APAST STREAM 2014年5月3日(土) 1 ◆日本で今だれが 「原発再稼働は安全である!」 と言っているのか? ◆韓国旅客船沈没事故の意味するもの ~船舶工学から見た事故の背景と技術における安全性~ 2 日本で今だれが「原発再稼働は安全である」 と言っているのか? ◆旧原子力安全保安院 ストレステスト 次評価 ◆旧原子力安全委員会 班目元委員長 1 *ストレステストは2次評価をしなければ意味が無い ◆原子力規制委員会発足 ・・・ ストレステストは曖昧なまま無視 *旧保安院 ⇒ 原子力規制庁 *新規制基準を策定 ・・・福島事故原因の未解明 *過酷事故のはっきりしない現象はそのまま放置 ◆原子力規制委員会 「日本の規制基準は世界最高水準」? *田中委員長「これまでの基準は、世界レベルから見て不十分だったと 考えており、事故の教訓を踏まえ、最も高いレベルの安全規制を目指す」 *新規制基準への適合性を判断するが安全だとは言っていない! ◆安倍首相 *「原子力規制委員会が安全と認めた原発から稼働」 【だれが安全だと言っているのか?だれも安全とは言っていない原発が何故再稼働?】 3 ◆福島事故を受けて、「原発は絶対安全」から「絶対安 全はない」と方針変換した。 ◆すべての技術は絶対安全など不可能。「原発だって 絶対安全はないよネ」 ◆今までは安全を重視してこなかったが、これからは 安全確保を第一に、不断の安全の追求をすべき。 ◆こうした努力により世界最高水準の安全性を確保 福島事故の概要が分かれば分かるほど原発 の安全確保が困難であることが見えてくる! 【安全神話の再構築を許してはいけない】 4 韓国旅客船SEWOL号沈没 船籍: 日本 (1994 - 2012) 韓国 (2013 - 2014 2014年4月16日 11時20分頃 韓国珍島沖で沈没 乗員乗客 476人(生存者174人、死者212人、行方不明者90人) 4月30日時点 総トン数 6,586トン (1994 - 2012) 6,825トン (2013 - 2014) 全長 146.61 m 全幅22.2 m 全高14.0 m 吃水6.26 m 船速 21.5ノット (時速39.8km) 5 韓国旅客船沈没事故の意味するもの ~船舶工学から見た事故の背景と技術における安全性~ ◆この事故の悲惨さに元船舶設計技術者として衝撃 ◆技術の基本がなっていない⇒設計から運行、検査、海難救助 ◆だれも率先して動こうとしない。基本的な認識がなく、組織も緊 急時対応が全く想定されていない。 ◆そもそも「船は一定以上傾けば沈む」という常識がない!専門 家はどこにいるのか?韓国は世界1の造船王国になったのでは? ◆市民が基本的な知識を持っていれば、「転覆しつつある船の中 に留まることなどあり得ない」 6 時間的余裕があった 日午前 時 分 急旋回 船体傾斜 同 時 分 緊急連絡 以降 管制センターと要領を得ない やりとりが続く 同 時 分 「 度以上傾斜」 「逃げられない」 同 時半近くまで無駄なやりとり 同 時 ~ 分 度位左舷に傾斜 同 時 分頃 沈没 16 8 8 55 9 17 49 50 9 9 11 37 38 20 少なくとも 時半から 時頃までに脱出 できた可能性が高い! (事故でこういう言い方は嫌だが・・・) 9 毎日新聞 年月 日 2014 4 18 60 11 7 毎日新聞 年月 日 2014 4 18 8 9 毎日新聞 2014年4月18日 10 毎日新聞 2014年4月18日 11 重心の上昇 ◆船体重量 5926t⇒6113t (103%) 重心高さ11.27m⇒11.78m(51cm上昇 (104.5%) ◆乗客乗員 804名⇒921名(117名増) (109.6%) ◆旅客・貨物総重量 6586t⇒6825t(103.6%) ◆貨物の最大積載量 