ベクトル解析 演習問題 3 2014 年度前期 工学部・未来科学部 2 年 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) ※レポートを提出したい人は、以下の注意点を守って提出して下さい。 (ⅰ) 必ず分かるところに学籍番号、学科、氏名を書いて下さい。 (ⅱ) A4 の紙を用いて、複数枚になる場合はホチキスや針無しステープラーで綴じて下さい。 (ⅲ) 提出期限は 次回の講義の開始前迄 とします。 問題 3-1. a を正の実数とする。t でのパラメータ表示が r(t) = ( ) a cos3 t a sin3 t というベクトル値関数 r : [0, 2π] → R2 で与えられる平面曲線 C を アステロイド astroid と呼ぶ (高校の教科書やベクトル 解析の参考書で、どのような曲線か調べてみよう)。 √ 1 3 3 (1) C 上の点 P0 ( a, − a) に於ける接線の方程式の s でのパラメータ表示 を求めなさい。 8 8 (2) 設問 (1) で求めた式からパラメータ s を消去して、P0 に於ける C の接線の (パラメータ s を含まない形での) 方程式を求めなさい。 (3) 曲線 C の 0 ≤ t ≤ π に対応する部分の長さを求めなさい。 4 ※ 余力のある人は、サイクロイド r(t) = ( ) at − a sin t (教科書 33 ページ 例 2.4 参照) に対して a − a cos t も、適当な点での接線の方程式及び (0 ≤ t ≤ 2π に対応する部分の) 長さを求めてみよう。 cos t 3 問題 3-2. t でのパラメータ表示が r(t) = sin t というベクトル値関数 r : [0, 2π] → R で与え 2t られる xyz 空間内の常螺旋 C を考える。 (1) C 上の点 Q0 (−1, 0, 2π) に於ける接線の方程式の s でのパラメータ表示を 求めなさい。 (2) 設問 (1) で求めた式からパラメータ s を消去して、Q0 に於ける C の接線の (パラメータ s を含まない形での) 方程式を求めなさい。 (3) 曲線 C の長さを求めなさい。 1 【略解】 問題 3-1. ′ 先ず r (t) = ) ( −3a cos2 t sin t 3a sin2 t cos t に注意しよう。 1 (1) 点 P0 に対応するパラメータ (時刻) t0 は、a cos3 t0 = a 8 √ 3 3 1 及び a sin3 t0 = − a を満たす、つまり cos t0 = 及 2 2 √ 3 5 を満たすので、 t0 = π であることが び sin t0 = − 2 3 分かる。したがって P0 での接ベクトル (速度ベクトル) は ( ) ( 3√3 ) 5 8 a r′ π = と計算出来る。求める接線 ℓ は P0 を 9 3 a 8 通るので、ℓ 上の点 P (x, y) に対して −−→ −−→ −−→ −−→ OP = OP0 + P0 P = OP0 + sr ′ ( 5 π 3 ( ) = ) √ 3 3 1 a + as 8 √ 8 . − 3 8 3 a + 98 as ( したがって r ℓ (s) = −−→ (2) OP = ( ) x y ) √ 3 3 1 a + as 8 √ 8 − 3 8 3 a + 98 as が求める接線 ℓ のパラメータ表示を与える。 より √ 1 3 3 x= a+ as, 8 8 √ 3 3 9 y=− a + as. 8 8 この式から s を消去して整理すると ℓ: √ √ 3x − y = 3 a. 2 (3) 曲線 C のパラメータ t から t + ∆t に対応する部分の微小長さ (線素) を ∆σ とする。即ち ∆r = r(t + ∆t) − r(t) とおくならば ∆σ = |∆r| である。このとき求める曲線の長さは t= π 4 ∑ t=0 ¯ ¯ ∑ ¯ ∆r ¯ ¯ ¯ ∆σ = ¯ ∆t ¯ ∆t t= π 4 t=0 2 において ∆t を 0 に近づけたもの。したがって ∫ t= π 4 t=0 ¯ ¯ ¯ dr ¯ ¯ ¯ dt dσ = ¯ dt ¯ t=0 ∫ π4 √ = (−3a cos2 t sin t)2 + (3a sin2 t cos t)2 dt ∫ t= π 4 0 ∫ π 4 = √ 9a2 cos2 t sin2 t(cos2 t + sin2 t) dt 0 ∫ π 4 |3a cos t sin t| dt ¯ ∫ π4 ¯ ¯3 ¯ ¯ ¯ = ¯ 2 a sin(2t)¯ dt (倍角の公式) 0 ] π4 [ 3 3 = a. = − a cos(2t) 4 4 0 = 0 【解説】 アステロイドの接線の方程式と長さを求める問題。この手の問題では先ず最初に 1 π から安直に t0 = と 2 3 1 している答案が 非常に 多く見られました。0 ≤ t0 ≤ 2π の範囲で cos t0 = となる t0 は、 2 π 5 だけでなく π も該当する ことに注意しましょう。