水素エネルギーシステム Vo 1 .36,NO.1(2011) 特集 水電解技術の現状と課題 光島重徳・松津幸一 横浜国立大学大学院工学研究院機能の創生部門 干2 40・8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79・5 P r e s e n tt e c h n o l o g i e sands u b j e c t so fwatere l e c t r o l y s i s ShigenoriMitsushima, KoichiMatsuzawa YokohamaN a t i o n a lU n i v e r s i t y ChemicalEnergyLaboratory, 79・5Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohamac i t y240-8501JAPAN Watere l e c t r o l y s i sseemst obew e l le s t a b l i s h e dt e c h n o l o g ywithhighenergyc o n v e r s i o n e f f i c i e n c y,butnewt e c h n o l o g i e sw i l lber e q u i r e dt ocombinerenewablee n e r g i e s .T h i spaper energyc o n v e r s i o ne f f i c i e n c y,andm a t e r i a l ssucha se l e c t r o c a t a l y s t r e v i e w sthermodynamics, ands e p a r a t o rf o rwatere l e c t r o l y s i s, andd i s c u s s e ss u b j e c t sf o rt h ecombinationwithr e n e w a b l e e n e r g l e s . f f i c i e n c y,e l e c t r o c a t a l y s t,s e p a r a t o r, renewablee n e r g i e s Keywords:watere l e c t r o l y s i s,e 1 はじめに であることから、水素エネルギーシステムを構築する必 要がある。水電解は電力を水素に変換する技術であり、 水電解は電力エネルギーにより水を分解して化学エ 再生可能エネルギーから高効率に水素製造を行うため ネルギーである水素を製造するフロセスである。水素製 の技術として見直す必要がある。本稿では、水電解技術 造法としての水電解は、分離操作が無く可動部が少なく、 の原理と効率並び、に現状と課題について術撤する。 小型から大型まで、設備容量に応じた仕様変更が容易で あり、安価な電力が得られる場合には有効な方法である。 . 2 水電解の熱力学と効率 0 世紀前半には、主に水力発電の余剰電力により 主に 2 水素を製造し、アンモニア合成、窒素肥料の製造などの 水電解の反応式は次の吸熱反応である。 化学工業を支えてきた。 2 0 世紀中盤以降、中東の原油が H2 0 (l )→H 2 ( g )+1/20 2 ( g ) 。 ( 大量に生産され、一次エネルギーや化学品原料として普 標準状態 ( 2 5C,l a t 同での反応のエンタルピ一変化: 及するとともに電力需要も高まったため、大規模な水素 I lrHO=2 8 5 . 8k Jmol-1、電圧換算では UO =1 .4 81Vで 製造も天然ガスやナフサなどの化石燃料からの熱化学 あり、これを熱的平衡電圧と呼ぶ。このうち電気エネル フ。ロセスが主になっている。 ギーである必要があるのは反応のギブズエネルギー変 J .r Go= 237.2k Jmol-1であり、これが理論分解電 化 :I 現在、化石燃料の大量消費による二酸化炭素の排出量 0 =1 .2 29Vに相当する。