15.1.2 潮受堤防の安定・安全性 (1) 調査の結果の概要 1) 基本構造 潮受堤防の設計諸元を表 5.15.1.2-1 に示す。また、基本構造・断面を図 5.15.1.2-1 に示す。 表 5.15.1.2-1 施設名称 項 ○型 潮受堤防 潮受堤防の設計諸元 目 設計諸元 式 捨石式傾斜堤防 ○天端高 TP(+)7.00m ○天端幅 天端幅=5.0m ○基礎処理工 サンドコンパクションパイル工法 ○築堤材料 石材、砂、山土 ○法勾配 1:1.5~1:6.0 図 5.15.1.2-1 潮受堤防の基本構造 5.15.1.2-1 備考 2) 現地調査 潮受堤防の現地調査結果は、表 5.15.1.2-2 に示すとおりであり、構造的に問題とな る劣化・損傷は特に無く、施設は健全を保っている。 表 5.15.1.2-2 調査手法 現地調査結果 調査地点 現地調査結果 備 考 潮 受 堤 防 (L=6.77km) の 遠 隔 目 視 調 遠隔目視調査 潮受堤防全体 査を実施した。施設は健全を保って おり、損傷箇所は認められない。 北部排水門周辺の潮受堤防の延長 近接目視調査 北部 排水 門 周 10m 区 間 に 対 し て 近 接 目 視 調 査 を (定点調査) 辺 実施した。特に現状では損傷個所は S-1 地点 認められない。 潮受堤防の代表断面として、延長 潮受 堤防 中 央 10m 区 間 に 対 し て 近 接 目 視 調 査 を 付近 実施した。特に現状では損傷個所は S-2 地点 認められない。 南部排水門周辺の潮受堤防の延長 南部 排水 門 周 10m 区 間 に 対 し て 近 接 目 視 調 査 を 辺 実施した。特に現状では損傷個所は S-3 地点 認められない。 出典:「諫早地区水門施設機能保全検討業務報告書(平成 21 年 3 月 「調整池付帯施設機能診断調査業務報告書(平成 22 年 10 月 5.15.1.2-2 九州農政局)」 九州農政局)」 潮受堤防 凡 L=7(km) 例 現地調査地点 :遠隔目視調査 ○ :近接目視調査 図 5.15.1.2-2 潮受堤防調査位置図 5.15.1.2-3 (2) 予測の結果 1) 予測事項 予測事項は、調整池への海水導入・調整池からの排水に伴う海域・調整池水位の変 化による潮受堤防の安定性への影響とした。 2) 予測手法 排水門の開門に伴う海域及び調整池の水位変化による潮受堤防の安定性への影響 に対する予測手順は図 5.15.1.2-3 に示す潮受堤防の安定計算(常時、地震時等)を 実施する。 安定計算モデルの設定 既往検討資料 計算条件の設定 主な設定条件 水位条件 構造条件 外力条件 安定計算条件 許容安全率 潮受堤防の安定計算 図 5.15.1.2-3 潮受堤防の安定性への影響予測手順 5.15.1.2-4 3) 予測条件 ① 潮受堤防の安定計算条件 A 基本条件 イ 安定計算ケース 安定計算の予測ケースは、既往の検討条件、並びに開門調査時の数値シミュレーシ ョンの結果を踏まえ、計算時期、計算方向、水位条件、及び外力条件を組合せて表 5.15.1.2-3 のとおり設定した。 表 5.15.1.2-3 CASE 断 面 区分 1-1 潮 堤 受 防 常時 1-2 SD.2 +400 1-3 地震時 1-4 設 滑 り 方 向 水平震度 計 海 域 調整池 円弧の 盛土内 水 位 水 制 位 限 - TP(-)2.9m TP(+)2.2m なし なし 調整池側 - TP(+)4.9m TP(-)1.9m なし なし 0.084 TP(-)2.9m TP(-)1.0m 5H なし 0.084 TP(-)2.9m TP(-)0.8m 5H なし 0.084 TP(+)2.5m TP(-)1.2m 5H なし 海域側 調整池側 備 クラック 海域側 海域側 1-5 安定計算ケース一覧(開門方法ケース 1 の場合) 考 海域水位:朔望平均大潮干潮位 調整池水位:計画洪水位 海域水位:高潮時 調整池水位:開門時の調整池最 低水位 海域水位:朔望平均大潮干潮位 調整池水位:現行の調整池管理 水位の最低水位 海域水位:朔望平均大潮干潮位 調整池水位:海側水位+開門時 の最大内外水位差(+2.1m) 海域水位:朔望平均大潮満潮位 調整池水位:調整池操作下限水 位 ロ 荷重の組合せ 各検討ケースにおける荷重の組合せは、洪水と地震は同時に作用させないものとし た。 