世界初、カイコ繭を用いた パンデミックインフルエンザ

2014年2月14日
日経アジア感染症会議
Renewal of Our Commitment to Fight against Communicable Disease
A-1 危機感染症に対する沖縄の行動計画
世界初、カイコ繭を用いた
パンデミックインフルエンザワクチンの開発
株式会社免疫生物研究所
遺伝子組換えカイコ事業部
冨田 正浩
トランスジェニック(TG)カイコを用いた
組換えタンパク質生産系
¾ カイコは重さ約0.3gの繭を作るが、この繭の97%は絹タンパク質
である。
¾ カイコのもつ絹タンパク質合成能力を利用すれば、安価にかつ
大量に組換えタンパク質を生産できる。
組換え
タンパク質
TGカイコによる組換えタンパク質生産システム
IBLの特許技術
トランスジェニックカイコ
組換えタンパク質は、セリシン層に局在
絹糸断面の電顕写真
組換えタンパク質は、親水性のセリシン層に局在するため、
容易に抽出が可能。
KDa
セリシンやフィブロイン等の絹タンパク質は難溶性。
組換えタンパク質を高純度で繭から抽出することができる。
繭抽出液の
電気泳動解析結果
82
68
55
42
28
15
抽出後の精製操作が極めて容易。
遺伝子組換え
非組換え
絹繊維は、フィブロイン繊維とセリシン層より構成される
組換えタンパク質
TGカイコによるタンパク質生産の実用化構想
化
製品
化
製品
研究用試薬(ELISAキット用抗体など)
診断用医薬品(抗原検出用抗体など)
化
製品
化粧品(コラーゲンなど)
中
開発
動物用医薬品(ワクチン、サイトカイン)
中
開発
ヒト用医薬品
(抗体医薬品、フィブリノゲン、ワクチン)
TGカイコで生産するヘマグルチニン(HA)遺伝子のデザイン
HA (ヘマグルチニン)
NA (ノイラミニダーゼ)
インフルエンザウイルスの構造
HA
ヘマグルチニン(HA)の構造
HA1
HA2
527
sHA-Foldon(三量体型)
・・・QSR
・・・TRI
TM
Trimeric domain
(Foldon)
527
sHA(単量体型)
・・・TRI
TGカイコで発現するためのHA遺伝子の構造
(H1N1(A/Okinawa/248/2009))
TGカイコの作出
卵に微量注入
1令
2令
産卵
卵
3令
成虫
(蛾)
蛹
継代
繭
4令
5令
1世代:約45日
トランスジェニックカイコ第1世代
(G1)
H1N1抗体によるTGカイコ繭の蛍光抗体染色
コントロール
sHA-foldon
sHA
TGカイコ繭の電気泳動およびウエスタンブロット解析
sHAControl
Foldon
sHA
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
sHAControl
Foldon
sHA
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
HA
(trimer)
(KDa)
250
HA
(trimer)
(KDa)
250
150
150
100
75
HA
(monomer)
50
100
75
HA
(monomer)
50
37
37
25
20
25
20
15
15
CBB
Anti-H1N1 antibody
1: Total extraction (8M urea, 50mM Tris(8.0), 2% 2-ME)
2: PBS (final 0.5MNaCl)
3: 0.1% Triton X-100 in PBS (final 0.5M NaCl)
4: 0.1% Triton X-100 in PBS (final 0.5M NaCl) Non-boiled
組換えsHAおよびsHA-foldonの発現が確認できた。
Cocoons
↓
Extraction with 0.1% Triton X-100
in PBS (final 0.5M NaCl)
↓
Ammonium sulfate precipitation
↓
Cation exchange chromatography
Biol
non-boil
Biol
non-boil
組換えHAの精製
(KDa)
(KDa)
250
250
150
100
75
50
37
Cocoons
↓
Extraction with 0.1% Triton X-100
in PBS (final 0.5M NaCl)
↓
Ammonium sulfate precipitation
↓
Anion exchange chromatography
150
100
75
50
37
25
20
25
20
15
15
sHA-foldon
sHA
組換えHAの免疫応答能
30 μgの精製sHA-foldonまたはsHAをddYマウスに免疫
↓
14日後および21日後に追加免疫
↓
28日後に採血し血清を分離
↓
赤血球凝集阻害アッセイ (HAI)によりHAに対する抗体価を定量
sHA-foldon
32
64
128
256
512
1024
2048
4096
8192
16384 32768 65536
H1N1 (A/okinawa/248/2009)
HI titer: 2048
H5N1 (A/duck/singapore-Q/F19/3/97)
HI titer: Negative
sHA
32
64
128
256
512
1024
2048
4096
8192
16384 32768 65536
H1N1 (A/okinawa/248/2009)
HI titer: 2048
H5N1 (A/duck/singapore-Q/F19/3/97)
HI titer: Negative
sHA-foldonおよびsHAを接種したマウスにおいて、高い免疫応答が認められた。
まとめ
1. TGカイコにおいて、単量体HA(sHA)と三量体HA(sHAfoldon)の発現に成功した。
2. 組換えsHAおよびsHA-foldonを繭から抽出し、精製すること
ができた。
3. 組換えsHAおよびsHA-foldonをマウスに接種した結果、高
い免疫応答が認められた。sHAおよびsHA-foldonに対する
抗体価は同等であった。
↓
カイコで生産した組換えHAは、ワクチンとして開発できる
可能性がある。
H5N1ヘマグルチニンの発現
1
TM
18
pSYN3510-7(H5HA)
HA1
HA2
527
・・・IYQ
W1-pnd
W1-pnd
H5sHA-Foldon
No.10
No.33
No.36
No.6
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
(KDa)
250
(KDa)
250
150
100
75
150
100
75
HA
50
37
Trimeric domain
(Foldon)
No.57
No.58
No.86
No.42
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
HA
50
37
25
20
25
20
15
15
CBB
573
CBB
H5N1のHAについても発現可能であることを確認した。
繭に含まれる組換えタンパク質は、長期間安定に保存可能。
繭の状態でワクチン原料を備蓄することが可能 。