反応エンタルビー変 が地球温暖化の原因となっていることや、化石燃料の資 圧 : 源量が有限であるといったことが問題となっている。こ o J .rH l J .r Go = 化 と ギ ブ ズ エ ネ ル ギ 一 変 化 の 差 :I れらを解決するために再生可能エネルギーの導入をす 4 8 . 6k Jmol-1分のエネルギーは周囲からの熱等でよい。 すめければならない。今後、大量導入可能な再生可能エ F i g.1に水(液体)および気体(水蒸気)の分、解のエンタルビ ネルギーとして風力発電並びに太陽光発電などがあげ ー変化およびギブズエネルギー変化に相当する電圧の られる。これらのエネルギーは需要と地域や時間のズレ 温度依存性を示す。図中の0 、1 0 0 、及び374Cはそれぞ が生じるため、エネルギーを貯蔵・輸送する技術が重要 れ融点、沸点、及び臨界点である。温度が高くなると水 UO 0 -11- 水素エネルギーシステム Vo1 .36,No.1( 2 0 1 1 ) 。 o c 100C 0 特集 製造するために必要な電力を用いることも多い。水電解 374C 0 による水素製造では 1Nm3( Q o C、 1atm での体手動に必要 3 4 . 6 モル偲想、気体で、は1 モル な電力である。 1Nm は4 1 . 5 = 2 2 .4L)であるので、ファラデーの法則(ファラデ一定 } 1=2 6 . 8 0 1Ahmo , 1 } 2 電子反応)より理論 数:96485Cmo 1 . 2 . 3 9 3kAhN m 3 H 2 、エンタルビー基準で必要な 電気量は2 . 5 4 4k WhN エネルギー:.Rhは熱的平衡電圧との積で3 0 . 9 3 m H 2となる。以上より ( 2 ) 式を書き換えると 。 = 3.544[kWh]/九 0 . 6 = (2.393[kA h ] / Q l o a d ) (1 .481[V]/U 1 o a d) ( わ 図2に水電解の槽電圧の電流密度依存性とその過電圧 0 . 3 の内訳を示す。電流密度が低い領域では主に酸素過電圧 及び水素過電圧が過電圧の大部分であり、電流密度が大 0 . 0 250 450 650 850 1050 1250 きくなると抵抗過電圧の割合が高くなることが分かる。 TIK この関数を数式で表すと以下のようになる。 図1 水 電 解 の 理 論 分 解 電 圧 及 び 熱 的 平 衡 電 圧 の 温 度 依 存 性. (熱力学データは Outokumpu HSCChemistry< l i l ) . U=UO +i R s+ηa (i )+ηc (i )+ηe (i ) ( 4 ) O 、R ここで、 U、 U 、 i s、ηa (i )、ηc (i )、および可e (i )は の理論分解電圧が小さくなること、理論分解電圧と熱的 それぞれ電解槽電圧、理論分解電圧、電流密度、電解質 平衡電圧の差が大きくなることが分かる。したがって、 のイオン抵抗、酸素過電圧、水素過電圧、及び電極の抵 温度が高くなると必要な電気エネルギーの割合が低く 抗過電圧である。電解質の抵抗昆は電極聞に水素や酸素 なることを示す。高温の水蒸気電解技術が注目されるの の気泡が発生すると大きくなる。電解質中の気泡により は温度が高くなることによる反応速度の上昇とともに 抵抗が大きくなる割合、気泡分散増大係数は次式となる。 平衡論的にも所要電力が小さくなるためである。 次に、水電解のエネルギー変換効率について考える。 f=p/Po=(1一ε )一1.5 ( 5 ) ここで、 f 、p、p。、およびεはそれぞれ気泡分散増大係 電角開曹のエネルギー変換効率は以下の式で与えられる。 数、気体を含む時の抵抗、気体を含まない時の抵抗、及 。 = P o u t / P i n=( Q t h / Q l o a d ) ( U t h / U l o a d )=8F8y ( 2 ) び気泡の体積割合である。 ここで、。、 Po t h、Qload、Ut u t、Pi n、Q h、 U1 0 a d、。