2015年注目のデジタルマーケティングキーワード UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン ドコモ担当者の声 これまでドコモでは、いくつかの音声入 別の要素が必要でした。そこで、社内関 力系サービスを導入してきましたが、そ 連部との検討の結果、 “しゃべってコン れらは機能的な面が先行しており、機械 シェル”のサービスコンセプトに一番相 的にスマートフォンに指示を出すような 性がいいと思われるパートナーとして ユーザーインターフェイスでした。今回 Z E P P E L I N 様を選定させていただき は、 “好きな『しゃべってキャラ』との会 ました。従来のドコモにはなかった新た スマートフォンに向かって話しかけると、「意 話も楽しめる”という要素を含めたサー な体験を実現するユーザーインターフェ 図」に適した回答を自動で画面に表示する ビスコンセプトの実現が重要であり、こ イスを提供していただき、非常によい成 れまでの音声入力系サービスの発想とは 果を出していただいております。 豊かさ、便利さに代わる「美しさ」という新しい価値 「美しさ」の追求が 新たな価値基準に の対話といった体験をデザインし、新 つ一つの小さな体験をじっくりと味わ しい体験軸を生み出すことで 6 時間か いながら進むという行為、そこに人間 かる道のりは、無味乾燥な 2 時間の道 らしい「美しさ」があると考えるのだ 例えばここ 30 年程の間に、日本中 のりよりも、はるかに温かく、出会い という。 を覆うように増え続けている高速道路。 や発見の多い価値ある道のりになると これは、豊かさや便利さを追求し続け 思うのです」。増やすのではなく、減 新しい体験(ユーザーエクスペリエン てきた経済大国としての象徴とも言え らすことから価値を生み出すという、 ス)を生み出す組織だ。ビジョン形成 るかもしれない。しかし、一体どれく 逆転の発想だ。 や新事業創出から U X/U I デザイン、 らいの人々がその必要性を感じている 同社は、デザインを軸としながら、 「しゃべってコンシェル」。新たな体験を実現 するUIを提供することで、ユーザーの増加に 寄与したという。 持っている生物としての自然な姿、感 その結果、キャラクターと雑談が楽 ビジョンから発想し、事業を進め 覚が満たされる姿に「美しさ」が宿る しめるほどのレベルまでコミュニケー ていく方法は、新しい物事を生み出す とし、プロジェクトの初期段階で行な ションが向上し、便利さと楽しさを兼 際に強い力を発揮する。先の高速道路 うビジョン形成やコンセプトづくりに ね備えたサービスへと進化した。現 取り入れている。 在では、ユーザーが 1500 万人を突破。 ています」と話す。 高度成長期以降、時代の流れは豊か 製品やサービス、アプリケーションの を例に考えると、 「これからの時代に必 さや便利さが最大の達成目標とされる 企画・開発を事業とするベンチャー企 要なのは、都心への一極集中ではなく 同社がサービスの改善を図った U X 傾向が加速し続けた。できるだけ多く、 業だ。鳥越氏は「今後、選ばれ残って 地域と地域が密につながることで生ま /U I 開発の事例の 1 つとして、N T T 早く、何かを増やすことばかりを追い いくのは、フィーチャーフォン時代 れる新しい出会い」というビジョンを ドコモのスマートフォン向けアプリ 「美しさ」という価値を軸に、そ 「私は、高速道路で 2 時間かかる道の 求めてきた。しかし、モノにあふれた に 1 m m の薄さを競い合ったような細 設定したとする。ここから発想してい ケーション「しゃべってコンシェル」 こから作り出したビジョンへ向かっ りについてU X視点で考えたとき、 『高 飽和状態を続けていくことが、これか かな機能や、他社との優位性を追う考 くと、便利な高速道路はあえてなくし、 が挙げられる。2014 年 3 月のリニュー て、膨大な熱量を持って突き進む。同 速道路をなくす』という発想をします。 らの社会、私たちにとって本当に必要 え方ではありません。 『存在意義』を問 その間の地域をつなぐ人々の出会いの アル時に、U X/U Iデザインを得意と 社は「新しい時代は自分たちの手で 速さではなく、目的地までに通る町や なことなのか。この問いに対し、同社 い続けることで描き出された“ビジョ 場や、出会いを促す文化の醸成をデザ する同社が検討に加わり、N T T ドコ つくられる」と信じ、 「美しさ」につ 村で起こるストーリーにこそ、価値が は、 「美しさ」の追求が新たな価値基準 ン”と、そのビジョン達成に対する インする必要がある、という発想に広 モの「音声入力の機能的な部分だけで いて一人ひとりが考え、実行に移せ あると考えるからです。つまり、その の一つになると提唱している。高速道 パッション(熱量)があること、これ がっていく可能性がある。 「明確なビ はなく、キャラクターとの会話そのも る時代を作ること、 「W E C R E A T E 町特有の農作物や、その土地の人々と 路の例に戻れば、寄り道とも言える一 ら 2 つから生み出されるものだと思っ ジョンを元にした発想は、これからの のを楽しめるより洗練された U X をつ BEAUTIFUL WORLDS」をビジョ 時代に選ばれるものづくりの核であり、 くりたい」というビジョンの実現に向 ンに掲げ、さらなる価値の創出を図っ 次の時代を作り出すイノベーションに けて、U X/U Iの見直しを図った。 ていくという。 のだろうか? Z E P P E L I N(ツェッペリン)代表 取締役の鳥越康平氏は次のように語る。 つながります」 。 2014 年度の「グッドデザイン・未来 づくりデザイン賞」を受賞した。 まず 1 0 年後に「しゃべってコン シェル」がどのような存在になってほ 「美しさ」は 人間本来の感覚の中に宿る しいのかを描き、ビジョンをまとめ、 デザインの段階では、使いやすさや親 しみやすさを確保できる基本機能を固 ZEPPELIN 代表取締役 鳥越康平 氏 (とりごえ・こうへい)京都工 芸繊維大学卒業後、韓国サムス ン電子にてUX・UIデザイナーと して従事。帰国後2005年10月 にZEPPELINを設立し、現在は、 デザインを軸に、ビジョン形成や 新規事業開発に力を入れている。 56 宣伝会議 2015.2 ものづくりにおける具体的な発想 めつつ、ワクワク感や感動を与える魅 法として、Z E P P E L I N では「人間 力的な付加価値を実現するための U X の五感」を大切にしているのだと言 /U I を検討した。さらに、ユーザー う。例えば、渡り鳥が互いの意思疎通 がスムーズに音声で操作し「キャラク なく瞬時に方向転換する際に行う「シ ターとの対話」そのものに没入できる ンクロ」という動物的感覚や、様々 よう、すべてのディテールにこだわり、 な感情(喜び、悲しみ、嬉しさ、怒 U I/G U I を設計した。音声入力によ り、愛情など)のうち、ある一つの感 る操作や情報検索を簡易化するだけで 覚に 100 % 満たされている瞬間に感じ なく、操作プロセスそのものを楽しめ るという生命の充足感などが挙げられ るように、キャラクターと対話する際 る。同社では、そのような人間が本来 の演出にこだわったという。 企画協力/株式会社ZEPPELIN 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目34番14号 原宿表参道ビル2F TEL.03-6805-0925 [email protected] 担当:事業戦略部 郡山 2015.2 宣伝会議 57
© Copyright 2024