実践!腹部・骨盤MRI 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 佐原朋広 本日の内容 • プロローグ:MRI検査に関する私見 • 1部:上腹部のシーケンス:特徴 • 2部:上腹部 – 肝臓:症例 – 撮像の工夫:腎動脈の非造影MRA • 3部:骨盤部 – 子宮体癌・前置胎盤(癒着) MRI検査に関する私見 MRI検査ってこんなものでは? • 「すいかをたたく」という行為 – たたくつよさを変える⇒T1強調, T2強調など – たたく場所を変える⇒Transaxial,Saggittal,Coronalなど • 結果から判断:読影 – よく完熟⇒ボンボン⇒筋肉 – 未熟⇒ポンポン ⇒線維化 – 熟しすぎ⇒ボタボタ⇒膿胞性 MRI信号の組織コントラスト • T1緩和 – 組織のT1はプロトンがエネルギ-を周囲の格子(原子)との間で授 受可能かどうかに影響 – プロトンの拡散、振動および回転の周波数が共鳴周波数と等しくなる 時、エネルギ-遷移が最大(T1時間短縮効果⇒高信号) • T2緩和 – 組織のT2はプロトンの位相分散する速度(信号の減衰速度) ⇒減衰速度が速いほど低信号 – プロトン周囲の構造が影響⇒固体:減衰(大)、液体:減衰(小) 参考:Ray H.Hashemi “MRI The Basics” 緩和時間と分子運動の速度 • T1緩和 • T2緩和 – 共鳴周波数以降、 緩和時間が急峻に延長 – 組織が低粘度、高温で 高信号 T1 T1値短縮効果 極値をもつ 緩和時間 – 分子運動の周波数 が共鳴周波数と 一致するところ – 脂肪組織、造影剤、 高濃度蛋白質 T2 低温 高粘度 高温 低粘度 分子運動の速度 参考:P.W.Atkins “物理化学概論 ” MRIの信号変化 低信号 高信号 T1WI 水 多くの病変 空気 骨 速い血流 (flow void) 脂肪 高蛋白溶液 亜急性期血腫 常磁性体 T2WI 急性期血腫 慢性期血腫 石灰化 空気 骨 鉄 速い血流 (flow void) 水 多くの病変 亜急性期血腫 参考:青木茂樹〝よくわかるMRI〟 本日の内容 • プロローグ:MRI検査に関する私見 • 1部:上腹部のシーケンス:特徴 • 2部:上腹部 – 肝臓:症例 – 撮像の工夫:腎動脈の非造影MRA • 3部:骨盤部 – 子宮体癌・前置胎盤(癒着) 使用シ-ケンス • T1強調画像(GRE-T1強調画像) – gradient echo系(3D)⇒息止め • T2強調画像 – single shot SE系⇒息止め又は呼吸同期 – FSE ⇒呼吸同期 • 脂肪抑制T1 (3D) or T2強調画像 – T1 fatsat :息止め、T2fatsat: 息止め又は呼吸同期 sequenceの解説 • 上腹部のT1強調 sequence • 上腹部のT2強調 sequence • 上腹部のT2/T1強調 sequence 上腹部のT1強調 sequence Sequence tree* *引用 Prof. Dr. Lothar Schad “Physics of Imaging Systems Basic Principles of Magnetic Resonance Imaging V”2008年 GRE-T1強調画像 α • 各ベンダにより名称 が異なる – FLASH(siemens),SPGR (GE),TFE(philips), • スポイリングを用い て縦磁化を再収束 – RFスポイリング – Gradientスポイリング TR α Gslice Spoiling Gread Gphase 3D GRE-T1 の歴史 • 1986年 Frahmら“FLASH:fast low angle shot” ⇒FAを小さくしTRを短縮 • 1990年 Haaseら“Turbo FLASH” ⇒1回の励起 パルスで撮像 • 同年 Muglerら“MP-RAGE”⇒プリパレーション パルスによる組織コントラスト改善(T1-3D) • 1999年 Neilら“VIBE Volumetric interpolated Breath-hold Examination” ⇒ 上腹部撮像用 3D-GRE法として登場(画像補完型) 3D-VIBE 2D-FLASH 分解能:1.0×1.6×5.0mm 48スライス TA=20sec 11スライス TA=27sec GRE-T1w:in phase opposed phase • GREでは脂肪と水に位相差が生じる • 