MSSJ2014 2P - 35 Advanced-nano-LC/MALDI-MSを用いた血漿中の糖タンパク質E-カドヘリンの糖ペプチド分析 Glycopeptide analysis of E-cadherin glycoprotein from human plasma with high sensitive advanced-nano-LC/MALDI-MS system 〇関谷禎規・金子直樹・谷村里都子・日置雄策・児嶋浩一・岩本慎一・田中耕一 (株)島津製作所 田中最先端研究所 Sadanori Sekiya, Naoki Kaneko, Ritsuko Tanimura, Yusaku Hioki, Koichi Kojima, Shinichi Iwamoto, Koichi Tanaka 3. Results and Discussion 1. Introduction MALDI-MSは、プロテオミクスやグライコミクス分野において強力な分析ツールであ る。多種多様な成分が含まれる生体試料のMALDI-MS分析では、LCとMALDIをオフ ラインで接続した LC/MALDI-MSが用いられている 。我々はこれまでに、① nano-LC ②ナノリットルレベルの微量滴下を実現するnano-LC用カラム一体型スポッティングプ ローブ(カラムプローブ )、③微小なDHB結晶を親水性アンカーとした高濃縮試料 プ レート、から構成される高感度なLC/MALDI-MS(Advanced-nano-LC/MALDI-MS)シ ステムを開発した 1)。今回我々は、開発したAdvanced-nano-LC/MALDI-MSを用いて、 ヒト血漿中の糖タンパク質である内在性E-カドヘリンをモデル試料として糖ペプチド分 析を行った。E-cadherinは細胞接着分子でN型糖鎖をもつ糖タンパク質であり、糖鎖 が癌の転移や浸潤などに関係することが知られている 。しかしながら、糖鎖の構造に ついては詳細な解析が行われておらず不明な部分が多い。また、E-カドヘリンの糖ペ プチドを混合物のまま測定する簡便な“Direct-MALDI分析”との比較も行った。 558 570 Domain 1 Propeptide Domain 2 Domain 3 Transmembrane 3-2. Advanced-Nano-LC/MALDI分析 参照データとして、市販の組換え型E-カドヘリンの糖ペプチド 分析を実施し、その解析結果を踏まえて内在性E-カドヘリン の糖ペプチド構造を推定した。 622 637 N N Domain 4 3-1. Direct-MALDI分析 Figure 3. 組換え型E-カドヘリン(1000 ng) のマススペクトル N型糖鎖結合部位 (コンセンサス配列) Signal peptide 1 23 Koichi Tanaka Laboratory of Advanced Science and Technology, Shimadzu Corporation N N Domain 5 155 Topological domain 710 882 Asp-N消化で生成する糖鎖結合部位を含むペプチド配列 Peptide-1 (Pep1): 552-DFEHVKNSTYTALIIA-567 Peptide-2 (Pep2): 569-DNGSPVATGTGTLLLILS-586 Peptide-3 (Pep3): 618-DLPPNTSPFTAELTHGASANWTIQYN-643 組換え型E-カドヘリンではpeptide-1およびpeptide-3由来の 糖ペプチドが検出された。また、m/z 5800~6500付近にも糖 ペプチドが検出されたが、構造は推定できていない。 MS/MS Figure 1. E-カドヘリンの構造図 2. Experimental Section ヒト血漿 F(ab’)-PEG 24ビ ー ズ抗 体 F(ab’) E-カドヘリンの精製 (IP: F(ab’)-PEG24 ビーズ抗体) Advanced nano-LC/MALDI分析では、N型糖ペプチドに加えてDirect-MALDI分析では検出されなかったO型糖ペプチドも検出された。 O型糖ペプチドのMS/MSも実施したが、糖鎖結合部位の同定には至らなった。 (抗E-cadherin抗体 (IgG)由来) E-カドヘリンのO型糖ペプチドについては、我々の知る限り報告例は無く、今回が初めての解析例となる。 PEG24 電気泳動 (SDS-PAGE) Figure 6. O型糖ペプチド(2種)のMS/MSスペクトル Figure 5. 内在性E-カドヘリン (血漿1000 µL)のマススペクトル (市販品) m/z 6000~8000の範囲にも糖ペプチドと考えられるイオンピークが確認されたが、構造は推定できていない。 磁性ビーズ ゲル内酵素消化 Table 1. 検出したE-カドヘリン糖ペプチドリスト (酵素:Asp-N) Advanced Nano-LC-MALDI Figure 4. 