日本原子力学会「2014年春の年会」 (2014年3月26~28日,東京都市大学 世田谷キャンパス) 核分裂生成ガスを測定して未臨界を監視する方法 (II) O28 Subcriticality monitoring method by measuring FP gas (II) (株)ナイス ○中村 正則 内藤 俶孝 Masanori NAKANURA Yoshitaka NAITO 臼田 重和 Shigekazu USUDA 2013 年秋の大会で、核分裂生成希ガス核種の同位体相関を求めることにより中性子実効増倍率(keff)を推定し、未 臨界度を監視する手法について報告した。今回は、福島第一原子力発電所の事故炉心に適用できるか検討した。 キーワード: 核分裂生成希ガス核種、同位体相関、未臨界度監視、原子炉事故、核分裂収率 1.緒言 福島事故の廃炉作業では、臨界の接近を早い時期で感知し、警報を発することにより作業者を退避さ せることとしている。従来の臨界の監視方法は、臨界近傍で急速に増大する中性子束を監視していたが、福島事故 の炉心は複雑な構造になっており、バックグラウンドも高いので炉心由来の中性子測定が困難である。このような 場合、核分裂生成希ガスの同位体比を測定することにより、未臨界度を測定することは有効である[1]。この方法 を福島事故炉心の臨界監視に適用するに当たっての課題を検討する。 2.監視方法 例えば 235U の中性子核分裂と 244Cm の自発核分裂で生じる 135Xe と 88Kr の比率(135Xe/88Kr)に注目 する(表 1 参照)[2]と、この比は 235U について約 1.9 に対し 244Cm では約 17.6 となり一桁近く異なる。前回秋の大 会で発表したように、中性子実効増倍率(keff)と原子炉内の核分裂時における 135Xe と 88Kr の生成量比(以下 R0 ( Xe / Kr ) )には下記の関係がある。 1 keff Y ( Xe) R0 ( Xe / Kr ) YU ( Kr ) U ; R0 ( Xe / Kr ) q0 ( Xe) / q0 ( Kr ) keff YCm ( Kr ) R0 ( Xe / Kr ) YCm ( Xe) 実際には炉内での核分裂からガス量の測定までに時間遅れが存在するために R0 ( Xe / Kr ) を測定値から推測する 精度が非常に重要となる。Y は核分裂収率でほとんど定数であり、希ガスの分離・精製及び線測定に当たっては、 測定対象となる核種の半減期に見合う短時間の試料導入、分離・精製及び測定がポイントとなる(図 1 参照)。 3.結論と課題 R0 ( Xe / Kr ) を求める場合、燃料領域から格納容器を経由して測定装置までの移行率や分離・ 精製時の回収率など誤差を含む要因が複数存在する。そこで、化学的・物理的挙動がほぼ等しい同位体相関をとる ことにより、R0 ( Xe / Kr ) の推定精度が向上するため、破損燃料の有効な未臨界度監視が期待できる。さらに、235U や 244Cm 以外の核分裂性核種の寄 与及び比較的半減期の長いプレカ ーサーの吸着・分離挙動に起因する 移行率の変動などについて検討す 図1 る必要がある。 放射性希ガス核種測定の流れ 表 1 検出される可能性のある放射性希ガス核種と 235U 及び 244Cm の累積核分裂収率[2] 核種 (半減期) 主な線 (放出率) 235U 中性子誘起核分裂収率 244Cm 自発核分裂収率 88Kr (2.84 h) 2.392 (35%), 0.196 [MeV] 3.5140.0806 [%] 0.42310.2708 [%] 135Xe (9.14 h) 0.250 (90%), 0.608 [MeV] 6.5210.0478 [%] 7.4670.299 [%] [1] 内藤 他, 日本原子力学会「2013 年秋の大会」J48, 八戸工業大学, 2013 年 9 月 3-5 日. [2] K. Shibata, et al., "JENDL-4.0: A New Library for Nuclear Science and Engineering," J. Nucl. Sci. Technol. 48(1), 1-30 (2011). ― 728 ―
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