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【第 25回
京都府理学療法士学会】
棟に導入。第 71病日に病棟歩行を短下肢装具(
以
下 AFO)を使用した四点杖歩行に変更。
転倒恐怖感が基本動作能力に影響を与えた脳出
【結果】第 1
19病日に AFOと四点杖にて屋内歩行
血左片麻痺の一症例~課題難易度や提供課題の設
自立に至った。最終評価時 BR
S:Ⅳ-Ⅴ-Ⅳ。感
定に苦慮した理学療法を経験して~
覚:表在・深部覚共に軽度鈍麻。FIM9
6点(運動
68/認知 28)
まで改善。
三上
翔太 1)・伊藤
和範 1)・中川
智明 1)
1)医療法人社団 恵心会 京都武田病院
【考察】北地らは「転倒に対する恐怖という主観
的感情と客観的身体機能の相互関係を考慮する必
【キーワード】転倒恐怖感、脳卒中後抑鬱症状、
要がある」と報告しており、本症例においても理
課題難易度と提供課題の設定
学療法を実施する上で身体機能と精神機能の関係
を考慮する事は大きな課題であった。理学療法開
【はじめに】脳出血後左片麻痺や高次脳機能障害
始当初、高い身体機能の潜在性を有している事が
を呈し、転倒恐怖感等の出現により理学療法実施
示唆された症例に対し Topdo
wn方式である立
に難渋した症例を経験した。その後、再評価し理
位・歩行練習を通した身体機能の向上を図る事が
学療法を実施した結果、転倒恐怖感等の症状が軽
有効だと考えた。しかし、約 2週間程で転倒恐怖
快し屋内歩行自立に至った。屋内歩行自立に至る
感・抑鬱症状共に増悪し、リハビリ全体の受け入
までの過程を経過を踏まえて考察する。
れが不良となった。そのため、理学療法を実施す
る上で転倒恐怖感や抑鬱症状は阻害因子となり、
【説明と同意】本学会発表の同意を本人・家族よ
その解決が必須と考え原因を以下の様に考察し
り得て実施した。
た。
転倒恐怖感を誘発する原因として、基本動作能
【症例紹介】60歳代女性。右視床出血発症後、
力以上の課題提供、課題提供時の代償活動に伴う
約 1カ月で当院へ転院。入院時 CT:右視床・内
精神的負担の誘発が示唆された。また、脳出血に
包後脚損傷。BRS:Ⅱ-Ⅳ-Ⅲ。感覚:表在・深部
より情報処理機能の低下した脳機能に対し、立位・
覚重度鈍麻。高次脳機能障害:注意障害・左半側
歩行といった運動学的に難易度の高い課題は、情
空間無視。入院時 FI
M62点(運動 36/認知 26)。起
報処理過程で混乱に拍車を掛ける事も考えられた。
居動作:中等度介助、端座位:物的支持にて見守
そのため機能的側面でなく精神的側面に配慮し、
り、立ち上がり・立位保持:物的支持にて中等度
運動学的に難易度が低く調整が比較的容易な背臥
介助、歩行:全介助、長下肢装具(以下 KAFO)使
位や端座位での介入量を増やし、Botto
m up方式
用し平行棒内約 15m可能。
の中で情報処理の円滑化を図った。それにより、
再評価後の理学療法実施が円滑に進み、最終的に
【経過】治療開始から第 7-14病日頃より転倒恐
屋内歩行自立に至った。これらの事から理学療法
怖感や脳卒中抑鬱症状の訴えが増加し治療拒否出
を実施する上で、身体機能だけでなく精神機能に
現。その後、再評価を実施し治療方針を変更。第
も配慮する重要性を再認識した。
35病日頃より徐々に立位・歩行練習の受け入れ
改善。第 43病日に K
AFO使用した四点杖歩行を病
【第 25回
京都府理学療法士学会】
て足関節背屈角度と MAS、5回立ち座り、10m歩行
時間、下肢荷重、重心動揺、歩行時足関節底背屈角
ボツリヌス毒素療法に伴う痙縮の変化と装具管理
の必要性
を施注直前、施注 1週間後、4週間後、8週間後、
2)
中川美佳 1)・ 水野由美子 1)・市川俊介(PO)
・
3.0、3.5と 3段階に変化させ、Zebri
sWi
nFD
M-TS
土井博文 1)・佐浦隆一(MD)3)
を用いて下肢荷重と重心動揺を、川村義肢 Gait
1)医療法人社団 行陵会 御所南リハビリテーシ
Judge Syst
emを用いて歩行時足関節底背屈角を測
ョンクリニック
定し、それぞれの時期での最適な油圧を決めた。
2)川村義肢株式会社
【経過】
3)大阪医科大学 総合医学講座 リハビリテーシ
施注直前:MAS2
。内反尖足、槌趾あり。踵離地~足
ョン医学教室
尖離地の前方への重心移動に乏しく、立脚中期に
【キーワード】ボツリヌス毒素療法、痙縮、装具
反張膝を認め、加速期では股/膝関節過屈曲で軽度
調整
分廻し歩行であった。油圧は重心の前後移動範囲
12週間後に測定した。測定時には GSDの油圧を 2.5、
が最も拡大した 2.5に設定した。
【はじめに】
1週間後:MAS1
+~2。内反尖足、槌趾は改善し、踵
脳卒中では歩行能力向上を目的に下肢装具が処方
離地~足尖離地の前方への重心移動改善、母趾荷
されるが、生活期では歩行能力の変化に応じた装
重の増加を認めた。油圧は母趾荷重が最も良好な
具の調整が行われていない。また、痙縮に対してボ
3.0にした。
ツリヌス毒素(以下 BTX)療法が選択されることも
4週間後:MAS1+。踵接地~足底接地/
踵離地~足先
多いが、BTX投与により痙縮が変化しても、装具の
離地の足圧不安定で、足尖離地が不十分であった。
調整、管理が行われずに経過している患者も少な
油圧は足圧が最も安定した 2.
5に再設定した。
くない。今回、短下肢装具(川村義肢 GAITSOLU
TION
8週間後:MAS1
~1+。踵離地~足尖離地の足圧が向
Desing
:以下 GSD)を装用している脳卒中患者に BTX
上、蹴り出しの出現、加速期の股/膝関節過屈曲の
療法を行い、痙縮の程度に併せて GS
D足継手の油
軽減、立脚中期の反張膝改善を認めた。油圧は母趾
圧調整が必要であった症例を経験したので報告す
荷重と立脚後期の足圧の値から 2.5のまま維持し
る。
た。
【症例紹介】
12週間後:MAS1
+。足底接地~足尖離地の前方への
右被殻出血発症後 1
4ヶ月の 6
4歳男性。左片麻痺、
重心移動に乏しく、加速期では股/膝関節過屈曲を
Brunnstrom stage上下肢Ⅳ、手指Ⅲ。感覚障害は
認めた。油圧は前方への重心移動が最も拡大した
表在、深部ともに軽度鈍麻。足関節背屈角度は他動
3.0に再設定した。
20°/自動 5
°、足関節の Mod
ifiedAshwor
thS
cale
【考察】
(以下 MA
S)は 2。発症後 9ヶ月目に GS
Dを作製し、
下肢痙縮患者への B
TX療法により、装具の適合性
屋外杖歩行修正自立。
と歩容が変化することが示され、歩容の安定化に
【方法】
は、歩行練習や指導に加えて、定期的な評価と痙縮
歩行時の足趾槌趾変形に対して長趾屈筋、短趾屈
変化に応じた装具の調整が必要であることが明ら
筋、長母趾屈筋に B
TXを施注した。評価項目とし
かとなった。
【第 25回京都府理学療法士学会】
失調・感覚障害を呈した不全 wallenberg症候群の
バランス能力に着目した症例
近藤 知也 1)
1)京都民医連中央病院
【キーワード】
wallenberg症候群・バランス・協調運動
【はじめに】
不全 walle
nberg症候群により失調と感覚障害を
呈した症例を担当する機会を得た.バランス能力の
低下に対し,筋の協調性と固有感覚の促通にアプロ
ーチした結果,
バランス能力向上し,安定した歩行動
作を獲得できた症例について考察する.
