EJ14年6月号-P.017 2014.6.12 5:50 PM ページ 17 Perspective 日本の半導体シェアは低下の一途 ECは倍増のシェア20%を目指す ECSフェロー 服部 毅(本誌編集顧問) ●日本勢の半導体シェア1桁は時間の問題 日本の半導体産業を取り巻く環境が厳しさを増 す中、半導体産業を復権し国際競争力を向上させ るため、業界のシンクタンクとも言える半導体産 業研究所(SIRIJ)が誕生して、今春でちょうど20 年が経過した。 この間、1980年末に世界半導体市場で5割を超え ていた日本勢のシェアは、2013年には11.7%1)にま でほぼ単調に減少し続けている。米国勢はObama 政権の製造重視戦略が奏功し、シェア5割を回復し、 日本を除くアジア勢も上昇の一途だ。欧州委員会 (EC)は2020年までに欧州の半導体シェアを20%へ 倍増させると宣言して、 “半導体のエアバス化作戦” を展開し始めている 2)。日本の半導体メーカーは、 ファブライト(技術陳腐化で、いずれ閉鎖かレタ ス工場か? )やファブレス(卓越した商品企画力や マーケティング力なき単なるデザインハウス? )化 を急いでいるから、日本勢のシェアが1桁台へ低下 するのはもはや時間の問題だろう。ファブレスに なれば生き残れるなどというのは幻想だ。 ●SIRIJが創立20周年記念シンポジウム開催 そんな中、SIRIJは創立20周年記念シンポジウム を4月に東京イイノホールで開催した。SIRIJのWeb サイト情報によると、参加者は主催者が選んだ約 300名の招待者のみということだ。一般人だけでは なく、プレス関係者もシャットアウトされたため その様子は報道されず、参加者はブログに何も書 き込まない。この催しで、産業復権策が真摯に議 論されたのか、それとも歯の浮いた祝辞のような 話ばかりだったのかはわからない。招待客だけの 仲良しクラブ的な会合では、議論が沸騰すること などなかったのではなかろうか。 SIRIJは、業界コンソーシアムとしてまず半導体 先端テクノロジーズ(Selete)と半導体理工学研究 センター(STARC)を設立した。その後、経済産 業省肝入りの超先端電子技術開発機構(ASET)の 設立を支援し、以降、次々と半導体共同研究プロ ジェクトを立ち上げていった。しかし、その数が 増えれば増えるほど、日本の半導体シェアは低下 していったのは周知の事実である。 筑波大学ビジネススクール の大学院生が、筑波で展開され てきた様々な半導体共同プロジェクトによる協業 の意義について修士論文にまとめるため、国内半 導体メーカー各社の管理職や技術職の人々にアン ケートを実施したところ、寄せられた回答は、プ ロジェクトの意義や成果について極めて批判的な ものばかりで唖然としたそうだ。その学生は、筆 者にレポートのまとめ方について助けを求めてき たので、ベルギーimecなど、成功している海外の コンソーシアムとの差異を比較分析するようにア ドバイスした。そして、件の学生は半導体研究協 業の問題点と提言をまとめて今春卒業に漕ぎ着け たが、半導体産業で働く気にはなれなかったよう だ。 SIRIJでは、さらに新たな半導体プロジェクトを 画策していると噂されているが、冷徹に現実を直 視することなく屋上屋を架すことのないように祈 るばかりだ。 ●imecは創立30周年記念シンポジウムを開催 imecは今年創立30周年を迎えた。SIRIJよりも10 年前の1984年に、ベルギーの片田舎にフランダー ス政府の支援で、同地方の6つの大学の共同利用施 設(Inter-university Micro-Electronics Center:imec) として誕生した。今や、世界最先端の半導体・エ レクトロニクス研究機関として、研究費の8割以上 を研究協業先企業からの収入で賄っている。 そんなimecが創立30周年記念シンポジウムを6月 初旬に首都Brusselsで開催した。事前登録すれば誰 でも参加できたため、世界中から1000人近くが詰 めかけた。冒頭に、米Qualcomm会長はじめ世界の リーディング企業のトップらによる招待講演が行 われ、その後、①ヘルスケア、②先端半導体、③ 再生可能エネルギー、④スマートモバイル・シス テムの4つの重点分野で、最近の成果が披露され、 将来展望が熱く語られた。 参考文献 1)半導体産業新聞(2014.4.23) 2)服部毅:Electronic Journal(2012.10)pp.56-57 Electronic Journal 2014年6月号 17
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