信号がTEの取得タイミングにより“強め あう”・“弱めあう” • 微量な脂肪成分の検出 限局性脂肪肝: S8領域に低信 号検出 In-phase TE=4.6ms out-phase TE=2.3ms 脂肪肝 In-phase TE=4.6ms out-phase TE=2.3ms 画像補完型:VIBEの例 • 画像補完型とは? – k-spaceのデータ収集を間引く 数十秒の息止めで広 範囲の撮像が可能 – 3D収集によりデータを補完 Slice encode VIBEのK空間におけるサンプリング Phase encode Read out echo信号を部分的に収集 echo時間の短縮 メリット T2減数の低減、T1協調効果の向上、flow artifactの低減、 磁化率artifactの低減 Asymmetric echo TR4.46 TE1.58,TA_22sec In-phase Symmetric echo TR5.22,TE2.34_TA26sec Opposed-Phase 上腹部のT2強調 sequence Sequence tree* *引用 Prof. Dr. Lothar Schad “Physics of Imaging Systems Basic Principles of Magnetic Resonance Imaging V”2008年 Half-Fourier Acquisition Single-Shot Turbo Spin-Echo:HASTE L. van Hoe, MR Cholangiopancreatography,2006, Springer 複数の収束パルス 実効エコ- 50%以上のデータ 複数のecho信号 • 90 °- 180° のパルス系列⇒Spin echo • 1回の90 °パルスで励起、その後、複数の180° パルスで収束 • 複数のechoが出現、kスペ-ス中心のecho time がコントラストを決定(実効エコ-) • デ-タはkスペ-スの50%以上を収集(例:56%) HASTE • 高速撮像:1枚1sec • 磁化率アーチファクト に強い(GREより) • SNRが低い • 流速速度が速い血 管のみflow void RARE:Rapid Acquision with Relaxation Enhancement L. van Hoe, MR Cholangiopancreatography,2006, Springer 実効エコ- 複数の収束パルス 複数のecho信号 • 90 °- 180° のパルス系列⇒Spin echo • 一回の90 °パルスで励起、その後、複数の180° パルスで収束 • 複数のechoが出現、kスペ-ス中心のecho timeが コントラストを決定(実効エコ-) • kスペ-スをフル重鎮 • echo spaceが長くなる⇒burring • なのでLong TEの撮像(TE=1100ms) RARE • 1スラブ(50mmから70mm) • TR=2500ms,TE=1100ms • 収集時間:5sec • 1986年 Hennigにより提案 上腹部のT2/T1強調 sequence Sequence tree* *引用 Prof. Dr. Lothar Schad “Physics of Imaging Systems Basic Principles of Magnetic Resonance Imaging V”2008年 True-FISP • 1986年 Oppelt によりFISP(True-FISP)が提案 • 約10年間、臨床応用不可能* – ハードウェア能力不足 • 静磁場の均一性 • 勾配磁場スイッチング速度(遅い) • ハードウェアの仕様 – 高い磁場均一性 – 高い傾斜磁場性能 スポイリング型 補足:電磁波のコヒ-レンス › spoiled FLASH (VIBE) › 横磁化のコヒ-レンスがない コヒ-レント型 › 横磁化のコヒ-レンスがある コヒ-レンスが良い › 完全コヒ-レント型:True FISP › 部分的コヒ-レント型:FISP コヒ-レンス › 位相が連続して一致していること コヒ-レンスが悪い *参考 巨瀬勝美「第29回日本磁気共鳴医学会 基礎講座」2009年 LM:縦磁化 TM:横磁化 Z軸に縦磁化 参考: Govind B. et al. “Steady-State MR Imaging Sequences: Physics, Classification, and Clinical