4年半前の予想がずばり的中 GFがIBMの工場を買収

EJ14年12月号-P.021 2014.12.9 10:32 AM ページ 21
Perspective
4年半前の予想がずばり的中
GFがIBMの工場を買収
ECSフェロー
服部 毅(本誌編集顧問)
→
●IBMが15億ドル付けて半導体工場をGFに譲渡
生産量を増やすことに注力し
なければトップ集団に留まれな
米Globalfoundries(GF)が、米IBMの半導体工場
い状況である。
を買収することで両社が合意したと10月20日に発
今回の合意で注目すべき点は、IBMが30億ドル
表した。IBMは自社の半導体工場に加えて他社に
を投じて半導体のプロセスデバイス開発を自社内
対するファンドリー事業も譲渡し、全ての半導体
で継続する点だ。IBMとGFは一心同体の、いわば
製造事業から撤退する。IBMは、事業の主軸をハ
ードウェアからソフトウェアやサービスに移すた 「仮想IDM」2)として未来を切り開こうとしている
ように見える。
め、これまでHDD、PC、x86サーバなどの事業を
ところで、今年は半導体トップ20社のうち9社が
次々売却してきた。半導体事業の売却も既定路線
2桁成長を遂げた。とりわけ、台湾勢の躍進が目立
だったと言える。実際、筆者は4年半前に、GFの
IBM半導体工場の買収を本欄で予測していた 1)。 つ。グローバルに見渡せば、半導体は夢のある成
2010年の記事で筆者が指摘したのは以下の点だ。
長産業だ。明確なビジョンと戦略を持つ企業だけ
①GFは半導体製造、IBMは次世代半導体プロセ
が生き残り、2桁成長を続けられるだろう。
スの研究開発に徹して、業務を明確に棲み分ける
ことが両社のWin-Win戦略となるだろう。
参考文献
②(執筆時に)最新鋭工場Fab8をニューヨーク
1)服部毅:「文字通りグローバルなファンドリー、IBM
州に建設中のGFにとって、老朽化しつつあるIBM
の半導体工場も買収か? 」Electronic Journal(2010.7)
の工場は魅力に欠けるが、米AMD、IBM両社の先
p.15
進的MPUを製造できれば鬼に金棒であり、さらに
2)服部毅:「ファブレス/ファンドリーに水平分業すれ IBMファンドリービジネスの顧客も譲り受けられ
ば成功すると考えるのは早計だ」日経BP 半導体リサ
るのは魅力だろう。
ーチWebsite(2014.6.9)
これらの点は、今回の合意にも当てはまる。そ
表1 2014年世界半導体売上高ランキング予測
れにもかかわらず、実現までこれほど時間がかか
2014年 順位変動
企業名
売上高
前年比(%)
ったのは、価格交渉で折り合えなかったからだ。
米Intel
1
51,368
6
韓国Samsung Electronics
2
37,259
8
2010年当時、IBMは20億ドル以上の対価を得て、工
Taiwan Semiconductor Manufacturing注1
3
25,088
26
場売却の交渉を始めていた。それから約5年の歳月
米Qualcomm注2
4
19,100
11
が流れ、IBMの半導体事業は縮小の一途で不採算
米Micron Technology+エルピーダメモリ
5
16,614
16
に陥り、逆に対価(15億ドル)を支払ってまでし
韓国SK Hynix
6
15,838
22
米Texas Instruments
7
12,179
6
て事業を譲渡するほどの窮地に陥ってしまった。
東芝
2
10
伊仏STMicroelectronics
7,374
-8
11
ルネサス エレクトロニクス
7,372
-8
12
台湾MediaTek+台湾Mstar注2
7,142
25
13
→
独Infineon Technologies
6,151
17
→
→
蘭NXP Semiconductors
5,625
17
米AMD注2
5,512
4
ソニー
5,192
10
米Avago Technologies+米LSI注2
5,087
2
→
米Freescale Semiconductor
4,548
14
→
-6
8,360
台湾United Microelectronics注1
4,300
9
→
11,216
米Broadcom注2
→
→
米NVIDIA注2
2,437
9
259,562
9
14
15
16
17
18
19
20
→
9
→
→
●微細化・高性能化で遅れたGFの復活なるか
最近、米国の半導体市場調査会社IC Insightsから
2014年の世界半導体売上高ランキングトップ20
(2014年第3四半期までの実績値に基づく予測)が
発表された(表1)。それによると、一昨年、昨年
とも17位だったGFは、今年はランク外に消えてし
まった。28nm以降の微細化・高性能化でTaiwan
Semiconductor Manufacturingに後れをとった影響が
数字にもはっきり表れており、韓国Samsung Electronicsから14nmプロセス技術の供与を受け、IBM
からは技術支援とサーバ用チップの注文を受けて
→
8
売上高合計
注1:ファンドリー
注2:ファブレス
売上高の単位は100万ドル
出所:IC Insights
Electronic Journal 2014年12月号
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