外来化学療法センターの 現状と大腸癌に対する化学療法

診療茶話
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.
外来化学療法センターの
現状と大腸癌に対する化学療法の進歩
佐世保市立総合病院消化器外科石川
佐世保市立総合病院外来治療センターは20叫
46Πに開設され、今年で丁皮 10イrになります
外来治療センター開設前の外来における抗癌剤
冶療は、1矢師がΠ前でミキシングを行い、外来の
処償宅の片隅にあるベッドを用いて細々とhつて
いました。'11時は、現在のように人腸癌に対する
レジメンの種覧iも多くなく、ほとんどが乳癌の患
Xさんを対象に治療が行われておりました。
しかしながら、 2000年以降、大嶋癌に対して
オキサリプラチンが登場し、 FOLFOX療法、
FOLFIR1療法の症例が飛躍的に増加すると、従
来のように外来の片隅での医師の対応には限界が
ありました。そこで各診療科が外来で行っていた
抗癌剤治療を集約化する目的と、症例の増加によ
り各診療科の外来では対応できなくなったことへ
の対策として、外来治療センターが述用開始とな
リ、薬剤師による安全キャビネットでの無菌調整
が始まりました写真は外来治療センターの全景
を不します。りクライニング機能をhした椅子が
15 台と、ベッドが3 ↑、 A,1'18 六です。薬刑師
がき噺埼訓整をlrう安全キャビネットは、 2部屋に
分かれ、計4六成楓されております(現在は2台
の安全キャビネットで対1心)治療センターには
3乳の薬剤師が'常駐し、薬剤の無菌的剥整と監査
を行'つておりますセンターは外来棟21塔、佐世
保川に佃した場所にあり、態者さんの目の前は力
ラス窓になっており、明るい日差しが差し込んで、
凶季折々の景色を楽しむことができ、治療を受け
る患者さんの気持ちを和ませております
図1に外来治療センターにおける化学療法の症
例数の推移を示しております。 2007年には 1879
例であったのが、 2012甲には 2662例と 41%増
加,ルており、毎年少しずつではありますがイオ府'ト
がりの増加を示しております 2012年では、 1
日当たり約Ⅱ例になりますこの 11例は、純粋
に抗癌剤治療を行た数であり、ゾメタやラン
マーク、輸血症例を含めると、 1訂約 13例にな
ります。
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図1 外来治療センターにおける化学療法症例数
図2は2012年における診療科別の症例数をハ
します。消化器外科がもっとも多く 1091例
(41%)を古めており、次いで乳腺外利・が513例
a9%)、血液内利・286例 al%)、消化排内科
238例(9 %)、婦人科 181例(フ%)となって
おります。
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図2 外来化学療法センターの診療科別症例数知12年)
長岫県咲師会雜第813牙'r成25年10月
診療茶.話
図3は疾患別の症例数の推移を示しております
最近、大腸癌、胃癌が伸びてきており、乳癌、子
先ほど尓したように、外来治療センターで治療
宮癌、肺癌は横ぱいの傾向です。とりわけ大腸癌
を行う症例の如%が火腸癌症例であり、年間延
ベ数では700例を超えているのが現状ですが、大
は、 2007年には3釦例程度であったのが、 2012
年には倍増の700例を超える症例数となっており
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図3
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外来治療センターの疾患別症例数の推移
外来治療センターで行う治療レジメンはすべて
登録牲であり、化学療法委員会において採否が決
められております。その際、ある程度のエビデン
スがあれぱOKとしており、論文掲載されてい
る程度のレジメンであれば採用する方針でありま
す。表1は2013年8打現在の各診療科のレジメ
ン数を尓しております血液内科が最も多く70、
次いで乳腺外科が50、消化器外科(大腸癌が
"、呼吸器科が43、消化器内科が25、消化器外
科(胃癌)が23、以下表の通りとなっておりま
す(表 1)
外来治療センターにおける各診療科の登録レジメン数
血液内科
消化鴨外科:胃摘
消化器外科:大腸癌
消化器外科:胆肝蝉食道
乳腺外科
6
1
婦人利
2
2
消化器内科
5
2
呼吸器利
70
器UH舶心
.
