2月号に ZEPPELINが掲載されました。

2015年注目のデジタルマーケティングキーワード
UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン
ドコモ担当者の声
これまでドコモでは、いくつかの音声入
別の要素が必要でした。そこで、社内関
力系サービスを導入してきましたが、そ
連部との検討の結果、
“しゃべってコン
れらは機能的な面が先行しており、機械
シェル”のサービスコンセプトに一番相
的にスマートフォンに指示を出すような
性がいいと思われるパートナーとして
ユーザーインターフェイスでした。今回
Z E P P E L I N 様を選定させていただき
は、
“好きな『しゃべってキャラ』との会
ました。従来のドコモにはなかった新た
スマートフォンに向かって話しかけると、「意
話も楽しめる”という要素を含めたサー
な体験を実現するユーザーインターフェ
図」に適した回答を自動で画面に表示する
ビスコンセプトの実現が重要であり、こ
イスを提供していただき、非常によい成
れまでの音声入力系サービスの発想とは
果を出していただいております。
豊かさ、便利さに代わる「美しさ」という新しい価値
「美しさ」の追求が
新たな価値基準に
の対話といった体験をデザインし、新
つ一つの小さな体験をじっくりと味わ
しい体験軸を生み出すことで 6 時間か
いながら進むという行為、そこに人間
かる道のりは、無味乾燥な 2 時間の道
らしい「美しさ」があると考えるのだ
例えばここ 30 年程の間に、日本中
のりよりも、はるかに温かく、出会い
という。
を覆うように増え続けている高速道路。
や発見の多い価値ある道のりになると
これは、豊かさや便利さを追求し続け
思うのです」。増やすのではなく、減
新しい体験(ユーザーエクスペリエン
てきた経済大国としての象徴とも言え
らすことから価値を生み出すという、
ス)を生み出す組織だ。ビジョン形成
るかもしれない。しかし、一体どれく
逆転の発想だ。
や新事業創出から U X/U I デザイン、
らいの人々がその必要性を感じている
同社は、デザインを軸としながら、
「しゃべってコンシェル」。新たな体験を実現
するUIを提供することで、ユーザーの増加に
寄与したという。
持っている生物としての自然な姿、感
その結果、キャラクターと雑談が楽
ビジョンから発想し、事業を進め
覚が満たされる姿に「美しさ」が宿る
しめるほどのレベルまでコミュニケー
ていく方法は、新しい物事を生み出す
とし、プロジェクトの初期段階で行な
ションが向上し、便利さと楽しさを兼
際に強い力を発揮する。先の高速道路
うビジョン形成やコンセプトづくりに
ね備えたサービスへと進化した。現
取り入れている。
在では、ユーザーが 1500 万人を突破。
ています」と話す。
高度成長期以降、時代の流れは豊か
製品やサービス、アプリケーションの
を例に考えると、
「これからの時代に必
さや便利さが最大の達成目標とされる
企画・開発を事業とするベンチャー企
要なのは、都心への一極集中ではなく
同社がサービスの改善を図った U X
傾向が加速し続けた。できるだけ多く、
業だ。鳥越氏は「今後、選ばれ残って
地域と地域が密につながることで生ま
/U I 開発の事例の 1 つとして、N T T
早く、何かを増やすことばかりを追い
いくのは、フィーチャーフォン時代
れる新しい出会い」というビジョンを
ドコモのスマートフォン向けアプリ
「美しさ」という価値を軸に、そ
「私は、高速道路で 2 時間かかる道の
求めてきた。しかし、モノにあふれた
に 1 m m の薄さを競い合ったような細
設定したとする。ここから発想してい
ケーション「しゃべってコンシェル」
こから作り出したビジョンへ向かっ
りについてU X視点で考えたとき、
『高
飽和状態を続けていくことが、これか
かな機能や、他社との優位性を追う考
くと、便利な高速道路はあえてなくし、
が挙げられる。2014 年 3 月のリニュー
て、膨大な熱量を持って突き進む。同
速道路をなくす』という発想をします。
らの社会、私たちにとって本当に必要
え方ではありません。
『存在意義』を問
その間の地域をつなぐ人々の出会いの
アル時に、U X/U Iデザインを得意と
社は「新しい時代は自分たちの手で
速さではなく、目的地までに通る町や
なことなのか。この問いに対し、同社
い続けることで描き出された“ビジョ
場や、出会いを促す文化の醸成をデザ
する同社が検討に加わり、N T T ドコ
つくられる」と信じ、
「美しさ」につ
村で起こるストーリーにこそ、価値が
は、
「美しさ」の追求が新たな価値基準
ン”と、そのビジョン達成に対する
インする必要がある、という発想に広
モの「音声入力の機能的な部分だけで
いて一人ひとりが考え、実行に移せ
あると考えるからです。つまり、その
の一つになると提唱している。高速道
パッション(熱量)があること、これ
がっていく可能性がある。
「明確なビ
はなく、キャラクターとの会話そのも
る時代を作ること、
「W E C R E A T E
町特有の農作物や、その土地の人々と
路の例に戻れば、寄り道とも言える一
ら 2 つから生み出されるものだと思っ
ジョンを元にした発想は、これからの
のを楽しめるより洗練された U X をつ
BEAUTIFUL WORLDS」をビジョ
時代に選ばれるものづくりの核であり、
くりたい」というビジョンの実現に向
ンに掲げ、さらなる価値の創出を図っ
次の時代を作り出すイノベーションに
けて、U X/U Iの見直しを図った。
ていくという。
のだろうか?
Z E P P E L I N(ツェッペリン)代表
取締役の鳥越康平氏は次のように語る。
つながります」
。
2014 年度の「グッドデザイン・未来
づくりデザイン賞」を受賞した。
まず 1 0 年後に「しゃべってコン
シェル」がどのような存在になってほ
「美しさ」は
人間本来の感覚の中に宿る
しいのかを描き、ビジョンをまとめ、
デザインの段階では、使いやすさや親
しみやすさを確保できる基本機能を固
ZEPPELIN 代表取締役
鳥越康平
氏
(とりごえ・こうへい)京都工
芸繊維大学卒業後、韓国サムス
ン電子にてUX・UIデザイナーと
して従事。帰国後2005年10月
にZEPPELINを設立し、現在は、
デザインを軸に、ビジョン形成や
新規事業開発に力を入れている。
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宣伝会議 2015.2
ものづくりにおける具体的な発想
めつつ、ワクワク感や感動を与える魅
法として、Z E P P E L I N では「人間
力的な付加価値を実現するための U X
の五感」を大切にしているのだと言
/U I を検討した。さらに、ユーザー
う。例えば、渡り鳥が互いの意思疎通
がスムーズに音声で操作し「キャラク
なく瞬時に方向転換する際に行う「シ
ターとの対話」そのものに没入できる
ンクロ」という動物的感覚や、様々
よう、すべてのディテールにこだわり、
な感情(喜び、悲しみ、嬉しさ、怒
U I/G U I を設計した。音声入力によ
り、愛情など)のうち、ある一つの感
る操作や情報検索を簡易化するだけで
覚に 100 % 満たされている瞬間に感じ
なく、操作プロセスそのものを楽しめ
るという生命の充足感などが挙げられ
るように、キャラクターと対話する際
る。同社では、そのような人間が本来
の演出にこだわったという。
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2015.2 宣伝会議
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