3981t⇒3794t(95.3%) ◆復原性維持 ・・・旅客 88t⇒83t 貨物 2437t⇒987t 1説には船体重量 が800 増えていた (産経4月30日) t バラスト水 1023t⇒2030t ⇒実際には貨物 3608t 搭載 987tの約3.7倍 12 傾いた船を元に戻す偶力 復原モーメント(偶力)M=排水量△×復原梃GZ △×復原梃GZ 復原梃GZ 重力 浮力 重力=浮力 (排水量:△) 水面下の体積の水の重さ 重力 吃水d 浮力 水面が船の肩の部分を超えると一気に 復原力がなくなる!⇒復原力消失角 13 重心 がメタセンタ より 高くなると転覆する! G 重心G メタセンタ M 重心 がメタセンタ より 低いと転覆しない! M G 重力 復原梃GZ<0 復原梃GZ>0 重心G 重力 メタセンタ M 浮力 浮力 浮心B M 浮心B 復原梃GZ = GM SINθ 重心が高いと何もしなくても不安定になり転覆する 14 船を傾けるのに必要な仕事量 転倒モーメント(偶力)M=水平方向風荷重Fw×風力中心距離h 風力 Fw h 風力 Fw 傾斜角θ 傾斜角θ h 抵抗力 抵抗力 風力以外でも、傾く要因はある! 急旋回 / 水平方向への荷物の移動 /波による揺れ /浸水 など 15 船の転覆要因の推定 1.重心が高すぎる・・・過積載/改装 2.積荷が崩れて移動する(船の揺れや旋回時) 3.急旋回?通常あり得ない!(積荷が崩れると・・・) 4.衝突・浸水など 5.船底のタンクの燃料が消費され重心が上がった 6.船底に近いバラスト水を誤って上部のタンクへ移送 し重心が上がって60度傾斜 ⇒ 2006年太平洋で自 動車運搬船(自動車4800台)が事故 7.嵐等(ブローチング:追い波中で不安定に!) 16 船が損傷していない場合の復原力曲線 (風・波浪を特定しない)厳しく規定 θ ° max>25 ← 角度θuまで傾ける 復原 のに必要な仕事量 梃 面積(A1+A2) >0.09m・rad GZmax>0.2m G0M>0.15m メタセンタ 重心 重力 浮力 浮心が移動 船の傾斜角⇒ 船の傾斜角⇒ 17 船が損傷していない場合の復原力曲線 ~風や波浪による揺れを考慮した場合~ 横揺れと突風により船を傾けるのに必要な仕事量 <復原力による海水流入まで( °以下)の仕事量 50 突風の傾斜偶力梃 定常風の傾斜偶力梃 海水流入角または50°の小さい方 18 実際の船の復原力曲線 19 年 月 日朝日新聞 2006 8 13 船底のバラストタンクの排水により 重心が上がり過ぎて大傾斜した 20 復原梃と横揺周期 ◆復原性を確保する⇒重心を下げる ◆重心が下がるとGMが大きくなり転覆しにくく なる が、横揺れ周期が短くなり乗り心地が悪くなる。 ◆客船は、復原性と乗り心地の両者を満足するよう 適度なGM値(復原性)にする。 『転覆しにくさと乗り心地は相反する!』 ◆船の横揺れ周期 T(秒) ∝ √(GM) 船の周期を測れば、計算でその積荷の状態での GM値(復原性)が求まる。 21 米国より技術導入したジャッキアップ型リグ 三井海洋開発提供 22 曳航中のジャッキアップリグ このようなリグ(石油の掘削 太平洋を曳航中に嵐で 船)を太平洋を横断中に荒 天下で 沈没した 度以上の揺れに より、損傷し浸水し沈没した ことがある。 15 ジャッキアプリグは重心が高 く曳航中に嵐に会うと、大き く揺れて、 数十 ある脚 (レグ)の支持構造が壊れる。 100 m 三井海洋開発提供 23 この事故は 年代になってからだ が、 年代前半に大規模なリグの 沈没事故、火災事故が連続して起 こった。 