2014 年 11 月 5 日(水) 第6面 連載「スリランカ市場視察記」(下)燃費重視の国民性 多くの中古車販売店の店頭にはホンダ「ヴェゼルハイブリッド」がズラリと並ぶ 中古車販売店のショールーム トヨタの新型「ノア」「プリウス」、ホンダ「フィットハイブリッド」。高年式車ばかりが揃っている ■HV人気 AAで新車価格上回る スリランカの中古車販売店には日本で生産されたハイブリッド車(HV)ばかりが並ぶ。輸入規制でほと んどが初度登録2年以内の高年式の中古車だ。日本でも専門店でない限り、このような状況にはならな い。スリランカのHV人気を考察した。 現地の中古車販売店経営者は「スリランカ国民は燃費を重視する」ことが、HVが好まれる理由とする。 ガソリンは1リットル当たり165スリランカルピー(10月15日現在)で、日本円にして約140円だ。 ◆旬は「ヴェゼル」 特に人気を博しているのが、ホンダが昨年12月に投入した新型SUV「ヴェゼルハイブリッド」。SUVトッ プの燃費27・0キロメートル/リットル(JC08モード、電気自動車やプラグインハイブリッド車を除く)を誇 る同モデルは、燃費を重視するスリランカ国民に支持されている。 現地の新車ディーラーではまだ販売しておらず、日本から輸入した中古車を販売する。輸出事業者の 中でもスリランカにおけるヴェゼル人気は周知の事実で、中古車オークション(AA)では活発な競りが起 き、今は240万円前後で落札されるなど日本の新車販売価格(約225万円)を上回っている。それでも、 スリランカへの輸出時には利益を上乗せした額で販売でき、引き合いの強さを伺わせる。 ◆リコール対応に穴 AAで仕入れるよりも、新車を購入した方が安く仕入れられる。しかし、搭載するHVシステムのエンジン 制御コンピューター(ECU)のプログラムに不具合があるとして、ヴェゼルハイブリッドは3回、同様のハイ ブリッドシステムの「フィットハイブリッド」は5回のリコールを出している。販売側としては「海外に出て行っ たものは対応が難しい」(ホンダディーラー)と、リコールを伝えようがないことを問題視しており、輸出事業 者への販売は極力控える方針だとしている。 しかし、さらに問題となるのが「資金回収」だ。ヴェゼルハイブリッドは高い時は約270万円で落札され たケースもあった。また、ヴェゼルハイブリッドが発売される前はトヨタ「アクア」が一番人気だったという。 「今のヴェゼル人気も流行」(現地中古車販売店経営者)で、人気が落ちれば現地での販売価格も落ちる。 人気で相場が左右されるため「資金回収は難しいのでは」と懸念する。 生産技術の発展で、高度化した自動車は“壊れにくく”はなったが、“完璧”ではない。現地の日本メーカー の販売代理店も、リコール時、HVの修理には対応することを示しているが、サービス拠点数はまだ国土 を網羅するレベルには至っていない。 日本の中古車は世界各国へ輸出され、その台数は着実に増えている。輸出事業者が世界の日本メー カーの中古車市場を広げる担い手であると言うこともできる。しかし、健全な流通の発展のためにも相互 の歩み寄りも必要なのかもしれない。 (この連載は西川美都子が担当しました)
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