F、 および、8 yはそれぞれエネルギー変換効率、出力エネルギ 一、入力エネルギー、水素製造に必要な理論電気量、電 2 . 5 解槽に通じた電気量、水電解の理論電圧、電解槽に加印 した電圧、電流効率、及び電圧効率である。水電解の効 2 . 0 率を考える上では、たとえ水蒸気電解であっても環境温 度の水が出発物質であるので、標準条件での水(液体)を 考えればよい。したがってU . 4 8 1V t hを熱的平衡電圧の 1 と コ とすればエンタルビー基準の効率が求まる。水素製造に 1 . 5 1 . 0 必要な電気量はファラデ一則で求まる。 Q t h= zvF ( 3 ) 0 . 5 ここで、 z 、v、及びFはそれぞれ反応電子数(=2 )、水素 1= m o l的、及びファラデ一定数(=96485Cm o l 製造速度( 2 6 . 8 0 1Ahmo }-1)である。よって 1 モルの水素製造に必要 0 0 1 0 0 200 3 0 0 400 500 i lmAcm2 司 3 . 6 0 2Ahである。 な電気量は5 図2 水電解の槽電圧の電流密度依存性とその過電圧の内訳. ( R . l .LeRoy,J .Electrochem.Soc.,1 2 6,1 6 7 6( 1 9 7 9 ) . ) 電解槽の効率を評価する指標として単位量の製品を -12一 水素エネルギーシステム Vo1 .36,No.1(2011) 特集 ( 4 ) 式を用いて電圧効率: ()yを表すと y= U O j ( Uo+i R s+可a (i )+可c (i )+ηe (i ) )( 6 ) アノードでは水酸化物イオンから酸素と水が生成する 。 となる。 反応、カソードで、は水が水素と水酸化物イオンになる反 ( ) yを大きくするためには電解質のイオン抵抗、 酸素過電圧、並びに水素過電圧を小さくしなければなら 応である。 これに対して固体高分子形水電解では固体高分子形 )となって 燃料電池と同様、電解質膜-電極接合体。四A ないことが分かる。 電流効率: ()Fはアノード、カソード問の電子的な短 おり、電解質と電極問にはギャップは存在せず、電極問 絡電流、発生した水素、あるいは酸素が電解質を透過し の距離が非常に近い。このため電極聞のイオン抵抗が小 て水電解の逆反応 さく高い電流密度で運転できること、供給するのは純水 H2(g)+1/202(g)→ H2 0(l ) η ( で良いことなどの利点がある、安定に運転するためには により消費する化学的な短絡により低下する。隔膜を隔 発生する酸素及び水素が~内に滞留せず、背面に抜 てたアノード側の酸素分圧は運転圧力、カソード側の酸 けることが重要である。 素分圧はほぼ0、カソード側の水素分圧は運転圧力、ア ノード側の水素分圧はほぼ0で、あるので、隔膜を隔てて の酸素分圧あるいは水素分圧の濃度勾配は運転圧力に 比例する。したがって、化学的な短絡は運転圧力ととも に大きくなる。よって、水電解で製造した水素を充填す るための圧力を得るために電解槽の運転圧力を高める か、思縮機を使用するかは化学的な短絡による電流効率 の低下と圧縮機の動力の大小関係を評イ面することとなる。 . 3 水電解技術の種類と現状 商用あるいは研究開発段階の水電解技術として電解 質によりアルカリ水電解、固体高分子形水電解、高温水 電解に大別される。図3にアルカリ水電解及び、国体高分 子形水電解の電極反応と電極、電解質の概略図を示す。 アルカリ水電解では多孔質材料を隔膜とし、電極と隔膜 の聞にギャップがある構造の方が一般的のようである。 今 u H O 4 3+ ↓ 、 r p F Y 糸川 VH. iJ2 EU 4 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 園 田 ・ ・ ・ 圃 園 田 ・ ・ ・ ・ ・ 一円 か剖一 E E・ 円 一 ・ ド ノ→いけ 円 Br 4 ↓ v+ qJ﹄ oUH 7qk 隔膜 a )アルカリ 令ーー OH電解質膜 アノード 力ソード H20→ 1/20 ↑ 2 +2H++2e- b )固体子分子形 2H++2e→ H2 ↑ ー l 砂 H+ 図3 アルカリ水電解と固体高分子形水電解 表1に水電解槽の電極、電解質、及び隔膜材料を示す。 