米中指標、豪英欧日の中銀会合など焦点

Forex
株式会社 ジャパン
エコノミックパルス
〒107-0052
東京都港区赤坂1-14-5
Tel 03-3568-2973
Fax 03-3568-2977
www.j-pulse.co.jp
[email protected]
Market Insight
平成26年8月4日(月)
緩やかな円安再開の基盤固めへ
米株、米中指標、豪英欧日の中銀会合など焦点
今週の為替相場は、緩やかな円安再開の基盤固めが予想されよう。週間予想はド
ル/円が102.10-103.30円、ユーロ/円が136.30-139.70円。前週は米雇用統計が伸
び悩み、FRBの利上げ前倒しとドル高加速は先送りされたが、基本的な米国の景気
回復軌道入りがドルの押し目買い地合いを支援しやすい。一方で米中などの景気回
復期待がリスク回避の円高を抑制しており、米国の株価動向や米中指標、豪英欧日
の中銀会合、地政学リスクなどをにらんだ円の戻り売り(外貨の押し目買い)地合
いの持続が焦点となる。
米2年債金利は月足・雲下限突破、過去はドル高
前週は海外で悪材料が相次ぎ、米国株の急落とあいまってリスク回避の円高圧力
が警戒された。具体的なリスク回避の材料としては、米国の4-6月期GDP改善を受
けた米FRBの利上げ前倒し警戒、米国企業の決算発表一巡による好材料の出尽く
し、ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)大幅下落、アルゼンチンの債務不履行、ポ
ルトガル銀行大手の信用不安、ウクライナやパレスチナの地政学リスク、欧米によ
る対ロシアへの制裁強化とロシア経済の失速懸念、ロシア依存度の高いドイツ企業
などの収益悪化見通し、韓国サムスン電子の大幅減益――などが指摘されている。
ただでさえ、米国株は過去最高値圏でバブル警戒が高まるなか、前週後半からは
米国株が大幅に下落している。しかし、前週末の米雇統計は雇用者数や賃金などが
伸び悩み、FRBによる過度な利上げ前倒し懸念が一服。週明けからはポルトガルの
信用不安銀行に対する公的救済の動きや、中国の景気刺激策と景気回復への期待
感、イスラエルによるガザ地上軍の撤退などを受けたリスク回避の後退などから、
世界的な株安と円高圧力に歯止めが掛かっている。今週は日々の材料に一喜一憂し
ながらも、リスク回避後退の持続性をにらんだ展開となりそうだ。
もっとも7月17日のマレーシア機撃墜から前週にかけて、リスク回避の材料が相
次ぎながら2007-2013年までに比べると「安全逃避の円高」には陰りが見られてい
る。中長期スパンでの円の戻り売り(外貨の押し目買い)地合いの基盤固めを支援
するものだ。
例えばシカゴIMMの通貨先物ポジションでは、投機的な円ポジション(投機部
門、国際通貨市場)で円ショートとネットアウトする前の円ロング規模は8月1日時
点で7828枚となった。前週の1万1979枚から買い持ち幅が減少しており、2005年6月
7日週の5295枚以来の低水準となっている。一方でこうした円ロングから円ショー
トを差し引いたネットでは-7万3069枚の円ショートとなっており、引き続き「円
ショート整理」が円高リスクとして残るものの、リスク回避などを材料とした円ロ
ング積み上げ(円買い)のインセンティブは大きく減退してきた。
投機的な円買い圧力が先細りとなれば、日本の貿易赤字の高止まりによる「需給
円安」や、来年にかけての米FRBによる利上げと日銀の緩和継続という「金融政策
格差による円安」が底流トレンドとして緩慢ながらも円安地合いを後押しさせやす
い。米国に関しては1日に7月の雇用統計や賃金が伸び悩み、利上げ前倒し観測が再
び後退しているが、それでも基本的な賃金のトレンドを示す「非管理職の賃金」は
前月比+0.2%と上昇基調を示した。
1
Market Insight
米国の政策金利FFに先行する米2年債金利は前週末に急低下したが、長期トレンド判
断で参考になる月足テクニカルでは、7月末に一目均衡表の雲の下限0.4411%を上抜け
突破してきた(8月1日の終値は0.4763%)。雲の下限は8月末に0.4099%となってお
り、このまま上抜け定着できると2007年12月以来の現象となる。改めて同時期からの
米債金利低下とドル安トレンドの一段落を示唆するものだ。
しかも過去の実績では、ひとたび米2年債金利が月足の雲の上限を上抜けしてくる
と、持続的なドル高トレンドが形成されるパターンが繰り返されてきた。前回は2005
年1月から上抜け定着したが、ドル/円は同月ドル安値の約101.69円でドルが底入れ反
転。2007年6月のドル高値約124.14円まで、+22円幅、約2年半のドル高トレンドが点
火された実績を有している。その他の注目ポイントは以下の通り。
<米国の経済指標>
米国の経済指標は改善傾向が目立つものの、「ドル一段高」には決め手に欠ける強
弱混在が続いている。今週は5日のISM非製造業景況指数と製造業新規受注、6日の貿易
収支などで緩やかな改善が注目されやすい。8日の4-6月期単位労働コストについて
は、前週に同期の労働コスト指数が大幅上昇となっており、改めて賃金の改善が示唆
されると米債金利の上昇とドル高を招く反面、FRBによる利上げ前倒し警戒が米国の株
安と、クロス円主導によるリスク回避の円高を促す余地をはらむ。
<中国の経済指標>
中国では今週、5日にHSBC非製造業PMI、8日に貿易収支が公表される。中国では局地
的な景気刺激策の効果や人民元切り下げの累積効果などから、景気が持ち直しに転じ
てきた。今週も指標が改善を示すとリスク選好の円安を支援するほか、中国経済との
相関性が高い豪ドルやNZドルなどの下支え要因となる。
ちょうどNZドルは7月からのNZ中銀による利上げ中断を受けた調整下落を受けて、足
