化学Ⅱ 第14章 カルボニル化合物と求核付加反応 1.求核付加反応のメカニズム 1.1. カルボニル化合物の性質 1.2. 水和物、アセタール形成反応 1.3. 有機金属反応剤-炭素-炭素結合形成反応 1.4. グリニヤル反応(Grignard reaction) 2.エノラートイオンとアルドール縮合 2.1. ケト-エノール互変異性 2.2. エノラートイオン 2.3. アルドール反応 2.4. 交差アルドール反応 2.5. 分子内アルドール反応 1.1. カルボニル化合物の性質 カルボニル基の特徴1 C カルボニル炭素は 求核攻撃を受ける H O ル ア デ ヒド C C O ン ケト (炭素の残りの結合は省略してある) O 共鳴効果により、炭素は正電 荷に偏っている。 O + H O OH OH 酸性条件では酸素原子の非共有電子対がH+を捉える ため、さらに炭素は正電荷に偏る 1.2. 水和物、アセタール形成反応 カルボニル基へのアルコールの求核付加反応 O RO ROH + H H OH OH OH OR ヘミアセタール + H OR OH2 OR ROH H OR OR OR OR アセタール カルボニル基を過剰のアルコールと酸性条件にすると、求核付加反 応が進行する。二分子のアルコールが付加した構造はアセタールと 呼ばれる生。 1.2. 水和物、アセタール形成反応 環状アセタール形成反応と糖の鎖状/環状構造 O H H OH HO H H OH H OH HO HO HO + H OH H HO HO HO HO OH H HO O OH CH2OH HO HO HO O HO OH HO H HO HO O HO OH • 糖は分子内に、カルボニル基(アルデヒド基)と水酸基を持つ。 • 分子内反応は、分子間反応よりも進行しやすい。 • 糖は環状のヘミアセタール構造と鎖状構造の平衡状態にある。 1.3. 有機金属反応剤-炭素-炭素結合形成反応 カルボニル基への求核付加による炭素-炭素結合形成反応 炭素原子はそのままでは求核剤として働かないため、炭素-炭 素結合の形成には工夫が必要。 求核剤として働く有機金属反応剤 C Li C MgBr C ZnBr 電気陰性度 C: 2.55 Li: 0.98 Mg: 1.31 Zn: 1.65 グリニヤル(Grignard)試薬の調製 R3C Br Mg R3C MgBr Grignard試薬 R3C MgBr 1.4. グリニヤル反応(Grignard reaction) Grignard反応 グリニヤル試薬を利用した有機人名反応 R3C MgBr H2O R3C O OH カルボニル基(アルデヒド基)とGrignard試薬を反応させると求核 付加反応が進行して炭素-炭素結合を形成する 反応機構 R3C O MgBr H2O R3C O MgBr R3C OH 反応は水の無い条件で行いMgBrの塩が生成する。これに水を加えて、生成物であ るアルコールが得られる。 2.1. ケト-エノール互変異性 2.2. エノラートイオン カルボニル基の特徴2 O ケト型 OH エノール型 ケト-エノール互変異性 カルボニル基の隣の炭素(α位)に水素がある場合、エノール型 と呼ばれる異性体との平衡が存在する(ケト型のほうが安定) エノラートイオン エノラートイオン H B - + H O +H+ +H+ O 共 鳴構 造 O - + H OH 式 ケト-エノール後変異性のため、カルボニル基のα位の水素は塩基 によって引き抜かれ、求核性を持つカルボアニオンが生成する 2.3. アルドール反応 エノラートイオンとカルボニル基の反応(アルドール縮合) H H H Base CH2 H CH2 O O O H H CH2 CH3 H CH3 H H O H H OH Base O H CH3 H O H H O O H Base(塩基)としては NaH, NaOH, NaOMe などがある。 CH2 Base H CH3 O H ① アセトアルデヒドに塩基を加えるとエノラートイオンが発生する ② エノラートイオンは残っているアセトアルデヒドと反応する ③ 生成したアルコールは脱水反応がさらに進行する 化学Ⅱ 第15章 カルボン酸と誘導体 1.カルボン酸誘導体の性質と相互変換 1.1. カルボン酸と酸性度 1.2. カルボン酸誘導体 1.3. エステルの合成と加水分解 1.4. アミド 1.5. 酸ハロゲン化物によるエステル及びアミドの合成 2.エステルエノラートイオンの反応 2.1. クライゼン縮合反応 2.2. β-ケトエステルのアルキル化と脱炭酸 2.3. アセト酢酸エステル合成とマロン酸エステル合成 1.2. カルボン酸誘導体 色々なカルボン酸誘導体 C C O C H N Cl C C O 酸クロリド O ル エ ステ H O ル ン カ ボ 酸 O ロ ン (酸ハ ゲ 化物) R O ミ ア ド 安定な誘導体 C O C O O 酸無水物 活性化された 誘導体 • カルボニル炭素の隣にそれぞれ異なる置換基が結合している が、加水分解すればどの化合物もカルボン酸に変換される • カルボン酸誘導体ではカルボニル基部分の求核攻撃に対す る反応性が異なる 1.カルボン酸誘導体の性質と相互変換 カルボン酸と誘導体の性質 1.H+を放出する酸である R OH R O + O H O 2.ヒドロキシ基部分(通常は O- の形)は求核性を有する R O Me R I O Me + I O O 3.