする副腎皮質予備能検査法は1血中FIく値を指標と する検査方法に代わり得るものと判断された。 れるので,簡便な検査方法の出現が望まれている。そ こで著者らは,副腎皮質小レモンが乳汁中に移行する 緒 FKは一体内の必滅れレモンであるから,これが欠 ことに着日し,乳汁中副腎皮質ホルモンを指標とした 乏すると様々な障害の起ることが報告されている。ウ 副腎皮質予備機検査について検討Lた。 シにおいては,宮繹らM,中尾ら5),武石ら18)れ疾 材料 と 方法 病にかかると副腎皮質機能の低下がみられると報告L ている。また小野ら‖は卵巣疾患牛に糖質コルチコイ 北海道十勝管内H町でホルスタイン種乳牛を50頭 ド製剤を投与すると.治癒率が上昇したと報告してい 以上飼育している農家2戸を選び,下記の条件に該当 る。このように.副腎皮質は,疾病と密接な閲係をも する乳斗をそれぞれユ0頭ずつ選び実験牛とした。実験 つ組織であるにもかかわらず,その機能を検査したと 牛は,分娩後】カ月以上碇過Lた鬼籍付の叢休期のも いう報告は少ないじこの理由としては.検査方法が旭 ので,臨床的に異常を認めないものを用いた。その年 雑で,副腎皮質ホルモンの測定が困難なことがあげら 齢,産歴,乳量の平均値は表1に示した。 帯広畜産人学家畜臨床繁殖学教室 DeparLmentoLVeterinaryObstetriesandGynecol(〉gySehoolofVeterinaryMedicine. ObihiroUT】iv町E}ityofAgricultureandVeterinaryMedicineObihiro.Hokkaido,D80JAPAN. 9 相馬 要ら 238 Taセ1e】.Experimentalma如ia18 Group A Grく〉叩B (ACrllHi_m_)(ACTH−Zi.m.〉 川 () Calv通常S 4・3⊥丘9 5.8±2.7 2.9⊥0・9 4・2±2・4 Milelds 26・1土6・5 ︵召︼\叫£uOコ巴盲むOG8一口明叫七害p窒l仁 lO C()W 32・3±3・6 血中上1Ⅹ値を測定するための血液は,搾乳による影 曹を除外するため,搾乳後2時間経過した午前9時に 尾静脈より凍血した。採血直後に.Aグループには AeT王ifコートロシソ注;第1黎≠薬)q.25mgを筋肉 丙に,Bグループに軋ACTH−Z(コートロシソ Z 注;第1製薬)1mgを筋肉内に注射した。注射後は 30分と4時間目の2同採血し,血清を分離後,況帽三去 で208Cに凍結・保存した。乳汁は,宮澤らル. GuAヱDÅUSKASら11の報告に基き,ACTH投与軋 0 Ti鹿川血相 投与後は2時間と24時間目の2[軋左前分房より搾乳 Fig.1Ch且ngeSintheblqodcortkoI c8nCentrad¢′n 母fter ACでH and ACTH−Z admirlistration 後の残乳を採取し,測定まで−28ロCに凍結・保存し た。血中FK値なちびに乳汁中yK値の測定は,牧野 ら込jのラジオイムノ7ッセイ法により打った。 結 0.5 果 ︵t∈\軋£uロコ巴盲むりUQUt届︼岳じ曇叫冥 ÅCTIi投与辟の血中FIく債は,前値10.6±4.1ng/ mlで,30分後には軋8=24.9ngノmユと上昇したが. 4時間後には15.0土7.7咽ノーnlとはぼ前備に戻うた。 乳汁中FR値は,投与前0.55±0.24ng/ml.12時間 後0.銅±Q.16ng/mlおよぴ24時間後0.28±0.13 ng/mlとはとんど変動ほみられなかったく図1,囲 2〉。 ACTIl−Z投与群の血中Fx値は,投与前借は3± 8.Ong/爪lで.30分後には軋4±1臥5帽価1と上 昇L,4時間後にはさらに71,4±2$.m暗/mlとと昇 を示した。乳汁中F絶値は,投子前借0.42±D.17ngノ m】であったが,12時間後には3.3±1J8ng/nlIと有 意くPく仇叫に上昇し,24時間後にはほぼ前値に戻っ た(闊1,園2)。 乳汁†ト]FK値に変化がみられたB群の血中FK値 と、乳汁中FK値の相互関係を検討するため,血中上1Ⅹ 構については.(0.5時間植一前借),(4時間億一前 場),およぴ(4時間値D,5時間植)を求め,乳汁中 Flく終については.(12時間値前借).(12時間値/ 12 Time(hours) 一也.2(ブIl且ngeS血milkcortisoIc(〕nCentrliく)n aft即ACTH and ACTH−Zad1111nistrati()n 川 牛の副腎皮質機能検査 前値)およぴ(24時間伯一前値)を求めた。その結果, 2a9 Table 2.RelationshipbetweeIlblood and milkcortisoIconc即1trationa鮎r ACTH−Z administrati(】n 血中FK値(4時間値前値)と乳汁中予、K値(12時 間値/前値)の間に,また血中Fx値(4時間値0,5 時間値)と乳汁中Fl(備(ユ2時間僑十前値)およぴ(12 時間値/前値)の間の相関係数は,それぞれ0.65, Milk corLjsol 12hrs.12hr5.24hrs. 一Ohr. 川hr.