不整脈治療薬 2014-11-17-4限目 内容 ●なぜ不整脈は起こるのか? ●ぜひ熟知してほしい不整脈の種類 徐脈性不整脈 (⇒ペースメーカーの適応になることが多い) 頻拍性(頻脈性)不整脈 (⇒薬物療法or除細動器の適応) ●不整脈の発生機序と遺伝的素因 ●不整脈治療における薬物療法 刺激伝導系の解剖と 生理の基礎 右室から見た断面 左室から見た断面 不整脈を起こしやすい状態 心電図の摂り方 心房の収縮 心室の収縮 心室の拡張 心電図を見るポイント ● リズムは整か? ● P波はあるか? ● QRS幅は広いか狭いか? ● P波とQRS群に関係はあるか? 危険な不整脈 ●生理的な不整脈か 異常な不整脈かを見分ける! ●危険な不整脈は直ちに処置する 呼吸性不整脈(生理的) 発生場所から見た不整脈の分類 ●上室性不整脈 心房性 房室結合部性 ●心室性不整脈 危険な不整脈を 含むことが多い *解剖学でいう心房と電気生理学でいう心房とは異なる。 心房性期外収縮 (premature atrial contraction; PAC) 発作性上室性頻拍 (paroxysmal supra ventricular tachycardia; PSVT) ●心房頻拍 (atrial tachycardia; AT) ●房室結節リエントリ―性頻拍 (A-V nodal reentry tachycardia; AVNRT) 発作性心房頻拍 (paroxysmal atrial tachycardia; PAT) (Atrial tachycardia; AT) (A-V nodal reentry tachycardia; AVNRT) ナトリウムチャネルブロッカー (タイプ Ia) カルシウム拮抗薬 交感神経・副交感神経の 支配を強く受ける 迷走神経を緊張させる ●深吸気で息を止める ●頸動脈を圧迫する 心房細動・心房粗動 心房粗動 第II誘導:通常、患者さんのモニターに使う誘導 心房細動 脈拍測定と心電図の解離 心房細動、心房粗動 ●持続性不整脈全体の約1/3を占めるもっとも 頻度の高い不整脈 ●心不全の増悪因子 ●心原性血栓の形成(脳梗塞の原因) ●原因 構造的リモデリング(炎症に伴う線維化) 電気的リモデリング (高血圧、心不全、加齢に伴い、心房筋のイオン チャネル発現量およびその特性が変化) 心房細動の治療 1.頻脈があるときは頻脈のコントロールが必要(心拍調整) ⇒房室結節の伝導を抑える カルシウム拮抗薬 ジギタリス製剤(迷走神経の緊張を促進する) 2.洞調律に戻すための治療 ⇒ナトリウムチャネルブロッカー Ia群 またはIc群 ⇒除細動 ⇒カテーテルアブレーション治療 3.血栓形成の防止 (心房細動始まって3~4日で心房内血栓ができる) ⇒ワルファリン、ヘパリン WPW 症候群 (Wolff-Parkinson-White症候群) WPW症候群の症例 WPW症候群 ●心房-心室間に房室結節以外にも連絡路を 持つ人がいる(1000人中1~3人) ●3つのタイプ(kent束の発生頻度が最も高い) WPW症候群 WPW症候群と心房細動が合併した時 ●心室応答が高頻度:kent束には、房室結節のような興奮を間引くような機能はない。 ●Wide QRS: kent束を出た後、固有心筋を通過し心筋を興奮させる。 ●RR間隔が全く不整:不整なf波がそのままR波に対応する 偽性心室頻拍(pseudo-VT) 一般的な呼び方ではない 房室結節の発生における遺伝子調節 QT 延長症候群 long QT syndrome(LQT) ●心電図におけるQT間隔の延長 ●torsade de pointes(心室頻拍の1つ) ●失神発作 ●原因:先天性 Romano-Ward 症候群(AD)13の遺伝子 Jervell and Lange-Nielsen症候群(AR)2つの遺伝子 後天性 心不全、心筋症、電解質異常、中枢神経疾患 薬物誘発性(もっとも頻度が高い) QT延長症候群 QT延長(LQT)症候群と遺伝子変異 QT延長と膜電流 LQT症候群でみられる特徴 ●Na+チャネル、Ca2+チャネル・・・・機能獲得変異、ハプロ不全 ●K+チャネル・・・・機能喪失変異、ドミナントネガティブ抑制 LQT1~3の治療 LQT syndromeを起こしやすい薬物 1.