内在性E-カドヘリン(血漿500 µL) のマススペクトル セルロース処理(糖ペプチド精製) 3-AQ/CA(液体マトリックス) MALDI-DIT-TOFMS Column probe 0 .15 0 m m 0 .0 75 m m a. 溶融シリカ キャピラリ Nano-LC 150 mm d. 逆相樹脂 Reversed phase b. インラインフリット 2 mm Laser sensor c. 疎水コーティング e. 端面 プ レ ー ト 表 面 を CYTOP (CTX-109AE, 旭硝子)で 疎水性コーティング (180℃・60分熱硬化) 逆相HPLC カラムプローブ プリスポットDHB MALDI-DIT-TOFMS LC-MALDI Condition Nano-LC system:Prominence nano (Shimadzu Corp.) Column:Column probe (RP resin; Unison UK-C18, Imtact) O.D.:150 µm, I.D.:75 µm, Length:150 mm Mobile Phase:A) 0.1% HFBA in water B) 0.1% HFBA in MeCN Gradient:35-65 min, B conc. 0-50 % (1.67 %/min) Injection volume: 2 µL LC (sample) flow rate:0.2 µL/min Spotting interval:12 sec/well (40 nL/well) MALDI-DIT-TOFMS MALDI spotter 150 µm-DHB precoated plate DHB 1 mm 内在性E-カドヘリンではpeptide-3由来の糖ペプチドのみが 検出された。 4. Conclusion 開発したAdvanced Nano-LC/MALDIシステムを用いて、 極微量の血漿(1 µL)からでもE-カドヘリンの糖ペプチド (O型糖ペプチド)を検出することができた。 Figure 2. Advanced Nano-LC/MALDI-MS system N 型 糖 ペ プ チ ド 血漿中のE-カドヘリンの糖ペプチドを質量分析した例は これまでになく、本分析システムが生体試料の分析に対 して実用レベルにあることが示された。 本分析システムを分析対象試料に応じてカスタマイズす ることによって、他の様々なバイオマーカー分析へ応用 することができる。 0.1 mm プリスポットDHB:ピエゾインクジェット装置(Labojet-1000Bio, Microjet)で 塗布[DHB塗布量:0.4 µg/well(MDPNA 0.2 µg含む)] 種類 References [1] Hioki Y et al. Anal. Chem. 2014, 86, 2549 − 2558 O 型 糖 ペ プ チ ド 構造 Direct-MALDI 血 漿 1000 µL 血 漿 10 µL 血 漿 1 µL 血 漿 500 µL Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ ✓ - - Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ ✓ - - Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ ✓ - - Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ ✓ - - Pep3 ✓ ✓ - - Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ ✓ - ✓ Pep3 ✓ - - Pep4 + Hexose× 4 ✓ ✓ - - Pep4 + Hexose×3 ✓ ✓ - - Pep4 + Hexose×2 ✓ - - - Pep5 + Hexose×1 ✓ ✓ ✓ - Peptide-5由来のO型糖 ペプチドに 関し ては血漿1µLからでも検出できており 、 Advanced Nano-LC/MALDI分析が高感 度であることが示された。 Direct-MALDI分析 で利用し たセ ルロー スによる糖ペプチド精製法は簡便ではあ るが、この手法は親水性相互作用を利 用して糖ペプチドを回収するため 、親水 性の低い糖ペプチドは回収効率が低下 する、あるいは回収できない問題を有す る 。 一 方 、 Advanced Nano-LC/MALDI 分析では、E-カドヘリンの酵素消化物を 全てLC分析に用いるため 、セルロース 精製のような糖ペプチドのロスを回避す ることができる。 Acknowledgements 本研究は、日本学術振興会の最先端研究開発支援プログラムにより、助成を受けたものである。
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