表1. 各種の水電角卒槽の運転温度、電極、電解質、 2-1 句 及びセバレーター材料 [ アルカリ水電解 ( 4 0 ' " ' ' 2 ∞I O C ) 電解質:20 ・3 0% KOH セバレーター:アスベスト, 品分〕子補強アスベス ト PTFE結着チタン酸カリウム, PTFE結 着ジルコニアヲ ポリスルホン結着ポリアンチモン 酸/酸化アンチモン, 焼結ニッケル, セラミクス/ 酸化ニッケル被覆ニッケル, ポリスルホン アノード:ニッケル, ニッケル系合金, 鉄 一 , 一 ッケル被覆鉄, イオンフレートニッケル(Ag+, L i + , He+ ,K r + ) , ニッケルコバルト酸化物, 酸化コバ ルト, ランタンドーフ酸化コバルト, ランタンス トロンチウムコバルト酸化物, 亜鉛コバルト酸化 物 , 貴金属酸化物 カソード:鉄,鉄-希土類,鉄-ニッケル合金,ニ ッケル 固体両分子形水電解 ( 6 0 ' " ' ' 1 ∞ 。C) 電解質/セバレーター:パーフルオロエチレンスルホ ン酸系カチオン交換膜 アノード:酸化イリジウム被覆チタン, イリジウ ムルテニウムコバルト酸化物, イリジウムルテニ ウムスズ酸化物, イリジウムルテニウム鉄酸化物, イリジウムルテニウムニッケル酸化物,イリジウム スズ酸化物、イリジウムジルコニウム酸化物、ルテ ニウムチタン酸化物、ルテニウムジルコニウム酸化 物、ルテニウムタンタル酸化物、ルテニウムチタン セリウム酸化物 カソード:白金被覆チタン,白金担持カーボン,パ ラジウム担持カーボン、コバルトグリオキシム、ニ ッケルグリオキシム 品温水電解 ( 7 ' ∞' " ' ' 1 α。 泊C) 電解質/セバレーター:イットリウム安定化ジルコニ S Z ) ア ¥ , / アノード:ストロンチウムド一フランタンマンガン 酸化物 カソード:ニッケル/ YSZ 複合体 -13- 水素エネルギーシステム Vo 1 .36,N o.1( 2 0 1 1 ) 特集 [ 2 9 ] アルカリ水電解は2 ∞℃近くの温度まで検討され 圧である。カソード材料には主に白金系材料が使用され ているが、商用電解槽は7 0 " ' 9 0C程度であり、 20"'30% る 。 0 KOH 水溶液を電解質とする。温度及び電解質濃度を高 高温水蒸気水電解では固体酸化物形燃料電池とほぼ くすると、電極反応速度やイオン伝導度が向上して電解 同じ材料が検討されている。電解質には酸化物イオン伝 槽としての性能も向上するが、電解質の腐食性も大きく 導体であるイットリウムで安定化した酸化ジルコニウ なるため材料の制約も大きくなる。セバレーター材料に ム(Y S Z)、アノードにはランタンストロンチウムマンガ は安価で耐久性に優れているアスベストが使用されて ン酸化物等の導電性酸化物、カソードにはニッケルと いたが、人体への有害性の問題から代替材料の検討がす Y S Zの複合体であるニッケルサーメット等が用いられ すめられている。アノード材料には主にニッケル系材料 る 。 が使われているが、導電性酸化物も良好な触媒活性をも 次に商用あるいは商用に近い水電解槽の規模と効率 つことが報告されている。カソード材料には鉄系材料、 を表2に示す。 [ 1 7-2 0 ]Bam agシステムに代表される常 あるいはニッケル系材料が使用される。図2に示したア 圧のアルカリ水電解のうち、効率の高いものの電力原単 ルカリ水電解の過電圧の内訳が示すようにアルカリ水 位は約4 . 0kWhm3-H 2 程度、 L u r g iシステムに代表され 電解では酸素過電圧だけでは無く、水素過電圧も比較し る加圧型では 4 . 5kWhm3 -f u程度とやや大きい。 て大きいため、高性能化のためにはアノード、カソード P r o t o nene 昭 Y句T s t e m 社や神鋼環境ソリューション社の ともに触媒能の向上が必要である。 