ノイロトロピンは、セロトニン神経の活性化及び BDNF との相互作用により、痛覚- 情動系機能障害を改善することが、神経障害性疼痛モデルラットで示されました。 -2014 年 6 月 21 日、第 36 回 日本疼痛学会にて発表- 国立大学法人山口大学大学院 医薬系研究科 高次神経情報科学の石川敏三教授 らの研究グループにより、慢性疼痛及びそれに伴う気分障害(うつ様症状)に対する ノイロトロピンの改善効果とその作用機序が示されました。 本内容の要旨は、第 36 回日本疼痛学会で発表されました。 本研究の一部は、日本臓器製薬の援助を受けて行われたものです。 神経栄養因子 B11-4 ノイロトロピンⓇの痛覚-情動系機能障害改善効果:脳由来神経栄養因子(BDNF)誘 導作用 石川敏三 1、安田聖子 1、石川浩三 1、藤村博和 1、井田唯香 1、岩永泰武 1、吉田充宏 1,2 1 山口大学大学院 医学系研究科 高次神経情報科学 2 九州歯科大学 生体機能学講座 歯科侵襲制御学分野 ノイロトロピンⓇ(NTP)は NA 及び 5-HT 神経を活性化する疼痛治療薬であるが、 気分障害及びその作用機構への影響は未だ不明である。そこで NTP の慢性疼痛及び うつ様症状への影響と、痛覚-情動系シグナル-BDNF 産生機能変調の解析を行い、 プレガバリン(PG)との差違の点から検討した。 SD ラットの左坐骨神経を慢性絞扼(CCI)し、7 日目より NTP(50,100 NU/kg)あ るいは PG(10 mg/kg)を連投(p.o.)した。疼痛は後肢の熱刺激に対する反応潜時(PWL) を、うつ様症状は、不動時間延長(強制水泳法)を測定した。Anti-BDNF、K252a(TrkB 阻害)、DHT(5-HT 阻害)icv.による修飾作用と共に分子機構を調べた(前帯状回 ACC、 脳幹 RVM:pERK1/2 免疫活性、5-HT/BDNF 含量(ELISA)、BDNF mRNA 発現量 (RT-PCR)を測定)。 NTP は CCI 後の PWL 低下と不動時間延長を用量依存的に抑制しその効果は DHT、 anti-BDNF、K252a で拮抗された。更に ACC 及び RVM で pERK1/2 の過剰な増加を抑 制し、5-HT、BDNF 含量及び BDNF mRNA 発現の低下を軽減した。PG は鎮痛効果の みで BDNF 産生にも影響しなかった。 NTP は 5-HT 神経の活性化及び BDNF との相互作用により痛覚-情動系機能障害を 改善し、PG との作用機序の違いが明らかとなった。 CCI後の痛覚過敏 # P<0.05 vs. CCI A B 秒 秒 0 CCI n=10 ノイロトロピン NU/kg n=5 50 100 50 -0.5 後肢反応潜時 ノイロトロピン 100NU/kg ノイロトロピン 50NU/kg 後肢反応潜時 偽手術 -1 -1.5 # -2 -2.5 # -3 CCI -3.5 -4 ノイロトロピン(経口投与) -4.5 -5 CCI後の日数 鎮痛効果への5-HTおよびBDNFの関与 秒 偽手術 n=15 CCI n=25 ノイロトロピン 100NU/kg n=7 ノイロトロピン 100NU/kg n=6 プレガバリン 10mg/kg n=6 単独 +DHT 単独 +k252a 単独 +k252a 後肢反応潜時 # # # NS * P<0.05 P<0.05 * P<0.05 vs. 偽手術 # P<0.05 vs. CCI CCI後のうつの指標である不動時間 秒 40 * P<0.05 vs. 偽手術 # P<0.05 vs. CCI * * 35 不動時間 30 # 25 20 15 10 5 0 Sham 偽手術 n=10 UT CCI n=10 50 100 ノイロトロピンNU/kg n=5 抗うつ効果への5-HTおよびBDNFの関与 * P<0.05 vs. 偽手術 # P<0.05 vs. CCI 秒 P<0.05 P<0.05 NS * 不動時間 * * # 偽手術 n=15 CCI n=25 単独 +DHT ノイロトロピン 100NU/kg n=5 # 単独 +k252a 単独 +k252a ノイロトロピン 100NU/kg n=6 プレガバリン 10mg/kg n=6 局所脳pERK1/2活性 前帯状回 大縫線核 * P<0.05 vs. 偽手術 # P<0.05 vs. CCI pERK1/2 陽性細胞数 pERK1/2 陽性細胞数 * * # # 偽手術 n=14 CCI n=14 ノイロトロピン 100NU/kg n=9 偽手術 n=9 CCI n=13 ノイロトロピン 100NU/kg n=7 局所脳pCREB活性 前帯状回 大縫線核 pCREB 陽性細胞数 * P<0.05 vs. 偽手術 # P<0.05 vs. CCI pCREB 陽性細胞数 # # * * 偽手術 n=12 CCI ノイロトロピン n=16 100NU/kg n=9 偽手術 n=8 CCI n=11 ノイロトロピン 100NU/kg n=5 CCI後のBDNF含量の変化 * P<0.05 vs. 偽手術 # P<0.05 vs. CCI 前帯状回 大縫線核 pg/mg pg/mg NS P<0.05 P<0.05 NS # BDNF含量 BDNF含量 * 偽手術 CCI n=8 n=7 単独 +DHT 単独 +k252a n=6 n=5 n=8 n=6 * 偽手術 CCI n=7 n=6 ノイロトロピン プレガバリン 100NU/kg 10mg/kg 単独 n=6 +DHT 単独 +k252a n=5 n=8 n=6 ノイロトロピン プレガバリン 100NU/kg 10mg/kg 局所脳BDNF mRNA発現 * P<0.05 vs. 偽手術 前帯状回 大縫線核 P<0.05 P<0.05 BDNF β/ ア‐クチン メッセンジャーRNAの比 BDNF β/ ア‐クチン メッセンジャーRNAの比 * 偽手術 n=5 CCI n=4 ノイロトロピン 100 NU/kg n=4 * 偽手術 n=7 CCI CCI n=8 ノイロトロピン 100 NU/kg n=10
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