Applications”Radiographics 2008 RFpulse⇒θフリップ TRの期間180度フリップ: 再収束するタイミングがある y軸に横磁化 RFpulse⇒再度θフリップ 再度横磁化 形成 2つのエコ-信号が出現 › FID信号 › SE(収束)信号 これら2つが重なり 合う”高いSNR” FID信号⇒直前のRF pulse印加後 SE(収束)信号⇒1つ前のRF pulse印加後 参考: Govind B. et al. “Steady-State MR Imaging Sequences: Physics, Classification, and Clinical Applications”Radiograph ics 2008年 極性が異なるα°パルス使用 TR <<T2,TR ×1/2の設定でecho信 号位相の一致が連続する (コヒ―レント:定常状態) Gslice TR,TEは最小値に設定(高いバン ド幅) α TR -α Gread Gphase True FISPのα°パルス True FISP Sequence Chart 移行期 定常状態 Linear Centric 定常状態 移行期 信号強度の式 signal = M0sinα (T1/T2 +1) - cosα (T1/T2 -1) cosα = (T1/T2 -1)/ (T1/T2 +1) 信号値最大の条件 Maximum signal ∝1/2×M0× √ T2/T1(TR,TEに依存しない) T2/T1に依存 T2値が長くT1値が短い 血液が高信号 ⇒非造影MRA,非造影 MRVに応用 -3π/4 α度パルス励起後の 位相のズレφ 横磁化⇒信号強度 +3π/4 信号が強め合う範囲 を表すグラフ 定常状態における 撮像条件 -π +π 参考:Scheffler K,atl.’Magnetization preparation during the steady state: fat-saturated 3D TrueFISP’. Magn Reson Med 2001; 45: 1075– 1080. ±3π/4の領域で一定の信号強度 ±πの領域で信号強度‘ゼロ’ ⇒Darkband(artifact) ±3π/4の領域は共鳴周波数64MHz (1.5T)で± 35Hz( 1ppm) ⇒ 1ppmの磁場均一性が要求 Off resonance banding artifact 本日の内容 • プロローグ:MRI検査に関する私見 • 1部:上腹部のシーケンス:特徴 • 2部:上腹部 – 肝臓:症例 – 撮像の工夫:腎動脈の非造影MRA • 3部:骨盤部 – 子宮体癌・前置胎盤(癒着) 上腹部について • 検査に必要な解剖知識 • 検査に関する知識(造影剤など) • EOB検査における動脈相撮像について • 症例 肝臓の区域 • 肝臓内を走行する脈管の位置により区域に分ける • →3次元的な理解が重要である なぜ門脈で分割するのか? • 肝細胞がん⇒担癌門脈枝から転移 • 腫瘍と担癌門脈枝より上位の門脈茎から切除 • 切除範囲の決定 – 担癌門脈枝の還流支配領域の範囲 – 治療後の肝機能 「國土典宏教授の肝がん治療の誤解を解く」より http://medical.nikkeibp.co.jp MRIの造影剤 MRI造影剤の種類 • 非特異性:血液中から細胞外液に分布 • Gd-DTPA (meglumine gadopentate マグネビスト) • Gd-DTPA-BMA (gadodimide hydrate オムニスキャン) • Gd-HP-DO3A (gadoteridol プロハンス) 等 • 肝特異性:肝細胞やKuppfer細胞に取り込み – 網内皮系造影剤 • superparamagnetic iron oxide particles: SPIO (フェリデックス、 リゾビスト) – 肝胆道系造影剤 脂溶性であり、肝細胞に取り込まれる • Gd-EOB-DTPA:EOB (gadolinium ethoxybenzayl 血中から肝の細胞外液腔の分布は腎排泄 diethlenetriamine pentaacetic acid プリモビスト) 肝細胞に取り込まれると胆道排泄 MRI用造影剤の特性比較 製品 分類 マグネビストなど EOB・プリモビスト注 陽性造影剤 リゾビスト(SPIO) 陰性造影剤 細胞外液性造影剤 肝特異性造影剤 有効成分 Gd-DTPA Gd-EOB-DTPA フェルカルボトラン 適応部位 