商用機の固体高分子形水電解システムの電力原単位は 固体高分子形水電解では電解質膜には主にパーフルオ 3-f 4 . 5kWhm u 程度と加圧のアルカリ水電解とほぼ同 ロエチレンスルホン酸系カチオン膜が使用されており、 じである。これは出力密度を優先して定格値の電流密度 運転温度は6 0 " ' 1 ∞℃程度である。電解質にはプロトン が高いためと考えられる。一方、 WE-NET 高松ステーシ 型のカチオン交換膜を使用するため強酸性であるため、 ョンや本田技術研究所で試作されている固体高分子形 耐酸性に優れた材料でなければならない。アノード電極 水電解システムでは常圧の電解システムとしては電力 触媒には酸化イリジウム系材料が耐久性、触媒活性とも 3-f 原単位が3 . 8kWhm u 前後と非常に小さいく高効率 に優れているが、電圧損失の大半がアノードの酸素過電 である。しかし、水素ステーション用に加圧するための 表 2 各種水電解槽の規模ならびに効率 企業名等(国) l n d u s t r i eH a u t eT e c h n o l o g i e(スイス)[17] l n d u s t r i eH a u t eT e c h n o l o g i e(スイス)[17] ELT(ドイツ) [ 1 7 ] ELT(ドイツ) [ 1 7 ] H y d r o g e n i c s (カナダ)[ 1 7 ] H y d r o g e nT e c h n o l o g i e s ( ノルウェー ) [ 1 7 ] DeN o r aP e r m e l e c (イタリア ) [ 1 7 ] N i t i d o r(イタリア)[ 1 7 ] JHFC相模原ステーション(日本 ) [ 1 8 ] 電解質 槽の製造能力 Nm3h -1 a t m アルカリ 1 1 0-760 3-330 1 1 0-760 3-330 1 0 6 0 1 0 4 8 5 4 5 4 0 80 アルカリ 34 アルカリ アルカリ アルカリ アルカリ アルカリ アルカリ アルカリ P r o t o nE n e r g yS y s t e mCS e r i e s(米国 )[17] 神鋼環境ソリューション(日本 ) [ 1 7 ] PEM PEM 1 0 3 0 1 6 0 目立造船(日本 ) [ 1 7 ] PEM 0 . 5 3 0 三菱重工(日本)(設計値 ) [ 1 9 ] PEM 3 9 . 2 WE-NET( 高松ステーション ) [ 2 0 ] PEM 20 本田技術研究所(日本, SHS)ロ 0 ] 圧力 PEM ガス純度 (H2)% 9 . 8 9 9 . 9 3 1 9 9 9 . 8 9 9 . 9 常圧 9 9 . 8 9 9 . 9 3 1 9 . 8 9 9 . 9 常圧 9 5 1 0 9 9 . 9 常圧 常圧 3 6 9 9 . 9 9 9 . 5 電力原単位 kWhNm3 4 . 3 -4 . 6 3 . 9 -4 . 2 4 . 3 -4 . 6 3 . 9 -4 . 2 4 . 6 -4 . 8 4 . 3 4 . 3 -4 . 5 4 . 7 -14一 備考 u r g iシステム 76. 4 -81 .8 L a gシステム 8 3. 3 -90. 1 B鑑 n u r g iシステム 76. 4 -81 .8 L 8 3. 3 -90. 1 B a m a gシステム 7 3 . 2 -76. 4 81 .8 NorskHydro 7 8 . 1 -81 .8 7 4 . 8 4. 4 79. 3 水素製造装置 7 5. 1 圧縮装置込 5 . 8 -6 . 0 9 9 . 9 9 9 9 3 6 . 5 4 8 4 . 5 9 9 . 9 9 2 (HHV基 準 ) % 4 . 7 2. 55 . 09 9 . 9 9 9 8 7 エネルギ一変換効率 5 8 . 6 -6 0 . 6 54. 1 7 8. 1 4 . 5 7 8 . 6 3 . 9 9 0 . 6 水素製造装置 5 . 6 6 2. 