【症例紹介】
年齢:59歳 性別:男性 身長/体重:17
8cm/66㎏
現病歴:2013/
x/yに脳梗塞,椎骨,
脳底動脈乖離,不
全 wallenber
g症候群と診断され他院入院.4週間後
に当院回復期病棟転院.
【初期評価】 ※発症 4週目
MMT:体幹,上・下肢 5
筋緊張:立位・歩行時,
上部体幹,
腰背部筋,
大腿四頭
筋,前脛骨筋,足趾伸筋群過緊張
表在感覚:右上下肢中等度鈍麻
深部感覚:膝関節位置覚軽度鈍麻
体幹協調機能ステージ:Ⅱ
踵膝試験:両下肢陽性.左>右
鼻指鼻試験:
両上肢測定過大.
左>右
FRT:19.1cm
座位 FRT:右 27.4cm 左 25.4c
m
立位荷重量:
右 40㎏ 左 26㎏
ロンベルグ:
陽性
足踏み検査:
1~3歩でバランス崩し継続困難
片脚立位時間:右 1秒 左 0秒
歩行動作
4輪歩行器歩行レベル.腰背部筋・上部体幹過緊張
呈し,体幹前傾位.骨盤後傾位で回旋運動は少なく,
ワイドベース.両膝関節は立脚相でロッキングし,
両股関節は立脚後期で伸展みられない.
【問題点抽出】
①小脳性失調による体幹・下肢の協調性低下
②足底の感覚鈍麻による感覚入力の減少
③固有感覚情報の低下
理学療法
・重錘を用いて協調訓練.支持基底面を拡大しての求
心性・等尺性・遠心性筋収縮訓練
・スポンジでの触圧覚課題.
足底部でのボールコント
ロール訓練
・閉眼立位でバランスパッド上でのバランス訓練
【結果】 ※発症 8週目
筋緊張:過緊張改善
表在感覚:右上・下肢軽度鈍麻
深部感覚:膝関節位置覚改善
体幹協調機能ステージ:Ⅰ
踵膝試験:左側軽度残存 右側改善
鼻指鼻試験:
陰性
FRT:26cm
座位 FTR:右 34cm 左 32cm
立位荷重量:
右 33㎏ 左 33㎏
ロンベルグ:
陰性
足踏み検査:
回転角 9
0°以内,
移行距離は 1m以内
片脚立位時間:両下肢ともに 1分以上可能
歩行動作
独歩自立レベル.左上肢・上部体幹の過緊張改善.
両股関節ともに立脚後期で伸展出現 .
【考察】
wallenberg症候群は延髄外側の病変であり,脊髄
小脳路,脊髄視床路に加えて,下小脳脚を経由する前
庭核から小脳への入力が影響を受け,小脳への固有
感覚情報が不足すると言われている.そのため,小脳
への固有感覚情報の促通を目指し,介入を行った.体
幹失調に対しては,安定した臥位から開始し,筋の協
調性を図った.
そして,単純な運動から複合的な運動
を行ったことにより,協調性が改善した.四肢失調に
対しては重錘を用いて,固有感覚を刺激し筋の協調
性を図った.
また立位・歩行時における知覚や姿勢制
御の過程では,体性感覚系の感覚情報が深く関与し
ていると言われており,特に足底感覚は必要不可欠
な情報とされている.そのため,足趾伸筋群の過緊張
を緩和し,足底部からの感覚情報を促通した.さらに
閉眼で姿勢コントロール訓練を行うことにより,体
性感覚の情報をもとに姿勢維持を行うことが可能と
なった.結果,
バランスが向上し屋外独歩自立となっ
た.
【第 25回
京都府理学療法士学会】
を目標とした。
【理学療法介入】
右視床出血による左片麻痺を呈した一症例
-目標設定の妥当性に関する検討-
随意性の向上、歩行能力改善を目的に神経筋再
教育訓練、短下肢装具を用いて歩行練習を施行。
端坐位や立ち上がり練習を行った。
片山聖太郎
1
)
1)医仁会武田総合病院
【最終評価】
リハビリセンター
第 45 病日、BRS 上肢Ⅱ、下肢Ⅳ。BI は 45
点。姿勢保持、起居、起立動作が軽度介助で可
【キーワード】視床出血、目標設定、歩行
能。歩行は短下肢装具、サイドケインを使用し中
等度介助を要した。病日 50 日回復期病院へ転
【はじめに】
今回、右視床出血により左片麻痺を呈した症例
院。
【考察】
を担当した。既往に脳幹出血があり、病前歩行は
今回目標と最終評価を比較し相違点が見られ
介助での杖歩行が可能であった。目標を歩行獲得
た。結果的に短下肢装具、サイドケインを使用し
とし理学療法を施行した。結果、基本動作の介助
中等度介助を要した。機能面での運動麻痺は残存
量は軽減したが、歩行の獲得には至らなかった。
した。画像所見では病日 20 日目血腫の吸収を認
目標を達成できなかった要因、目標設定の妥当性
め、BRS 下肢ⅠからⅣへと改善した。器質的な機
について若干の考察を交えて報告する。
能回復が得られたと考えられる。しかし、病前の
【症例紹介】
歩行状態までの改善は得られなかった。
70代、女性で右視床出血を発症。既往に脳幹出血
開始時の目標設定を行う情報が不足していたと
あり、右上下肢運動協調性低下を認める。病前は
考える。病前もベッド上で過ごすことが多かった。
ベッド上で過ごすことが多く、介助で屋内杖歩行
今回の症例にとって、病前の歩行実施頻度、介助
が可能であった。
方法、既往による歩行への影響を考慮した目標設
【説明と同意】
定、また歩行の必要性についても検討する必要が
説明書および同意書を作成し,学会の目的,結
果の取り扱いなど十分に説明を行った後,意思確
あったと考える。
麻痺の回復は中等度では発症後 3 ヵ月、重度で
認を行った上で同意書へ署名を得た。
は 6 ヵ月必要とされている。今回の介入期間では、
【初期評価】
運動麻痺改善の期間が不足していたと考える。下
第5病日よりリハビリ開始。Br
unnstromstage
肢の機能回復は今後も改善する可能性がある。回
(以下BRS)
にて左上下肢s
tageⅠ、Barthel
復期での経過や帰結の情報収集を行い、目標設定
index(以下BI)0点。起居動作は重等度介助を要
の妥当性について検討していきたい。
した。
【まとめ】
【目標設定】
本症例を通して、目標設定の妥当性について検
病前は介助で屋内杖歩行が可能であったことか
討した。病前 ADL だけでなく既往の影響や動作能
ら、短距離歩行能力獲得が可能と考えた。画像所
力レベルの情報収集が必要と実感した。今後も病
見は内包穿破しており、運動麻痺は残存すること
前の生活状況に関する情報に考慮して、患者個人
が予測された。運動麻痺により下垂足や内反尖足
に適した目標を設定していきたい。
が予測され短下肢装具、T字杖使用での歩行獲得
【第 25回
<18 病日>O23L にて 50m 程度 SpO2>90%で連続歩
京都府理学療法士学会】
行可
慢性過敏性肺臓炎により労作時の低酸素と呼吸苦が
<31 病日>ステロイドパルス療法開始
著明な一症例
<38 病日>O22L にて 100m 程度 SpO2>90%で連続
~全身持久力訓練の負荷量に着目して~
歩行可
<41 病日>2 回目のステロイドパルス療法開始
浅野
太郎
航平
1)
1
)
山崎
優介 1)田中
萩尾
岳志
1
)
敦史
1
)
岡本
尚 2)井上
伊左治
圭太
1
)
良太
山本
1
)
藤吉 耕
暢子
1
)
中村
実緒 3)
<48 病日>室内気で 150m 程度 SpO2>90%で連続歩
行可
<58 病日>HOT 導入せず自宅退院
退院時 6MWT は室内気にて歩行距離 405m、最低
1)洛和会音羽病院
洛和会地域リハビリテーション
広域支援センター
退院後の外来への通院は自転車とシャトルバスを利
2)所属先:洛和会音羽病院
3)洛和会みささぎ病院
SpO282%、NRADL の得点は室内気で 86 点であった。
リハビリテーション科
用することで可能となった。
