ルーラルエリアに適した光アクセス設備構成技術の開発

ルーラルエリア
簡易布設技術
R&D
細径軽量なケーブル
ルーラルエリアに適した光アクセス設備構成技術の開発
NTTアクセスサービスシステム研究所
まさひこ ※ 1 な か の
か ず き ※2 の が み
まさのり
な か ね
ひさあき ※ 1 はまぐち
し ん や
ひでとし
か ね こ
りょういち ※ 1
あ
べ
阿部 雅彦
中根 久彰
/中野 和紀
/浜口 真弥
/野上 雅教
つ
ま
/都間 英俊
くらもと
け い た ※3 よ ね だ
けいすけ
かわぐち
かつひさ
りょうすけ
/倉本 圭太
/川口 勝久
/米田 恵輔
や す い
/安井 良介
/
/
金子 亮一
今後,光サービス展開が予定されているルーラルエリアにおいて,効率的な設備
構築を可能とするため,広域かつ需要散在という特徴に合わせた光配線設計技術や,
従来と比較して効率的なケーブル布設を実現する簡易布設技術やそれらを実現する
ための細径軽量な新24心光ケーブル,および関連物品について紹介します.
る特徴があります(図 1 )
.
開発の背景
の都市部向けの設備構成と比較し,小
このため,ルーラルエリアにおいて従
規模配線ブロックを設定することによ
NTT東日本 ・ 西日本の光サービス展
来の設計施工技術と物品を用いた場合
り, 1 配線ブロック内のユーザ数が少な
開に合わせて,全国に光設備が構築さ
の 1 ユーザ当りの設備構築コストは,都
くなることからスプリッタ下部心線量を
れ,都市部においてはすでに設備が充
市部の約1.7倍となります.さらなるコ
抑制することができます(図 2 )
.配線
足されており,今後はルーラルエリアへ
スト削減に向け,ルーラルエリアにおけ
ブロックの小規模化により分割損が発
の設備展開が予定されています.ルー
る効率的な設備構築を行うためには,
生しやすくなることから,スプリッタ上
ラルエリアは都市部と比べ,端末のお
ルーラルエリアの地域様相に応じた設
部の心線数や対応する所内装置コスト
客さままでの架空設備の距離や架空設
備構成を最適化することにより,設備
が増加傾向となりますが,地域様相に
備全体の総ルート長が長く,電柱当りの
構築量の抑制による構築コストの全体
応じた配線ブロック規模とすることによ
お客さまの数も少ない等,広域かつ需
的な低減や,特に構築コストの約半分
り,ルーラルエリアにおける設備構築量
を占めるケーブル施工費の低減が求め
を最適化することができます.例えばス
られます.
プリッタ下部心線数を抑制することによ
要が散在しているという都市部と異な
り,従来40心以上を布設していた区間
開発のコンセプト
※1 現,NTT東日本―東北
※2 現,NTTフィールドテクノ
※3 現,NTT東日本―南関東
へより少心の24心ケーブルに抑えること
まず,設備構築量抑制のため,従来
17
◆ルーラルエリア
・架空総ルート長 長
・架空最遠距離 長
10
ケーブル施工費
50%
ができるようになります.
ケーブル施工
◆都市部
ケーブル物品
接続,スプリッタ,
クロージャ
・架空最遠距離 短
・クロージャ当り引落し数 多
・クロージャ当り引落し数 少
・架渉ポイント 少
50%
図 1 都市部とルーラルエリアの特性および設備構築コストの違い
48
NTT技術ジャーナル 2014.8
・架空総ルート長 短
・架渉ポイント 多
R
り外しすることでケーブル布設が完了し
ブルを布設します.
この新工法では,
ケー
め,ドラム移動式ケーブル繰出し台車を
ます.この従来工法では,ケーブル布
ブル布設区間の工事開始点から工事終
用いた片道作業化による,ケーブル布
設区間の工事開始点と工事終了点を何
了点までの作業を片道作業化すること
設時の作業時間 ・ 人数を削減する工法
度も往復するため,ケーブル布設距離
で作業時間の短縮が図れ,また作業人
を説明します(図 ₃ )
.
の長いルーラルエリアではケーブル布
数はドラム移動式ケーブル繰出し台車
設施工費が高くなります.
を押す人員と,電柱上にてケーブルを
従来工法では,ケーブル布設区間の
一方,新たな簡易布設技術による工
工事開始点に固定したケーブルドラム
張線 ・ 引き留める人員の 2 名程度に抑
えることができます.