脳・脊髄/躯幹部・四肢 肝臓 肝臓 製剤濃度 0.5mmol/mL 0.25mmol/mL 0.5mmolFe/mL 分子量 742.79 725.72 - 浸透圧比(対生食) 約7 約2.4 約1 粘稠度(37℃mPa・s) 3.03 1.19 1.03 pH 6.8~7.8 7.0 5.5~7.0 R1緩和度 4.9 8.7 24.7 安定度定数* 22.1 23.46 - 条件付安定度定数* (pH7.4) 17.7 18.7 - (mM-1sec-1 ) Human plasma at 4.7T SPIO製剤 • カルボキシデキストランで被覆された超常磁 性酸化鉄の親水性コロイド • 60nm程度の造影剤 • 細胞(腫瘍)間質に漏出しない – 血行性の評価はGd-DTPAより劣る 【末梢組織での分布の違い】 毛細血管 血管 内皮 間質 細胞 Gd :分子量0.1nm SPIO :粒子径50~250nm +Gd 造影後T1強調像(門脈相) +SPIO 造影後T2強調像(投与10分後) • Gd製剤:陽性造影効果 – 血流の多い肝実質が明るく(白く)造影されている • SPIO製剤:陰性造影効果 – 造影剤の取り込まれた正常肝実質が暗く(黒く)造影されている (※ 転移性肝癌は乏血性腫瘍であり、悪性腫瘍のためクッパー細胞はない) Gd-EOB-DTPA:ガドキセト酸ナトリウム • 造影剤の約50% ⇒肝細胞膜のトランスポーター (OATP1)を介して肝細胞内へ • 最終的に胆汁中へと排泄 • 残りの約50%⇒腎から尿路中へと排泄 • 肝実質に取り込まれ肝細胞相のT1wで高信号 – 肝細胞癌などの結節性病変は肝実質より相対的に低信号に描出造 影剤注入後の動脈相では動脈血流の多い結節性病変は早期濃染 像として高信号に描出 • 動脈相と肝細胞相 – Gd-EOB-DTPA造影MRIでは慢性肝炎・肝硬変患者における肝細胞性 結節の存在診断能が飛躍的に向上 動脈相 後期相 門脈相 肝細胞相 肝臓の細胞構成 • 肝細胞 • Kuppfer cell – マクロファ-ジ 肝細胞 • 類洞 – 微小毛細血管 • 毛細胆管 K細胞 – 肝細胞によって 囲まれた腔所 毛細胆管 類洞 造影剤の取り込み 早 期 類洞 Gd-DTPA 類洞 類洞 SPIO Gd-EOB-DTPA 毛細胆管 後 期 K細胞 肝細胞 類洞 T1強調画像 T2強調画像 T1強調画像 静脈内投与 【末梢組織での分布の違い】 毛細血管 クッパー細胞への取り込み 血管 内皮 循環系 胆汁中排泄 間質 細胞 Gd :分子量0.1nm SPIO :粒子径50~250nm SPIO 肝 類 洞 肝細胞への取り込み 40% Gd-DTPA 腎 Gd-EOB-DTPA 尿中排泄 60% Gd-DTPA 血流 Gd-EOB-DTPA 血流 肝細胞機能 SPIO クッパー機能 MRIの造影剤の重篤な副作用 副作用:腎性全身性線維症(NSF) • 腎不全患者における四肢、体幹の皮膚の肥厚、 硬化、関節拘縮の多臓器が侵される全身性疾患 • 致死率30%といわれる重篤な疾患 Martin R . et al. l,”Nephrogenic Systemic Fibrosis and Its Impact on Abdominal Imaging” radiographics ,Vol,29(6) ,2009. 細胞外液性造影剤の違い • マグネビスト:ガドペンテト酸メグルミン – 全浸透圧が最も高い • オムニスキャン:ガドジアミド水和物 – 遊離Gdイオン量が最も多い • プロハンス:ガドテリド-ル – 全浸透圧が最も低い • 例:マグネビスト35mOsm,プロハンス9mOsm MRI「超講義」より NSF発症の報告状況 • 国内における状況 – 各医薬品の販売開始から平成23年7月26日まで •ガドジアミド水和物 •ガドペンテト酸メグルミン •ガドテリド-ル •ガドテル酸ジメグルミン ⇒オムニスキャン ⇒マグネビスト ⇒プロハンス ⇒マグネスコ-プ 医薬品・医療機器等安全性情報 No.285 2011.11 撮像技術:Dynamic 撮像について 肝臓の血流支配 • 肝臓の血管 – 肝動脈 – 門脈 – 肝静脈 – 腫瘍 • 肝動脈100% – 正常肝実質 • 肝動脈30% • 門脈70% 撮像タイミング • 動脈相 • 門脈相 • 平衡相 動脈相: 30sec 門脈相:60sec EOBでは平衡相での 信号は低下 肝臓への取り込み開 始のため 平衡相:120sec 当院のEOBダイナミック検査 撮像技術 