1 平成 26 年度 九州大学2次試験前期日程 (数学問題)120 分 文系 (文学部,教育学部,法学部,経済学部 (経済・経営)) 1 座標平面上の直線 y = −1 を `1 ,直線 y = 1 を `2 とし,x 軸上の 2 点 O(0, 0), A(a, 0) を考える。点 P(x, y) について,次の条件を考える。 d(P, `1 ) = PO かつ d(P, `2 ) = PA ···° 1 ただし,d(P, `) は点 P と直線 ` の距離である。 (1) 条件 ° 1 を満たす点 P が存在するような a の値の範囲を求めよ。 (2) 条件 ° 1 を満たす点 P 全体がなす図形の面積 S を a を用いて表せ。ただし, a の値は (1) で求めた範囲にあるとする。 2 以下の問いに答えよ。 (1) 任意の自然数 a に対し,a2 を 3 で割った余りは 0 か 1 であることを証明 せよ。 (2) 自然数 a,b,c が a2 + b2 = 3c2 を満たすと仮定すると,a,b,c はすべて 3 で割り切れなければならないことを証明せよ。 (3) a2 + b2 = 3c2 を満たす自然数 a,b,c は存在しないことを証明せよ。 2 3 鋭角三角形 4ABC について,∠A,∠B,∠C の大きさを,それぞれ A,B ,C とする。4ABC の重心を G,外心を O とし,外接円の半径を R とする。 (1) A と O から辺 BC に下ろした垂線を,それぞれ AD,OE とする。このとき, AD = 2R sin B sin C, OE = R cos A を証明せよ。 (2) G と O が一致するならば 4ABC は正三角形であることを証明せよ。 (3) 4ABC が正三角形でないとし,さらに OG が BC と平行であるとする。こ のとき, AD = 3OE, tan B tan C = 3 を証明せよ。 4 A さんは 5 円硬貨を 3 枚,B さんは 5 円硬貨を 1 枚と 10 円硬貨を 1 枚持ってい る。2 人は自分が持っている硬貨すべてを一度に投げる。それぞれが投げた硬 貨のうち表が出た硬貨の合計金額が多い方を勝ちとする。勝者は相手の裏が出 た硬貨をすべてもらう。なお,表が出た硬貨の合計金額が同じときは引き分け とし,硬貨のやりとりは行わない。このゲームについて,以下の問いに答えよ。 (1) A さんが B さんに勝つ確率 p,および引き分けとなる確率 q をそれぞれ求 めよ。 (2) ゲーム終了後に A さんが持っている硬貨の合計金額の期待値 E を求めよ。 3 解答例 1 (1) d(P, `1 ) = |y + 1|,d(P, `2 ) = |y − 1| であるから,° 1 より p p |y + 1| = x2 + y 2 かつ |y − 1| = (x − a)2 + y 2 これらを整理すると 1 1 y = x2 − 2 2 かつ 1 1 y 5 − (x − a)2 + 2 2 y 上の 2 式を同時にみたす領域が存在する条件 は,2 つの放物線 1 1 C1 : y = x2 − 2 2 1 1 C2 : y = − (x − a)2 + 2 2 α O C1 β が共有点をもつことであるから,2 次方程式 1 2 1 1 1 x − = − (x − a)2 + 2 2 2 2 1 すなわち x2 − ax + a2 − 1 = 0 · · · (∗) 2 が実数解をもてばよい.したがって,係数について ¶ µ 1 2 2 a − 1 = 0 これを解いて −2 5 a 5 2 (−a) − 4·1 2 (2) (∗) の方程式の解を α,β とすると (α < β) 1 x2 − ax + a2 − 1 = (x − α)(x − β) 2 √ β − α = 4 − a2 よって,求める面積 S は µ ¶¾ Z β½ 1 1 2 1 1 2 x − S= − (x − a) + − dx 2 2 2 2 α ¶ Z βµ 1 2 2 =− x − ax + a − 1 dx 2 α Z β =− (x − α)(x − β)dx α 1 1 3 = (β − α)3 = (4 − a2 ) 2 6 6 x C2 4 2 (1) 自然数 a を 3 で割った商を k ,余りを r とすると (r = 0, 1, 2) r = 0 のとき a2 = (3k)2 = 3·3k 2 r = 1 のとき a2 = (3k + 1)2 = 3(3k 2 + 2k) + 1 r = 2 のとき a2 = (3k + 2)2 = 3(3k 2 + 4k + 1) + 1 よって,a2 を 3 で割った余りは 0 か 1 である. (2) 自然数 a,b,c が a2 + b2 = 3c2 を満たすとき,a2 + b2 は 3 の倍数である から,(1) の結果から a2 ,b2 がともに 3 の倍数である. このとき,自然数 l,m を用いて a = 3l, b = 3m とおける.したがって (3l)2 + (3m)2 = 3c2 ゆえに c2 = 3(l2 + m2 ) c2 は 3 の倍数であるから,(1) の結果により,c も 3 の倍数である. よって,a,b,c はすべて 3 で割り切れる. (3) a2 + b2 = 3c2 を満たす自然数 a,b,c が存在すると仮定すると,(2) の結 果から a = 3n A, b = 3n B, c = 3n C とおける (n は自然数,3 つの自然数 A,B ,C の少なくとも 1 つは 3 で割 り切れない).このとき (3n A)2 + (3n B)2 = 3(3n C)2 A2 + B 2 = 3C 2 上式および (2) の結果から,A,B ,C はすべて 3 で割り切れることにな り,A,B ,C の仮定に反する. よって,a2 + b2 = 3c2 を満たす自然数 a,b,c は存在しない. 