−Ohr. I ● 勺召O・5br・Ohr・ 虫U ︵l∈\u£E¢芯巴盲じりuOUtOS明宝OUpOO︼田 、、 4hrs.一Ohr. I 仇65 4h柑.0.5hr. 0.73 0.80 * *:Nn correユatioll 0.73,0.80であった(表2,図3)、。 ACTH−Z投与後aO分(30分値一前値)と4時間 (4時間幅30分値)の血中アK値の間にほ相関関係 はみられなかった(図4)。 考 案 従来ウシの副腎皮質予備能検査は,ACTH 又は ACTH一写を投与し,3〔)分あるいは4時間後の血巾副 Fig.3IieI且tionE,hipbetweerLbloodcorモisoI COnCeれtration(4brs.一0.5hF.)and increase rate of milk cortisoI 皮質ホルモン値を洩り走する方法がとられてきた封7=割 そのため,本試験では,まず使用するACTH製剤に ついて検討したところ,乳汁中FK値を指標とLて副 concfゝntrati〔)n(12hrs.ノOhr.) Noc〔〉rrelati(〕n 上昇するが4時間後には前値‘こ復するため.乳汁中 FK値に影響を与えないことがわかったn これは乳汁 を12時間間隔で採取したため∴短かい間隔で採取した 場合に生した変化が平均化されたものと考えられる。 r=−0−36 ︵︻∈\加F﹁ト‘S.e.巴一三 〓三︼︻こ一こ・こ〓=二ニ′こL=﹂てさ︻ご 腎皮質予備能検査をする場合には,ACTIl−Zを用い なければならないことが確認された。ACTH(コート ロンン)を投与Lた場合には,血[PFx値は3D分後に このことから,乳汁中FK値を指標として検査を実施 する場合には.血中FK値でいわれているような.短 時間の外的刺激あるいは白内周斯による変動別町軋 ほとんど考直する必要はないと考える。従って乳汁中 FK値の変動が観察される場合には,血中FK惰の増 加あるいは減少が着るしいことを示しているものとい 5 えよう。 10 血中の副腎皮彗ホルモンにより副腎の予備能を判定 ● BloodcortisoIcoce血■ation (0.5れr.Ohr.,ngノml) Fig.4 Relatlons山p beLweenincreaseで1Ⅲ1ue Of blood FIくin4hours(4hrs.け.5hr.) and jn O.5hr.(0.5hr一口hr,) arter AcTHZ administration = する場合には,ÅCTH投与後30分あるいは4時間の 副腎皮質ホルモン値から前値あるいは3D分値を差し引 く方法が取られている3J。、しかし,乳汁中副腎皮質ホ ルモンを指標とする場合には一礼汁中濃度が血中濃度 にくらぺ約1ノ10と低値であること,また個体差か大 相馬 要ら 240 lowingintraverEO11SinjeCticLn Qf di恥rent 善いことから.血液と同様の算定方法では判定できな いことがわかった。TERMEロLENら‖lは,ACTH蚤 dosesOfadrenocorticotI明如.Am.J.Vet. 投与した場合の乳汁中Fxについても反応彼の偉かち 前値を差し引いた数値が,血中FK値と相関関係があ fモes.,38.1345−1348. 即RoussEL.J.D.,Cl.EMEN℃J、J.,ARANAS, T.J.&SEYBIS.H.(198a):Changesin dirculatngp盆Sm如es ると報告しているが,著者らの成績からは相関関係は みられなかった。そこで12時間後の乳汁中FK値唾上 昇倍率を求めてみたところ.血中FK億の反応と高い t)∫cく)上吏solinlactatlng and noれ」acはtiTlg 相関関係にあり,副腎皮質予備能検査として用いるこ とができると考えられた。 また,ACTH−Zを投与した場合の血中FR値は, 細分後あるいは4時間後に測定されたが.4時間値と dairy cattle during the es加S Cyele. Theriogenology,】9,535−539. 9)SMtTH,Ⅴ.G.,CoIqVEY,E.M_&ED鎚RT8N, L.A_(1980〕:BQVine ser11m Ct)rticoid re− 別分倦の間に相関関係がみられなかったことから.30 分後のF渡値の意義については再検討が必要である。 Spこ)nSetq milk血gand8ⅩtrQ′Ceptivestim心1i. J.Dairy S(:i.,55.11701173. 10)武石昌敬・柴田 真・石井厳宏・奥田 勝・津田 戊久・常包 正(1980):乳牛の正常分娩における 母牛ならび匠子牛の血清CortisQl値の動態,日 引 用 文 職 1)GwAZDAVSKAS− F.Cり PAAPE,M.J・& McG11−uARD,M.L.(1877〉:Milk and pl且Sma glucocorticて)id 8二Iter且tions 且翫er in作Ction$0∫hydrocortisone aIld adrピn8− 獣会誌,33.585−5酪. 111Tl;RMEりLEN.S.B.,BローLER,W.R.&NATZKE, R.P.