ファンドニュース(48) QI契約の改訂について

ファンドニュース
QI契約の改訂について
2014 年 11 月
はじめに
2014年6月27日、米国内国歳入庁(IRS)はRevenue Procedures 2014-39を公表しました。これは、2014年6月30日以
降適用される新しいQI契約(Qualified Intermediary agreement)によって米国外金融機関(外国金融機関)に要求される、
報告、源泉徴収、および本人確認書類の記録保管に関するガイダンスを提供するものであり、QI契約を締結するすべて
の運用会社に影響を及ぼすものです。本稿は、Revenue Procedures 2014-39により、従来のQI監査(外部検証)に代わ
り導入されたQIコンプライアンス・プログラムについて概説します。
経緯
QI制度は、非居住者である個人および法人等への米国源泉所得の支払に伴って発生する源泉徴収の正確な実施の
ための制度であり、1997年10月に成立しました。この制度の成立により、外国金融機関は、IRSとQI契約を締結し適格仲
介人(=QI)となることで、米国源泉の利子・配当あるいはその他の源泉徴収対象所得を受領する最終受益者の本人確
認およびForm1042によるIRSへの報告等のQI契約が要求する義務を負う代わりに、IRSへの最終受益者全員分の本人
確認書類の提出等の事務負担から解放されることとなりました。その後、2001年1月には制度の適用が開始され、QIによ
る同年を対象としたIRSへの報告が開始されました。また、QIがQI契約を遵守していることを明確にするため、その遵守
状況について外部監査人によるQI監査が求められており、2002年以降、各QIに選任された外部監査人が定期的にQI
監査(外部検証)を実施したうえで、IRSに報告書を提出してきました。
一方、2010年3月に、米国人による外国金融機関を利用した租税回避行為を防止し、税収の増加を図ることを目的と
して、米国連邦税制改正の一部としてFATCAが成立しました。これに伴い、内国歳入法第4章が新設され、内国歳入法
第3章を基礎とするQI制度とはその目的の相違から共存が図られることとなりました。さらに、2013年1月には、FATCAの
確定版である最終規則が公表されましたが、QI契約の更新をFFI(Foreign Financial Institusion = 外国金融機関)登録
の際に実施することや、既存のQI契約において要求されていたQI監査のあり方等を検討している旨が明らかとなり、
FATCA上の要求事項との整合が図られていました。特に、QI監査義務については、責任者によるコンプライアンス・プロ
グラムの構築と宣誓によって法令を遵守していることを明確にするFATCAとの比較から撤廃を求める声も多くあがってい
ました。
そして、2014年6月に新QI制度としてRevnue Procedures2014-39が公表され、FATCAと整合的に、外部検証義務の
代わりに、コンプライアンス体制の整備と定期的なレビューを基礎としたQIコンプライアンス・プログラムの構築がQIに求
められることとなりました。
コンプライアンス・プログラムの概要
改訂後のQI契約は、2014年6月30日以降に適用されます。以前にQI契約を締結した既存のQIは、FATCAポータル
サイト上で登録し、宣誓を行うことによりQIステータスを維持することが出来ます。新規にQIになる者は、従来どおり紙面
による登録および宣誓をする必要があります。この点、全て紙面による連絡を求めてきた従来のQI制度から、ウェブサイ
ト上で登録、報告を完了可能であるFATCA制度に整合的となるよう変更されました。
また 、新QI制 度で は、FATCAと 同様に、QI 契約遵 守 の監督、定 期的な 宣誓、QIに関する報 告を行 う責任 者
(Responsible Officer : RO)の任命を行った上で、ROの責任のもとQIコンプライアンス・プログラムを構築することが求め
られました。FATCAでもROの責任のもとでコンプライアンスプログラムの構築が求められておりますので、上述のとおり、
QIとFATCAの整合を図った結果の変更と理解されます。しかしながら、新QI制度においては、QIコンプライアンス・プロ
グラムの内容を具体的に以下の6項目と規定しており、単にFATCA遵守のためのポリシー、プロシージャ―、プロセスを
コンプライアンス・プログラムに含むよう求めたFATCA制度とは大きく異なります。
<QIコンプライアンス・プログラムの必要項目>
A)
ポリシーおよびプロシージャ―の文書化(Written Policies and Procedures)
B)
研修(Training)
C)
システム(Systems)
D)
事業変更の監視(Monitoring of Business Changes)
E)
定期的検証(Periodic Review)
F)
定期的宣誓(Periodic Certification)
ROは、上記項目から成るQIコンプライアンス・プログラムを構築した上で、QIの外部もしくは内部の独立した監査人
(検証人)による定期的検証(Periodic Review)を3歴年後に直近1暦年を対象として実施し、その結果も踏まえて原則3暦
年ごとに遵守体制が整備されている旨を宣誓することとなります。
なお、改訂後のQI契約において、QIがFATCAを遵守することが前提とされており、QI制度上の義務のみならず
FATCA上の義務をも満たす有効な内部統制を構築できていることも宣誓対象とされています。この点、QI制度が求める
宣誓とFATCAが求める宣誓との統一が将来的に予想され、今後のIRSからの公表には注目していく必要があります。
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文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。
あらた監査法人
第3金融部(資産運用)
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