EOB:造影剤注入レ-トについて • 注入量はGd-DTPAの半分 – 体重50kgで5ml • 造影注入レート:3.0ml/sec厳禁 – Truncation artifact • 1.0から2.0 /sec – 世界的コンセンサス 当院の肝臓EOB検査:flow chart 造影前 Localizer T1 axial: in/opposed phase T1 fatsat axial: pre-dynamic test injection法 造影剤量0.4mlを2.0ml/secでインジェクターより注入 1flame/secで120秒間、連続で撮像 Slice position 動脈相の撮像タイミングを決定 Dynamic 撮像 造影剤(体重×0.1ml)を2.0ml/secで投与 動脈相、門脈相および平衡相を撮像 120flame 造影後 DWI ,T2 axial,およびT2 fatsat axialを撮像 肝細胞相撮像 肝実質にROIを設定、2分間 (120枚)の信号値の計測 1.0から2.0 /sec どちらがいいの? • 大動脈到達時間 • 信号最大値(ピ-ク) ④ • 造影持続時間⑤ 対象症例:54例 2.0 /sec:40例 1.0 /sec:14例 結果:記述統計 記述統計 注入レ-ト N Mean Std. Deviation Std. Error Mean 2ml/s 40 16.75 3.019 .477 1ml/s 14 15.50 2.849 .761 2ml/s 40 40.244 15.1923 2.4327 1ml/s 14 36.229 11.0585 2.9555 2ml/s 40 8.923 1.7827 .2855 1ml/s 14 9.143 2.1788 .5823 大動脈到達時間 信号強度最大値 造影持続時間 結果:統計処理 Independent Samples Test t-test for Equality of Means Sig. (2-tailed) Equalvariances assumed 大動脈到達時間 Equal variances not assumed Equal variances assumed 信号強度最大値 Equal variances not assumed Equal variances assumed 造影持続時間 Equal variances not assumed Mean Difference Std. Error Difference .182 1.250 .925 .177 1.250 .899 .370 4.0150 4.4406 .302 4.0150 3.8279 .711 -.2198 .5893 .738 -.2198 .6485 検討:タイミング評価 結果:タイミング評価 表:タイミングの評価と注入レ-トの関係(頻度) 注入レ-ト Total 2ml/s 早期 タイミングの評価 後期(やや) 後期 Total 1ml/s 17 7 24 6 7 13 17 0 17 40 14 54 当院の結論 • 造影剤持続時間 – 1.0ml /sec ,2.0ml /secあまり変わらない • 信号強度最大値 – 2.0ml /secの方が高い • タイミング – 1.0 /sec速め 注入量:2.0ml/secを採用 肝臓:症例 肝腫留性病変 悪性 病変 良性 病変 良性 病変 悪性 病変 画像診断 肝臓:症例 • 肝細胞がん(HCC) – 古典的肝細胞癌 – 小肝細胞癌 – 脂肪沈着した肝細胞癌 – 肉腫様変化を示す肝細胞癌 – 胆管癌と合併 古典的肝細胞癌 ・動脈血流供給が豊富 →早期相で濃染、後期相では低吸収域化 ・腫瘍内のモザイク状構造 ・造影後期相での腫瘍辺縁のリング状の造影効果 ・脂肪化を伴うことがある 1~3cm大:約半数でみられ、最大割面の1/3~2/3程度の範囲 3cm以上:部分的な脂肪化を伴うことが多い ・進行癌の場合は脈管侵襲を伴うことがある →特に門脈浸潤は特徴的画像所見のひとつ 動脈相 平衡相 ・CT arterioportography (CTAP):SMAあるいはSpAに留置した カテーテルより造影剤を注入し、経動脈性門脈造影を施行 しながら非癌部の肝実質を造影する方法 ・CT hepatic arteriography (CTHA):肝動脈に選択的にカテーテルを 挿入し、造影剤を投与しながら肝臓のCTの撮像を行う方法 →この2者を組み合わせると感度は非常に高いが、偽陽性も非常に 多い。