内科
【考察】
【キーワード】 慢性過敏性肺臓炎、呼吸リハビリテ
ーション、全身持久力訓練
慢性過敏性肺臓炎に対する理学療法についての報
告は少なく、他の慢性呼吸器疾患の理学療法を参考に
した。介入当初は軽労作でも酸素化が低下し、呼吸苦
【はじめに】
今回、慢性過敏性肺臓炎により労作時の酸素化低下
も出現していた。本症例は若年であり、入院前の活動
性も高く、病棟トイレまでの歩行自立が最優先と考え、
と呼吸苦を呈した症例を担当した。負荷量の設定に着
呼吸不全の基準となる SpO290%を下回らないように
目した全身持久力訓練を実施し、運動耐容能の改善に
歩行訓練を実施した。これにより、病棟トイレへの歩
繋がったので報告する。
行自立が早期に実現し、離床機会が増加したことで院
【症例紹介】
内での歩行距離向上につながったと考えられる。ステ
50 代男性。H26.7 より平地歩行でも呼吸苦が生じる
ロイド療法により酸素化が改善すると呼吸苦もそれ
ようになり、A 病院を受診後当院紹介受診、入院とな
に伴い改善を認めたが、入院前より慢性的に低酸素状
り H26.8 肺生検により慢性過敏性肺臓炎の確定診断
態に晒されていたため、バイタルサインと呼吸苦の出
がなされる。入院翌日よりリハ開始となり、初期 6 分
現に解離が生じるようになり、自覚症状をもとに運動
間歩行テスト(以下 6MWT)は室内気にて歩行距離
負荷を決定すると過負荷となる恐れがあった。本症例
240m、最低 SpO267%、長崎大学呼吸器日常生活質問
は心機能良好で、徐脈作用のある薬剤の服薬は無いた
紙(以下 NRADL)の得点は酸素流量 3L で 32 点であ
め、Karvonen の式を用いて目標心拍数(係数 0.6 前
った。
後、125bpm 前後)を設定し、全身持久力訓練を実施
した。その結果、さらなる運動耐容能の向上につなが
り、通院も可能な全身持久力も獲得できたと考えられ
【理学療法と経過】
介入当初は SpO2>90%を維持できる負荷量、ステ
ロイド療法により低酸素が改善してきた時期には
Karvonen の式を用いて目標心拍数を設定し、全身持
久力訓練を実施した。また、上下肢筋持久力訓練も並
行して実施した。
<4 病日>O23L で病棟トイレまで(15m 程度)SpO2
>90%で歩行可
る。以上のような介入により、HOT 導入せずに自宅退
院が可能になった。内科的治療と並行して実施する運
動療法の重要性を実感する症例であった。
【第 25回
のびまん性の浸潤影・胸部 CT では肺尖区より著
京都府理学療法士学会】
明な気腫性変化を認めた。口腔ケアは歯科衛生
頻回に誤嚥性肺炎を発症している患者に対する多
士・病棟看護師にて 2 病日(3 回/日)より開始、
職種によるアプローチで誤嚥性肺炎予防を試みた
食事は 3 病日より ST 開始、ペースト食開始とな
症例
った。食事姿勢はギャッジアップ 50°で実施され
た。4 病日に解熱と喀痰減少認め、介助下にて座
倉
壮二郎
隆幸
1)
1)
田中
萩尾
尚
敦史
1
)
横内
葵
1
)
相原
位訓練開始。9 病日から立位訓練を開始し、病棟
看護師と連携して食後 1 時間は車イス座位を保持、
2
)
1)洛和会音羽病院リハビリテーションセンター
日中はギャッジアップ座位(30°~45°)維持を
2)洛和会音羽病院リハビリテーション科
行い、食事姿勢は車椅子座位で実施された。また
本症例はリハ開始当初、歩行訓練に対して拒否的
【キーワード】
ン
誤嚥性肺炎
リハビリテーショ
連携
であったが 43 病日より平行棒内歩行訓練を行え
るようになり、この時点の ADL は寝返り自立、起
居動作軽介助、移乗軽介助、平行棒内歩行軽介助
【はじめに】
となった。しかし 55 病日より MRSA 陽性となり、
繰り返す誤嚥性肺炎にて、当院へ頻回な入院歴
62 病日まで個室隔離となる。入院時と比較し、基
のある高齢 COPD 男性に対し、入院中の誤嚥性肺
本動作介助量の軽減を認めたため、主治医へ上申
炎予防・病前 ADL 維持を目標にリハを実施した症
の上、隔離解除まで個室内での下肢筋力強化訓練、
例を経験したため、報告する。
ADL 訓練を継続した。65 病日に隔離解除となる
【症例紹介】
が、施設側の受け入れ困難あり、療養型病院に転
COPD(HOT 未導入)80 歳代の高齢男性。施
院。転院時の FIM は 38 点であった。
設にて持続する呼吸苦あり、当院救急外来受診。
肺炎にて当院総合診療科入院となる。基礎疾患に
【考察】
は陳旧性肺結核・多発性脳梗塞あり。病前 ADL
及川らは歯ブラシを用いた口腔ケア、体位変換、
は立位監視レベル、構音障害によるコミュニケー
経管栄養補給時の座位保持、筋力維持・強化、関
ション困難あるも、理解・表出は単語レベルで可
節拘縮の予防を目的としたリハビリテーションな
能であった。
ど、総合的なケアが肺炎予防のために重要性を指
【経過】
摘している。病棟スタッフと連携した口腔ケア・
呼吸・摂食リハ依頼あり、2 病日より PT・ST
早期離床、座位保持時間延長による廃用予防、リ
開始。初期評価は、著明な意識障害を認めず、SpO2
ハビリテーションの早期介入、ROM 訓練、下肢
は酸素投与(nasal:3L)にて 94%、視診にて呼
筋力強化トレーニング、動作訓練、関節拘縮の予
吸促迫および胸鎖乳突筋・僧帽筋・斜角筋の過使
防により、本症例の ADL が改善・誤嚥性肺炎を予
用あり。聴診にて rhonchi・coase crackles を認め
防し、転院に至った可能性を考えた。
た。起居動作・移乗動作は全介助レベル、入院時
の FIM は 18 点であった。1病日の生化学データ
は WBC10.0 × 10 ^ 3/ μ l 、 CRP8.80mg/dl 、
TP7.5g/dl 、 ALB4.0 g/dl 、 BUN21.9 mg/dl 、
CRE0.64 mg/dl、また胸部 XP では右上葉~中葉
【第 25回
京都府理学療法士学会】
インの変化等に注意を払い、主治医に確認
を取りながら段階的に運動負荷量を増量し
急性心筋梗塞発症後に僧帽弁乳頭筋断裂を
た。術前安静期間における廃用症候群によ
発症し緊急手術を施行された一例の術後リ
り、術後リハビリ開始時の筋力は、簡易検査
ハビリの経験
で下肢 MMTが 2~3-レベルで、起き上がり
動作等全ての ADLに介助を要した。しかし、
森﨑勇貴
1
)
松尾
泉
1
)
宮﨑博子
1
)
1)京都桂病院リハビリセンター
第 4病日から歩行を開始でき、第 10病日に
200m歩行が、第 15病日には階段昇降も可
能となった。
【キーワード】急性心筋梗塞後乳頭筋断裂,
僧帽弁置換術,術後リスク管理
【考察】本症例は急性心筋梗塞発症後の超
急性期に僧帽弁置換術を施行されたことか
【はじめに】急性心筋梗塞発症後の機械的
合併症に外科的治療を施行した症例の術後
理学療法を経験したので、注意すべき術後
リハビリの要点について、考察を含めて報
告する。
ら、術後心不全、心破裂、致死的不整脈等の
重症心合併症のリスクが高い症例と考えら
れた。このようなハイリスク症例であって
も、病態を理解し術後リスクを考慮して、逐
次評価を行った上で慎重に運動負荷量を調
整することにより、術後合併症の発症なく
【症例紹介】71歳女性。冠危険因子として
高血圧、高脂血症。既往歴に正常圧水頭症、
クモ膜下出血。入院前 ADLは自立。急性心