たいと思います
泌尿闇科
現在のセンターにおける問題点は、腫傷内科医
が不在で、針刺しから有害事象に対する処置まで
各診療科の生.治医が対応し、センターの1元的管
理ができていない点にあります。今後、センター
の管理を行う常勤医師が確保できるとさらに医療
の質を高めることが可能と老えております
次に大腸癌に対する化学療法について述ベてみ
腸癌に対する化学療法には大きく分けて2通りが
あります。術後補助化学療法と切除不能再発症例
に対する化学療法です。
術後補助化学療法は、癌の遺残なく切除された
冶癒切除症例に対して、再発を抑制する月的で行
われる化学療法のことで、りンパ節転移を認、めた
ステージⅢ症例を対象に行われており、 T4症例、
穿孔例、低分化腺癌、粘液癌、廓清りンパ節個数
12個未満の再発りスクを有する hi帥 risk ステー
ジⅡ症例に対する有用性に対しては、現在多施設
の臨床試験で検証中です治療の期間は原則6か
月ですが、この点に関してもオキサリプラチンが
補助化学療法に適応されてから、特有の末梢神経
毒性の軽減を目的として、 6か月と3か月の比較
試験が進行中です『科においては、大腸癌治療
ガイドラインに準じてPSが0、 1で術後の合併
症から回復し、主要臓器機能が保たれている症例
に対しては適切なインフォームドコンセントのも
とに積極的にイ丁っております治療の内容は、5
FU+LV 療法(RPMI、 UFT十LV 療法、 capecit・
abine療法、 mFOLFO×6、 xeloX療法の中から
症例後ごとの進行程度や忍容性を考臆して決定し
てぃるのが現状です。また、今年のASC0にお
いてACTS・CC試験の結果が発表され、ステー
ジⅢ結腸癌における術後補助化学療法としての
UFT+LV療法に対するTS・1の非劣勢が証明さ
れ、補助化学療法としてのTS1の有用性が証明
されましたしたがって補助化学療法では、 SI
を加えた6つのレジメンが推奨される療法となる
わけですが、経口剤である UFT+LV、 capecit・
abine、 S 1 と注射'剤である 5FU+LV、mFOLFOX
6、 xeloX療法の適応については、選択肢が増え
た分、症例ごとにきめ細かな対応が必要になうて
くると考えられます
一方、切除不能進h再発大腸癌に対する化学療
法は、腫傷増大を遅延させて延命と症状コント
ロールを行'うことを目的として行いますが、最近
の抗癌剤の腫傷縮小効果により、奏効して切除が
可能となることがあります切除不能再発大腸癌
長崎県医師会報第別3号平成25年10月
f゛' J、..
NO.410
に対する化学療法はESM0 ガイドラインと
NCCN Guideline version2 に準じて行っておりま
少なく、オキサリプラチンと副作用のプロフィ
ルが異なる点、従来から胃癌において頻用されて
す。すなわち、転移巣が肝転移、肺転移に限局し
ており、'切除不能であるが、化学療法によって腫
甥の縮小がもたらされれば切除が可能となる症例、
おり、使い惨羽1ているという点から、今後SOX
療法も有力な選択枝になると考えられます。
1次治療における分子標的薬の併用に関しては、
つまり Conve此ion の司'能性がある症例、師傷の
発育速度が速く随伴症状を有する症例、もしくは
症状が出現する可能性がある症例に対しては、
NCCNで示されている強力な治療が適した患者
KRAS遺伝子の変異の有無にかかわらず、ベバ
シズマブを併用することが多いようです。これは、
に対する治療を選択しております。 1次治療にお
ける分子標的薬の併用に渕しては、血管内皮細胞
増殖因子に対する抗体ベバシズマブまたは抗
EGFR抗体のいずれかを併用しますが、 KRAS
遺伝子変異の有無により抗EGFR薬の適応が決
まりますので、これは必ず測定するようにしてお
ります。われわれは通常は 1次治療としてはオキ
ベバシズマブの副作用として血栓症、消化管穿孔
という致命的なものがあるものの、その頻度は低
く、一般的に高い頻度で経'験されるのは高血圧、
蛋白尿と対応しゃすい副作用であることが大きな
要因であるとぢえられます。また、転移巣力訓干臓
に限局した症例やJ唾傷の随伴症状の出現のため
に>急速に師揚の縮小を劉,う場合は、 KRAS遺
伝子が野生型であれぱ抗EGFR薬のセッキシマ
ブやパニツムマブを選択します。
サリプラチンベースのレジメンを選択する場合
が多く、したが0 てmFOLFO×6 または Xe1躯
N欠治療がPDとなった症例に対しては2次治
療が考感されます。当院で1次治療で頻用させる
療法を選択しております。 mFOLFOX劇寮法は
2週問に 1回の投りで妬時間の5FU掲珠売投勺・か
のはmFOLFO×6士ベバシズマブまたはXeloX士
