ロタウイルスの分子疫学: 私はこう考える

2014/7/22
みちのくウイルス塾講座 2014年7月20日 仙台市
ロタウイルスの分子疫学:
私はこう考える
Ruth Bishop
ビショップ教授
(王立小児病
院・オーストラ
リア)
今年はロタウイルス発見40周年である
不明
(88%)
ロタウイルス
(52%)
Salmonella Shigella sp.
sp.
1%
7%
Pathogenic
E. coli
4%
Adenovirus
7%
Pathogenic E.
coli
2%
Unknown
88%
Unknown
27%
Rotavirus
52%
Shigella sp.
1%
Salmonella sp.
11%
1972 (N=539)
1974 (N=378)
メルボルンの王立小児病院における急性胃腸炎による入
院患者から同定された病因別の相対頻度
(1972年 と1974年の比較)
The Lancet, 1973
Courtesy of Professor Ruth Bishop
Virion
Structural proteins
core
VP1
VP2
VP3
Genome
segments
Nonstructural
proteins
混合感染によって生じる遺伝子分節再集合現象
ウイルス株B
ウイルス株A
- 88 kDa
- P serotype
VP4
- hemagglutinin
- VP5*+ VP8*
- 45 kDa
VP6 - group
- subgroup
NSP1 (53 kDa)
VP7
NSP2 (35 kDa)
NSP3 (34 kDa)
NSP4 (28 kDa)
- 37 kDa
VP7
- G serotype
enterotoxin
遺伝子分節再集
合体
VP4
NSP5 (28 kDa)
NSP6 (11 kDa)
VP7
1
2014/7/22
„ 経口糞便経路
汚染した物品
ヒトーヒト感染
疫学
epidemiology
Multiplication and
release of virus
Villi in small
intestine
コントロール(対照)をどのように設定す
るのかがカギである。
Villous shortening,
cellular distortion and
loss of microvilli
„ 潜伏期~2-4 days
„ 典型的症状:
Diarrhea and/or vomiting
Fever
„ 持続期間: 3- 8 days
„ 主要な合併症は脱水
脱水状態
脱水を早期に治療しないと死亡することも
ある
ロタウイルスは宿主の種を越えて伝播するか?
分子疫学
Molecular
epidemiology
6) ロタウイルスのゲノムの多様化とそのメカニズム
ネコロタウイルス
Dog RV
ヒトロタウイルス
Human RV
●
●
●
●
●
●
●●
●
●
●
●
●
●
●
●● ● ●●●● ●●
●●●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
● ● ●
●
●
●
●
動物のロタウイルスがヒトに感染すること(種間
伝播interspecies transmission)がまれに起こる。
このとき,11分節からなるゲノム全体がヒトという
●
新しい宿主に適応し生き延びていく場合と既存
のヒトロタウイルスとの間で遺伝子分節の交換を
起こした遺伝子分節再集合体として生き延びて
●
●
●
●
●
●
Cat RV
イヌロタ
ウイルス
●
●
●
●
いく場合があり,知られている例では後者の方が
多い。
●
●
2
2014/7/22
種間伝播の二つの様式
(1) まるごとの伝播
(2) 遺伝子分節の再集合によって
種間伝播の発見に役だった三つの要素
Encounter 出会い
動物のロタウイルスが種の壁を越えて
ヒトに感染した証拠を示した最初の論文
Prepared mind
Conceptualization of an idea
Genogroupの概念の発想と確立
Availability and acquisition of a
technique
1989
RNA-RNA ハイブリダイゼーションの手技の
取得
Is interspecies transmission a contemporary
events?
1歳の男の子の親がわが子にウシを見せるためテルアビブ郊
外の農場に連れて行った。その後この子が下痢を起こし、便
を調べたところ、ウシロタウイルスが分離された。
ゲノムRNAの相同性からみると、ヒトロタウイルスで
あるAU-1およびAU228 はネコロタウイルスである
FRV-1と区別することができない。
3
2014/7/22
この子から分離されたロタウイルスRo8059は、そのゲノム。泳動電気
パターンがあまりにもウシロタウイルスの標準株NCDVに似ていた
米国CDCのサーベイランスで型別判定不
可能であった株の解析:新たな遺伝子分節
再集合体と非通常株
米国CDCのサーベイランス
で見つかった非通常株
CC425株 も KC814
株 も 血清型や電気泳
動のパターンからAU1株と区別できない。
KC814 : G3 P[9]
CC425 : G3 P[9]
Se584 : G6 P[9]
これらの G3P[9] ウイルス
株は、 G3P[9]のプロトタイ
プであるAU-1と同じ仲間
か?
CC425
probe
しかし、その遺伝子を
解析してみるとゲノム
の半分はAU-1株に
類似し、残りの半分は
ウシロタウイルスに類
似していた。
4
2014/7/22
種間伝播にみられる二つの様式の意味
ネコ由来と考えられるまれなヒトロタウイルスと
ウシロタウイルスとの遺伝子分節再集合体が
そうそうあちこちで発生するものだろうか。
● 米国の3つの州
● イタリアの二か所で異なる年に
「ひずめの音聞いたら、シマウマではなくウマ
を思い浮かべよ。」
(米国の医学生がよく聞かされる格言)
種間伝播は直接伝播以
外ありえないではないか
終末感染
馴化
5