(1981):Rapidity ofcortisoユtransfer COrticotropin.Pr口L Soc.Hxp,Bi〔)l.Med.一 betweenblood and milk fDllowirlgadrenく)→ corticotrDplnirりeCtion.J.Dairy Sd.,84. 】別.543−545. 2)牧野拓雄・神戸川明,(1973):Radioimmunoa昌一 組yiこよる血中Cortisolの測定,日内分泌会私 21972208. 12)WEGNER.T.N.&ScoTIG.H.(197g):Serum minera】s,1e−1kpcyte profiles and p18占ma 〔:OrLicnidsindairyheifers且fter血nin]QCtiof1 0rr8rtic(〕trOPin.J.DairySci‘.箔.1464. 娼,1297∼1勤5. 3)宮澤清志・小野 斉・三宅 勝・佐藤邦忠(1耶5): 卵胞癖陛牛の副腎皮質機能に関する研究,主とし てAC▼rH負荷試験と11−OHCS血清値について, Summ乱丁y 家畜繁殖諾パ犯138∼14′3. Changesillthe blQOd c月rtispIc{)nC¢nもra如n 4)宮澤清志・臼井和哉(1975):乳汁中に分泌される コルチゾールに関する研究 丁.乳汁中コルチゾー ル測定法ぉよび乳汁中コルナゾール値について, i6 PreSentlyl如i叩 utilizea as anindexin deほrming the adreno′COrtical土’uncもiDn玩c()wS, The methQdhoweveri弓difflCultandtheresultE, 溺80回日本獣医学会講演要旨.12g, variable,SO that an alLernaLive method w上Iich deもermines the milk eort主soI was studied. TwerlLy apparently normal(:OWS Were divided into2groups.One gr8up Wa8adminiぢtered iェ出am11日C111arly wiもh O.之5mg ACTH and tfle othergro11pWaSadminister8dwi仇1IngAぢTH− Z(cortrosin−Z).Blodsampleswerecdll桓eted 7)P」互APE,M.J..DESJARDIⅣS,C.,GutR只Y, from】ugula!・VeinJuSt berore.3わmlnutes and ヰhou指afterACTHinjecti【)n.Blo(〕(iandmilk A,J.,MILLER,R.H.&SMIT軋 Ⅴ.R. COrtiso、1concentration wered鶉erIniT18dもy the り977):Resp【)nSeOfpl且占maCOrtiごDSter(⊃ids lnethod of radioimmunoassay from Mak主no. and circulatingIe11k−)CyteSln cat机rnl $)中尾敏彦・小野 斉・三城恭彦・梅村幸雄・曽郡 敏夫・久保田学(】975):副腎皮質ホルモンによる 乳牛卵牌腫治療試験,此献金誌,19,41∼47. 6)小野 斉・三宅 勝■蛋沢 舜・中川 昭・戸村 正治(1968):乳牛不妊症に対する副腎皮質ホルモ ン療法1,乳牛の卵胞のう聴に対する副腎皮質 ホルモン投与試験,家畜繁殖誌,Ⅰもg9. 1:、 牛の副腎皮質機能検査 Resul臨Obtained werゼ aS follows:1ncrease of bl∝)d cく〉rtisoIconcentr8ti(〉n after4hourR (vallユeS art.eT・4hoursValue8日fLer30minut鮎) was\VellcorreほtedlVith theincreasedrate(つ∫ −】1ilk corti801c抑Centr乳tinn(r=0二80)but was not correlated with theincreasel⊃f blood cortisoIconcentration arter30minutes(閥1ues 良fter謝minuしes−Values j.ust bert】relnjection) inthe gr〔】up OfÅCTHZin】eeted cows・ From thesercsults,itshowst・hatthedetermi− nation(〉f cDrtisoIconcentrationirlmilk員fter ACl−H−Z adrIlin由ratioJlaS anindex ofαle adreI10CQrもicalruTICl沌nin dairy cou・Sis an avai上able alterIlative melll【)d. 月eざ.血〃.Obiんiro Lh血JJβrJ』g刃.▲g37∼g丑 13 一 241
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