最前線 UCPSS 2014 《UCPSS 2014 Report》 SK Hynixが洗浄技術の将来を展望 新材料登場で再びFEOL洗浄に脚光 Hattori Consulting International 代表/UCPSSプログラム委員 服部 毅 ベルギーの半導体研究コンソーシアムimec主催の「第12回半導体表面の超クリーン・プロセス に関する国際シンポジウム」(The 12th International Symposium on Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces:UCPSS 2014)が9月22日∼24日、ベルギーの首都Brusselsで開催 され、ますます複雑になる超微細構造の洗浄・乾燥に関して活発に議論された。 ●世界中から280名の洗浄研究者が結集 UCPSSは、米国電気化学会(Electrochemical Society:ECS)が隔年で開催している半導体洗浄技術 に特化した国際シンポジウム1)と交互に欧州で隔年 開催されているシンポジウムである。今回の会議 には世界中から前回を上回る280名の洗浄および関 連技術の研究者が一堂に会し(図1(a) )、活発な議 論が行われた。会議は表1に示すような10セッショ ンで構成され、オーラル講演48件(招待講演4件を 含む)、ポスター講演24件の合計72件の発表が行わ れた。この他、会議前日に、①CMP後洗浄(米Clarkson大学)、②ウェーハ裏面洗浄(伊仏STMicroelectronics)、③ウェット洗浄時の腐食問題(米Arizona大学)、④III-V属材料のナノスケール・エッチ ング(ベルギーimec)の4件のチュートリアル(講 義)が行われた。 国別発表件数は、米国19件でトップ、ベルギーが 15件、フランス14件、韓国10件と続く(表2)。日本 は18件(2008年)、9件(2010年)、7件(2012年)と 件数を減らしてきたが、今回は前回同様7件に留ま った(表3)。研究組織別では、地元のimecがいつ もながら断突のトップで14件だったが、今回は STMicroelectronicsが8件、韓国Samsung Electronicsが 5件と積極的に発表したのが特筆に値する(表4)。 ●乾燥時の微細パターン倒壊には設計で対処 基調講演では、韓国SK HynixのVice Presidentで 同社のIcheon Fabrication Centerセンター長のGunmin Choi氏が、 「将来のメモリデバイスへの洗浄の適用」 66 Electronic Journal 2014年11月号 と題して講演し、20nm DRAMで洗浄・乾燥時の微 細パターン倒壊が大問題となっており、当面は表 面張力の小さい洗浄液を探すにしろ、将来的には ドライ洗浄を用いざるを得ないだろうとの見解を 示した。また、洗浄手法にだけ解を求めるのでは なく、集積構造の設計変更で対処することも必要 だと述べた(図1(b) )。 乾燥時にはウォーターマーク発生も問題になる が、これについては、imec/ベルギー・ルーベン・ カトリック大学(KUL)、STMicroelectronics、大日 本スクリーン製造(DNS、現SCREENホールディン グス)のドイツ子会社/米Globalfoundriesなどから発 表があり、「ウォーターマーク発生への基板照明お よび基板への不純物ドーピングの影響」を発表し たA. Tamaddon氏(imec/KUL)がStudent Award(プ ログラム委員の評価で最高得点を得た学生発表者 に与えられる賞)を受賞した。 今後、Siに代わる基板材料として登場するGeや III-V属化合物の選択エピタキシャル成長で、ウォ ーターマークはさらに顕在化するだろう。 ●新材料の登場で再びFEOL洗浄に脚光 前回は、BEOL多層配線分野の発表件数が最多だ ったが2)、今回は再びFEOLが最多の22件(ポスター 8件含む)を占めた(表1)。III-V族のエッチングや 前処理洗浄に関する発表、枚葉スピン方式によるSi 窒化膜の選択エッチング、SiGeエピ前洗浄、S/Dコ ンタクト形成のための金属エッチングなどの話題 が目立った。 最前線 表1 UCPSSのセッション構成 講演件数 セッション名 (ポスター数) 基調講演 2 FEOL(Gate周り、III-V、エッチング) S/Dコンタクトのための金属エッチング 14(8) 2 表2 表3 組織別発表件数(1件のみは省略) 国別発表件数 国名 組織名 件数 米国 19 ベルギー 15 韓国 UCPSS 2014 件数 主な共著者所属組織 14 ベルギーKUL、蘭ASMI、TEL、DNS ベルギーimec 伊仏STMicroelectronics注1 8 仏Leti、仏Grenoble大、DNS 韓国Samsung Electronics 5 韓国SKKU 4件 10 米Arizona大 4 米TEL 日独DNS注2 3 伊仏STMicroelectronics、米GF ソニー 2 TEL 米Akrion 2 シンガポール科学技術庁 高アスペクト比構造のウェットプロセス 3 フランス 9 流体力学・メカニズム 6(3) 日本 7 フォトレジスト剥離・リワーク 2 ドイツ 6 米TEL-NEXX 2 BEOL多層配線 6(5) 台湾 3 独Chemniz工科大 2 米GF 3次元実装 2 イタリア 2 台湾United Microelectronics(UMC) 2 米Lam Research、米TEL-FSI 太陽電池 5(2) オランダ 汚染制御/汚染計測分析 6(6) 合計 表4 注1:仏6件+伊2件、注2:ドイツ法人1件含む KUL:ベルギー・ルーベン・カトリック大 、ASMI:蘭ASM International、 TEL:東京エレクトロン、Leti:仏原子力庁電子技術情報研究所、 GF:米Globalfoundries、SKKU:韓国成均館大、DNS:大日本スクリーン製造 1 72 UCPSS 2014における日本企業・大学からの発表注 分野 発表テーマ 発表組織名 汚染制御 ド―パントのイオン注入・アニールによる遷移金属のSiN膜を通したSi基板への侵入 ソニー、岡山県立大 ウェットエッチング ナノスケール領域ウェットエッチングにおける静電気の影響 ソニー、TEL メカニカル洗浄 ポストCMP洗浄でのPVAブラシの粘弾性の摩擦への影響 静岡大、荏原製作所 BEOL洗浄 14nmプロセス用TiNハードマスク・ウェット除去の実用化 DNS、伊仏STMicro、米ATMI FEOLエッチング 先端洗浄プロセスにおける溶存酸素の影響 DNS、ベルギーimec ウェットエッチング 電解硫酸溶液を用いた低温Ptエッチング 栗田工業 BEOL(ポスター) 純水および希フッ酸から過酸化水素を除去することによる金属配線の酸化防止 オルガノ 注:この他、日本企業の海外子会社(独DNS、米TEL-NEXX、米TEL-FSI)からも発表された。 (a)参加者 図1 (b)20nm DRAMの洗浄・ (c)ナイトライド・バッファ膜 乾燥時のキャパシタ・ 形成によるパターン倒壊防 パターン倒壊とその 止の模式図とSEM像 拡大SEM像 (出所:SK Hynix) UCPSS 2014参加者の集合写真(a) 、20nm DRAM洗浄・乾燥後のパターン例(b) (c) 次回のUCPSSは2年後に再びベルギーで開催され 参考文献 る予定である 。なお、直近の洗浄国際会議はECS 1)服部毅:Electronic Journal(2013.12)pp.60-61 主催の「14th International Symposium on Semicon- 2)服部毅:Electronic Journal(2012.10)pp.52-53 ductor Cleaning Science & Technology(SCST)」で、 3)http://www.ucpss.org 2015年10月に米国アリゾナ州Phoenixで開催される4)。 4)http://www.electrochem.org/meetings 3) Electronic Journal 2014年11月号 67
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