4 圧縮装置込 3 . 7 9 5. 1 水素製造装置 5 . 2 6 7 . 8 圧縮装置込 水素エネルギーシステム Vo1 .36,No.1(2011) 特集 匹縮機の動力が非常に大きく、システム全体では5kWh m-3l l i 以上となっている。 風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用する ためには変動が大きく、時間的、空間的に需要と整合性 以上、アルカリ水電解は低コスト材料が使用可能であ の無い電力を大規模に貯蔵、輸送する手段を構築しなけ り、比較的高効率での水素製造が可能であるが、日本に ればならない。水電解-水素エネルギーがこの役割を担 は現在メーカーは無い。現状の固体高分子形水電解はア うためには水電解システムが電力変動に対応すること、 ルカリ水電解より高い効率での水素製造が可能である 水電解の下流のフロセスを駆動するために必要な圧力 が、白金族系の材料など材料コストを下げることは難し の水素を供給することが求められる。 い。したがって、低コスト、かつ高効率の水電解を行う 電気自動車用並びに家庭用コジェネレーションシス ためにはアルカリ水電解の高効率化技術、あるいは固体 テム用電源として研究開発がすすめられている固体高 高分子形水電解の低コスト化技術の可能性がある。 分子形燃料電池の実用化のための技術的な重要な課題 わが国の工業電解技術として食塩電解による塩素、水 とである。とくに起動停止時に燃料極に空気(酸素)が入 酸化ナトリウム、及び水素製造がある。全反応は 2NaCl+2H20→ 2NaOH+C 12 +H2 の一つは起動停止や負荷変動による劣化を抑制するこ ( 8 ) ると、過渡的に燃料電池の開回路電圧より高い電圧にな であり、隔膜にはカチオン交換膜を Na+ 伝導体として用 り劣化が加速されることが分かっている。食塩電解工業 い、電極反応は以下のとおりである。 でもプラント保守のために停止するときに発生する腐 12 +2e(アノード)2Cl-→ C ( 9 ) 食を抑制することが重要である。以上より、再生可能エ (カソード)2H20+2e-→ H2 +20H- ( 1 0 ) ネルギーの電力変動に追随するためには定電流条件よ 基本的には、水電解の酸素発生の代わりに塩素発生反応 りも耐久性、とくにアノード材料の高電位での耐性が優 の選択性の高い酸化ルテニウム系触媒担持官電極をア れていなければならないと考えられる。また、運転停止 ノードに用いて塩素発生を選択的に行う電解であり、カ 時にはカソードに酸素が混入しても十分な耐食性が必 ソードの水素発生反応はアルカリ水電解と同じである。 要である。 理論分解電圧は2.16Vと水電解の 1.23Vよりはるかに大 加圧型の水電解システムでは圧力変動に耐えられる きい。 [ 2 1 ] イオン交換膜法を採用しているわが国の 構造設計とともに水素及び酸素の透過を抑制して高い NaOH製 造 の 電 力 原 単 位 は 2008年 時 点 で 2426kWh イオン伝導度を有し、信頼性の高い隔膜材料の開発が必 1 t -NaOHであり、成熟産業と言われながらも、この 10 要であると考えられる。 年で24%も電力原単位を向上した。 [ 2 勾水素は副生成物 以上のように、再生可能エネルギーに対応して高効率 として生産される。水素製造の電力原単位に換算しても な水素エネルギーシステムを構築するためには大きな 4.3kWhm ・ 3 f u の高い効率である。食塩電解工業では電 電力変動のもとでも安定かつ高効率での電解が可能な 1 0 )式の反応活性の高い電極材 力原単位の削減のために( 電極及び隔膜材料の開発が必要であり、現状技術を単に 料の開発や、図3に示した電解槽の構造のうち、基本的 応用できるものでは無い。これらの技術開発のためには )アルカリ水電解と同じであったものをゼ、ロギャ にはa 電解にかかわる水平の技術協力のみならず、使われ方を ップ方式と呼ばれる b )固体高分子形水電解のように電 意識した縦の協力も重要であると考える。