システム雑音についての整理メモ

システム雑音についての整理メモ
Seij Kameno
2014.2.13
1
モデルの前提
CMB
atmosphere
★source
Tatm
antenna optics
Receiver
hot
TRX
cold
Psky Psrc
Tant
Phot Pcold
図 1: Tsys 計測のモデル。
• 宇宙背景放射 (CMB): 放射温度 TCMB = 2.726 K の黒体放射。
• 天体 (source): アンテナ温度 Tsrc に相当する放射源。フラックス密度 S との関係は Tsrc =
で表わされる。Ae は有効開口面積, kB はボルツマン定数。
Ae S
2kB
• 大気 (atmosphere): 放射温度 Tatm , 光学的厚み τ の gray body。天頂での光学的厚みを τ0 とし
たとき、天頂角 Z において τ = τ0 sec Z と表わせるとする(平行平面層近似)。
• アンテナ光学系 (antenna optics): 放射温度 Tant , 伝送ゲイン Ga の伝達系。実際には損失 (Ga <
1)。スピルオーバーによる雑音付加もここに含める。
• 受信機 (RX): 受信機雑音温度 TRX , ゲイン G。受信機より下流のシステムもここに含める。
• hot load (HOT): 放射温度 TH の黒体放射。
• cold load (COLD): 放射温度 TC = 78 K の黒体放射。(液体窒素の沸点 77 K に、液面反射を付
加して 78 K としている)
1
放射源と計測されるパワー
2
帯域幅を B とする。
1. HOT : Phot = kB GB(TRX + TH )
2. COLD : Pcold = kB GB(TRX + TC )
3. SKY : Psky = kB GB[TRX + Ga (Tant + Tatm (1 − e−τ ) + TCMB e−τ )]
4. SOURCE : Psrc = kB GB[TRX + Ga (Tant + Tatm (1 − e−τ ) + (TCMB + Tsrc )e−τ )]
計測結果から各要素を推定
3
較正の目的は、計測されるパワーに基づいて天体の放射温度 Tsrc を求めることである。4. の Psrc は
ON 点、3. の Psky は OFF 点のパワーであり、この比をとると
Psrc
Psky
TRX + Ga (Tant + Tatm (1 − e−τ ) + (TCMB + Tsrc )e−τ )
TRX + Ga (Tant + Tatm (1 − e−τ ) + TCMB e−τ )
e−τ Tsrc
= 1+ T
RX
−τ
−τ
Ga + Tant + Tatm (1 − e ) + TCMB e
=
と表わせる。ここで TA = e−τ Tsrc を(大気吸収補正なしの)アンテナ温度といい、Tsys =
Tant + Tatm (1 − e−τ ) + TCMB e−τ を(大気吸収を含まない)システム雑音温度という。
これらを使うと式 1 は
Psrc
TA
=1+
Psky
Tsys
(1)
TRX
+
Ga
(2)
のように簡潔に書けるので、Tsys を別途測っておけば ON/OFF のパワー比から TA を求められる。
TA から Tsrc を求めるには光学的厚み
τ の補正が必要である。
(
)
T
RX
∗
τ
τ
また、Tsys = e Tsys = e
+ Tant + Tatm (eτ − 1) + TCMB を大気吸収補正込みのシステム雑
Ga
音温度といい、これを用いると
Tsrc
Psrc
=1+ ∗
Psky
Tsys
(3)
となるので天体の放射温度 Tsrc を直接求められる。
3.1
受信機雑音温度
1. と 2. の比から求める。
Phot
Pcold
=
TRX =
TRX + TH
TRX + TC
hot
TH − PPcold
TC
Phot
Pcold
2
−1
(4)
大気吸収補正込みのシステム雑音温度(近似)
3.2
∗ 推定方法で、3. と 1. の比を用い、以下の近似を行なう。
いわゆる R–SKY とよばれる簡便な Tsys
1. Ga = 1 および Tant = 0、つまりアンテナ光学系での伝送ロスと付加雑音を無視する。
2. TH = Tatm 、つまり大気の放射温度と hot load の温度が等しいと仮定する。この仮定によって、
hot load があたかも大気の外にあるとみなしたものと等価になる。
3. TCMB = 0、つまり宇宙背景放射を無視する。
これらの近似によって、
Phot
Psky
∗ +T
Tsys
H
∗
Tsys
TH
=
∗
Tsys
=
Phot
Psky
(5)
−1
0.0
R−Sky [dB]
3
−0.4
4
−0.2
5
R−Sky [dB]
6
0.2
7
0.4
8
が得られる。COSMOS QL 等で表示される大気吸収補正込みのシステム雑音温度は、この値が用い
られる。
1
2
3
4
5
1
2
Sec Z
3
4
5
Sec Z
図 2: (左)sec Z に対する R–Sky のパワー比 (dB) のプロット。黒線(ノミナル値)は TRX = 50 K,
Ga = −0.1 dB, τ0 = 0.05, Tatm = 285.0 K, TH = 290K を与えたもの。赤線はノミナル値に対して τ0
を 0.01 刻みで [0.01, 0.10] の範囲を変化させた場合、緑線はノミナル値に対して Tatm を 10 K 刻みで
[260, 350] K の範囲を変化させたもの、紫線はノミナル値に対して Ga を 0.05 dB 刻みで [0.05, 0.50]
dB の範囲を変化させたもの。(右) ノミナル値に対するそれぞれの比率。
3.3
よりマシなシステム雑音温度
Section 3.1 の方法で TRX は求まっているとする。様々な sec Z で R–SKY
システム雑音温度をの要素を計測し、Tsys を推定する。
Phot
Psky
=
Phot
Psky
を計測することで、
TRX + TH
TRX + Ga (Tant + Tatm (1 − e−τ0 sec Z ) + TCMB e−τ0 sec Z )
3
(6)
Phot
実際のところ、sec Z に対して Y = P
を上記の式で非線型フィットを試みてもまずうまくいかな
sky
い。Tatm と τ0 , Tant , Ga が縮態して分離が難しいからだ (図 2 参照)。そこで、Tatm = 285 K に固定
し、かつ Tant = Tatm (1 − Ga ) と仮定して未知パラメーターを減らし、τ0 と Ga のみを未知パラメー
ターとしてフィットを試みる。例えば R で以下のように与えて τ0 と Ga の最尤値を求める。
fit <- nls(formula = Y ~ (Trx + Thot) / (Trx + b* (Tatm*(1.0 - b)
+ Tatm* (1.0 - exp(-a* secZ)) + Tcmb* exp(-a* secZ))),
start=list(a=0.048, b=0.98), control=list(maxiter = 1000, warnOnly=TRUE))
4
ケーススタディ
120
80
100
Tsys [K]
140
160
図 2 のノミナル値に対して、異なる方法で求めたシステム雑音温度の比較を図 3 に示す。
1
2
3
4
5
Sec Z
∗ お
図 3: 異なる方法で求めたシステム雑音温度の比較。黒と青は 3.3 の非線型フィットで求めた Tsys
∗ 。黒と赤の差は最大で 0.65 K。
よび Tsys 。赤は R–Sky で求めた Tsys
4