情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 素数を小さいものから順番に p1 2, p2 3, p3 5, p4 7, と置くと次の非常に粗いが関係式が 成り立つ。 系 3.3 pn 2 2 n 証明 今まで素数に関することより、 pn1 p1 p2 pn 1 が成立する。 以下、帰納法で証明する。 p1 2 4 2 2 であるから、 n 1 では正しい。 1 n 1 とし、 1 k n に対して、 p k 2 2 とするとき、 k pn1 p1 p2 pn 1 2 2 1 22 22 2n n 1 1 22 1 22 n 1 1 22 n 1 n 1 2 1 。 ■ 素数計数関数 ( x ) の評価に関しては次のことが言える。 系 3.4 ( x ) log10 log10 ( x) (x 2 ) 証明 2 x 3 に対して、 ( x ) 1 log10 log10 (3) log10 log10 ( x) である。 x 3 に対しては、 n ( x ) と置けば、 pn x pn1 、 p 2 である。 系 3.3 より、 p n 1 2 2 n 1 であるので、 x 2 2 n 1 となり、対数を取れば、 l o 10g x 2 n1 l o 10g2 となり、もう一度対数を取れば、 log10 log10 x (n 1) log10 2 log10 log10 2 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 n ( log10 2 1) n log10 2 log10 log10 2 n ( log10 2 1) 2 log10 2 log10 log10 2 n 3 log10 2 log10 log10 2 2 n ( x) ■ [対数積分] 対数積分 li( x ) とは、 x 1 なる正の実数で与えられる関数である。 li( x ) = 関数 x 0 dt log e t x 0 dt ln( t ) 1 は t 1 において特異点であるが、x 1 においてその特異点の積分はコーシーの主 log e t 値として考える。 つまり、 x 1 に対して、 1 li( x ) = lim 0 0 dt ln(t ) x dt ln(t ) 1 となる。 他によく使われる関数として、補正対数積分関数 Li( x ) = li( x ) - li(2) で定義される関数がある。 ここで、li(2) = 1.0451637801174927848445888891946131365226155781512… x では、 (x) ~ li( x ) ~ Li( x ) が成り立つ。 以下は素数計数関数に関する表です。 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 【素数砂漠】 素数を小さい方から並べて p1 2, p2 3, p3 5, p4 7, と書いている。 pn pn1 pn とおく(つまり、 p n は素数列 p n の階差数列)と、隣接する二つの自然数の うち一方は偶数だから、 pn 1 n 1 、つまり、隣接する素数は 2 と 3 だけである。 特に、 p n が 2 となる二つの素数 p n と p n 1 は双子素数であるという(あとでこの講義で双 子素数の話が出る)。3 と 5 や 11 と 13 は、各々双子素数である。双子素数が無限にあるかは 未解決の難問である。 pn N 1 となる時には、 pn 1, pn 2,, pn1 1 は全て合成数になり、これら N 個の続 いた自然数には素数はひとつもない。このような合成数の続いた列を長さ N の素数砂漠と呼ぶ ことにする。 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 以下に100までの素数を箱枠で示している。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 100 までの間では、90~96 までが最長7の素数砂漠である。 定理 3.5 任意の自然数 N に対し、長さが N 以上の素数砂漠が存在する。 証明 ( N 1) ! k ( k 2, 3, 4,, N 1) という N 個の続いた自然数は、各々 k という 1 でも自分自身でもない約数をもつので全て合 成数である。よって、少なくとも長さ N の素数砂漠になっている。■ 丁度長さ N の素数砂漠や、長さが丁度 N である素数砂漠を与える最小の先頭の数を求めるのは 難しい。素数間隔は規則が予想つかず、ランダムに見える。現在でも未解決な問題が多い分野の ひとつである。 [素数の逆数の和] 素数は無限個あるが、その頻度・分布に関してもう少し詳しいことが分からないか?と言 う疑問がある。 次の結果は最初にレオンハルト・オイラーによりゼータ関数を研究することでもたらされた。 以下で述べる証明はエルデシュによるもので、より直接で、また簡潔なものとなっている。素数 が無限個存在することは証明に用いないため、そのことの別証明にもなっている。 定理 3.6 素数を小さい方から順に、 p1 , p 2 , p3 , … とすると、 1 p i 1 である。 i 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 証明 背理法を使って証明する。 1 p i 1 とする。 すると、ある自然数 k が存在し、 i i k 1 となる。 1 1 pi 2 ここで、 Q p1 p2 p3 pk として、自然数 n 1, 2, 3, に対して、 1 n Q と言う数を考えると、これらは p1 , p2 , p3 , , pk で割れません。 従って、 1 n Q のすべての素因子は、素数 pk 1 , pk 2 , pk 3 , にあるはずなので 1 1 n 1 1 n Q s 1 i k 1 pi s s 1 1 . s 1 2 右辺の和は、その項の中に左辺の全ての項を含んでいる。 つまり、 1 1 nQ は収束する。 n 1 他方、 1 1 1 1 となりますので、これは矛盾です。■ 2Q n1 n n 1 1 n Q n 1 2n Q n 普通、 1 p i 1 ~ log(log n) と言われています。 