5 3 (1) 直角三角形 ABD において AD = AB sin B A ···° 1 O 正弦定理を 4ABC に適用すると AB = 2R より AB = 2R sin C sin C ···° 2 B E D C ° 2 を° 1 に代入すると AD = 2R sin B sin C ···° 3 A < 90◦ より,円周角と中心角の定理により ∠BOC = 2A 1 また,4BOE ≡ 4COE であるから ∠BOE = ∠BOC = A 2 OB = R であるから 4BOE において OE = R cos A · · · ° 4 (2) 4ABC の重心 G は,中線 AE 上にあるから,G と O が一致するとき,直 線 AE は辺 BC の垂直二等分線であるから CA = AB 同様に,辺 CA の中点を F とすると,OF⊥CA G は,中線 BF 上にあるから,G と O か一致するとき,直線 BF は辺 CA の垂直二等分線であるから AB = BC よって,AB = BC = CA より,4ABC は正三角形である. −→ −→ −→ 別解 ~a = OA,~b = OB,~c = OC とすると −→ 1 ~ ~ ~ OG = (a + b + c) 3 ~ ~ ~ ~ O と G が一致するとき,a + b + c = 0 であるから ~a + ~b = −~c より (~a + ~b)·(~a + ~b) = (−~c)·(−~c) ゆえに |~a|2 + 2~a·~b + |~b|2 = |~c|2 |~a| = |~b| = |~c| = R であるから 2~a·~b = −R2 同様にして このとき 2~b·~c = 2~c·~a = −R2 −→ |AB|2 = |~b − ~a|2 = |~b|2 − 2~a·~b + |~a|2 = 3R2 −→ −→ 同様にして |BC|2 = |CA|2 = 3R2 −→ −→ −→ よって,|AB| = |BC| = |CA| より,4ABC は正三角形である. 6 (3) OG//BC より,4EGO 4AED EG : GA = 1 : 2 であるから A OE : AD = 1 : 3 ゆえに AD = 3OE O G ° 3 ,° 4 を上式に代入すると B D C E 2R sin B sin C = 3R cos A A + B + C = π より cos A = − cos(B + C) であるから 2 sin B sin C = −3 cos(B + C) = −3(cos B cos C − sin B sin C) ゆえに 3 cos B cos C = sin B sin C よって tan B tan C = 3 y 別解 O を座標平面上の原点とし,x 軸を辺 BC と平 行にとり,A(a, b) とし,B と C は y 軸に関して 対称であるから,B(−c, −d),C(c, −d) とする. OG//BC より,G は x 軸上にあるから,4ABC の重心 G の y 座標について −c b + (−d) + (−d) = 0 ゆえに b = 2d 3 B A 2d a c O G −d E D C したがって OE = |d|, AD = 3|d| より AD = 3OE BD = |a + c|, CD = |c − a| 4ABC は鋭角三角形であるから,|a| < |c| に注意して tan B tan C = AD AD 3|d| 3|d| 9d2 × = × = 2 BD CD |a + c| |c − a| c − a2 · · · (∗) ここで,OA2 = OC2 であるから a2 + (2d)2 = c2 + (−d)2 ゆえに c2 − a2 = 3d2 · · · (∗∗) d 6= 0 であるから,(∗∗) を (∗) に代入すると tan B tan C = 3 x 7 4 (1) A さん,B さんが投げた硬貨のうち表が出た硬貨の合計金額をそれぞれ X ,Y とすると X 確率 0 5 10 15 1 8 3 8 3 8 1 8 計 1 Y 確率 0 5 1 4 1 4 10 15 1 4 1 4 計 1 よって,A さんが B さんに勝つ確率 p,および引き分けとなる確率 q は µ ¶ µ ¶ 3 3 1 3 1 1 1 1 1 1 p= × + + = + + + 8 4 8 4 4 8 4 4 4 8 1 1 1 3 1 3 1 1 1 q= × + × + × + × = 8 4 8 4 8 4 8 4 4 (2) (1) の X ,Y に対して,ゲーム終了後に A さんが持っている硬貨の合計金 額を Z とすると,Z およびその確率 P (Z) を表にすると X Y 0 5 10 15 したがって 合計金額 Z 0 5 10 15 0 0 30 15 5 30 25 15 30 25 20 15 0 5 10 15 合計金額の確率 P (Z) Y 0 5 10 15 X 1 1 1 1 1 1 0 8 · 4 8 · 4 8 · 4 18 · 14 5 38 · 14 38 · 14 38 · 41 38 · 14 10 38 · 14 38 · 14 38 · 41 38 · 14 15 18 · 14 18 · 14 18 · 41 18 · 14 1 1 1 + + = 32 32 32 3 3 6 P (Z = 5) = + = 32 32 32 3 P (Z = 10) = 32 8 P (Z = 15) = q = 32 1 P (Z = 20) = 32 3 1 4 P (Z = 25) = + = 32 32 32 3 3 1 P (Z = 30) = + + = 32 32 32 P (Z = 0) = 3 32 7 32 よって,求める期待値 E は E =5× 255 6 3 8 1 4 7 + 10 × + 15 × + 20 × + 25 × + 30 × = 32 32 32 32 32 32 16
© Copyright 2024