在宅がん患者の終末期ケア~スコポラミン軟膏を使用した死前喘鳴のケア

第 17 回日本在宅医学会もりおか大会
一般・指定演題
(実践報告)抄録用紙
演題名
在宅がん患者の終末期ケア
~スコポラミン軟膏を使用した死前喘鳴のケア~
(全角 80 字以内)
演者名
所属
○白山宏人、1)
稲井理仁、1)
森田浩嗣、1)
藤田拓司、2)
沖代奈央、1)
1)(医)拓海会
大阪北ホームケアクリニック
2)(医)拓海会
神経内科クリニック
梶本心太郎、1)
【目的】死前喘鳴は死亡数時間~数日前のがん患者の 23~92%に認め、報告では約 9 割の家
族が死前喘鳴をつらいと感じており、そのケアは大変重要となる。死前喘鳴は喀出できない
唾液や気管分泌物による真性死前喘鳴と肺炎・腫瘍・体液貯留等による偽性死前喘鳴に区分
される。今回、両方の死前喘鳴のケアにスコポラミン軟膏(以後 S.O と記載)を使用し、効
果について考察も含め報告する。
【実践内容】平成 25 年 6 月から 12 月に在宅看取りのがん患者 34 名中 12 名に真性死前喘鳴
を認めた。12 名の家族に病状説明、口腔ケアや体位変換等の指導、吸引や輸液の差し控えで
対処した結果、死前喘鳴に対する家族の不安が STAS-1 は 7 名、STAS-2 は 5 名であった。こ
の 5 名(A 群、死亡前平均約 38 時間で出現)と他に誤嚥やイレウスの影響による喘鳴(偽性
死前喘鳴)と判断し家族の負担の強い 2 名(B 群、死亡前平均約 450 時間で出現)の計 7 名
に S.O を両耳介後部に計 1gを使用し評価。
【実践効果】A 群は全て S.O 塗布後 6 時間前後で喘鳴がほぼ消失、特に有害事象無し。B 群
は複数回の塗布でも喘鳴の軽減無く、口渇感や喀痰の粘調が高まり塗布を中止。
【考察】当院では神経難病患者の唾液流れ込みに S.O を使用し効果を得ている。S.O は唾液
分泌の抑制により A 群には著効したが、唾液以外の原因が主の B 群には効果が無かった。死
前喘鳴のケアは、口腔ケアや体位変換、家族への説明、吸引、スコポラミン等の皮下注や舌
下投与、アトロピン点眼の舌下が主である。吸引や注射処置は在宅スタッフや家族の処置等
の負担も懸念されるが、軟膏ならば簡易で負担も少ない。S.O は保険未収載薬のため、その
旨を文書で家族に説明し、同意の上で使用した。費用は 20g で約 7 千円だが少量塗布で済む。
真性死前喘鳴に対する家族の不安や負担の軽減に S.O は有効だが、他の死前喘鳴のケアの必
要性も踏まえ報告する。