最近ではEOB-MRIはCTHA/CTAPとほぼ同等の診断能がある と報告され、診断目的でのCTHA/CTAP施行の機会は減少している。 コロナ濃染 動脈相 平衡相 CTHA 小肝細胞癌 単純CT fsT2WI 動脈相 平衡相 Gd-EOB-DTPA Gd-EOB-DTPA 肝細胞相 動脈相 CTHA CTAP 早期肝細胞癌を含む小肝細胞癌 の多くは、比較的hypovascularな 非典型的な血流動態を示す。 →CTAPによる門脈血流の減少、 CTHAによる動脈血流の減少 または増加、SPIOやGd-EOBDTPAの肝特異性MRI造影剤の 取り込み程度で診断を行う。 脂肪沈着した肝細胞癌 単純CT T1WI (In-phase) 動脈相 T1WI (opposed-phase) SPIO造影前T2WI 門脈相 SPIO造影後T2WI 肝癌内に脂肪組織が内在する頻度は高分化型ほど高い(約半数)。 →早期肝細胞癌の病理学的特徴の一つ 肉腫様変化を示す肝細胞癌 動脈相 門脈相 T1WI T2WI 肝細胞癌のうち、腫瘍細胞の細胞学的性状が紡錘型細胞に相当 するものを指す。繰り返しTACEを施行された例に発生すると報告さ れているが、TACE歴のない例にも発生する。 →通常の肝細胞癌に比べ、 増大速度が速い、腫瘍径が大きい、壊死が占める範囲が 大きい、腫瘍内出血の頻度が高い、約半数が被膜を有する Combined hepatocellular and cholangiocarcinoma 単一腫瘍内に肝細胞癌 と肝内胆管癌へ明瞭に 分化した両成分が混ざり 合っているものを指す 単純CT 動脈相 T1WI(in-phase) T1WI(opposed-phase) T1WI造影前 動脈相 平衡相 T2WI 平衡相 →腫瘤内に肝細胞癌の 特徴を示す部分と周囲 を牽引する遅延性濃染 を呈する部分を認めた 場合は、混合型肝癌を 鑑別疾患に挙げる 多血性肝腫瘤の鑑別 【common】 ・肝細胞癌 ・FNH ・肝血管腫 ・多血性肝転移 ・多血性偽病変 ・初期の肝膿瘍 【uncommon】 ・肝腺腫 ・多血性過形成結節 ・血管筋脂肪腫 ・Peliosis hepatitis ・肝内胆管細胞癌 ・Dysplastic nodule ・血管肉腫 ・炎症性偽腫瘍 ・偽リンパ腫 ・肝内胆管腺腫 ・活動性肉芽腫 Focal Nodular Hyperplasia (FNH) 中心瘢痕 単純CT T1WI 動脈相 fsT2WI 平衡相 SPIO造影long TE ・単純CT:肝実質と比べ低~ 等吸収 ・造影CT:早期相で均一に強く 造影、門脈相~平 衡相で等吸収 ・CTHAで濃染、CTAPで低吸収 ・MRI:T1WI,T2WIともに均一で 肝と同様の信号を示す ・特徴的な中心瘢痕: 遅延性濃染を示し、T1WI で低、T2WIで高信号 大きなFNHの2/3、小さな FNHの1/3で同定可能 限局性の血流異常に対する肝細胞の過剰再生を成因とする過形成 結節。非硬変肝に発生し、通常孤立性であるが時に多発する。 境界明瞭な腫瘤としてみられ、通常は被膜を持たない。 海綿状血管腫, 硬化性血管腫 Cavernous hemangioma 動脈相 門脈相 平衡相 T2WI T1WI T1WI fsT2WI 動脈相 DWI Sclerosed hemangioma 動脈相 平衡相 平衡相 ・硬化性血管腫は海綿状血管腫に著明な退行変性を来たした稀な状態 ・広範な硝子化や線維化により海綿状血管腫に特徴的な造影パターン を呈さない Dysplastic nodule (DN) 動脈相 平衡相 FsT2WI 造影T1WI(平衡相) ・肝細胞癌の多段階発癌過程における前癌病変と考えられており、 前癌病変の癌化を早期に捉えるために6か月~1年間隔の follow upが推奨される。 ・軽度異型結節(low grade DN)、高度異型結節(high grade DN) ・動脈相:周囲肝実質と比較して造影効果はほぼ同等~やや低下 門脈相以降:門脈血流の減少を反映し造影効果はやや低下 →早期肝細胞癌との鑑別は困難なことが多い Intrahepatic arterial-portal shunt (A-P shunt) 単純CT 動脈相 平衡相 肝細胞相で軽度 の取り込み低下 を呈することあり T1WI T2WI Gd-EOB-DTPA T1WI(肝細胞相) A-P shuntに伴い、肝実質の変化を生じる場合があることに注意 肝腺腫 単純CT 動脈相 T1WI(in-phase) T1WI(opposed-phase) 