麻薬持続皮下注射運用基準

麻薬持続皮下注射運用基準
~テルモ・テルフュ-ジョン®小型シリンジポンプTE-361 の場合~
緩和ケアチーム委員会
Ⅰ
目的
1. がん性疼痛や呼吸困難を緩和する。
2. 患者が自分の判断で疼痛コントロールを行う。
Ⅱ 適応
以下の患者に必要であることを主治医が判断した場合に適応となる。
1.
経口や経直腸などによるアプローチが不能。(嘔気・嘔吐、消化管の
通過障害、嚥下困難、意識低下など)
2. 下血や吐血により消化吸収が不良。
3. 疼痛・呼吸困難が強く短時間での症状マネジメントが必要。
4. 末梢静脈路の確保が困難。
Ⅲ 利点
在宅での使用も可能。
Ⅳ 準備物品
1. テルモ:テルフュージョン小型シリンジポンプ・・MEより借り受け
2. 10ml ロック式シリンジ
3. JMS 延長チューブ 1000mm
4. JMS 延長チューブヘパリンロック用
5. JMS プラネクタ PN ロック
6. 24G サーフロー針
7. オプサイト(IV3000:7×9 ㎝)
8. 優肌絆
Ⅴ 手順
1. 使用薬剤をシリンジに詰め、延長チューブとヘパリンロック用延長チュ
ーブ、プラネクタ PN ロックまで接続しておく。
2. 延長チューブの 3/4 まで手動で薬液を満たし、残りはシリンジポンプに
セットした後、早送りスイッチで満たす。ポンプに患者名、薬剤名、用量
を記載する。
3. シリンジポンプにシリンジをセットし、流量、不応期をあらかじめセッ
トしておく。
(*不応期とは、レスキュー後、次にレスキューが行えるまでの時間)
4. 穿刺部位を選択する。(体動の影響が少なく皮下組織が厚い前胸部、腹
部、大腿部など)
5. 初回穿刺は、原則として医師が行う。
6. 穿刺部位の消毒後、指と指の間が 1 ㎝以上に
なるように皮膚をつまみ、患者に声かけをして
穿刺する。
7. 身体の動きの影響を受けにくい方向へ、針を刺入する。
1)
上肢や上半身の
動きがある場合、
針の刺入方向は
頭側に向ける。
2)
起き上がれる場
合、刺入方向は腹
部の正中に向け
て横向きにする。
1)
2)
3)
四肢の体動は余
りなく左右の体
位交換が定期的
に必要な場合、刺
入方向は頭側に
向ける。
3)
図1.注射部位の例
OPTIM ステップ緩和ケアより
8. 穿刺後に血液の逆流、しびれや強い痛みがないかを確認する。
9. 穿刺部をオプサイトで固定する(固定方法は末梢点滴の固定に準ずる。
10.ルートの固定は、ループを作りゆとりを持たせて皮膚に貼る。
11.自力移動できる患者は、専用のポシェットに入れると良い。
Ⅵ
カルテ操作・観察項目
1.巡視時は、流量と積算量を確認し、場合によっては「積算量」を観察項
目に入れる。
2.「観察」の項目に「刺入部発赤・腫脹」、「刺入部疼痛」を加え、巡視時
に観察する。←「抗がん剤」の項目にあり。
3.「輸液」の項目に「持続皮下注射」を加える。
4.疼痛を NRS で評価したり、レスキューの使用を適宜記入することは、
麻薬を持続静注しているときと同様に行う。
Ⅶ
機械の名称と主な機能
AC/ 電 池 充
電 中 ラ ン
プ:電源 の状
態を表す。
表示切り替えスイッ
設定表示部:流量や積
チ:流量・積算量・不
算量および不応期(レ
応期の表示を切り替え
スキュー後、次にレス
る。15 秒経過すると流
キューが行えるまでの
量表示に戻る。
時間)を表す。
積算クリアスイ
動作インジゲータ:動作
状態を表す。
緑点滅→開始、早送り中
消灯→停止中
赤点滅→警戒発生中
*機械の名称と機能の詳細は、「臨床工学科」のHPを参照。
ッチ:約 2 秒以上
押すとブザーが
鳴り、積算量をク
リアできる。
Ⅷ 注意事項
1. 充填薬剤は、1 日量とする。
2. 投与流量は、安定した吸収のために原則として 1ml/hr 以下となるよう、
薬液濃度を調整する。
3. 微量投与であり、目視での動作確認が困難であるため、巡視ごとに動作
インジゲータ・流量・積算量を機械で確認する。
4. ルートは閉鎖回路となっているため、シリンジ交換はプラネクタ PN ロ
ックまでとし、穿刺部位は発赤が生じるまで変更する必要はない。
5. 初回穿刺は、経皮下での薬剤の反応観察のために原則として医師が行う。
6. 刺し替えからは、看護師が行ってもよい。
7. 充電によりバッテリーでの運用が可能なため、歩行、体動時などの一時
的な動作はコンセントがなくても良いが、安静時やコンセントが近くにあ
る場合はなるべく充電しておくことが望ましい。
8. 刺入部の発赤により頻繁な差し替えを必要とする場合は、発赤予防にリ
ンデロン注を 0.5mg~1mg をオピオイドに混注するとよい。
【施行例】
塩酸モルヒネ 10mg 1A
生食
9ml
=総量 10ml
流速
:0.4ml/hr、
レスキュー
:0.4ml/回(流速を設定すると自動的に 1 時間量がレ
スキュー量となる)
不応期
:15 分
【引用:参考資料】
OPTIM ステップ緩和ケア
2012.9 月作成
緩和ケアチーム委員会