酸素療法(pdf) - 徳島人工呼吸セミナー

酸素療法の適応と方法
井澤 眞代
徳島大学病院 救急集中治療部
2014.11.8 第6回徳島人工呼吸ワークショップ
本セッションの目的
• 酸素療法の基本知識を学ぶ
• 各酸素投与システムの特徴を理解して
正しい適応と使用方法を学ぶ
• いろいろな酸素投与器具を体験する
酸素療法とは
• 低酸素症(hypoxia):
末梢組織の酸素欠乏状態
→細胞のエネルギー代謝が障害される
• 低酸素血症(hypoxemia):
動脈血中の酸素欠乏状態
低酸素症に対して吸入気の酸素濃度(FIO2)
を高め,適量の酸素を投与する治療法
酸素療法の目的
1. 組織への酸素供給を改善させる
2. 低酸素血症に伴う症状を軽減する
–呼吸困難や精神症状の改善
3. 心肺への負荷を軽減する
–増加した呼吸仕事量の軽減
–心仕事量の軽減
–肺血管攣縮・肺高血圧の改善,右心負荷の軽減
酸素供給を理解する
① ヘモグロビン酸素解離曲線
② 動脈血酸素含量と酸素運搬
③ 酸素瀑布
① ヘモグロビン酸素解離曲線
酸
素
飽
和
度
%
(
)
酸素分圧(mmHg)
② 動脈血酸素含量と酸素運搬
• CaO2 (oxygen content, ml/dl); 動脈血酸素含量
=Hb(g/dL)×1.39×SaO2 (%)/100+ 0.003×PaO2
• DO2 (oxygen delivery, ml/min); 酸素運搬量
= CaO2 (mL/dL)× CO (L/分) ×10
≒ Hb×1.39 × SaO2/100 × CO ×10
貧血や低心機能を放っておかない!!
③ 酸素瀑布
R(呼吸商) =
単位時間当たりの二酸化炭素排出量
単位時間当たりの酸素消費量
PAO2 = (PB-470) x FiO2 -
PaCO2
酸素投与の適応
1. 室内気でPaO2< 60mmHg あるいはSaO2< 90%
2. 低酸素症が疑われる状態
3. 重症外傷
4. 急性心筋梗塞
5. 短期的治療あるいは外科的処置
酸素療法の目標
• PaO260mmHg以上あるいはSpO290%以上
• 小児,妊婦,病状不安定ではPaO280mmHg
(SpO295%) を目標としてもよい
• 自覚症状,呼吸様式,意識障害,循環動態
などを総合して判断
• 呼吸数25回/分以上では酸素化が維持されて
いても呼吸不全の悪化に注意
酸素投与方法
1. 低流量システム
1回換気量以下の酸素ガスを供給する
1回換気量により吸入酸素濃度も変化する
2. 高流量システム
1回換気量以上の酸素ガスを供給する
設定した濃度の酸素を吸入できる
1回換気量500 mL(=0.5 L), 平均吸気時間1秒とすると,
平均吸気速度は30 L/min.
酸素投与方法
1. 低流量システム
a. 鼻カニュラ
b. 簡易酸素マスク
(c. リザーバー付酸素マスク)
2. 高流量システム
a. ベンチュリーマスク
b. ネブライザー付酸素吸入装置
c. ハイフロー経鼻カニュラ
酸素加湿
• 鼻腔は天然の加温加湿器
• 鼻カニュラでは3 L/分まで,ベンチュリーマス
クでは流量に関係なく酸素濃度40%までは加
湿の必要はない
• むしろ室内の湿度に注意
低流量システム
a. 鼻カニュラ
• 酸素を吸入しながら会話や食事が可能
• 鼻腔粘膜を刺激するため,通常は6 L/分以下
での使用が薦められている
b.簡易酸素マスク
• マスク内に溜まった呼気ガスを再吸入しない
ように酸素流量は5L/分以上にする
c. リザーバー付酸素マスク
• 高濃度酸素吸入(60%以上)に使用する
• CO2蓄積を予防するため,およびリザーバー
バッグ内に十分な酸素を貯めるために,酸素
流量は6L/分以上に設定する
• 長期間の使用には適していない
ベンチュリー効果
Y × P/100 = X + (Y - X) ×0.21
設定酸素濃度ごとに必要最小限の酸素流量が決まっている
高流量システム
a. ベンチュリーマスク
• 24%~50%の酸素を供給する
• 濃度毎にダイリューターが用意されており,
総酸素流量が30 L/分以上になる酸素流量が
記載してある
b. ネブライザー付酸素吸入装置
• 酸素調節ダイヤルのベンチュリー効果で空気
を取り込む
• 十分な加湿が可能
※インスピロンネブライザー®用トータル流量早見表
高流量システムは高流量で!
c. ハイフロー経鼻カニュラ
• 加温加湿した酸素を経鼻的に高流量で流す
酸素療法
• 会話や食事を妨げない
• 低いPEEP効果と,口鼻腔内のCO2 wash out
効果を持つ