TN441 Liイオン二次電池 (電解液反応生成物の空間分布)

Technical News
●Li イオン二次電池 (電解液反応生成物の空間分布)
TN441
Spatial Distribution of Electrolyte Derivatives in a Positive electrode for
Lithium-ion Batteries Using STEM-EELS
要]
成分2:反応生成物
正極活物質
集合体
リチウムイオン二次電池
の性能劣化原因の一つと考
EELSマッピング測定範囲
えられている電解液の反応
生成物について、その空間分
布を電子エネルギー損失分
成分3:バック
グラウンド
INTENSITY
[概
成分1:活物質
樹脂
真空領域
光法(EELS)により可視化
した事例を紹介いたします。
[手
60
法]
充放電サイクル試験後の
65
70
ENERGY LOSS (eV)
図1 正極材の断面HAADF-STEM像
図2 単相成分EELSスペクトル
正極活物質粒子集合体
(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2, NCA)を
(a)
(c)
(b)
集束イオンビーム(FIB)加
工装置を用いて薄片化し、そ
の断面を高角度散乱環状暗
視 野 - 走 査透 過電 子 顕微鏡
成分2
成分1
成分2 +
HAADF-STEM
成分3
図3 単相成分の相対濃度分布図 (a)成分1:活物質、
(b)成分2:反応生成物、(c)成分3:バックグラウンド
図4 反応生成物
の空間分布
(HAADF-STEM)により観
察しました(図1)。さらに、活物質粒子集合体の表層部を含む一部の視野について、EELS マッピング測定
と取得データの多変量解析を行い、電解液反応生成物の分布状態を調べました。
[多変量解析による重畳スペクトルデータセットの分解]
今回用いた多変量解析法
では、マッピング測定で取得
るとみなし、それらの残差行
列 R が最小となるように S, C
単相スペクトル行列 ST
成分数
相対濃度行列 C の積で表せ
相対濃度行列 C
測定点数
相成分スペクトル行列 S と
測定点数
した EELS データ行列 D を単
測定データ行列 D
損失エネルギー
損失エネルギー
図5
成分数
多変量解析で用いるデータ行列モデル(残差行列 R は省略)
を導出します(図5)
。
この解析法によって分解された単相成分スペクトル(図2)を見ると、成分1は61 eVの比較的鋭いピーク
と69 eV付近のなだらかなピークを示し、成分2では62 eVに強いピークが認められました。成分1の特徴は
NCAに含まれるリチウム(Li)のK殻吸収端とニッケル(Ni)のM2,3殻吸収端に一致し、成分2の特徴は電解液
の反応生成物LixPOyFzに含まれるLi-K殻吸収端と一致します。次に相対濃度分布図を見ると、成分2が正極活
物質の表面に付着している様子が明瞭に観察され(図3(b)、矢印)
、充放電時のLiイオン移動に影響を与える
と推測される電解液反応生成物の空間分布(図4)を可視化することができました。
作成:筑波事業所 (YY1410)4-U0-(55)
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