28SI-am12 縫線核セロトニン神経含有中脳冠状切片における SSRI 持続処置によるセロトニ ン遊離増強現象のメカニズム ◯中川 貴之 1 , 永安 一樹 1, 八谷 有美 1, 北市 麻衣子 1 , 白川 久志 1 , 金子 周司 1 ( 1 京大院薬) 【目的】選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、セロトニントランスポ ーター(SERT)を阻害して、シナプス間隙のセロトニン(5-HT)濃度を上昇させ るが、抗うつ作用の発現には数週間以上の投与が必要になるなど、その作用機序 に関しては不明な点も多い。本研究では、縫線核 5-HT神経含有中脳切片培養系を 用いて、SSRI持続処置による 5-HT遊離に対する影響とそのメカニズムをin vitro で評価した。 【方法】ラット新生児より縫線核を含有する厚さ 350μmの中脳冠状切 片を作製し、多孔質膜上 14-16 日間培養した。培養切片を、薬物を含有する Krebs-Ringer緩衝液中で 30 分間インキュベーションし、遊離された 5-HT量をHPLC により測定した。 【結果】本切片に対して、citalopram、paroxetine、fluoxetine (0.1-10μM)を 30 分間処置すると、僅かながら細胞外 5-HT量の増加が認められ た。さらに、これらのSSRIを 4 日間持続処置したところ、SSRIの細胞外 5-HT量増 加作用は、時間依存的に顕著に増強された。一方、5-HT含有量、TPH発現量/リン 酸化、SERT細胞膜発現量に変化は見られなかった。また、citalopram持続処置に より、5-HT 1B 受容体の脱感作が惹起されたが、5-HT 1A 受容体は機能を保持しており、 また両者とも 5-HT遊離増強現象の形成には寄与していなかった。一方、5-HT遊離 増強現象は、NMDA受容体拮抗薬MK-801 では影響を受けなかったが、AMPA/kainate 受容体拮抗薬CNQXにより阻害された。 【考察】SSRIの持続処置は、SERT阻害による 細胞外 5-HT濃度上昇だけでなく、シナプス開口放出を介した 5-HT遊離を増強させ ることが示唆される。また、その形成には、5-HT合成/取り込み系の変化、5-HT 1 自己受容体脱感作による 5-HT神経の脱抑制は関与せず、AMPA/kainate受容体を介 した 5-HT神経活動の亢進が寄与すると考えられる。
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