2000 1980 沈没する大型半潜水(セミサブ)型リグ 24 損傷時復原力特性 (Damage Stability Curve) 復元モーメント (t・m)) Residual Damage Stability Requirements for Column Stabilized Units (ABS MODU CODE*1より) 損傷時復元力曲線(GZカーブ) 損傷時復元力曲線(GZカーブ) Minimum range 7 ・ 注)*1:American Bureau of shipping 傾斜角度α(度) (度) Rules for Building and Classing Mobile Offshore Drilling Units For Damage Condition L ° α1 Fw=25.8m/sec(50kn) 風荷重Fw 風力転倒モーメント (Fw・L) ・ α1 動水圧力 係留力も考慮 損傷仮定範囲:①コラム外面垂直方向3m(喫水上方5m~ 喫水下方3m の任意の位置)。水平水密隔壁の損傷仮定。 ②コラム水平方向 1.5mの損傷仮定 ③ロワーハル or フーチングの損傷仮定(軽荷時/移動時) 25 フェリー「ありあけ」転覆事故 年 月フェリー「ありあけ」が三重県沖で転覆。 風速 、波高 、波周期 秒の強い追い波の状況下で、 ト ンの貨物を積み ノットで航行中 日午前 時 分頃、熊野灘にて左舷後 方から瞬間的に強い波を受け、右舷側に 度傾斜が発生し、船体が左に 急旋回、その後一旦 度まで傾斜した後に、 度から 度程度の傾斜で 推移した。一時は傾斜が 度程度まで回復したが、徐々に傾斜が急になっ た。乗客 人、乗員 人は海上保安庁により全員救助されたが、船体は沖 合の浅瀬で座礁し、約 度傾き横転した。 2009 11 15.3m/s 4.59m 21 10 13 2400 5 40 25 45 30 35 25 7 22 90 ウィキペディヤ「マルエーフェリー」より 26 「沖の鳥島」で転覆 事故3月 日 浮体方式の桟橋 30 M G 5.75m 5m 転覆の要因(可能性) ①風(毎秒5m)、波(0.8m)・・・問題なし ②曳航力・・・問題なし(下部をけん引) ③浸水の可能性・・・あり得る ④桟橋内の遊動水の影響 ・・・あり得るが、区画を細かく区切っ てあれば問題ない。 ⑤下ろす時、慣性力で肩の所を水面が 切ると危ないが・・・・。 K B GM = 5.75m > 0 m ひっくりかえらない!! (排水量 1180トン、喫水 1.9m KB=0.95m、 I=20,000m BM=16.5m、 KG=11.7m) 20 m 4 1.9m 事故の教訓 ◆造船大国で船舶の運航システムや救難システムが 全く機能していなかった ◆大規模な事故は、その技術の基本的な特性に関係 することが多い・・・復原性の不足 ◆船舶運航会社、船級協会、船舶の専門家、 海上保 安庁、関係官庁、マスメディア、政府、市民を巻き込ん だ社会的・構造的問題でもある ◆すべての関係者がそれぞれの責任を全うし得る仕組 ◆他方、中国は高速鉄道事故で事故車両を埋め、事 故の被害状況を隠蔽。今回の韓国旅客船事故と類似 28 日本はどうか? 船舶事故に対する取り組みはそれなりにできてきている。 福島第一原発事故の時の対応はどうであったか?東電、 原発メーカー、保安院、安全委員会、政府マスコミ対応は どうであったか?韓国や中国を非難できない! 原発事故は日本、中国、韓国どこでも起こる! 大規模な事故は、技術レベルと事故の規模、国と関係機 関の在り方によって危機対応が変わってくるが、船舶事 故でこのような状況になり得るということは、原発事故で は計り知れない状況になる! 原発事故の防止はできると本気で考えているのか? 30
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