不全により労作性呼吸困難が増悪し、他院
に緊急入院したが、急性心筋梗塞後の僧帽
弁閉鎖不全合併が疑われ、精査及び手術目
的で当院に転院となった。
【経過】入院当日、大動脈内バルーンパンピ
ングサポート下で、左前下行枝に経皮的冠
動脈形成術を施行。心不全治療後、僧帽弁乳
頭筋断裂に僧帽弁置換術(生体弁)が施行さ
れた。術後離床は使用薬剤、不整脈イベン
ト、種々の検査所見、運動前後のバイタルサ
早期離床を達成し、入院前 ADLを獲得して
自宅退院が可能となった。
【第 25回
京都府理学療法士学会】
節痛により歩行距離が伸び悩んだこと、胸
水貯留による酸素化不良、術前からの左鎖
血圧が安定せず歩行距離拡大が遅延した急
骨下動脈閉塞由来の左上肢筋力低下による
性大動脈解離術後の一症例
左杖歩行困難などの問題点が出現し、ADL
再獲得に時間を有した。
渡邉
桂
1
)
松尾
泉
1
)
宮崎博子
1
)
1)京都桂病院リハビリテーション科
【結果】術後 31 日で屋内外両杖歩行可能、
退院時 FIM:113 点となり自宅退院に至った。
血圧は各種降圧剤により安定し、酸素化は
【キーワード】急性大動脈解離術後・ADL獲
室内気にて SpO2:95~97%と良好であった。
得遅延・血圧管理
腹部大動脈は偽腔の一部が血栓化したもの
の、動脈径は 32mm から 40mm へ拡大し
【はじめに】急性大動脈解離(以下 AAD)
ていた。
などの大血管手術は、緊急手術であること
も多く、その他の心臓外科手術に比べて手
【考察】渡辺らによると術後病態管理や残
術後のリハビリテーション(以下リハ)が遅
存解離腔の管理が ADL の阻害因子である
延しやすいとされる。今回、AAD 術後で血
とされている。また田屋らによると歩行自
圧が高く運動負荷量の設定に難渋し、ADL
立の遅延理由は、高齢でもともと ADL が低
再獲得が遅延した症例のリハを経験したの
い例や酸素化障害であることが多いとされ
で報告する。
ている。本症例に関してもリハ中の血圧上
昇により歩行負荷量増加が困難であったこ
【症例紹介】症例は 70 歳男性。上行大動脈
とや、胸水貯留により長期酸素投与が必要
から腎動脈下まで解離を呈した Stanford
であったこと、入院前 ADL である左杖歩行
分類 A 型 AAD であった。合併症として高
が左上肢筋力低下により困難であったこと
血圧症、ANCA 関連血管炎を有しており、
が、ADL 再獲得の遅延因子として考えられ
既往歴に右半月板損傷(手術後)があった。
た。AAD は術後であっても残存解離を有し
発症後、当院に搬送され同日全弓部大動脈
ている場合があり、血管径の拡大が生じる
人工血管置換術+エレファントトランク術
こともあるため、血圧管理は厳格になされ
を施行。なお、術前 ADL は屋外杖歩行自立
るべきである。本症例もこのような難渋症
であった。
例であったが、術翌日からのリハ開始、血圧
を上昇させない運動負荷量の調整、適切な
【経過】術翌日よりリハ開始した。主治医指
歩行補助具の選択、などの工夫により ADL
示により、収縮期血圧 140mmHg 以下の範
の拡大を認め、自宅に退院することができ
囲でリハを行い、術後 2 日目には歩行器歩
た。術前から ADL が低い場合であっても、
行可能となったが、術後 5 日目よりリハ後
動作時の血圧コントロールと ADL 改善を
の収縮期血圧が指示範囲を超え、運動負荷
目指してリハ実施していく必要があると考
量の調整が必要であった。創部痛や右膝関
える。
【第 25回
京都府理学療法士学会】
05.23 術後評価実施.杖歩行すり足やふらつきみら
れ安定性・安全性に欠ける.
バクロフェン持続髄注療法後、すくみ足がみられ
06.18 2
,3mの杖歩行ですくみ足みられるようにな
たパーキンソン病の一症例
り,一旦,Free
zing出現すると自己にて脱出困難で
介助必要.UPDRS(
運動機能)
:29
北尾
浩和
1
)
中本
隆幸
1
)
F
OGQ
:24
ギ
ャバロン 39.
94μg/
日へ減量.歩行能力改善目的に外
1)京都きづ川病院
的リズム刺激や部分免荷歩行訓練を実施.
【キーワード】パーキンソン病,すくみ足,理学
06.28 杖歩行自立可能となり軽快にて退院となる.
療法
【理学療法評価(最終)】
膝伸展筋力:R MM
T5(27.8
kg) L MMT4(16
.6kg)
【はじめに】
UPDRS(運動機能):21
今回,バクロフェン持続髄注(以下,ITB)療法を
施行されたパーキンソン病(以下,PD)患者を担当し
FOG
Q:15
10m歩行(杖):14秒(29歩)43m/分
34
cm/歩
【考察】
た.ITB装置設置術後,座位姿勢に改善がみられたが,
本症例は IT
B装置設置術施行後,歩行速度の低下
歩行速度の低下やすくみ足がみられるようになった.
や す く み 足 が み ら れ た 症 例 で あ る . Rando
mized
通常の運動療法に加え,外的リズム刺激による介入
controll
ed tr
ial
(RCT
)による研究において,感覚
戦略や部分免荷歩行器を用いた歩行訓練を行った結
刺激による歩行能力の改善が報告されており,本症
果,歩行能力に改善がみられたため報告する.
例においてもメトロノームを用いた 9
0〜110
bpmの聴
【症例紹介】
覚刺激や,間隔を 50cmに設定した線を跨ぐ視覚刺激
70代 男性 52歳で PD発症(H14年:右 D
BS,H20
を与えることで歩行速度,歩幅に改善がみられた.ま
年:左 DBS施行).バクロフェンスクリーニングテ
た,歩行には体重支持能力,協調的ステッピング能力,
ストを施行し,異常姿勢に改善みられたため,ITB装
姿勢制御能力の 3つの要素が必要であり,PD患者は
置設置術施行目的に 5.19入院となる.
リズム形成障害を有しているため,協調的なステッ
【理学療法評価(初期)】
ピング運動を促通する治療戦略が有効であると考え
術前(5.
20)
た.外的リズム刺激に加え,部分免荷歩行器を用いて
姿勢異常:首下がり、腰曲がり、pis
asyn
drome
膝
歩行訓練を行うことで体重支持能力と姿勢制御能力
伸展筋力:RMM
T5(23
.2kg) LMMT
4(14.
0kg)
を補い,協調的ステッピング能力を選択的にトレー
改訂 Hoehn&Yahr重症度:3
ニングしたことで,すくみ足や歩行能力に改善がみ
23
U
PDRS
(運動機能):
FO
GQ:17
10m歩行(杖):25秒(44歩)24m/分
られたと考える。
23
cm/歩
術後(5
.23)
【まとめ】
ITB装置設置術施行後,
歩行能力低下がみられた PD
座位姿勢において姿勢異常に改善あり.立位姿勢は
患者に対し,通常の運動療法に加え,外的リズム刺激
術前と大きく変わらず.
戦略や部分免荷歩行訓練によって歩行能力に改善が
10m歩行(杖):31秒(65歩) 19m/分
15
cm/歩
みられた.しかしながら,みられた効果は即時的ある
【理学療法アプローチ,経過】
いは短期的なものであり長期的な介入効果は検討で
05.20 理学療法開始.術前評価実施.
きておらず,今後検討の必要があると考える.また,
05.21 I
TB装置設置術施行(ギャバロン 49.98
μg/日
投薬調整やギャバロン減量による身体機能の変化も
で開始)
.
考慮する必要がある.