ハ 地震力(設計水平震度) 地震時の検討に用いる地震時慣性力は浸潤線以上の部分については湿潤単位体積重 量 γ t に浸潤線以下の部分については飽和重量 γ sat に設計水平震度 K h を乗じたもので、 慣性力の作用位置は各分割片の重心の位置とし、水平方向に作用するものとした。 設計水平震度は、以下に示すとおり、 「新耐震設計法(案)」 (建設省土木研究所)の 『第 2 編(土木構造物関係)』に従って、 K h =0.084 とした。 Kh= 設計水平震度 ここに、 Ko : K o ×△1×△2×△3 =0.20×0.7×1.2×0.5=0.084 標準設計水平震度(=0.20) △1 : 地域係数(地域区分 C で 0.7) △2 : 地域の特性による補正係数(第 4 種地盤で 1.2) △3 : 構造物の種別による補正係数(土構造物で 0.5) 5.15.1.2-5 B 安定計算結果の許容値(許容安全率) 関連基準書、並びに既往の検討条件を考慮し、各計算時期における許容安全率を表 5.15.1.2-4 のとおり設定した。 表 5.15.1.2-4 検討ケース 常 許容安全率 設計安全率 出 典 時 1.3 港湾の施設の技術上の基準・同解説(H14.4) 地震時 1.1 諫早湾干拓事業での採用値 4) 予測結果 A ケース 1 ケース 1 における潮受堤防の安定計算結果を表 5.15.1.2-5 に示す。いずれのケー スにおいても所要の安定性を確保しており、潮受堤防の安定性への影響はないもの と予測される。 表 5.15.1.2-5 CASE 断 面 区分 CASE1-1 潮 受 常時 CASE1-2 堤 防 CASE1-3 CASE1-4 SD.2 +400 滑 り 設 計 方 向 水平震度 海 域 調整池 円弧の 盛土内 水 位 水 制 位 限 クラック 許容 計算 安全率 安全率 判定 海域側 - TP(-)2.9m TP(+)2.2m なし なし 1.3 1.41 OK 調整池側 - TP(+)4.9m TP(-)1.9m なし なし 1.3 1.46 OK 海域側 0.084 TP(-)2.9m TP(-)1.0m 5H なし 1.1 1.11 OK 海域側 0.084 TP(-)2.9m TP(-)0.8m 5H なし 1.1 1.11 OK 調整池側 0.084 TP(+)2.5m TP(-)1.2m 5H なし 1.1 1.17 OK 地震時 CASE1-5 潮受堤防の安定計算結果(開門方法ケース 1 の場合) ※)判定は、(許容安全率)<(計算安全率)で「OK」、それ以外で「OUT」とした。 B ケース 2 第 1 段の水位条件は、ケース 1 の水位条件の範囲内に収まり、ケース 1 の安定計 算の結果から、潮受堤防の安定性への影響はないと予測される。 第 2 段階、第 3 段階は、それぞれケース 3-1、ケース 1 と同様の水位条件となる ので、これらと同様、潮受堤防の安定性への影響はないと予測される。 C ケース 3-1 ケース 3-1 における調整池の水位変動範囲は、ケース 1 の変動範囲よりも安全側 の水位条件となる。ケース 1 において潮受堤防の安定性に問題ないことから、ケー ス 3-1 においても所要の安定性を確保でき、潮受堤防の安定性への影響はないもの と予測される。 D ケース 3-2 ケース 2 の第 1 段階と同様である。 5.15.1.2-6 (3) 環境保全措置の検討 開門調査の実施における潮受堤防の安定性への影響はないと予測される(排水門護 床工周辺の流速変化による洗掘の防止に係る措置は排水門の項で検討)ことから、環 境保全措置の検討の必要性はない。 (4) 評価の結果 1) 評価手法 調査及び予測結果から、開門調査の実施による潮受堤防の安定性・安全性への影響 の程度を開門調査の実施前後で比較することにより評価した。 また、潮受堤防の安定性・安全性への影響がある場合、実行可能な範囲内でできる 限り回避又は低減されているかについて評価した。 2) 評価結果 ① 開門調査の実施前後の比較 開門調査による海域側及び調整池側の水位条件の変化による潮受堤防の安定性へ の影響を安定計算により検討した。 結果としては、ケース 1、ケース 2(第 1~3 段階)、ケース 3-1、ケース 3-2 のい ずれの場合でも、潮受堤防は十分な安定性を確保していることから、開門調査によ る潮受堤防の安定性への影響はないものと考えられる。 5.15.1.2-7
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