しかも、今度は y 成分を比較すると 3 √ 3 5 3 π sin t0 = − と分かりますので、結局求めるパラメータ t0 は の方ではなく t0 = π の 2 3 3 方だったと分かります。このようなミスは、t0 を求めた後に 他の成分にも t0 の値を代入し 点 P0 に対応するパラメータ t0 を求めるのが鉄則ですが、cos t0 = て、ちゃんと点 P0 の座標が出て来るか を確認すれば防げるものです。パラメータ t0 をちゃ んと求めたと思ったら、必ず他の成分にも代入して計算ミスをしていないか確認する癖を付け ましょう。 また、(3) の積分で √ (sin t cos t)2 = sin t cos t としている答案が殆どでしたが、根号を外 す際には 必ず絶対値を付ける 習慣を付けましょう。今回は絶対値を付け忘れても積分値が 変わらない範囲で計算をしてもらったので正解にたどり着いた人が多かったですが、例えば 0 ≤ t ≤ π の部分の長さを求めるときには、絶対値を付けないと [ ]t=π ∫ t=π 3 1 3a sin t cos t dt = a − cos 2t =0 2 2 t=0 t=0 (!!!) となってしまいます (勿論正しくは ∫ t=π 3a t=0 ) (∫ ∫ t=π t=π/2 3 (− sin 2t) dt | sin 2t| dt = a sin 2t dt + 2 t=π/2 t=0 t=0 ([ ]t=π/2 [ ]t=π ) 3 1 1 = a − cos 2t cos 2t + = 3a 2 2 2 t=0 t=π/2 3 | sin t cos t| dt = a 2 ∫ t=π が正解です)。このようなミスをしないためにも、根号を外す際には必ず絶対値をつける癖を 付けておいて下さい。 あとは、接ベクトルなのに (r ′ (t0 ) ではなく) r ′ (t) そのものをつかってパラメータ表示の式 を立てている人や、r ′ (t) の微分 (合成関数の微分法) 自体を間違えている人も散見されまし 3 た。該当する人たちは、もう一度『微分積分学および演習 Ⅰ』の微分計算の箇所や、『線形代 数学 Ⅰ』の直線のパラメータ表示の箇所を今のうちに復習しておくことをお薦めします。 − sin t 先ず r ′ (t) = cos t に注意しよう。 2 問題 3-2. (1) 点 Q0 に対応するパラメータ (時刻) t0 は、cos t = −1, sin t0 = 0, 2t0 = 2π を満たすの で、(特に z 成分を比較すると) t0 = π であることが分かる。したがって、Q0 での接ベクト 0 ル (速度ベクトル) は r ′ (π) = −1 となる。求める接線 m は Q0 を通るので、m 上の点 2 Q(x, y, z) に対して −1 −−→ −−→ −−→ −−→ OQ = OQ0 + Q0 Q = OQ0 + sr ′ (π) = −s . 2π + 2s −1 したがって r m (s) = −s が求める接線 m のパラメータ表示を与える。 2π + 2s x −−→ (2) OQ = y より z x = −1, y = −s, z = 2π + 2s この式から s を消去して整理すると m : (x = −1) かつ (2y + z = 2π). (3) 曲線 C のパラメータ t から t + ∆t に対応する部分の微小長さを ∆σ とする。このとき求め る曲線の長さは t=2π ∑ ∆σ = t=0 t=0 4 ¯ ¯ ∆r ¯ ¯ ¯ ¯ ∆t ¯ ∆t t=2π ∑¯ において ∆t を 0 に近づけたもの。したがって ∫ t=2π t=0 ¯ ¯ ¯ dr ¯ ¯ ¯ dt dσ = ¯ dt ¯ t=0 ∫ 2π √ (− sin t)2 + (cos t)2 + 22 dt = ∫ t=2π ∫ 0 ∫ 0 2π √ (sin2 t + cos2 t) + 4 dt 2π √ = = 5 dt 0 = [√ ]2π √ 5t = 2 5π. 0 【解説】 常螺旋の接線の方程式及び長さを求める問題。やることは問題 3-1. と全く同様 ですが、実はこちらの方が計算が単純なので取り組み易かったのではないでしょうか。実際に 0 ′ ただ、パラメータ t0 = π を求めているのに、接ベクトルが何故か r (π) = 1 となって 2 いる人が異様に多かったです (cos π は −1!)。恐らく気を抜いてイージーミスをしてしまった 問題 3-1. よりも正答率は圧倒的に高かったです。 人が多かったのではないでしょうか? 最後迄解き終わった後には見直しをする癖を付けま しょう。 ちなみに常螺旋の長さは (定数関数 √ 5 の積分ですので) 非常に簡単に計算出来ますが、常 螺旋 面 の表面積の計算は一転して非常に面倒くさくなります。その辺りのややこしい計算は 次回のレポート問題で取り上げていますので、是非チャレンジしてみて下さい!! 5
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