から,既存ケーブルに金車をかけながら
法は,ケーブルドラムをドラム移動式
ケーブルを繰り出します.ケーブル布設
ケーブル繰出し台車により移動式とす
以上のように,配線ブロックの小規模
区間の工事終了点にてケーブルを電柱
ることで,工事開始点でケーブルを引き
化による設備構築量抑制とケーブル布
に引き留めたのち,工事開始点まで戻り
留めたのち,ドラム移動式ケーブル繰出
設の片道化を実現する簡易布設技術に
ケーブルを張線し,各電柱にてバンド
し台車を次の電柱まで移動させ,次の
よるケーブル布設費低減によって,ルー
金物類を取り付けてケーブルを架渉し,
電柱でケーブルを張線する,という作
ラルエリアにおける光設備の構築コスト
最後に既存ケーブルにかけた金車を取
業を各スパンで繰り返すことによりケー
低減を目指します.
配線ブロック規模
OLT
大
SP上部心線+SP下部心線
トータルコスト
最適点
OLT
小
OLT
OLT
配線ブロック
規模
SP上部コスト
所内装置
SP上部コスト
SP下部コスト
SP上部心線
SP数
SP下部心線
大
少
多
小
多
少
SP下部コスト
大
小
配線ブロック規模
SP:スプリッタ
図 2 配線ブロック規模とコスト傾向
(a) 従来
ドラム設置
ケーブル繰出し
往復作業
金車取外し
バンド金物
類取付
簡易布設技術
金車取付
(b) 新工法
ケーブル繰出し
ドラム移動式ケーブル
繰出し台車
ケーブル
引留め
バンド
吊架金物取付
ケーブル
引留め
片道作業
図 3 従来工法と新たな簡易布設技術による工法の比較
NTT技術ジャーナル 2014.8
49
&Dホットコーナー
次に,ケーブル布設施工費低減のた
簡易布設技術の構成技術
ブルドラムを移動しながら布設するため
連物品を紹介します.
に必要となるのが,ドラム移動式ケーブ
■配線点クロージャ
次に,ケーブル布設の片道化による
ル繰出し台車です(図 4 ②)
.ドラム移
配線ブロックの小規模化を受け,配
簡易布設技術を実現するための構成技
動式ケーブル繰出し台車は, 4 輪台車
線点でのスプリッタ収容数も現行の最
術を紹介します.
によりさまざまな路面でケーブルドラム
大 8 個から 3 個程度にまで縮小が可能
■新24心光ケーブル
を人力で運搬できる構造となっており,
となることから,必要収容数に適した,
従来,ケーブルドラムは工事開始点に
移動しながらケーブル繰出しが可能と
細径軽量な新24心光ケーブルにも設置
固定されていましたが(図 3 )
,ドラム
なるよう,ケーブル繰出し口や,停止し
可能な小型クロージャを開発し,物品コ
移 動 式ケーブル 繰出し台車を用いて
た際におけるケーブルわらい止め防止
スト低減を図りました(図 5 ①)
.スプ
ケーブルドラムごと移動する方法をとる
用のストッパなどの工夫を盛り込んでい
リッタ下部心線の接続は,コスト低減を
ために,私たちは細径軽量な新24心光
ます.2013年度には今後光展開を予定
目指したテープ接続構造と,SO工事の
ケーブルを開発しました(図 4 ①)
.ケー
している複数エリアや,各電力エリアに
実態に合わせたオーダ単位での開通を
ブル質量を現行品の約40%とし,ケーブ
おける現場調査,実際の構築予定ルー
実現する単心メカニカルスプライス接
ルドラムへの巻取り長を500 mとするこ
トのあらゆる設備パターンにおいて各県
続構造を,運用に合わせて選択可能で
とで,ケーブルとケーブルドラムの総質
域の通建会社や協力会社の現場作業者
す.
量45 kg以下を実現しています.巻取り
に本技術の施工性を確認してもらい,
■新 8 心光ケーブル
長を500 mとすることで従来よりも接続
意見交換を基に台車の操作性向上等,
分岐ルートなどの散在需要に対して
数の増加が想定されるため,短時間で
施工性のさらなる向上を実現しました.
は,従来のドロップ光ファイバ程度に細
の接続が可能となるよう,また特殊な工
また,簡易布設技術では,工事開始
径化した新 8 心光ケーブルを開発する
具なしでも接続が可能となるよう,新24
点から工事終了点までスパンごとにケー
ことにより,張線工具の不要な電柱ス
心光ケーブルの両端部に24心MPOコネ
ブルを張線して引き留める必要があるこ
パン間架渉を実現しました(図 5 ②)
.
クタを取り付け,一括接続が可能な簡
とから,引留め作業をより効率化するた
細径軽量化により従来の 8 心光ケーブ
易接続部(ジョイント部)を開発しまし
めの金物を選定しました.それがケーブ
ルと比較し物品コストの低減が見込め
た.新24心ケーブルは,現行品より細
ル支持線外被の剥ぎ取りが不要な新型
るとともに,従来のドロップ光ファイバ
径軽量化されたことにより,単体でも物
差込式引留め金物と,中間柱で支持線
並みの布設工程で布設が可能となるた
品コスト低減が見込めることから,2013
を切断せずに引留め可能な新型ちょう
め, 8 心光ケーブル区間における構築
年度より事業導入されています.
