演習問題4 及び 略解

微分積分学および演習Ⅱ 演習問題 4
2014 年度後期
工学部・未来科学部 1 年
担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教)
※ 本演習問題は、講義の時間中の問題演習用に使います。
問題 4-1. (合成関数の微分法Ⅰ)
合成関数の微分法を用いて z を t の関数と見做した時の導関数
dz
を計算しなさい。
dt
(1)
z = x3 − 2xy 2 + y, x = t2 , y = cos t
(2) z = exy , x = cos t, y = sin t
(3)
z = log(x2 + y 2 ), x = e2t , y = e3t − e−t
(4) z = Arctan (xy), x = t2 + t, y =
1
t
問題 4-2. (合成関数の微分法Ⅱ)
合成関数の微分法を用いて z を変数 u, v に関する 2 変数関数と見做した時の偏導関数
を計算しなさい。
(1) z = xy 2 + x2 y, x = u + v, y = u − v
2
(2)
(3) z = ex y , x = cos(u + v), y = sin(u − v) (4)
∂z ∂z
,
∂u ∂v
z = cos(x2 − y 2 ), x = u2 + v 2 , y = 2uv
z = Arctan (xy), x = 2u + v, y = 3u − 5v
問題 4-3. (極座標変換)∗
全微分可能な変数 x, y に関する 2 変数関数 f : R2 → R に対して、極座標変換
{
x
y
= r cos θ
= r sin θ
· · · · · · (∗)
を考えよう。
(1) 極座標変換 (∗) のヤコビ行列及びヤコビ行列式を求めなさい。
(2) z = f (x, y) を極座標変換 (∗) により r と θ に関する 2 変数関数と見做そう。このとき、r 及
∂z ∂z
び θ に関する偏導関数
,
を fx (r cos θ, r sin θ), fy (r cos θ, r sin θ) を用いて表しなさい。
∂r ∂θ
√
(3) 全微分可能な 2 変数関数 z = f (x, y) が 1 変数関数 g(t) を用いて z = g( x2 + y 2 ) と表さ
れるための必要十分条件は、等式 yfx (x, y) = xfy (x, y) が成り立つことである。このことを
証明しなさい。
[ヒント]
(2) 合成関数の微分法そのものですね。
√
(3)「等式が成り立つときに z = f (x, y) = g( x2 + y 2 ) と書けること (十分性)」がやや難。
√
要するに「z が r = x2 + y 2 のみに依存する関数である」ということを示したいのだか
ら、極座標変換をして考えると「z は変数 θ の関数と考えたときに 定数関数 である」こ
とを示せば良いことになります。このことを θ に関する偏導関数
ると……?
∂z
を用いて言い換え
∂θ
【略解】
問題 4-1.
合成関数の微分法に当て嵌めてひたすら計算するだけです。(3), (4) は多少計算が複雑になります
が、このくらいの計算は最後まで出来る様にしておきましょう。
(1) z = log(x2 + y 2 ), x = e2t , y = e3t − e−t
∂z
2x
= 2
,
∂x
x + y2
2y
∂z
= 2
∂y
x + y2
より、
dz
∂z dx ∂z dy
=
+
dt
∂x dt
∂y dt
=
2x
2y
2e2t · 2e2t + 2(e3t − e−t )(3e−t + e−t )
2t
3t
−t
·
2e
+
·
(3e
+
e
)
=
x2 + y 2
x2 + y 2
(e2t )2 + (e3t − e−t )2
=
6e6t + 4e4t − 4e2t − 2e−2t
.
e6t + e4t − 2e2t + e−2t
(2) z = Arctan (xy), x = t2 + t, y =
1
t
∂z
y
=
,
∂x
1 + x2 y 2
∂z
x
=
∂y
1 + x2 y 2
より、
dz
∂z dx ∂z dy
=
+
dt
∂x dt
∂y dt
(
)
1
1
2
(
)
· (2t + 1) + (t + t) · − 2
y
x
1
t
t
=
· (2t + 1) +
· − 2 =
2
2
2
2
1
1+x y
1+x y
t
1 + (t2 + t)2 · 2
t
1
= 2
.
t + 2t + 2
問題 4-2.
合成関数の微分法に当て嵌め (以下同文)。
2
(1) z = ex y , x = cos(u + v), y = sin(u − v)
2
∂z
= 2xyex y ,
∂x
2
∂z
= x2 ex y
∂y
より、
∂z
∂z ∂x ∂z ∂y
=
+
∂u
∂x ∂u ∂y ∂u
= 2xyex
2
y
· {− sin(u + v)} + x2 ex
2
y
· cos(u − v)
= {−2 cos(u + v) sin(u + v) sin(u − v) + cos2 (u + v) cos(u − v)}ecos
2
(u+v) sin(u−v)
.
2
(u+v) sin(u−v)
.
∂z
∂z ∂x ∂z ∂y
=
+
∂v
∂x ∂v
∂y ∂v
= 2xyex
2
y
· {− sin(u + v)} + x2 ex
2
y
· {− cos(u − v)}
= −{2 cos(u + v) sin(u + v) sin(u − v) + cos2 (u + v) cos(u − v)}ecos
また、ヤコビ行列及びヤコビ行列式は