【第 25回
京都府理学療法士学会】
内側型変形性膝関節症における屈曲拘縮に対し
て超音波治療で改善が得られた一例
寺山
佳佑 1) 正意 敦士 1) 小西
田村
滋規 2)
【説明と同意】
本症例に対し発表目的と意義について十分に説
明し,同意を得た.
喜子 1)
【結果】
ROM-Tは右膝関節伸展-5°,伸展可動域が改善
1)田村クリニック
リハビリテーション科
した.歩行は,右 ICで膝関節伸展制限の改善を得
2)田村クリニック
整形外科
た.歩行時の VA
Sは 4に改善した.超音波治療実
施後の JOAスコアは 75点であった.
【キーワード】屈曲拘縮
内側冠状靭帯
超音波
治療
【考察】
超音波治療の温熱効果は組織の粘弾性を軟化
【目的】
する.内側型 OAを対象とした超音波治療の研究は
内側型変形膝関節症(以下,
内側型 OA)の屈曲
過去に試みられているが,渉猟し得た限り報告は
拘縮の主要な因子の一つとして,内側冠状靭帯の
少ない.藤田らは内側型変形性膝関節症に対する
癒着が挙げられる.内側冠状靭帯は半月板に付着
内側冠状靭帯解離術の除痛効果について,内反膝
しており,内側型 OAにおいて膝の疼痛因子として
群で膝の疼痛の軽減を認めたと述べている.この
関与が示唆されている.組織の粘弾性の軟化が得
研究は手術療法であり,超音波治療では一定の見
られる超音波治療を用いて内側冠状靭帯の癒着
解が得られていない.今回,超音波治療を内側冠
に対して伸展可動域の改善と除痛効果を得たの
状靭帯に照射した事で,伸展可動域が改善した.
で報告する.
内側冠状靭帯は半月板に付着しているため,膝関
節伸展時の半月板の前方への移動が可能となり,
【方法】
症例紹介,70歳代,女性,身長 155cm,体重
60kg,BMI25
.
膝関節伸展を得たと考える.超音波治療は内側型
OAの屈曲拘縮に対して治療効果が期待でき,積極
的に導入していきたいと考える.内側型 OAにおけ
関節可動域検査[以下,RO
M-T](右/左)は膝関
る内側冠状靭帯に超音波を照射した事で粘弾性
節伸展−10°/−5°であった.歩行では,右 i
nitial
が軟化し,屈曲拘縮の改善を得た.この結果から,
contact(以下,
IC)での膝関節伸展制限を認めた.
内側型 OAにおける屈曲拘縮に対して,超音波治療
歩行時の VisualAnalogScale[以下,VAS]は 5で
は伸展可動域の改善が期待できる.
あ っ た .膝 関 節 Japan Orthopaedic Assoc[以
下,JOAスコア]
は6
5点であった.
X線画像で内側
関節裂隙の狭小化,骨棘を認めた.
治療方法は運動療法前に超音波治療器(ミナト
医科学社製)を用いて周波数 1MHz,照射時間率
100%,出力 1.
0W/㎠,照射面積 4.0㎠,照射時間 5分,
膝関節前内側部に照射し,7回実施した.
【第 25回
表(functional independence measure:以下 FIM),
京都府理学療法士学会】
FIM 利得,FIM 効果とした.統計処理にはマン・
大腿骨頚部骨折症例における BMIと退院時 ADLス
ホイットニ検定,スペアマン順位相関係数を用い
コアに関する検討
た.データが正規分布に従うとは言えないことを,
シャピロ・ウィルク検定を用いて確認し有意水準
川勝慎也
岡咲
基
1)
1)
1)
萩尾敦史
増田勝行
小森健太郎
1)
1
)
1
)
網田淑生
西嶋正大
田中尚
1
)
1
)
稲葉大輔
藤士颯
1
)
1
)
藤
平本徳
は 5%未満とした.統計処理ソフトは R2.8.1 を用
いた.
2)
【結果】
1)洛和会音羽病院
2)洛和会音羽病院
リハビリテーションセンター
リハビリテーション科
高 BMI 群では Alb3.7±0.7,TP6.9±0.6,退院
時 FIM75.2±40.6,FIM 利得 17.2±21.0,FIM
効果 0.3±0.4 であった.また低 BMI 群では Alb3.7
【キーワード】大腿骨頚部骨折,BMI,ADLスコア
±0.6,TP6.6±0.6,退院時 FIM76.9±32.9,FIM
利得 27.9±23.7,FIM 効果 0.5±0.5 であった.2
【目的】
群間の比較では,Alb・TP・退院時 FIM・FIM 利
Akner らは高齢者の大腿骨頚部骨折では約半数
得・FIM 効果に有意差を認めなかった.また BMI
の患者で受傷時から低栄養があり,低栄養患者の
と退院時 FIM,BMI と Alb・TP と有意な相関を
リハの予後が悪いことを報告した.先行研究では
認めず,Alb と退院時 FIM(rs=0.42)に相関を認め
栄養状態と ADL を比較に Alb を指標とした報告
た.
が多い.栄養評価には体重や Alb が簡便であるが,
Alb は炎症等に強い影響を受ける.身体指標にお
【考察】
い て 簡 便 に 評 価 で き る 体 格 指 数 (body mass
Alb 値は様々な要因の影響を受けやすく,単独
index:以下 BMI)を用い,低栄養症例と非低栄養
では栄養状態の評価には不十分である可能性が示
症例の入院時の栄養状態が退院時 ADL スコアに
唆された.BMI は体格指数であり,低栄養であっ
与える影響を検討した.
ても低体重であるとは必ずしも言えず,BMI と
Alb との間には有意差がなかったと考えた.また
【方法】
筋肉量と筋力低下を現すサルコペニアの原因の一
2010〜2014 年度に大腿骨頚部骨折の診断にて
つに,エネルギーと蛋白質の摂取量不足があり,
手術加療及びリハ施行した 406 症例の中から,年
低栄養によって筋肉量と筋力低下が生じる.従っ
齢 75~85 歳(80±2.8)で術後 3 日以内にリハを開始
て BMI の差が低栄養による筋肉量の差になると
し,30 日以上のリハ実施期間のある 16 症例を対
は必ずしも言い切れず,BMI と FIM との間に相
象とした.
BMI が 21 以上を高 BMI 群(22.5±1.5,
関が見られなかった一因と考えた.