架金物です(図 4 ③)
.
コストの低減が見込まれます.なお,新
■簡易布設技術および関連ツール類
(ドラム移動式ケーブル繰出し台車,
引留め金物)
関連物品の紹介
次に,ルーラルエリアにおける光設備
細径軽量化したケーブルおよびケー
8 心ケーブルの施工では,専用のアタッ
チメントを使用することで,従来の工具
による施工が可能です.
の構築コスト低減に向けて開発した関
簡易布設技術の構成技術
①新24心光ケーブル
ケーブル部
簡易布設を可能とする
細径軽量化ケーブル
②ドラム移動式ケーブル繰出し台車
③引留め金物
新24心光ケーブルを移動
しながら布設可能な台車
簡易布設を
より効率化する
引留め金物類
新型差込式引留め金物
新型ちょう架金物
簡易接続機構
き線点
配線点
分岐点
図 4 開発物品一覧(本線ルート)
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NTT技術ジャーナル 2014.8
引落し点
本線ルート
R
&Dホットコーナー
き線点
配線点
分岐点
引落し点
本線ルート
①配線点クロージャ
新24心光ケーブルに対応した新たな配線点
クロージャ
引落し点
引落し点
分岐ルート
ドロップルート
②新 8 心光ケーブル
③引落し点クロージャ
張線器を用いずに電柱スパン間架
渉が可能なケーブル
新 8 心光ケーブルに対応した新
たな引落し点クロージャ
④細径SZ Sドロップ光ファイバ
電柱スパン間架渉が可能な
ドロップ
⑤コネクタ収容ケース
ドロップの中間接続可能な
ケース
図 5 開発物品一覧(分岐ルート・ドロップルート)
■引落し点クロージャ
ルーラルエリアにおけるクロージャ当
柱スパン間架渉が可能となることで,従
構築コスト低減が可能となり,事業への
来,分岐ケーブルのクロージャから引き
貢献が期待できます.
りの想定ユーザ数から,クロージャの必
落としていた数スパン先のお客さまに対
要引落し数を 2 加入に最適化し,現行
して,クロージャを設置せずに直落とし
の引落し点クロージャ比で容積約90%
が可能となり,引き込み区間のコストダ
減とすることにより,ドロップ光ファイ
ウンを可能としました.さらに,
事業ニー
バ 並みに細 径 軽 量 化された新 8 心 光
ズでもある
「自然災害に強い設備づくり」
ケーブルに対応する引落し点クロージャ
に寄与し,2013年度より,一部エリアに
を開発しました(図 5 ③)
.超小型なク
導入されており,今後,適用エリアが順
ロージャ内でも引落し作業が従来どおり
次拡大する予定です.
行えるよう,簡易スプライスによる短余
■コネクタ収容ケース
長接続を可能とし,既存工具が使用で
ドロップルートにおける切分け点やド
きる構造を実現しました.さらに,現場
ロップの相互接続を可能とするため,切
や事業会社のニーズを反映し,引落し
分け点用としてFASコネクタ,中間接
点クロージャをベースとした新 8 心光
続用として外被把持メカニカルスプライ
ケーブルや既存テープドロップを全心
(後列左から)中根 久彰/ 都間 英俊/
米田 恵輔/ 野上 雅教/
安井 良介(右上)
(前列左から)倉本 圭太/ 中野 和紀/
阿部 雅彦/ 金子 亮一/
スによる接続を収容可能なコネクタ収
川口 勝久/ 浜口 真弥
接続可能なクロージャのラインアップを
容 ケ ー スを 開 発 し まし た( 図 5 ⑤ )
.
追加し,支障移転や加害事故などへの
2013年度にドロップの中間接続用として
今後は,事業会社への導入支援を継続す
るとともに,引き続き事業会社と連携しな
がら,設備構築コスト低減と保守運用性向
上に向けた取り組みを実施していきます.
対応を可能としました.
導入され,故障時,支障移転時のドロッ
■細径SZ―Sドロップ光ファイバ
プ中間接続工法として,ドロップ張替え
お客さま宅への引落しについては,従
来のドロップ光ファイバよりさらに重量
約25%減とし,SZ撚り構造とすること
により風圧荷重を低減しました.また,
抑制に寄与しています.
今後の予定
今回開発した技術は,細径軽量化し
支持線強度を向上することにより,電柱
たケーブルの開発と関連物品の開発に
スパン間架渉が可能です(図 5 ④)
.電
より,ケーブル施工費低減による設備
◆問い合わせ先
NTTアクセスサービスシステム研究所
光アクセス網プロジェクト
TEL 029-868-6390
FAX 029-868-6400
E-mail nogami.masanori lab.ntt.co.jp
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