門脈相 平衡相 fsT2WI SPIO造影long TE 20-40歳代女性の非硬変肝に発生する良性腫瘍 エストロゲンやアンドロゲンなどのホルモン剤、経口避妊薬などの 関連が示唆されている 撮像の工夫 腎動脈非造影MRAについて 腎臓MRI検査の見直し 従来 – – – – T1-Axial T2-Axial T1-Coronal T2-Coronal 現在 – T1-Axial – T2-Axial – T2-Coronal – Non contrast MRA 放射線科からの強い要望 短時間化:息止め 腎動脈の狭窄や閉塞による高血圧 (全高血圧患者の約1%) 中・高年者 ⇒ 粥状動脈硬化 (腎動脈の近位部約38%) 若年者 ⇒ 線維筋性異形成が原因 粥状動脈硬化性RVHTは血管病変を合併(閉塞性 動脈硬化症,虚血性心疾患) 参考:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009社団法人 日本腎臓学会 編 形態的診断(CTA,MRA,腎動脈造影)機能的診断 (血漿レニン活性,レノグラムなど)が重要 経皮的腎動脈形成術(PTRA)を実施 非造影のMR検査が大きいな役割を担う Coronal像から腎動脈分岐にSlabを設定 25秒の呼吸停止 横断像 動脈 48mm Coronal MIP Magnetom Avanto 3D True FISP Slice thickness:1.2mm FOV 32cm Matrix:256×224 呼吸停止:25sec Sat 静脈 Flip Angleが大きいほど信号強度が強い 可能な限り大きなFAで撮像 RF波 MR信号 信号強度 信号 強度 縦磁化 横磁化 Flip angleについて Flip90 ° Flip angleと信号強度 Flip45° Flip angleを大きくする ⇒ RF波の電力が大 RF波の電力が大 ⇒ SAR規制値による制限 装置側でFlip angleを自動調整 ⇒強制的に規制値以下 撮像結果(SNR)が異なる Flip angleを小さくして画質が許容できるのか 健常ボランティアを撮像 Flip90 °からFlip10 °まで(10°step) ROI(Aorta,RA,RV,Renal,BG) SNRを算出し評価 RV Aorta RA Renal ROIの設定位置 BG 90.0 80.0 Signal-noise ratio 70.0 60.0 Aorta 画質の境界線 RA RV Renal 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 Flip angle 1.2 画質の境界線 1 0.8 Aorta RA 0.6 0.4 0.2 0 90 80 70 60 50 40 Flip angle 30 20 10 画質(高) Flip 90° Flip 60° Flip 30° 画質(低) Flip 20° Overlap法 Free breath法 Overlap法:3slabを重ねて撮像範囲96mmをカバ- Overlap法 従来法 動脈 96mm 48mm 3slab 静脈 動脈 Overlap法 › メリット⇒撮像範囲の拡大 › デメリット⇒位置ズレの発生 呼吸停止 もう一工夫必要かな? Overlap法 呼気時に患者腹部を腹帯で固定 検査中の注意事項(患者様へ) › 大きく息を吸わない › 小さな呼吸を繰り返す 事前に練習 検査中は大きく息を 吸わず、小さな呼吸を してくださいね。 腹帯固定 3D True FISP Slice thickness:1.2mm FOV 32cm Matrix:256×224 TA:60min以内 Trans axial Coronal MIP processing はい、 わかりました ちょっと苦 しいけど Flip angleを90°固定 › メリット:SNRの向上 › デメリット:繰り返し時間の延長 撮像時間の延長 Banding artifact 呼吸停止 Free breath Free breath法は臨床現場で有効である。 