男性0名/女性 6 名,年齢:80.5±4.1,人工骨頭置
換術 4 例・観血的骨接合術 2 例),BMI が 21 未満
を低 BMI 群(18.4±1.3,男性 2 名/女性 8 名,年齢:
80.0±2.6,人工骨頭置換術 7 例・観血的骨接合術 3
例)とした.調査項目は Alb,血清総蛋白(total
protein:以下 TP),入退院時の機能的自立度評価
【第 25回
京都府理学療法士学会】
骨盤を右傾斜させることで右前足部を接地させてい
た。また、降段動作時の左上肢は手すりを強く把持
降段動作時に安定性の低下を認めた左膝蓋骨粉砕骨
していた。
折患者の一症例
降段動作の立脚中期から後期の左右膝関節屈曲角
田中有美 1)射場
賢 1)久岡
1)医療法人社団
石鎚会
隆晃 1)
田辺中央病院
度は、右下肢降段動作時は 75°であったが、左下肢
降段動作時では 50°であった。関節可動域測定では
左膝関節屈曲は 110°、徒手筋力検査では左膝関節
リハビリテーション部
伸展筋力は段階 3 であった。また、静止時筋緊張検
【キーワード】膝蓋骨骨折
降段動作 内側広筋
査では左内側広筋に筋緊張の低下を認め、大腿周径
は膝蓋骨上縁から 5 ㎝では右 46 ㎝、左 45 ㎝であっ
【はじめに】
今回、一足一段の降段動作時の安定性の低下を認
た。
【理学療法・結果】
めた左膝蓋骨粉砕骨折術後患者の理学療法を経験し
理学療法では、左膝関節の関節可動域練習と左膝
た。降段動作での左膝関節の屈曲角度に着目した理
関節伸展筋の筋力強化練習に加えて、降段動作時の
学療法を行ったことで、動作の改善に至ったため報
立脚中期から後期で必要となる左膝関節の屈曲角度
告する。なお、症例には発表の趣旨を説明し同意を
を考慮した荷重練習を実施した。その結果、左膝関
得た。
節の関節可動域は 150°に拡大し、徒手筋力検査で
は左膝関節伸展筋力は段階 4、静止時筋緊張検査で
【症例紹介】
は左内側広筋の筋緊張に改善を認めた。また、17
本症例は 50 歳代の女性である。現病歴は、X 年
㎝の降段動作時の左立脚中期から後期での左膝関節
に職場にて躓いて転倒し、左膝蓋骨粉砕骨折と右橈
屈曲角度が増加し、左立脚期における不安定性が消
骨遠位端骨折を受傷した。左膝蓋骨粉砕骨折に対
失して、一足一段による降段動作の安全性の向上が
し、観血的整復固定術を施行され、術後 2 週目から
得られた。
独歩が可能となり、院内の日常生活活動は、階段昇
降以外は自立となった。術後 3 週目では、昇段動作
は一足一段にて可能となったが、降段動作は二足一
段のままであった。
【考察】
降段動作における内側広筋の筋活動は、立脚期初
期から活動を認め、立脚後期において膝関節の屈曲
本症例の主訴は「階段が一段ずつ降りられない」
角度の増大により、内側広筋が遠心性収縮による制
であり、ニードを「一足一段による降段動作の安定
動作用を行うために筋活動が最も高まると述べられ
性の向上」と設定した。
ている。しかし、本症例は左内側広筋の筋緊張に低
下が生じていたため、17 ㎝の降段動作時の左立脚
【理学療法評価】
中期から後期に必要な左内側広筋の遠心性収縮が得
本症例の 17 ㎝の一足一段による降段動作は、左立
られず、一足一段での降段動作が困難であったと考
脚初期から中期では、左膝関節はゆっくりと屈曲し
えた。そのため、左立脚中期から後期での左内側広
ていきながら、左股関節は外旋するとともに体幹の
筋の遠心性収縮を考慮した理学療法をおこなったこ
右回旋が生じていた。続く左立脚中期から後期では、
とで、一足一段での降段動作の安定性の向上に至っ
左膝関節の屈曲は乏しいまま、左股関節を内転させ
たと考えた。
【第 25回
京都府理学療法士学会】
であった。
再骨折術直後の X線画像では、I
nsall-Sa
lvati
膝蓋骨下極部の再骨折に対する術後理学療法の一
法で 0.80と膝蓋骨低位が認められ、術後 4週目か
経験
ら膝蓋下組織の滑走を促しながら膝関節可動域訓
練と膝関節 30°屈曲位までの膝伸展運動と膝伸展
竹下
1)
真広
1
)
永井
教
1
)
為澤
一弘
1
)
一志
有香
小野 志操 1)
1)京都下鴨病院
位での股関節屈曲運動による大腿四頭筋強化を実
施した。初回骨折時に Extens
ion lagが残存した
理学療法部
ことから、セルフエクササイズとしても同じ運動
を徹底するよう指導した。術後 7週目に膝伸展筋
【キーワード】膝蓋骨下極骨折、膝自動伸展不全、
力は MMT5、E
xtensio
n lagは消失し、膝折れなく
筋力訓練
T字杖歩行が可能となった。
【はじめに】
【考察】
膝蓋骨下極骨折術後に再骨折した症例の理学療
再骨折に至った要因の 1つとして Exte
nsion
法を経験した。骨折部の固定性を確認したうえで
lagが残存したことによる患肢の支持性不良が考
運動療法を行い、再骨折後は術後 7週目に膝自動
えられた。Exten
sionlagが生じる原因として、受
伸展不全 (以下、Exte
nsion lag
)が改善できたの
傷後の大腿四頭筋萎縮による筋力低下と、膝蓋下
で考察を含め報告する。なお、本報告にあたり対
の軟部組織が拘縮することで膝蓋骨の運動が制限
象者には十分な説明を行い、同意を得た。
されることの 2点が考えられる。再骨折前の所見
として、膝蓋骨近位への可動性は良好で膝蓋骨の
【症例紹介】
位置は X線上健側と比較して差を認めなかった。
症例は 70歳代の女性である。初回の骨折は、歩
そのため、再骨折前に認めた Extensio
n lagの原
道で転倒し右膝をついて受傷した。右膝蓋骨骨折
因は大腿四頭筋の筋力低下による影響が強いと考
と 診 断 さ れ た 。 観 血 的 骨 接 合 術 (AI
-wiring
えられた。これに対し再骨折後は膝蓋骨が低位で
system)が施行された。骨折型は OTA分類 34-C1.3
あったことから、膝蓋下の軟部組織の拘縮除去を
であった。約 1か月の入院期間を経て T字杖歩行
行った。加えて骨折部への離開ストレスに配慮し
が自立して退院した。しかし初回の骨折から 5か
た筋力強化を行ったことで Ex
tension la
gの消失
月後、自宅にて一足一段の階段降段時に膝折れを
につながったと思われる。本症例を通じて拘縮部
起こして転倒し同部位を再骨折した。受傷後、膝
位の特定と患部の固定性にあわせた運動療法の重
蓋骨浅層に 2本、深層に 2本の ringpinを用いた
要性を再認識させられた。
tensionbandwiring法、および circ
lewi
ring法
による骨接合術が施行された。
【理学療法経過】
再骨折前の所見として、膝伸展筋力は徒手筋力
検査(以下、MMT)3、E
xtension l
agは 10
°であっ
た。歩行時には膝折れが認められていた。膝蓋骨
の位置は Insall
-Salvati法で健患側ともに 1.04
安定性が生じていた。この不安定性に対し、代償的
【第 25回
京都府理学療法士学会】
左立脚相の支持性低下が右足底接地時の不安定性を
強めていた胸椎化膿性脊椎炎術後の一症例
西村衣里加 1)
福永早紀 1)
1)医療法人社団
石鎚会
前田梨奈 1)
田辺記念病院
リハビリテーション部
股関節伸展筋
亢進させていた。加えて、右股関節伸展筋力低下、
右内腹斜筋・外腹斜筋の筋緊張低下により、右立脚
初期において、体幹を直立位に保持することができ
ず、右股関節屈曲が強まるとともに体幹右側屈し
て、右前方への不安定性が増大していた。
【理学療法・結果】
理学療法は、筋力強化練習、立位での左側への体
【キーワード】
左立脚相
に両多裂筋・腸肋筋・最長筋、左広背筋の筋緊張を
股関節外転筋
【はじめに】
歩行動作において、左立脚側下肢の機能障害により、
右足底接地時の右前方への不安定性を強めていた症
例を経験した。左立脚相での左股関節の支持性を高め
たうえで、右足底接地を誘導した結果、歩行動作の安
全性・安定性の向上を認めたため、報告する。
【症例紹介】
症例は 60 歳代の女性である。X-3 月に歩行障害が
生じ、膿瘍形成を伴う第 2-3 胸椎の化膿性椎間板炎
と診断された。X-2 月、第 7 頚椎から第 5 胸椎にお
ける後方固定術、自家骨移植術を施行し、X 月に当院
に入院となった。主訴は「歩けるようになりたい」、ニ
ードは「歩行動作の安全性・安定性の向上」とした。
【理学療法評価】
歩行動作において、左立脚相初期から中期に、左
股関節屈曲・内転・内旋により、骨盤前傾・左回
旋・右下制し体幹右前方傾斜が生じる。その際、振
り出された右下肢は勢いよく足底から接地し、右股
関節屈曲が強まるとともに体幹右側屈が生じて、右
前方への不安定性を認めた。
徒手筋力検査は、両股関節伸展筋力2(右>
左)、左股関節外転筋力2であった。静止時筋緊張
検査は、両多裂筋・腸肋筋・最長筋(右<左)、左
広背筋に亢進、両内腹斜筋・外腹斜筋(右>左)に
低下を認めた。
症例の問題点は、左股関節伸展・外転筋力低下に
より、左立脚相で体幹右前方傾斜し、右前方への不
重移動練習、ステップ練習をおこなった。ステップ
練習では、左股関節伸展・外転筋の筋活動を促した
うえで、右下肢をステップさせ、右立脚初期の右股
関節伸展筋の筋活動、右内腹斜筋・外腹斜筋の筋緊
張を高めた。
その結果、歩行動作の左立脚相初期から中期にお
いて、左股関節屈曲・内転・内旋による骨盤前傾・
左回旋・右下制、体幹右前方傾斜は軽減した。その
ため、右下肢の振り出しにも改善が得られ、右立脚
初期の右股関節屈曲、体幹右側屈も軽減し、歩行動
作の安全性・安定性が向上した。
また、徒手筋力検査において段階的な変化はない
ものの筋活動の増大が得られた。静止時筋緊張検査
では、亢進筋、低下筋ともに筋緊張改善が認められ
た。
【考察】
歩行の立脚相について、Neumann は、大殿筋は立
脚初期に生じる骨盤前傾に対する制動に働くと述べ
ており、Kapandji は、中殿筋が骨盤の非支持側下肢
への傾斜の制動に重要であると述べている。そのた
め、本症例においても、左立脚相での左股関節伸
展・外転筋の筋活動を高めたことで、安定した右立
脚相の獲得に至ったと考えた。
【第 25回
京都府理学療法士学会】
り L5 椎体前面の骨破壊により出血し,L4.5 神経が圧迫
される事で股関節部~大腿部に神経性の疼痛が生じて
化膿性脊椎炎・椎間板炎による疼痛へのアプローチ
~終末期患者の在宅復帰に向けて~
いると考えた.
