プレートノズル式直管ラジアントチューブバーナ

【日本機械工業連合会会長賞】
プレートノズル式直管ラジアントチューブバーナ
(SRTN シリーズ)
1.
東邦ガス株式会社
愛知県名古屋市
株式会社ナリタテクノ
愛知県瀬戸市
機器の概要
浸炭炉など熱処理炉の熱源として使用されるシングルエンドラジアントチュー
ブ(以下:RT)バーナの高効率タイプを開発し、バーナボディ内での排熱回収構
造の工夫により熱効率(排損ベース)75%を達成し、商品化した。
本製品のラインナップ、外観図を表1、図1に示す。
型式
RT 口径
標準外管有効長[mm] *
定格燃焼量[kW] *
ガス供給圧力[kPa]
制御方式
表1 SRTN シリーズ
SRTN-80
SRTN-100
SRTN-150
3インチ
4インチ
6インチ
1,000
1,100
1,700
10.8
14.8
32.0
10 以上
時間比例制御
位置比例制御(ターンダウン比 3:1)
図1 SRTN シリーズの外観図
— 22 —
2.
機器の技術的特徴および効果
2.1
技術的特徴
本製品の特徴は、以下(1)~(3)となる。
(1) 熱効率(バーナ内部構造の新規開発)
バーナボディ内の熱交換面積を広くし、また排ガス、燃焼用空気の流速を向
上させたことで、排熱をより一層効率的に燃焼用空気の予熱に活用したため、
当社試験炉にて熱効率(排損ベース)75%を達成した。シングルエンド RT バー
ナとしては、業界最高レベルの効率となっている。
(2) 幅広い燃焼範囲(ノズル構造の新規開発)
バーナ点火時は燃焼室内を空気でパージを行う必要がある。ターンダウン比
(定格燃焼量と最小燃焼量の比)が大きなバーナは、炉温制御時のバーナの
ON/OFF 回数を減少させることができ、パージによるエネルギーロスが低減でき
る。そのため、RT バーナにおいても、低燃焼時にも良好に燃焼させる技術が必
要だが、本バーナでは新たに簡易な構造となるプレート型のノズル(特許出願
済)を開発したことで、ターンダウン比 3:1 の範囲(定格燃焼量から定格燃焼
量の 1/3 の間)において、良好な燃焼が可能となっている。
(3) 排出 NOx 濃度(排ガス再循環方式の採用)
燃焼空気に排ガスの一部を混入させる「排ガス再循環方式」を採用すること
により NOx を低減できる。当社試験炉にて排出 NOx 濃度が 140ppm 以下(O2=11%
換算、炉内温度 950℃)を達成している。
2.2
効果
本開発品である SRTN シリーズは平成 25 年 7 月より、シリーズ全ての型式にお
いて販売を開始した。なお、先行して開発をした SRTN-100(外管口径4インチタ
イプ)は平成 24 年 7 月より販売を開始しており、表2の販売実績がある。また現
在、その他複数の導入引き合いをいただいている。
— 23 —
A 社のバッチ式浸炭炉において、各炉の処理能力、処理温度の同条件における
従来型 RT バーナ(カタログ熱効率 70%)との原単位比較を行った。比較結果を
図2、表3に示す。なお排ガス温度は、SRTN-100、従来型 RT バーナ双方ともに同
燃焼量(14.8kW)
、同排ガス中酸素濃度(5%)として比較を行っている。図2よ
り従来型バーナに比べ、SRTN は約7%の原単位削減効果を実証できている。また
表3よりバーナ排ガス温度より算出した熱効率でも約7%の効率向上が確認でき、
今回の原単位削減がバーナに起因するものであることが確認できる。
表2 SRTN シリーズの販売実績
稼働時期
H24.7
H25.2
H26.2 予定
顧客
A社
B社
B社
型式
SRTN-100
SRTN-100
SRTN-100
適用炉
バッチ式浸炭炉×2炉
バッチ式浸炭炉
バッチ式浸炭炉
本数
10 本×2炉
10 本
10 本
原単位比較グラフ
35
35
従来バーナ( C S R T )
原単位(m3/t)
30
30
新型バーナ( S R T N )
j 25
25
・t
/
320
20
im
・
ハ
15
・15
P
・
エ
・
10
10
55
00
0. 100
0. 200
0. 300
0. 400
投入材料量( t /チャージ )
図2 原単位の比較
— 24 —
0. 500
0. 600
表3 バーナ熱効率の比較
従来バーナ
位置
新型バーナ(SRTN-100)
排ガス温度
バーナ効率
[℃]
[%]
R1
556
71.2
R2
550
R3
位置
排ガス温度
バーナ効率
[℃]
[%]
R1
445
78.0
71.2
R2
440
79.0
538
70.3
R3
457
77.6
R4
541
70.1
R4
470
77.0
R5
530
73.0
R5
445
78.2
L1
571
70.8
L1
430
79.3
L2
533
73.6
L2
430
79.4
L3
541
72.7
L3
423
79.9
L4
528
73.7
L4
426
79.4
L5
549
72.0
L5
445
78.4
平均値
544
71.9
平均値
441
78.6
3. 用途
工業炉の一つに自動車部品をはじめとする金属部品の硬度強化等のために用い
られる熱処理炉(図3)があり、その熱源として使用される間接加熱型ガスバー
ナである。本製品はラジアントチューブからの輻射熱により、炉内を間接的に加
熱するタイプのため、無酸化加熱、浸炭、窒化など、特殊な雰囲気ガスを用いる
熱処理炉にも適応できる。
図3 連続熱処理炉の概念図
図4 炉内でのRTの赤熱イメージ
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