本日の内容 • プロローグ:MRI検査に関する私見 • 1部:上腹部のシーケンス:特徴 • 2部:上腹部 – 肝臓:症例 – 撮像の工夫:腎動脈の非造影MRA • 3部:骨盤部 – 子宮体癌・前置胎盤(癒着) 子宮・卵巣:解剖など 子宮内膜 Junction zone 子宮体部 子宮頸部 ダグラス窩 膣 子宮体部 • 子宮体部:3層構造 – 外層筋層 – Junction zone – 内膜 • 内子宮口から頸部へ • (くびれ) 子宮頸部 • 子宮頸部 –頸部間質 (低信号) –頸管上皮 (終点の高信号) 前膣円蓋 後膣円蓋 卵胞 卵巣間質 卵巣 • 卵胞 – 粒上の高信号 • 卵巣間質 – 卵胞周囲の低信号 当院のルーチン撮像:女性骨盤 • • • • • • Localizer T2 HASTE スライス数:21 T2-sagittal FSE スライス厚/gap:5-1.5mm T1-sagittal SE Total time=15min T2 transaxial FSE DWI transaxial b=1000 T1 transaxial Fatsat 時間短縮のためCoronal撮像はオプション 症例によって変更 • 子宮体癌 –長軸に垂直 • 子宮頸癌 –長軸に垂直 検査前準備 • 1時間くらい蓄尿 • 抗コリン剤を筋注 –高齢者除外 –拒否患者除外 • コイルセッティング時:腹帯固定 PROPELLER: BLADE • Turbo SE:echo train • エコートレインの束:BLADE • 回転するようにk空間を充填 – 画像の濃度分解能に影響するk空間中心部 分のデータが多重加算 • 撮像断面内の動きを補正(積算効果) – Motion artifactの低減 通常のTurbo SEのk空間充填 放射状に充填 BLADEのk空間充填 奇形腫 FSE BLADE 子宮:症例 女性の悪性腫瘍罹患率 子宮頸癌と体癌の健診 • • • • • 子宮頸がん検診無料クーポン(40歳まで) 子宮体がん(なし) 閉経後、子宮体がん罹患リスク向上 高齢者に多い 内腔のため細胞診が困難 MRI検査の役割は大きい 子宮体癌のステージング • • • • • 子宮体部に限局 Ia 子宮筋層浸潤がないか、50%未満 Ib 子宮筋層浸潤(50%を超える) II 頚部間質に浸潤 III – – – – IIIa 子宮漿膜・附属器浸潤 IIIb 膣転移・子宮傍結合織浸潤 IIIc1 骨盤リンパ節転移陽性 IIIc2 傍大動脈リンパ節転移陽性 • IV – Iva 膀胱・腸管粘膜浸潤 – IVb 遠隔転移・鼠径リンパ節転移 International Federation of Gynecology and Obstetrics (FIGO) FIGOのステ-ジングとMRI Beddy P ,FIGO staging system for endometrial cancer Radiographics. 2012 Jan-Feb;32(1):241-54 Ia:子宮筋層浸潤がないか50%未満 Ib 子宮筋層浸潤(50%を超える) II 頚部間質に浸潤 前置胎盤 胎盤:癒着胎盤 • 癒着胎盤 – 胎盤が母体の子宮に癒着して剥離が困難となる 疾患 – 周産期の大量出血によるショック、DIC*を来した 母体死亡原因 • 超音波で評価困難な場合 • ⇒MRI検査 *DIC:播種性血管内血液凝固症候群⇒出血箇所のみで生じるべき 血液凝固反応が、全身の血管内で無秩序に起こる症候群 MRI検査では • HASTEとTrue-FISPの 両方を撮像 スライス数:25-30 スライス厚/gap:6-1.5mm 前置胎盤 30歳、妊娠34週。 前置胎盤の有無でMRI緊急検査を実施 胎盤と子宮頸部前壁にDark Bandが見られ 帝王切開。(輸血の準備) 同部位に強い癒着が認められた。 胎盤剥離術後、ICU入院 母子ともに経過良好 無事退院 Dark band Dark band Sagittal view Coronal view True-FISP Dark Band⇒組織の磁化率の違い HASTE T2だけでは評価不十分( True-FISP併用) › HASTE⇒上記以外に速い血管のFlow Void › True-FISP ⇒血管高信号 現在、何を見ているのかわかっていない › 微小血管の梗塞 › フィブリンの沈着 Dark band or Vessel 参考: Anna Y. Derman. et al. “MRI of Placenta Accreta: A New Imaging Perspective”AJR 2008 Dark band Vessel HASTE True-FISP まとめ 撮像技術 肝臓疾患の検査法 造影剤 骨盤部の検 査法 ご清聴ありがとうございました。
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