抗不整脈薬 キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、べブリジル、 ソタロール、ニフェカラント、アミオダロン 2.抗精神病薬 クロルプロマジン、ハロペリドール、フェノチアジン 3.三環系抗うつ薬 イミプラミン、アミトリプチリン 4.抗生物質 クラリスロマイシン、エリスロマイシン、 5.抗真菌薬 フコナゾール、イトラコナゾール 6.抗アレルギー薬 テルフェナジン 7.抗がん剤 ドキソルビシン 8.高脂血症薬 プロブコール LQT syndromeを起こしやすい病態 1.電解質異常 低カリウム血症、低マグネシウム血症 2.徐脈 房室ブロック、洞機能不全症候群(ジギタリス使用時) 3.中枢神経系疾患 くも膜下出血、頭蓋内出血 4.うっ血性心不全 5.甲状腺機能低下症 6.急性膵炎 上室性不整脈と心室性不整脈の違い 心室性期外収縮 活動電位持続時間:心室≫心房 ナトリウムチャネルブロッカー Ib群の効果 まとめー1 ●不整脈の誘因 ●呼吸性不整脈 ●上室性不整脈と心室性不整脈 心房性期外収縮 ●心房細動(Af),心房粗動(AF) ●心房細動の治療 ●WPW症候群(特徴的心電図と原因) ●QT延長症候群(LQT syndrome) LQT syndromeと遺伝子 LQT syndromeと薬物・病態 ●心室性不整脈 心室性期外収縮(PVC) 危険性 心筋の活動電位とイオン 心臓の電気的な興奮伝搬 細胞膜の分極・脱分極・再分極・過分極 チャネルの構造 自動能の規定因子 急速応答と緩徐応答 (自動能を持つ細胞の時) 心房筋、ヒス束、プルキンエ線維 静止膜電位は-75~-90mVと深い 興奮を伝導する速度が速い(1~3.5m/sec) 洞結節、房室結節 静止膜電位が-40~-60mVと浅い 興奮の始まりの立ち上がり速度が遅い 興奮伝導速度が遅い(0.01~0.1m/sec) 洞結節細胞・心室筋細胞の活動電位 活動電位は5つの相に分類 ●第0相:最初の急峻な立ち上がり(脱分極) ●第1相:最初の小さく一過性の再分極(早期再分極相) ●第2相:プラトー相 ●第3相:再分極相 ●第4相:拡張相 ペースメーカー細胞のリズム 徐脈性不整脈(主なもの) ●洞機能不全症候群 (Sick Sinus Syndrome:SSS) ●房室ブロック (Atrio-Ventricular Block:AV block) ●脚ブロック (Bundle Branch Block:BBB) ●補充収縮・補充調律 (Escape beat/Escape rhythm) 頻脈性不整脈とは? ●心拍数が100/分以上の時、頻脈 ●症状:めまい、動悸、失神、時には死に至る こともある。 ●重症度による分類 頻拍:100~250/分 粗動:250~350/分 細動:>350/分 頻脈性不整脈の発現機構 ●原因となるメカニズム (1)異常自動能(abnormal automaticity) ⇒心筋梗塞に伴う細胞外K+の上昇 (2)トリガードアクティビティ(triggered activity) ⇒期外収縮の主な原因 (3)リエントリー(re-entry) ⇒不整脈発現機構の中で最も頻度が高い (ジギタリス中毒等) 異常自動能 (abnormal automaticity) 「下位の自動能が何かしらの理由で亢進し、 上位の自動能を凌駕する状態」 心筋梗塞(high K+)などが原因で上位刺激伝導系と 下位刺激伝導系の最大拡張期電位の逆転 Triggered activity 心不全やジギタリス 中毒等で細胞内Ca2+ 過負荷となったとき QT延長症候群 心肥大のように 活動電位持続時間 が延長した時 リエントリー 房室結節 リエントリーで起こる不整脈の治療 頻脈性不整脈診断のアルゴリズム RR間隔 の規則性 QRS幅 心筋梗塞と不整脈 ●急性心筋梗塞に伴う心室性不整脈 ⇒入院前の突然死の95%以上は心室細動 ●冠動脈閉塞に続く再灌流に伴う不整脈 ⇒心室細動 ニフェカラント、アミオダロン リドカイン、アミオダロン 心不全と不整脈 心不全時の神経体液性調節 心不全での不整脈発生機序 ●交感神経b受容体刺激 ⇒PKA活性化 ●AT1受容体刺激 ⇒IP3⇒Ca2+動員⇒CaMKII活性化 ⇒PKC⇒NOX活性化⇒ROS産生⇒CaMKII持続的活性化 ⇒RYR(ライアノジン受容体)リン酸化⇒自発的Ca2+放出⇒不整脈 なぜカルベジロールが使われるか? ●b受容体遮断作用 ●a受容体遮断作用 ●抗酸化作用 ●G蛋白を介さないbアレスチンを介する作用 ●ライアノジン受容体に直接作用 抗不整脈薬の薬理学 ●Vaughan Williamsの分類 ⇒臨床的な抗不整脈薬選択に有用 (活動電位に及ぼす作用をもとに分類) 抗不整脈薬を4種類に分類 ●Sicilian Gambitの分類 ⇒臨床的な治療薬選択の裏付けとなる各薬物の 詳細な作用を知るのに有用 不整脈の発症機構と抗不整脈薬の電気生理学的 性質によって分類 Vaughan Williamsの分類 ●1a群:上室性/心室性不整脈 (活動電位持続時間の延長) Naチャネル抑制 ●1b群:心室性不整脈 (膜の安定化) (活動電位持続時間短縮) ●1c群:上室性/心室性不整脈 (活動電位持続時間不変) ●II群:洞頻脈(b遮断作用) ●III群:他の抗不整脈薬が無効の時の第二選択 (活動電位持続時間延長作用) ●IV群:発作性上室頻拍(Ca2+チャネル遮断) Vaughan Williamsの分類に基づく主な薬物 ● 1a群:キニジン、ジソピラミド、シベンゾリン、 ピルメノール ● 1b群:リドカイン、アプリンジン ● 1c群:フレカイニド、ピルジカイニド、 プロパフェノン ● II群:プロプラノロール、アテノロール ● III群:アミオダロン、ソタロール、ニフェカラント ● IV群:ベラパミル、ジルチアゼム Vaughan Williamsの分類の限界 ●そもそも、心筋の部位によって活動電位が異なる。 ⇒抗不整脈薬の与える影響が異なる。 (例:フレカイニド、心室筋の活動電位持続時間は変 えないが、心房筋では活動電位持続時間を延長さ せる) I群抗不整脈薬の心筋細胞活動電位持続時間に対する作用 Sicilian Gambitの分類 ●Na+チャネル遮断薬 a)純粋なもの:ピルジカイニド b)軽度のK+チャネル抑制作用のあるもの :フレカイニド c)抗コリン作用のあるもの :ジソピラミド、シベンゾリン、ピルメノール d)その他のチャネル、受容体にも軽度の作用があるもの :プロパフェノン、アプリンジン e)不活性化チャネル遮断薬(心室にしか効かないもの) :メキシチール、リドカイン ●K+チャネル遮断薬:ニフェカラント、ソタロール ●Ca2+チャネル遮断薬:ベラパミル、ジルチアゼム ●多チャネル遮断薬:べプリジル、アミオダロン Na+チャネル遮断薬 Ⅰ群抗不整脈薬の副作用 ●QT間隔延長を起こす。⇒早期後脱分極 ⇒torsades de pointesの誘発(発症は1%未満) ●房室伝導に対しても抑制作用 (未熟な医師によるリドカインの過量投与) ⇒房室伝導ブロック ●リエントリー型不整脈の誘発 ●間接的な心筋収縮力の低下 [Na+]細胞内↓⇒Na+/Ca2+交換系を介する細胞内 [Ca2+]の↓⇒心不全 アミオダロン (特殊な薬理作用を持つ) ●急性効果 Na+チャネル遮断 L型Ca2+チャネル遮断 I krチャネル遮断作用 I kurチャネル遮断作用 ●慢性効果 半減期がきわめて長い (1か月) I ksチャネル遮断作用 Itoチャネル遮断作用 まとめー2 ●心筋の電気的興奮と電解質 ●ペースメーカー細胞のリズム 自動能の形成 ●徐脈性不整脈(薬物治療の対象になりにくい) ●頻脈性不整脈 重症度分類 発現機構 (1)異常自動能 (2)トリガードアクティビティー (3)リエントリー ●心筋梗塞と不整脈 ●心不全と不整脈 ●Vaughan Williamsの分類
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