必要であり、 CVポートが必須となります。ーカ
XeloX療法は 3 週間に 11司の投勺・で、 5FU の持
続投与の代わりにゼローダの内服を2翅開行い、
1週冏休薬するレジメンであり、 CVポート卸必
要なく、当科ではXe1餓療法力酵頻用されており
ます。しかしながら、末梢"羽派からのオキサリプ
ラチン投与時の血管浦が問題となる症例もあり、
結果的にはCVポートが必要となることもありま
す。また 3週問に 1回のレジメンですから、オキ
ベバシズマプですが、この場合にはFOLFIR1単
列はたはKRAS野生型の場合にはFOLFIN十セ
ツキシマブまたはパニツムマプを選択します。
KRAS変異型では、 F丘F凪1単列{またはBevad、
Zしlmab beyond progression の概念から FOLFIRI+
ベバシズマブを選択する症例もあります。 2次治
療における増悪症例に対しては3次治療を行うわ
けですが、さすがに肘火治療になると、態者さん
の全身状態も不良となり1次治療、 2次治療で
行ったような強い治療はできない症例が多いよう
サリプラチンの投与呈がmFOLFO×6療法の
1.5倍となり、初回ないし 2 - 3 コース目の有害
です。私は、 3次治療はKRAS野生型ではセッ
事象が強く出現する症例も経験されゞ注意が必要
です。また、回数を重ねてくると、オキサリプラ
口剤S1の併用を行っております。皮膚症状以外
の副作用の出現頻度は少なく忍容性は良好です。
チンによる手先、足先の仰れを伴う末梢袖経障害
が高頻度に出現し、ゼ訂ーダの副作用である乎足
全身状態が不良、または高齢者で強力な治療が
適さない症例では、ガイドラインに準じて、 5FU
/LV士BeV を行うか、 KRAS甥,生型であればセッ
キシマブ、パニツムマブの単列豆堀去を行います。
また、 xeloX十ベバシズマブ療法を行ってぃた症
症候1肆での手先、足先の癖みと重なり、副作用の
鑑別に苦感することもあります。
以上述ベましたように、当科ではXe1彼療法
が頻用されておりますが、 2013年の ASC0 にお
キシマプ単独、パニツムマプ単独またはこれに経
例で、オキサリプラチンによる末札井崎蚤症状が強
く出現した症例に対しては、オキサリプラチンを
いてSOFT試験の結果、 SOX十ベバシズマブ療
法のmFOLFO×6十ベバシズマブ辧覗去に対する
非劣性が示されました。この場合S1の副作用は
抜いたXeloda+ベバシズマブ療法を行い瓢錯寺療
法的な使い方をしております。
血i譜堺陛が主であり、乎足症候群は比較的頻度が
以上、我々が日常で行っております切除不能進
58
長崎県医剖会縦第813号平成25年W月
⇔診療茶話"
叉6 'Ξヨ
切除のみであり、化学療法においては常に切除の
可能性を求めるべきではありますが、症例ごとに
たくさんの引き出しから、目の前の患者さんに
行再発大腸癌に対する化学療法について述ベてま
いりましたが、20年前までは全く有効な化学療
法がなかった大腸がんが、現在では平均生存期間
が2年を超えて、 30か月に達しようとしており
ます。しかしながら、完全治癒が達成できるのは
表2
もっとも適した治療法を選択し、最大の効果を得
るような心構えが肝要であると考えております
NCCN Guidelines version2.2012
(結腸癌強力な治療が適した患者)
目
の
FOLF1虹 or cpT"11
FOLFOX圭 8ev
XELO×=且ev
Ce,u or p0打i
FOLFO×= PO"i
FOL凡R王゛(celu orponi)
CPT.11.(Cε,u or poni)
B5C
FOLFTRI.Bev
FOLFO× or xELOX
CPT、11.(celu
FOL凡虹=
CPT-11土(cttu or pan )
0r
.
の
CPT.H .(C.加 or 山ni)
(ceヤ」 or P口ni)
FOLFO× or xELOX
Cε「u or Pσn
Fa.^X W XELOX
5FU/LV= Bev
CPT11
CPT.U゛(CEIU
CPT、11.O×01 〆α,
Or p0晶
Cεru or pan
FOL凡R工
Xelod0土 Bev
Or pan
CεN or poni
CPT-11+(ce仙 or pon )
FOLFOX工R工
Ce,u or pon
表3
NCCN Guideline$ version2.2012
(結腸癌強力な治療が適さない患者)
1次治毎
初回増春後の冶毒
F5U/LV士 Bev
徴讐状知の改^リ
→^
0r
.
Ce十U or pani
⑤G@を邸
徴儲状佃Φ改^し・^・^
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長崎県医師会報第813号平成25年10肖