ハンマ叩きや硬い玉が落下したときの衝撃力 波形について 50 45 図1のように質量mのハンマで硬い物を叩いた場合、 あるいは質量mの硬い玉が落下したときの衝撃力は、 接触面の弾性をバネ(バネ定数k)としてモデル化す ることができます。 バネの力 (kN) 40 k=1000kN/m 35 k=5000kN/m 30 25 k=10000N/m 20 15 10 5 0 0 0.002 0.004 0.006 時間 (秒) 0.008 0.01 図 2 質量mが初速度 V0 で衝突したときの力 図1 衝撃力のモデル化 衝撃力のピーク値の推定について この運動方程式は次式になります。 mx + kx = 0 (1) もし、実際の衝撃荷重計測において、荷重と時間の 関係を正弦波形状で近似できるとすると、ピーク荷重 PMax、衝撃開始から終了までの時間(衝撃時間)を T として荷重波形は(8)式で表せます。 一般解は = x(t ) A sin(ωt + φ ), 但しω = k / m (2) 当たった瞬間を時刻 t=0 とし、 衝突速度を V0とすると、 初期条件 x (= t 0) = 0, x (= t 0) = V0 から π (8) F (t ) = PMax sin( t ) T (8)式の F(t)を 0 ≤ t ≤ T の範囲で積分すると、 T T 2 PMaxT π PMaxT (9) ∫0 F (t )dt = − π cos( T t ) = π 0 A = m / kV0 故に、 減加速度は k t) m k k sin( t) m m x= (t ) V= (t ) V0 cos( (3) x(t ) = −V0 (4) となります。 (9)式の左辺の値は運動量 mV0 の2倍の 2mV0 に等しいので結局次式が得られます。 PMax = 変位は x(t ) = V0 m k sin( t) k m k t ) = −mx m T (10)式を用いると玉の質量mと衝突速度 V0 と衝撃時 間 T がわかれば、ピーク荷重 PMax を求めることができ ます(完全弾性衝突の場合の近似解として)。 (6) 図3は 116mm 四角の変動荷重検出板をコンクリー ト床に粘着テープで止めてその上にボーリング球 (6.9kg)を落下させたときの衝撃力波形です(ホームペ ージの「パッドセンサと変動荷重検出板」を参照くだ さい)。ボーリング玉は検出板の金属に直接当たります。 となります。(6)式で衝撃力 F(t)は変位にバネ定数を乗 じた形になっています。また、正弦波形状(半波)を しています。 質量 m と衝突速度 V0を一定にして、バネ定数 k を 3 通りに変化させて床に作用する力 F(t)を描くと図 2 の ようになります(m=10kg、衝突速度 V0=4.43m/sec、k: 表中の値)。 ここで F(t)を 0 ≤ t と、 ∫ π m/k 0 ≤ π m / k の範囲で積分してみる π m/k k F (t )dt = t ) −mV0 cos( m 0 (10) (5) 床に作用する力(バネに作用する力)は F (t ) = kx = V0 km sin( π mV0 2mV0 (7) = となります。 つまり衝突速度 V0 と質量 m が同じならば、バネ定数 k によらず力と時間の描く軌跡の面積は同じ 2mV0 にな ります。運動量 mV0 の2倍になる理由は、ハンマや玉 が元の高さまで跳ね返るとモデル化しているからです。 1 図3 ボーリング球の衝撃力波形 図3の波形を見ると、ボーリング球を 10cm 高さから 落下させたときにピーク荷重 PMax=約 20kN(2 トン)、 1m 高さから落下させたときには PMax=約 75kN(7.5 ト ン)になっています。 衝突速度は V0 = 2gh なので、落下高さ h= 0.1m では V0=1.4 m/sec、h=1m では V0=4.43 m/sec です。これ ら V0 と m=6.9kg、負荷開始-終了時間 T=約 0.0013 (sec)を(10)式に代入すると、h=10cm では h=1m では = PMax π mV0 = T π mV0 3.14 × 6.9 ×1.4 ≈ 23kN 0.0013 3.14 × 6.9 × 4.43 = ≈ 74kN 0.0013 T 図4 (15) (16) 球が当たったときのバネ定数の時間変化 Golf ball falling (100x100mm sensor) 1.8 1.6 1.4 となり、実際の計測荷重と近い値になることがわかり ます。 実際のハンマ先端部や球は、床に丸い先端部分が当 たります。また先端部分は変形してわずかですが扁平 になりますし、床もわずかに窪みます。このため接触 面積が時間と共に増加しますので、バネ定数 k も接触 直後と離脱直前では小さく、深く接触した時点では大 きくなります。 バネ定数kが時間につれて上述のように変化すると、 衝撃波形は開始部付近と終了部付近で裾野を引く形状 になります。このことは図5のゴルフボールの場合で も見ることができます。 2 Sensor (kN) = PMax 接触面積増加 1.2 1 0.8 h=0.5m 0.6 h=1.0m 0.4 h=1.5m 0.2 h=2.0m 0 -0.2 0 0.5 図5 1 1.5 Time (msec) 2 2.5 ゴルフボールの衝撃力波形 以上は完全弾性衝突と呼ばれる状態に近い場合の衝 撃力波形の説明です。
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