in-so urce CID によるシル ルデナフィ ィル類縁体 体の構造解

佐賀県衛生薬業センター
ー所報 第 34 号(平成
号
24 年度)
[技術資料]
in-source CID によるシル
ルデナフィ
ィル類縁体
体の構造解
解析
薬品課 中園 陽子 江口 晴香 八ヶ代 一郎
医薬
食品
品化学課 中山
山 秀幸
ィル類縁体 Q-TOF
Q
MS MS^3 スペクトル
キーワード:シルデナフィ
に
1 はじめに
医薬品成分
分が含有され
れた健康食品
品・化粧品等に
による健康被
被害の事例が、世界的に問
問題となっている。当セ
ンターでは、
、これらの成分
分を検出する
るシステムとし
して、LC-TOF
F MS を用い
いた精密質量デ
ース検索シ
データーベー
ステム1)2)、L
LC-QTOF MS
M を用いた未
未知医薬品類
類似物質の検
検索システム3)を開発し運
運用している。しかし、本
システムだけ
けでは推定が
が困難な、置換
換基の一部の
のみを変更し
した異性体を含
含む違法薬物
物やいわゆる
る健康食品
の出現が相次いでいる。平成 24 年度
度に当センター
ーで分析を実
実施した強壮
壮系の製品(い
いわゆる健康食
食品)では、
物において保
保持時間(RT
T)、UV スペク
クトル及び MS
S スペクトルが
が酷似し、どち
ちらの化合
候補に挙がった 2 化合物
ているのか判
判定が困難で
であった事例が
があった。さら
らには MS/M
MS スペクトル
ルも非常に類似
似していた
物が含有して
(図 1)。この
のような化合物
物については
は、標準品との
の確認が非常
常に重要にな
なってくるため
め、判定までに
に要する時
間は標準品
品の入手に依存
存する。また、構造決定に
には MS スペ
ペクトルの情報
報だけでは不
不十分であり、核磁気共
鳴(NMR)ス
スペクトル、GC
C/MS、赤外線
線吸収スペク
クトル(IR)及び
び元素分析等
等が必要にな
なり、時間、技
技術及びコ
ストの面で全
全てを満たすことには限界
界がある。
一方、LC--MS 分析に用
用いられるエ
エレクトロスプレ
レーイオン化
化(ESI)はソフトなイオン化で
であり、H+や Na+といっ
た付加イオン
ンが主として観
観察されフラ
ラグメントイオン
ンは観察され
れにくいが、フ
フラグメンター
ー電圧を調整
整することに
よりインソース衝突誘起解
解離(in-sourrce CID)によ
よるフラグメン
ントイオンの観
観察が可能とな
なる。この点に着目し、
は in-source CID
C と QTOF を組み合わせ
せて擬似的な
な MS^3 スペク
クトルを計測 し、得られた MS^3 スペ
今回我々は
クトルのライブラリ化を試
試みたので報告
告する。
成分名
名
組成
成式
構造式
UVスペクトル
ル
ホモシルデナフィル
C23H322N6O4S
メチソシルデナ
ナフィル
図 1. 構 造類似体の分析結果
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MS^2スペク
クトル
佐賀県衛生薬業センター
ー所報 第 34 号(平成
号
24 年度)
[技術資料]
2 方法
1. シルデナ
ナフィル類縁体
体
シルデナフ
フィル、ヒドロキ
キシホモシル
ルデナフィル、 デスメチルシ
シルデナフィル
ル、ノルネオ
オシルデナフィ
ィル、メチソ
シルデナフィ
ィル及びホモ
モシルデナフィ
ィルをメタノー
ールで希釈し 0.2mg/mL の標準溶液を
の
を作成した。実
実験には、
標準溶液を適宜メタノールで希釈し、0.2μm のメ
メンブランフィル
ルターでろ過
過したものを使
使用した。(表
表 1)
び測定条件
2. 装置及び
(LC 装置及
及び測定条件
件)
装置:A
Agilent 1200 シリーズ
カラム:Agilent ZOR
RBAX Eclipsee Plus C18 R
Rapid resolusiion HD φ2.1×100mm, 粒径 1.8 μm
相:(A)0.1 %ギ酸
酸+2.5 mM 酢酸アンモニ
酢
ニウム/15%MeC
CN
移動相
(B)0.1 %ギ酸
酸+2.5 mM 酢酸アンモニウ
酢
ウム/85%MeC
CN
グラジエ
エント条件:A
A:B(time)=10
00:0(0min)→
→0:100(30min
n) →0:100(3
35min)
カラム温
温度:40 ℃付
付近の一定温
温度
流速
速:0.2 mL/min
注入量
量:3μL
(MS 装置及
及び測定条件
件)
装置:A
Agilent 6540(Q TOF MS)
)
イオン化
化:Dual ESI,Positive mode
乾燥ガ
ガス:N2,350℃
℃,10.0L/min
n
ネブライ
イザー:N2,5
50psig
キャピラ
ラリー電圧:3500V
コリジョンガス:N2
フラグメンター電
電圧:100V~3
350V
エネルギー:55~40V
コリジョンエ
範囲:25~10050(m/z)
SCAN 範
表 1. シルデナフィル
ル類縁体
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佐賀県衛生薬業センター
ー所報 第 34 号(平成
号
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[技術資料]
【結果及び考
考察】
各種シルデ
デナフィル類
類縁体のうち、特徴的であ
あったホモシル
ルデナフィルとメチソシル
ルデナフィルの
の結果を示
す。両化合物
物は同一の組
組成式(C22H32N6O4S)を持
持ち、フラグメ
メンター電圧を
を 150V とした
た場合、得られ
れる MS ス
ペクトル及び
び MS^2 スペク
クトルは殆ど同
同一であり、保
保持時間も近
近接、UV スペ
ペクトルも類似
似している(図 1)ことから
判定には注
注意が必要であ
ある。
そこで、フ
フラグメンター
ー電圧を 350V
V とし、両化合
合物で唯一異
異なる構造を持
持つ置換基(--C6H13N2,m
m/z=113.11)
のフラグメン
ントイオンを Q1 にて分離、Q2 にてコリジ
ジョンエネルギ
ギーを 15V としてプロダク
と
クトイオンを観
観察したとこ
ろ、異なった
たスペクトルが
が得られ、構造
造上の差を確
確認することが
ができた(図 3)。
3
本事例の
のように置換基
基の構造のみ
みが異なる異性
性体に対して
て in-source CID
C と QTOF
F(タンデム型
型質量分析
計)を組み合
合わせた擬似
似 MS^3 スペクトル解析は
は非常に有用であり、医薬品類似物質の
の基本骨格に
に着目した
スクリーニン
ング検索システ
テムとを組み合
合わせることに
能力の更なる
る向上に繋が
がるものと考え
えている。
により、検索能
≠
ホ
ホモシルデナフ
フィル
メチソシルデ
デナフィル
図 3. 2 化合
合物の MS^3 スペクトル
ス
1)
原口那津美、中山秀幸、志
志岐寿子、吉冨
冨淑玲、古川義朗
朗:佐賀県衛生
生薬業センター所
所報,31,p.322-35,2009
2)
原口那津美、中園陽子、八
八ヶ代一郎、靍田清典:第 48 回
回全国衛生化学
学技術協議会年
年会講演集,pp.290-291
3)
原口那津美、中野里美、古
古川義朗、靍田清典:第 47 回
回全国衛生化学
学技術協議会年
年会講演集,p.3306-307
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