②大腿直筋と腸腰筋の持続的収縮によりそれらの部
位に筋虚血が生じる.その状態で筋収縮を繰り返すと発
森 安奈 1)
1)京都民医連中央病院
痛物質が産生され疼痛が生じていると考えた.
動作時痛の原因は,大腿直筋と腸腰筋の持続的収縮に
【キーワード】疼痛・終末期・在宅復帰
よる長時間の股関節は屈曲により,動作時に股関節伸展
を伴うと大腿直筋と腸腰筋の伸張時痛が生じていると
[患者情報]
78 歳男性
医学情報
考えた.
化膿性脊椎炎・椎間板炎
現病歴
上記の病名で 5/6 から治療入院されていたが,終末期で
[理学療法実施計画]
① マッサージにて局所循環の促進
あり 6/28 一次退院.7/1 再入院しリハビリ介入.
② 左股関節伸展方向へ持続的伸張(自動介助・自動)
既往歴
③ 下肢筋出力向上訓練
糖尿病性腎症(血液透析),脳幹部梗塞,心疾患
④ 基本動作訓練
社会的情報
Key person 妻,息子
希望
[再評価]
在宅復帰
疼痛
[初期評価]
画像
L5 椎体前面に骨破壊あり
疼痛
左股関節前面部~左大腿部全面に鈍痛があり
背臥位保てず,頻回に自分で側臥位に体位変換してい
る.股関節は 20°屈曲位でありこれより伸展すると
疼痛出現.NRS (/10) 安静時 6 股伸展時 8
ROM (右°/左°) 安静時股屈曲 0/20
粗大筋力 上肢 4 下肢 2 体幹 2
基本動作 疼痛出現し全介助でも起居困難
[目標設定]
左股関節前面部~左大腿部全面の鈍痛軽減,頻
回な体位変換減少.左股関節 10°伸展位にすると疼
痛出現.NRS 安静時 1 股伸展時 3
ROM 安静時股屈曲 0/0 股伸展 30/10p
粗大筋力 下肢 3 に改善
基本動作 側臥位経由の起居を軽介助で可能.全介助
で車椅子移乗可能.
[経過と結果]
疼痛軽減の要因として①医学的治療により骨破壊で
生じた出血が吸収される事により,L4.5 神経の圧迫が
軽減された事.②理学療法プログラム実施により,マッ
短期 起居・移乗時の介助量軽減
長期 在宅復帰
サージによる局所循環の促進により疼痛閾値が上昇し
た事によると考えた.よって介入から約 10 日頃より安
静時痛が軽減してくる.
[Impairments]
#1 疼痛
#2 筋力低下
#3 ROM 制限
#4 基本動作能力低下 #5 ADL 動作能力低下
その後 Mulligan によると大腿直筋や腸腰筋の持続的
収縮に対しては持続的な伸張が効果的とあり,抵抗感の
ある所で痛みを起こさない様に 10 秒間保持した結果,
背臥位時の疼痛の軽減へと繋がった.
[考察]
本症例は多彩な既往歴により終末期であった.加えて
化膿性脊椎炎・椎間板炎の発症により背臥位を保てない
程の疼痛が出現し寝たきりとなった.今回,本人の希望
である在宅復帰の為に起居・移乗時の疼痛の軽減に着目
した.
安静時痛の原因として①化膿性脊椎炎・椎間板炎によ
次に姿勢を背臥位から側臥位へと変更し,大腿直筋や
腸腰筋への更なる伸張を促す為,疼痛を誘発しない様に
様子を伺いながら股伸展の自動介助・自動運動を実施.
結果,再評価時には動作時痛が更に軽減し,寝たきり
から軽介助で起居・移乗が可能まで ADL を向上する事
ができ,自宅退院が可能となった.
【第 25回
京都府理学療法士学会】
立脚後期での骨盤右後方回旋が生じていた。代償
として生じた骨盤の挙上や回旋により右腰方形筋
腰部脊柱管狭窄症患者の歩容改善を通して手術療
に負担がかかり右腰背部痛を生じていた。腰椎の
法を回避した一症例
屈曲可動域低下は、腸腰筋の短縮と腹横筋や内外
腹斜筋、多裂筋の活動低下により脊柱起立筋が過
松島礼佳 1)
緊張となり生じていた。以上の問題点に対し治療
1)学研都市病院
を行った。また、上記の内容を自主トレーニング
として実施させ、毎回の理学療法開始前に正しく
【キーワード】保存療法、下垂足、歩容
実施できているか確認を行った。
【はじめに】
【結果】
ドゥシャンヌ歩行と下垂足を呈した腰部脊柱管
3 ヵ月後、腰痛、しびれ消失、ROM は股関節伸
狭窄症(以下 LCS)患者を担当した。理学療法介
展右 10°、左 15°、SLR 右 60°、左 65°、右足
入による保存療法を開始した。体幹機能、下肢筋
関節背屈 15°、MMT は右股関節伸展 4、外転 4、
力向上により歩容が改善し、神経症状も消失した。
右足関節背屈 5 レベルに改善した。右ドゥシャン
その結果、手術は行わない方向となった。
ヌ歩行、鶏歩、フットスラップは消失した。手術は
実施しない方向となり仕事の継続が可能となった。
【症例紹介】
60 歳男性。H26.1 頃より右足関節背屈筋の筋力
旅行やゴルフへの参加も可能となり QOL 改善が
みられた。
低下と腰痛、仙骨部、右下腿前面にしびれを自覚
した。H26.4 に LCS と診断され週 1 回の理学療法
【考察】
を開始。既往歴として 2 年前に右股関節唇損傷に
本症例の発症機序の 1 つとして、長期間ドゥシ
対し手術を施行しており、術後より右ドゥシャン
ャンヌ歩行を呈していたことと、股関節の可動域
ヌ歩行を呈していた。介入初期の歩容は右ドゥシ
制限が腰椎に負担を生じていたことが考えられた。
ャンヌ歩行、フットスラップ、鶏歩がみられた。ま
ドゥシャンヌ歩行の改善より腰椎側屈、回旋によ
た、歩行時に右腰背部痛がみられた。ROM は股関
る機械的圧迫が軽減し狭窄部の循環が改善したと
節伸展右 5°、左 15°、SLR 右 40°、左 55°、
考えられる。また、股関節の可動域改善により腰
右足関節背屈 5°、体幹屈曲時に L3~L5 レベルの
椎による代償が軽減したと考えられる。これらが
屈曲可動域低下がみられた。MMT は右股関節伸
神経症状消失の一助になったと考えられる。手術
展 4、外転 2、右足関節背屈 2 であった。座位、立
療法適応レベルであったが一般的な予後と比較し
位ともに右側方への外乱時に体幹の立ち直り反応
て良好な改善を示したのは、LCS の症状が出現後
が消失していた。
早期からの介入であったことと、虚血による可逆
的な神経障害であったためだと考える。LCS 患者
【問題点】
右股関節外転筋の筋力低下による右ドゥシャン
ヌ歩行、右足関節背屈筋の筋力低下による鶏歩、
フットスラップが生じていた。右股関節の可動制
限により立脚後期が短縮し推進力の代償として右
に対し、早期からの理学療法介入による保存療法
が治療の選択肢として意義があるのではないかと
考える。
【第 25回
京都府理学療法士学会】
MMT:右下肢 2+
左下肢 3 体幹 2
痛み:腰部周囲に強い痛み(安静時・動作時)
入院中にADL全介助であったが、訪問リハビリテー
ADL:BI
ションの導入により飛躍的にADLが向上した症例
