Kwansei Gakuin University Repository

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Title
チップ増強を駆使した単一半導体量子ドットの発光挙動制御
Author(s)
立石, 知基
Citation
関西学院大学
Issue Date
URL
http://hdl.handle.net/10236/12353
Right
http://kgur.kawansei.ac.jp/dspace
2013 年度
修士論文要旨
チップ増強を駆使した単一半導体量子ドットの発光挙動制御
関西学院大学大学院理工学研究科
化学専攻 増尾研究室 立石 知基
【序論】これまで我々は,金属ナノ構造体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)と相互作
用した単一量子ドット(QD)の発光挙動について検討してきた1-3)。その結果,LSPRと
の相互作用により,QDの発光挙動を制御可能であることがわかってきた。QD-LSPR
間の相互作用は,QDと金属ナノ構造体間の距離,およびQDの吸収・蛍光スペクトル
と金属ナノ構造のプラズモン共鳴スペクトルのオーバーラップに強く依存する。そこ
で本研究では,LSPRと相互作用したQDの発光挙動を詳細に解明することを目的とし,
AFMのチップ増強を駆使することで,QD-金属ナノ構造間の距離制御を試みた。金コ
ートAFMチップ,および金ナノ粒子を付着したAFMチップ(金チップ)を用い,これを
ナノメートルスケールでQDに対して近づけることでQD-AFMチップ間距離を制御し,
その距離に依存したQDの発光挙動変化を観測し,LSPRと相互作用したQDの発光挙動
を詳細に解明することを試みた。
【実験】QD として CdSe/ZnS(発光波長 605 nm)を用い,そのトルエン溶液をガラス基
板上にスピンコートしたものを測定用試料とした。金ナノ粒子付着 AFM チップは,
シリコン製 AFM チップにポリエチレンイミンを付着させ,その後,単一金ナノ粒子
を吸着させることにより作製した。金コート AFM チップは,シリコン製 AFM チッ
プに金を蒸着によりコートした市販品を用いた。共焦点顕微鏡と AFM を組み合わせ
た装置を用いて,実験を行った。励起光として,ピコ秒パルスレーザー(波長 405 nm)
をラジアル偏光にした後,高倍率の対物レンズ(100 倍, N.A1.40)により集光すること
で Z 偏光とした。実験操作として,まず金チップを用いて,ステージスキャンにより,
単一 QD の AFM 像と蛍光像を同時に測定した。その後,AFM 像 から単一 QD を選
び,その単一 QD に対して垂直方向にナノスケールで任意の距離に金チップを位置さ
せ,単一 QD の蛍光強度,蛍光寿命,光子アンチバンチング挙動,蛍光スペクトルを
測定した。
【結果・考察】
まず,金ナノ粒子付着 AFM チップを用いた結果について述べる。図 1 に金ナノ粒
子を付着した後の AFM チップの SEM 像を示す。チップ先端に 70 nm の金ナノ粒子が
付着していることから,この方法を用いて金ナノ粒子を付着させることが可能である
ことがわかった。そこで,この金ナノ粒子チップを用い,単一 QD の発光挙動評価を
行った。しかしながら,金ナノ粒子チップを単一 QD に近づけても発光挙動の変化は
図 1 金ナノ
ノ粒子付着 AFM チッ プ
の SEM 像.右上の挿入
入図はチッ
ップ
先
先端を拡大し
したもので
である.
図2
金コ
コートチップ
プの SEM 像.
像
観測されなかった
た。この原
原因として, 金ナノ粒
粒子チップを
を用いた場
場合,単一 QD の
AFM 像
像を測定す
することが出
出来ず,金
金ナノ粒子チ
チップをナ
ナノスケール
ルで単一 QD
Q に近
づけることができ
きなかったであると考
考えられる。
次に、金コー
ートチップを用いた結
結果に次に述
述べる。図
図 2 に用いた
た金コート
トチップ
の SEM
M 像を示す。チップの
の曲率半径
径は 50 nm 程度であっ
程
った。この金
金コートチ
チップを
用いた場
場合では,上述の金ナ
ナノ粒子付
付着 AFM の場合と異
の
なり,単一
一 QD の AF
FM 像を
測定可能
能であった
た。そこで,この金コー
ートチップ
プを AFM に単一
に
QD に
に対して近
近づけ,
それに伴
伴う単一 QD
Q の発光挙
挙動を測定
定した。図 3 には,単
単一 QD か ら検出した
た場合の
蛍光減衰
衰曲線(a-cc),および光
光子相関ヒ
ヒストグラム(d-f)を示
示す。(a,d)は
は金チップ
プを近づ
ける前の単一 QD
D の発光挙動
動である。 QD-金チッ
ップ間距離
離を 28 nm に
にするとチ
チップを
近づける前と比べ
べ,蛍光寿命
命の短
(d)
(aa)
寿命化が観測され
れた。さらに
に,チ
ップ間距
距離を 9.5 nm にする
ると寿
命はさらに短寿命
命化した。
この場
こ
(e)
(b
b)
合の光 子相関ヒス
ストグラム
ムおい
ては,中
中心ピークが高くなっ
ってお
り,アン
ンチバンチングを示す
す確率
(f)
(cc)
が低く なっている
ることがわ
わかっ
た。この
のように,金コートチ
チップ
を用い,単一 QD に近づける
ること
-150 -100
0 -50 0 50
0 100 150
10
20
30
40
で,単一
一 QD の発光挙動を変
変化さ
Decaay time (ns)
IInterphoton time
t
(s)
せることに成功し
した。詳細な
な距離 図 3 単一 QD
Q の蛍光減
減衰曲線(aa-c),および光子相関
関
制御と それに伴 う発光挙動
動変化 ヒ ストグラム
ム(d-f).(a,d))金コート近
近づける前
前.(b,e) QD
Dップ間距離 28 nm の
の場合.(c,f) QD-金コー
ー
金 コートチッ
について検討した
た。
距離 9.5 nm
m の場合.
ト チップ間距
1) Masuuo, S. Naikii, H. Machid
da, S. Itaya,, A. Appl.Ph
hys.Lett., 95
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2) Naiki, H. Masuoo, S. Machid
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3) Masuuo, S. Tanakka, T. Mach