第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 6 月 1 日(日)9 : 30∼10 : 20 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 基礎!人体構造・機能情報学 6】 1358 虚血モデルマウスにおける血管新生や酸化ストレスから見た運動やビタミン C 摂取の影響 丸岡 弘1,2),松本 純一2),金村 尚彦1,2),木戸 聡史1),井上 和久1,2),石神 昭人3) 1) 埼玉県立大学保健医療福祉学部,2)埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科, 東京都健康長寿医療センター研究所 3) key words 血管新生因子・運動・酸化ストレス 【目的】閉塞性動脈硬化症(PAD)は,動脈閉塞により血管新生や酸化ストレスなどへの影響を引き起こす。また,ビタミン C (VC) などの摂取は血管新生を抑制する。本研究は,PAD の生理的な病態に近いとされる虚血下肢モデルマウスを用い,運動や VC 摂取が酸化ストレスや血管新生因子におよぼす影響について検討する。 【方法】対象は,VC ノックアウトマウス(SMP30!GNL,雄)11 匹とし,週齢 40 週(中年期)の時点で外科的処置(右大腿動 脈結紮:処置)を実施し,無作為に VC 100% 摂取群(n=6 : A 群)と VC 0% 群(n=5 : B 群)の 2 群に区分した。処置 14 日後 (週齢 42 週)には 1 回の運動を実施し,運動 24 時間後にと殺を行い,組織を摘出した。すべてのマウスは週齢 39 週まで,VC 100% 摂取にて馴化飼育を行った。表面皮膚温の変化は,左右大腿部に表面温度計を使用し,開始時(処置前)と処置直後,処 置 24 時間後,動物用トレッドミル(TM)の運動前,TM 運動 24 時間後(と殺前)の計 5 回測定し,相対値(右! 左)を算出し た。運動は TM(速度 10m! min,傾斜 0%,30 分間)を使用した。血漿 VC 濃度は,TM 走行 24 時間後(と殺後)に肝臓を摘 出し,還元型(アスコルビン酸:AA)と酸化型(デヒドロアスコルビン酸:DHA)を電気化学検出器(HPLC)により測定し, 総 VC(AA+DHA) 濃度を算出した。酸化ストレス防御系は,活性酸素・フリーラジカル分析装置 (H&D 社製 FRAS4,FREE) を使用し,酸化ストレス度(d" ROM)と抗酸化力(BAP),血漿クレアチニン値(CK)を測定し,BAP! d" ROM 比(潜在的抗 酸化能)を算出した。d" ROM などの測定には尾静脈を一部切開の上,採血を行い遠心分離後の血漿を用いた。なお,d" ROM などの測定は,開始時(処置前)と処置 24 時間後,TM 走行前の安静時に計 3 回実施した。血管新生は,TM 走行 24 時間後 (と殺後)に左右ヒラメ筋を採取し,リアルタイム PCR 法にて血管内皮成長因子(VEGF)と線維芽細胞増殖因子(bFGF)を 分析した。全てのマウスは室温 20±1℃,12 時間(7" 19 時)の明暗周期の環境下で飼育し,VC を含まない固形飼料を自由摂取 させ,行動に制限を設けなかった。本研究において得られた数値は平均値±標準偏差で表し,統計ソフトは SPSS(Ver21.0 for win) を用い,有意差の検定は分散分析と Friedman 検定,Mann" Whitney U 検定,Scheffe 法などの多重比較を用いて行った。 【倫理的配慮】研究に当たっては,所属する大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号 24" 7) 。 【結果】表面皮膚温の変化は,開始時と比較し処置 24 時間後に両群共有意な低下を認めた(いずれも p<0.05) 。総 VC 濃度にお いて A 群は,B 群と比較して有意な高値を認めた (p<0.001) 。酸化ストレス防御系において BAP 値は,両群共に開始時と比較 し TM 走行前において有意な減少を認めた (それぞれ p<0.001,p<0.05) 。しかし,d" ROM 値や潜在的抗酸化能,CK 値は両群 共に変化を認めなかった。また,VEGF と bFGF は両群共に有意な差を認めなかった。 【考察】一般的に動脈閉塞は,骨格筋組織の酸素不足や虚血が惹起され,酸化ストレスが増大することが報告されている。今回 の結果から,VC 摂取量の違いは血漿 VC 濃度に有意な変化を認めたことから,先行研究と同様な結果となった。しかし,酸化 ストレス度や潜在的抗酸化能は変化を認めなかったことから,先行研究と異なる結果となった。先行研究においては,VC 摂取 の期間が 9 週間であり,かつ週齢 14 週の VC ノックアウトマウスであったことから,異なる VC 摂取期間や週齢による影響が結 果におよぼした可能性が考えられた。特に,生体内の VC の wash" out には 4 週間程度の期間が必要と報告されていることから, 2 週間程度の VC 0% 摂取では wash" out が不十分であったため,酸化ストレス度に変化を認めなかった可能性が推察された。ま た,運動後には,血管新生抑制因子の発現が 5 時間程度で発現したことや,促進因子においては 7 日で増大し,28 日で減少する ことが報告されている。今回,血管新生因子の測定は TM 走行 24 時間後であったため,両群共に有意な差を認めなかった可能 性が考えられた。そのため,今後は血管新生の経時的な分析と共に,酸化ストレスと併せて骨格筋の毛細血管網におよぼす影響 を検討する必要が考えられた。 【理学療法学研究としての意義】本研究は,動脈閉塞に対する運動の効果を検討するための基礎的なデータとなる。
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