元では下げ止まり攻防に直面してきた。週足の一目均衡表では重要なサポートライン
である基準線86.97円前後での底入れに直面。基準線の方向性は5月以降の横這いから
上向きへと転じつつあり、このまま踏みとどまると調整一巡によるNZドルの反発が注
目されやすい。一方で豪ドル/円は週足の転換線95.44円前後でサポートされる一方、
上値は雲の上限95.92円前後で抑えられるレンジ相場が継続。レンジ脱却のタイミング
を見極める展開が続いている。
円ロング(左軸)
バンド上限
VIX(右軸)
90週線
シカゴIMMの投機的な円ポジション(非商業)
円ショートとネットアウトする前の円ロング
米株VIX指数、90週移動平均を中央値
ボリンジャーバンド
リスク回避↑
28,000
25,000
22,000
19,000
16,000
13,000
10,000
7,000
円ロング縮小
4
3
雲
↑
ドル高
2
Jul-14
5
Jun-14
米2年債(左軸)
先行スパン1
先行スパン2
ドル/円(右軸)
米2年債金利の月足・一目均衡表
ドル/円
ドル高↑
6
May-14
Apr-14
Mar-14
Feb-14
Jan-14
Dec-13
Nov-13
Nov-13
Oct-13
Sep-13
Aug-13
Jul-13
Jun-13
May-13
Apr-13
枚
雲
1
雲下限
上抜け
↑
0
Feb-16
May-15
Aug-14
Nov-13
Feb-13
May-12
Aug-11
Nov-10
Feb-10
May-09
Aug-08
Nov-07
Feb-07
May-06
Aug-05
Nov-04
Feb-04
May-03
Aug-02
Nov-01
Feb-01
May-00
禁無断転載・転送
Aug-99
Nov-98
%
24
23
22
21
20
19
18
17
16
15
14
13
12
135
130
125
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
円
2
Market Insight
<日中関係の修復期待>
中国では景気回復と株価の反発機運が高まっており、為替相場ではリスク選好の円
安要因となりやすい。同時に11月の北京APEC首脳会議で日中首脳会談の可能性が高ま
るなど、日中関係の修復期待が高まってきた。日本の外需や中国関連株にはプラス要
因となるもので、米国株のバブル調整懸念の中での日本の株安と円高を制御するバッ
ファー役として注目されよう。
<豪英欧日の中銀会合>
今週は豪州、英国、ユーロ圏、日本で中央銀行の政策会合が開催される。それぞれ
大きな波乱は想定されていないが、5日の豪中銀は当面の利下げ観測後退と中国回復を
受けた景気の前向き判断が豪ドルの下支え要因となりやすい。7日の英国中銀は先行き
の利上げペースの緩慢さがポンドの上値を抑えているが、今週の会合からは「利上げ
賛成票」現出の可能性がポンド高再開の鍵を握ることになる。
注目は7日の欧州中銀(ECB)理事会だ。前週のユーロ圏CPIの大幅低下や、欧州周辺
の地政学リスクの高まりを受けて、改めてドラギ総裁による追加緩和の地ならし発言
がユーロの戻り売り要因となりやすい。一方でユーロは5月以降の急落を経て、「実際
の追加緩和行動待ち」に移行しつつあり、IMMポジションでもユーロのショート(売り
持ち)は2012年8月以来の高水準に膨張してきた。7日の理事会で先行きの緩和手段の
具 体 性 が 乏 し け れ ば、「一 旦 の 材 料 出 尽 く し」や「緩 和 催 促」に よ り、ユ ー ロ・
ショートの巻き戻しを通じた短期的なユーロ反発を招く可能性を秘めている。
一方、7-8日の日銀政策会合については、最近のパターンとして結果発表や総裁会
見にかけて「現状維持」や「追加緩和の後退」が短期的な円高・株安の材料となる。
ただし、当面の緩和後退は織り込みが進んできたほか、足元では前年比での円安一巡
を受けて物価の上昇ペースが鈍化しており、黒田総裁の会見で「物価2%へのシナリオ
が少しでも揺らげば、躊躇なく調整を行う」という緩和オプションが再強調される
と、円の戻り売り(外貨の押し目買い)地合いが支援されよう。
円ロング(左軸)
バンド上限
VIX(右軸)
90週線
シカゴIMMの投機的な円ポジション(非商業)
円ショートとネットアウトする前の円ロング
米株VIX指数、90週移動平均を中央値
ボリンジャーバンド
リスク回避↑
28,000
25,000
22,000
19,000
16,000
13,000
10,000
7,000
Jul-14
Jun-14
May-14
Apr-14
Mar-14
Feb-14
Jan-14
Dec-13
Nov-13
Nov-13
Oct-13
Sep-13
Aug-13
Jul-13
Jun-13
May-13
Apr-13
枚
円ロング縮小
24
23
22
21
20
19
18
17
16
15
14
13
12
お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再
配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま
せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの
情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの
内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ
たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
禁無断転載・転送
3