i これで「いくらでも大きい素数がある」ことはわかったが,もう少しくわしく、どれくらいの頻度で 素数が散らばっているのかを考えると、この証明からは何のヒントも得られない。 素数の頻度に関する2つ目の定理をあげる。 それはベルトランが素数表を挑めて予想し,後にチェビシェフが証明した定理です。 チェビシェフの証明はガンマ関数を使ったものでして、この定理の証明は非常に難しいとも言われま した。しかし現在では後に「放浪の数学者」といわれたハンガリー生れの鬼才エルデシュが高校生の ときに発見した初等的な証明があります(高校レベル)。以下の証明はエルデシュの原論文の通りでなく, 少し改変されています。 チェビシェフの定理.任意の実数 x 1 に対して、 x p 2x を満たす素数 p が存在する。 普通は、チェビシェフの定理は 「2 以上の自然数 n に対し、 n p 2n を満たす素数 p が必ず存在する。 」 と述べられることが多い。 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 n 2, n 3, n 4, 例 2 p 4 3 p 6 4 p 8 他の有名な未解決問題 平方数間に素数はあるか。つまり、全ての自然数 n に対して、 n 2 と (n 1) の間に素数は存 2 在するか。 12 1 , 2 2 4 , 32 9 , 4 2 16 , 5 2 25 , 6 2 36 , 7 2 49 , 8 2 64 , 9 2 81 ,… 2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43 47 53 59 61 67 71 73 79 83 89 97 101 103 107 109 113 127 素数計数関数 (x) 平方数間に素数はあるか。 n N , ((n 1) 2 ) (n 2 ) 1 チェビシェフの定理 n N , (2n) (n) 1 以下、チェビシェフの定理の証明を行って行く。 定理 3.7 チェビシェフの定理( ベルトラン・チェビシェフの定理) 自然数 n と 2n の間に素数がある。 補題 3.8 cn n 1 に対して、 2n Cn 2 2 n1 証明(数学的帰納法) c1 2 21 , c2 6 23 であるので、 n 1, 2 では正しい。 n のとき正しいとすると cn1 cn であり、 (2n 1)(2n 2) 2(2n 1) cn 2 n 1 (n 1) 2n 1 2 であるから、 n 1 cn1 2 2n1 2 2 2 2n1 2 2( n1) 1 となり、 n 1 のときも正しい。 ■ 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 系 3.9 2 n 1 証明 Cn 1 cn 2 2( n1) 2 明らか。 ■ 系 3.10 ( n 1) 以上 ( 2n 1) 以下の素数の積は、 2 2 n2 より小さい。 このとき該当する素数がなければ積を l と解釈する。 証明 2 n 1 Cn (n 1) (n 2)(2n 1) を素因数分解すると、 1 2(n 1) ( n 1) 以上 ( 2n 1) 以下の素数は分子に1回現れるだけで、約分されないから ( n 1) 以上 ( 2n 1) 以下の素数の積 2 n 1 Cn となるので、系1を適応する。■ 補題 3.11 n までの素数の積 Pn は 1 2 2 n1 4 n 2 証明(数学的帰納法) 以下である。 P2 2 23 , P3 6 25 , P5 30 2 9 など,小さい n については正しい。 n より小さい場合は正しいとして数学的帰納法により n のときを示す。 偶数 2m は素数でないから P2 m P2 m1 であり, n を奇数 2m 1 としてよい。 帰納法の仮定から Pm 2 2 m1 ( 2m 2m 1 ) である。他方 ( m 1) から ( 2m 1) までの素数の積は,上述の系 2 により 2 2 m2 より小さいから n 2m 1 として Pn P2m1 2 2m1 2 2 m2 2 2n1 である。 ■ 補題 3.12 n 4 のとき cn 2n Cn 4n n 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 2 日 44 64 であるので成立している。 4 n 4 の n について正しいとして、 n+1 のときにも成り立つことを示す。 c4 70 証明(数学的帰納法) (n 1) cn1 2(2n 1) cn (n 1) cn1 2(2n 1) であり、 4n n 2n 1 2 なので、上の右辺は、 2 2 4 n 4 n1 より大きい。■ n 補題 3.13 n ! を素因数分解したとき,ある素数 p が p r の形で含まれたとすると n n n r 2 s p p p である。ここで、 は切り捨て関数(ガウス関数)を表している。 上式の右辺は、有限和である。 証明 n n p 1 から n までの p の倍数は 個である。 n ! を p で割ると、全体として p の倍数は p n 2 除かれるが、 p の倍数は残り、 p の累乗指数が1つ減る。その個数は 2 個である。 p 3 それを除くと p の倍数が、累乗指数が2つ減って残る。この操作を繰り返すと、 補題の式となる。■ 系 3.14 cn 2n Cn を素因数分解すると, 2n より大きい素数は現れても p 1 の形である。 それ以下の素数が p の形で現れれば, p 2n である。 k k 証明 2n n n s 2 s (*)は 0 か 1 である。実際, s の小数部分が 0.5 未満ならば 0, 0.5 以上ならば 1 p p p である。 さて, 2n p なら cn に現れる上式の値は s 1 のときだけで, p 0 か p 1 である。 2n 以下の p については, p r 2n p r 1 である r ( 2 )が存在し, (*) は s 1, 2,, r について 現れる。 各々の s に対して(*)は 0 か 1 なので,p k k r の形で現れるとき k r であり, p p 2n である。 ■
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