求核攻撃を受ける(カルボニル基) Nu Nu X R + X R O Nu R O O カルボン酸はヒドロキシ基(アルコール)とカルボニル基(ケトン、ア ルデヒド)両方の性質を有している 1.1. カルボン酸と酸性度 カルボン酸の構造と酸の強さ R1 R2 R1 OH R2 C + C O R3 O R3 H O 酸の強さ=H+の放出量 H+の放出量は、アニオン(R-COO-)の安定性できまる H Cl OH C Cl O > H Cl OH C H O > H H OH C H O > H H3C OH C H O 1. 置換基が電子を引き付ける力が強いほど電荷が分子全体に分 散してアニオンは安定化するので、強い酸になる 2. 置換基が電子供与性だとアニオンが不安定化して弱い酸になる。 1.3. エステルの合成と加水分解 カルボン酸への求核攻撃: 酸性条件下でのエステル合成と加水分解反応 (Fischerエステル合成反応) O H3C O H HO HO CH3 H3C CH3 O H H3C OH H3C H2O O ル エ ステ CH3 - + H OH OH CH3 OH2 O C + H2O, H H OH OH H OH O 酢酸 O H3C H + ROH, H O ル ン カ ボ 酸 エステル =アルコールと縮合したカルボン酸 H3C O C O OH - + H CH3 H3C O CH3 O • 酸性条件下(H2SO4, HCl等)でカルボン酸とアルコールを混 ぜるとエステルが生成し、エステルと水を混ぜると加水分解 が起こる。 R 1.3. エステルの合成と加水分解 カルボン酸の求核性:塩基性条件下でのエステル合成 H3C O H × ROH, HO O 酢酸 H3C O R O ル エ ステ H3C O - H HO H3C O カルボン酸とアルコールの 反応は塩基性条件では進 行しない O × H3C O O OR O 塩基性条件ではカルボン酸がアニオンになる ⇒求核攻撃に対する反応性が低下 求核攻撃してくるアルコールもアニオン ⇒静電的反発 反応しない • 置換反応を利用すると塩基性条件でエステルを合成できる H3C O O H K2CO3 H3C O O Me I H3C O O Me 1.3. エステルの合成と加水分解 塩基性条件下でのエステル加水分解 O C - R H2O, HO O ル エ ステ H3C O O CH3 H3C H3C O O O H O ル ン酸 カ ボ OH OH C CH3 OH O H3C O O 塩基性条件下でのエステル加水分解反応では • HO-が求核剤として作用する • 中間体からアルコール部分が脱離することでカルボン酸 が生成する ここまでは平衡反応だが • 生成したカルボン酸は塩基性条件下でアニオンになる ⇒再度アルコールの攻撃を受けないので実質不可逆反応 1.4. アミド カルボン酸誘導体:アミドの性質 C O H O ル ン カ ボ 酸 H N C RNH2 O ミ ア ド H2O R アミド =アミンと縮合したカルボン酸 アミドとエステルの違い H C O O ル エ ステ O C C C O 電気陰性度 酸素:3.44 N C H R N C C O O ミ ア ド 窒素:3.04 • 同じ共鳴構造式は書けても、窒素原子の方が電子を与えや すいので、カルボニル炭素が求核攻撃を受けにくい。 • アミド構造はエステルに比べて安定で反応性が低い • 水が多量に存在する生体内でタンパク質が安定に存在でき る理由 1.5. 酸ハロゲン化物によるエステル及びアミドの合成 O C RNH2 H O ル ン酸 カ ボ H N C R O ミ ア ド H2O アミドの合成:アミンとカルボン酸からはつくりにくい O C 中性条件 H + O 酸性条件 H + 塩基性条件 O + N H R + - N H N R OH H + H N H + O R H O C R H O H H O C H H O H O O C R H O C N H O C H H N R H 中性では塩、酸性ではアミンの求核性低下、塩基性ではカルボン 酸の反応性が低下 1.5. 酸ハロゲン化物によるエステル及びアミドの合成 活性化されたカルボン酸誘導体 X C O 活性化された カルボン酸誘導体 Cl C O 酸クロリ ド ロ ン (酸ハ ゲ 化物) O C C O O 酸無水物 置換反応で放出されるアニオン Cl O C O 安定なアニオンが遊離 活性化されたカルボン酸誘導体 1. 電子吸引性の構造 = カルボニル基の活性化 2. 求核攻撃により遊離するアニオンが安定な構造 ⇒ 求核攻撃による反応を起こしやすい誘導体 1.5. 酸ハロゲン化物によるエステル及びアミドの合成 活性化されたカルボン酸誘導体によるアミドの合成 H X C + O C N H N R R + X H O ミ ア ド H 置換反応により簡単にアミドが合成できる H3C Cl H2N R H3C O R + H R H2 N H3C Cl O H N H3C H2N R Cl O Cl O • 反応は、中性から塩基性条件で進行する。 • 生成物として酸が発生するため、反応を完全に進行させる ためには塩基を加えて中和する必要がある • 同じ反応はアルコールでも進行する(エステルの合成) 生体内での活性化されたカルボン酸誘導体 NH2 O O S O N H N H N O O OH OH CH3 P O OH P O O HO アセチルCoA HO P O N N N OH O 脂肪酸合成初期段階 S O S O CoA HS-ACP S O ACP O ACP S O O O ACP
© Copyright 2024