再生可能エネ 極が隔膜と接している構造への改良などが行われてい ルギーの大規模導入にむけて関係各位のご協力をお願 る。これらの技術はアルカリ水電解に応用可能である。 いする次第である。 、量等の弁金属 固体高分子形水電解の新技術としてはTa の酸炭窒化物が酸性電解質中で安定であり、酸素発生触 参考文献 媒能を有することが報告されている。ロ司今後、以上の 1 . Leue 巾e r 宮 : e r ;J .F A 佐官成金' e m .& :1 2 6 , 1 6 7 4 -1 6 8 2( 1 9 7 9 ) 技術等が新たな水電解技術として実用化にむけて研究 開発されることが望まれる。 R . L le Ro y ,M. B .I .J a n j u a , R . Re naud and U . 2 . D .S 白M enand D.胎i e g ;" H y d r o g e n and Fu e l Ce l l s , Fun血me n : 臼l s , T e c h n o l o g i e sandA p p l i e a t i o n s " , D .S白Men Ed , Wiley-VCH ,2010 , p 2 4 3-2 7 0 , “ A l k a l i n e回配位。,l y s i s - 4 再生可能エネルギーへの対応にむけて I n : 位 。d u c t i o n a n dOv e r v i e w " -15- 水素エネルギーシステム Vo 1 .36,No.1(2011) 特集 3 . D .Ha l l ;J .E h 庇宮町虫' e m . & . 芯 1 3 2 , 41C-48C( 1 9 8 5 ) に関する共通基盤技術開発「固体高分子水電解技術の低 4 . e ngandD .z h a n g ;P r o g .En e 事 α! 1 1 1 bu s t .純 3 0 7 3 2 6 KZ α施 、 p44、"水電解装置試設計" コスト化の研究」ぺ 2 2 0 . 岡部昌規,中沢孝治,樽谷憲司,判田圭;肋nゐ 品 長D ( 2 0 1 0 ) 5 . ∞η 7 . 欄 21 . 日本ソーダ工業会;"ソーダ技術ハンドブック 2∞グ、日本 S i n gh;Eh錦町カ' e m .α! 1 1 l l 1 7 .: 9 , 1 3 6 9 ・1 3 7 3 ( 2 6 . T e l 主n i c a l Re v i e w .20 , 6 77 3 ( 2 ぽ陪) R N.Si n g h , D.M i s h r a ,A n i n d i a , AS .K 臼nhaandA R So hnazandG .K紅 吐 加; E l a油v c h i m .A c t a : 5 4 , 3726・3 7 3 4 ソーダ工業会、 2 ∞9 、p l3 4 -1 4 1、"塩素ガス精製(洗浄・冷 ( 2 ぽゆ) 却と乾燥 r F .Raafu i n o ,D .~ぬ0, E .An g e l i n i , A Sa romeandS . 2 2 . 日本ソーダ工業会,電解ソーダ工業の電力消費量、買電・ ∞ 8 . 品目n o ;J .A均四 αmρ 必 3 , 2 7 5 ・2 8 2 ( 2 5 ) 自家発電比率、電力原単位の推移 ( 2 ∞8 ) T .Smo l i n k a ,S .Ra ua ndC .Helb I i n g , "HydrogenandFu e l h t ゆ:/ / w w w . j s i a . g r . j p f d a t a / g u i d e 2 0 . 凶f ∞色1 Ce l l s ,F un也men t a 1 s , T e c h n o l o g i e sandAp pJ i 位 : t i o n s " ,D . 1 2 3 . S加l 飴n E d . , Wuey-VCH ,2 0 1 0 ,p 2 7 1-2 9 8 ," P o l : 戸n e r 目 白 凶J y t eMembrane(PEM)Water回目位。