(食事
について
自立 5 点)
川瀬
15 点
部分介助 5 点・移乗 ほぼ全介助 5 点・整容
【経過】(週 1 回 2 単位で実施)
啓介 1)
1)医療法人丹医会
園部丹医会病院
リハビリテー
ション科
開始時
家族に安静を伝え、リハでは脊柱起立筋を中
心とした筋のリラクセーションとROM運動を行い
【キーワード】訪問リハビリテーション
家族介護
訪問看護(以下訪看)に足底のマッサージを指導。3 週
目には痛みが軽減し起き上がり自立。端座位も 10 分
意欲
程可能になり、車椅子での食事となる。
【はじめに】
2ヶ月目、背臥位・座位での姿勢コントロールと立ち
昨今の病院機能の分化により、急性期・回復期・維
上がり、立位保持訓練を実施。家族へは移乗とトイレ
持期の区分けが明確になっているが、
の介助方法を指導。訪看に座位姿勢を指導。環境面で
南丹圏域では、回復期病院がなく急性期から在宅復帰
は、トイレに手すりを設置。
する症例も少なくない。
3 ヶ月目、歩行器をレンタルし歩行訓練開始。訪看に
今回、当院入院中にリハビリテーション(以下リハ)
立ち上がり動作を指導。
の拒否により介入出来なかったが、訪問リハをきっか
4 ヶ月目、荷重位で下肢・体幹筋力強化と歩行訓練の
けに飛躍的にADLが向上した症例を経験したので
継続。訪看に歩行訓練を指導。トイレは歩行器を利用
報告する。
して移動となる。
5 ヶ月目以降は、自宅内移動は歩行器を利用して可能
【説明と同意】
となる。
本人・家族に趣旨を説明し発表の了承を得た。
【結果】
【症例紹介】
男性
87 歳
(平成 26 年 6 月 12 日)
ROM:股関節伸展・足関節背屈制限
平成 25 年 9 月 15 日溺水にて(水没時
MMT:右下肢 3 左下肢 4+
体幹 4
間約 4 分)救急搬送となり急性肺水腫・低酸素脳症と
痛み:消失
診断され当院入院。入院中右胸水や誤嚥性肺炎を認め
ADL:BI
た。食事は嚥下食で1割程度の摂取。離床への拒否が
【考察】
強くリハはほとんど施行出来ず、ADLはほぼ全介助。
リハ開始 1 週間前の転倒により、腰部の痛みが強く出
本人の希望で 12 月 29 日に自宅退院。退院後、食事量
現し、ADL全介助となっていた。打撲と腰部周辺の
や活動量が向上したが、ベッドから立ち上がる際に転
筋緊張亢進による痛みであり、安静と筋緊張緩和を目
倒し腰を強打しベッド上生活となる。退院後 1 カ月で
的とした治療を行い痛みが軽減し、本人の意欲が向上
訪問リハ開始となる。
した。その時期からADLに直結したリハの実施と、
既往歴:右脛腓骨骨折
脳梗塞
家族への介護指導、訪看へのリハ指導を症例の状態に
介護度:要介護 5
利用サービス
療
訪問看護・訪問入浴
75 点
合わせて行うことが出来た。結果、リハで期待できる
週 1 回 訪問診
月1回
以上のADL向上を認めた。今回の経験で、訪問リハ
は利用者の在宅生活のために積極的にリーダーシッ
プを取り、各サービスと連携をはかる重要性を再認識
【初期評価】
(平成 26 年 1 月 30 日)
ROM:両股・膝・足関節に制限
し、回復期施設のない圏域で訪問リハの必要性を改め
て痛感した。
【第 25回
京都府理学療法士学会】
上)は男性 28 名、女性 23 名と大きな差はなかった。
これは 4 回以上転倒した患者が女性 4 名に対して
当院回復期リハビリテーション病棟の転倒・転落
男性 13 名と、男性は転倒を繰り返す患者が多かっ
事故における、性別による傾向のちがい
たことによる。一方医療機能評価機構による患者
影響レベルの 3b 以上は 7 名(骨折 6 名、外傷性ク
貞宗
佑季
1
)
関
恵美
1
)
足立 友美
1
)
1)京都民医連第二中央病院リハビリテーション
部
モ膜下出血 1 名)であり、骨折 6 名のうち 4 名は
75 歳以上の女性であった。
入棟時の栄養状態(BMI、TP、ALB)、日常生活
自立度(B.I、FIM)は性別による有意差は認められ
【キーワード】
転倒転落・性別・骨折
なかった。認知機能は HDS-R で女性が男性より
も有意に高く、MMSE も女性が高い傾向がみられ
た。握力は有意に男性が大きかった。
【目的】
当院回復期リハビリテーション病棟において昨
年度退院した患者のうち 88 名が転倒に至った。本
【考察】
転倒時の骨折予防では二つのアプローチがあり、
研究では転倒・転落事故の発生状況から、特に性
一つは骨折の直接の原因となる転倒回数を減らす
別による傾向のちがいについて明らかにすること
こと、もう一つは転倒時の外力に耐えうる骨強度
で今後の転倒対策につなげることを目的とした。
を再獲得することである。本研究より入院中の男
性は女性よりも認知機能の低下があったと考えら
【方法】
れ、その結果女性よりも転倒しやすく、また転倒
2013 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日までの
を繰り返しやすい傾向があると考えられた。男性
一年間に退院した患者 249 名(男性 118 名、女性
患者においては転倒回数を減らすこと、特に繰り
131 名)について転倒転落事故報告書と電子カルテ
返す転倒を防ぐことが今後重要な課題である。一
を用いて調査を実施。調査項目は年齢、性別、疾
方高齢女性は骨粗鬆症に罹患しやすく、軽微な外
患名、転倒の有無、当課入院時の BMI、総蛋白量
力によって容易に骨折が起こる。本研究でも女性
(以下 TP)、アルブミン値(以下 ALB)、
握力、Barthel
は男性より転倒率が低く転倒件数も少なかったが、
Index(以下 B.I)、
機能的自立度評価表(以下 FIM)、
実際に骨折した患者は女性の方が多かった。その
長谷川式簡易認知症検査(以下 HDS-R)、Mini
ため高齢女性では初回から転倒を防ぐことが重要
Mental State Examination(以下 MMSE)とした。
であり、転倒リスクの高い患者に対してはヒップ
転倒患者については転倒回数や患者影響レベルも
プロテクターの使用、服薬による骨粗鬆症治療な
調査した。
どの対策が必要であると考える。ただし痩せた人
ほど骨粗鬆症になりやすく、また転倒時に軟部組
【結果】
転倒者数は 88 名(男性 50 名、女性 38 名)、男性
は患者全体の 42%、女性は 29%が転倒しており
男性患者は女性患者の約 1.5 倍であった。総件数
に占める割合では、全 229 件のうち男性 142 件、
女性 87 件で男性が多いが、複数回転倒者(2 回以
織の厚が薄いため骨折しやすいと言われているも
のの、本研究では栄養状態の男女差は認められな
かった。