∂x
 ∂u


∂y
∂u

∂x
 ∂u
det 

∂y
∂u
 

∂x
− sin(u + v) − sin(u + v) 
∂v 
=
,
 
∂y
cos(u − v) − cos(u − v)
∂v

∂x
∂v 
 = 2 sin(u + v) cos(u − v)

∂y
∂v
である。
(2) z = Arctan (xy), x = 2u + v, y = 3u − 5v
y
∂z
=
,
∂x
1 + x2 y 2
∂z
x
=
∂y
1 + x2 y 2
より、
∂z
∂z ∂x ∂z ∂y
=
+
∂u
∂x ∂u ∂y ∂u
y
x
(3u − 5v) · 2 + (2u + v) · 3
·2+
·3=
2
2
2
2
1+x y
1+x y
1 + (2u + v)2 (3u − 5v)2
(
)
12u − 7v
12u − 7v
=
=
.
1 + (2u + v)2 (3u − 5v)2
36u4 − 84u3 v − 109u2 v 2 + 70uv 3 + 25v 4 + 1
=
∂z
y
x
(3u − 5v) · 1 + (2u + v) · (−5)
=
·1+
· (−5) =
2
2
2
2
∂v
1+x y
1+x y
1 + (2u + v)2 (3u − 5v)2
(
)
−7u − 10v
−7u − 10v
=
=
.
1 + (2u + v)2 (3u − 5v)2
36u4 − 84u3 v − 109u2 v 2 + 70uv 3 + 25v 4 + 1
また、ヤコビ行列及びヤコビ行列式は

∂x
 ∂u


∂y
∂u
である。
 
∂x
2
∂v 
=
 
∂y
3
∂v

1
,
−5

∂x
 ∂u
det 

∂y
∂u

∂x
∂v 
 = −13

∂y
∂v
babababababababababababababababababab
【自由研究】 合成関数の微分法 Ⅰ も、無理して行列を使うと
(
dz
dt
)
(
=
∂z
∂x
∂z
∂y
)


dx
 dt 
 
 
dy
dt
と表すことが出来ます。このとき、やはり合成関数の微分法で登場する「おまけ」の部分


dx
 dt 
 
 
dy
dt
をヤコビ行列と呼ぶことがあります。
全く同様に、全微分可能な n 変数関数 f (x1 , x2 , . . . , xn ) の変数 xj に (全微分可能な) m 変
数関数 φj (u1 , u2 , . . . , um ) を代入して得られる合成関数
z = f (φ1 (u1 , u2 , . . . , um ), φ2 (u1 , u2 , . . . , um ), . . . , φn (u1 , u2 , . . . , um ))
について、やはり 合成関数の微分法 (或いは 連鎖律 )

(
∂z
∂u1
∂z
∂u2
...
∂z
∂um
)
(
=
∂z
∂x1
∂z
∂x2
...
∂x1
 ∂u1


 ∂x
) 2
∂z 
 ∂u1
∂xn 
 ..
 .

 ∂x
 n
∂u1
∂x1
∂u2
∂x2
∂u2
..
.
∂xn
∂u2
...
...
..
.
...

∂x1
∂um 


∂x2 

∂um 


.. 
. 

∂xn 

∂um
が成り立ち、青緑色の部分の n 行 m 列行列を ヤコビ行列 Jacobian matrix と呼びます。
このように、合成関数の微分法は 2 変数の場合さえ理解してしまえば、全く同様にして一
般の多変数関数の場合にも拡張して考えることが簡単に出来るのです。