,l y s i s 9 . MZ a h i d ,J .剖 l e f o l dandA B r i s 艶, " H y d r o g e nandFu e l Ce l l s ,F un也men t a 1 s , T I 任:hn o l o g i J 白 andAp p Ji叫o n s " ,D . S加1 飴n E d , Wiley-VCH , 2 0 1 0 , p 227 ・ 2 4 2 , 守五位T e m p e r a 旬 即 Wa 飴 r目配国,l y s i sU s i n gP l a n a rSo l i d e lCe lT e c h n o l o g y :aRe v i e w " . α r i d eFu 1 0 . CH.ωmninellisandG .P .Ve r a s i ; ム4p plE l e L 伽 虫em:21 , 3 3 5・3 4 5( 1 9 9 1 ) 1 1 . L A DeF : 紅白, J .F .C .監獄i t sandS . τ r a s a 凶 ;J .A ppl E l e L 治政治' em:26 , 1 1 9 5 ・1 1 9 9 ( 1 鰯) 1 2 . E g i l Rぉ 旬n ; PhD血e s お,官y 命。' g e nand Fu e lC e l l s , Fun也m e r r 阻l s , T E 氾h n o l o g i , 倍 加dA p p l i c a t i o n s " , N o r w e g i a n e r s i t yo f悩 en 田 a ndT e c h n o l o g y ,Norway ,2 , U凶v ∞1 1 p 3 5 4 4 “ ,αlap 飴: r 3Li飴mturer e v i e w " 1 3 . R 虫mol , dA T .M a r s h a l l ,E .R a s t e n ,M T : 町p k i n a ,l r E . Ow eandS.S 叩 d e;Dω 1 h m s : 2 5 ( 2 3 ) , 103 ・1 0 7( 2 0 1 0 ) 1 4 . P .M i l l e ,tD.肋ague, S .G r i g o r i e v , V .F a r 明 : v a n dC .E i e v a n : む ∞ I n tJ .Hy d J 乞1 9 e ! nEn e r g ; ゲ3 4 , 4 9 7 4 4 9 8 2( 2 9 ) 1 5 . O .P a r r 白血, E .Anx o l a 凶h 色 占f u l l a 此 , AA uka 叫∞ a ndP . 卿) M i l e t ;E l a官民主' e m .α! 1 1 1 1 1 lu n : 9 , 5 4 58( 2 1 1 6 . O .P a r r 句泊, S . N節 也r , R G凶l l o ,t P .M i l e ,t E . Anx o l a b e h 色品1allart a ndA }11叫回叫∞;An gewα ' e m .I n t 巴 ∞ Ed47 , 99 4 8 9 9 5 0( 2 8 ) 1 1 7 . 各社カタログデータr.yv e bを含む) 1 8 . 日本自動車研究所、エンジニアリング振興協会;"固体高 分子形燃料電池システム実証等研究,(第 1期冴IFCプロ α路 、 p 159 ・1 6 2、"冴IFCプロジェク ジェクト)報告書"、 2 ト実証データ" 1 9 . 新エネルギー・産業技術総合開発機構;“平成 1 7年度 平 成1 9年度成果報告書水素安全利用等基盤技術開発水素 -16- K~包uzawa, C .1 9 a m s h i ,S .M i 也u s h i m aandK ECST r a n s . :25( 2 3 ) , 119-124( 2 0 1 0 ) 0回;
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