Wind。ws 環境におけるBASー C言語 アプリ ケーショ ンの利用について

島根大学教育学部紀要(教育科学)第27巻
1頁∼5頁 平成5年12月
Wmdows環境におげるBASIC書語と
アフ◎リケーションの利用について
福島 誠*画
塚本正秋*
Makoto FUKUsHIMA亀Masaak1TsUKAM0T0
An Examp1e of Effect1ve Usage on BASIC and−
ApP11cat1on Programs for W1ndows
あらまし 中学校技術。家庭教科に情報基礎領域が導入
されることにより,教科書(1)ではソフトウェア学習の例
すように,DO S環境ではそれぞれのモードを紅了しな
としてBAS I C言語及びアプリケーションソフト(以
対して,柳indOWS環境では機種に依存しない操作性
下,AP)がとりあげられている;本報告ではこれから
の統一が可能であり,言語とAP商の関連性も配慮され、
ければ別のモードには移行できないためである。これに
のオペレーティングシステム(O S)の標準になると思わ
ているので上言己のような制約はなく,BAS I CとAPの
れる,Windows環境におけるBA S I C言語とAP
相互利用にはより効果的な環境であると言える。
の学習についての効果的な利用について提案する。
乳 W1ndows環境におけるBAS1CとAPの利用例
毛.はじめに
情報基礎領域におけるBA S I C言語の学習はJISX
3003で規定される部分,即ちパソコンの機種とOSに依
存しない基本的な部分を主体に行われている。従って,
2一 システムの構成
ここでは具体的な教材用システムとして,1Windows
用BAS I CにVisua1BAS I C(以下,VB)を,
そしてAPにEXCELを利用した例を提案する。図2に
実習はDOS BAS ICのインタープリタ環境における文
このシステムの処理の流れを示す。この図はVBにおい
字処理が主体で変化に乏しく,図形処理を取り入れるこ
て作成したグラフデータを,EXCELのグラフ機能を利
とにより生徒の興味を喚起することが必要と思われる。
しかし,BAS ICの図形処理命令はパソコンのハードウ
OOS起動
ェァに依存しているため,画面上の座標系の処理と命令
語の記述形式が規格化されていない。従って,教科書の
記述もr般例を示すにとどまっている。また,簡単な直
線や円の描画を除いて,グラフ作成等に利用するにはプ
ログラミングも複雑で,APを利用する方が簡単で効率
がよいことも確かである。こうした状況ではBAS−C
に対する学習意欲の低下が生じることが予想され,プロ
グラム言語学習の存在意義すら問われかねない。しかし,
BASlC
の起動
プログラムの
作成
A Pの起動
データの
み’み
デバツグ
異行
異行
修正
プログラム言語の学習は情報処理教育においては重要で
あり,APでは対応できない問題をプログラム言語で処
理することを教えることも必要である。このための効果
的な学習方法の一っとして,複雑な図形処理部分はAP
で処理し,BAS ICでは基本的処理に限定した相互利用
的な学習をするということが考えられる。しかし,現在
データ作成
1
BASlCモード(インタープリタ) 00S環境
図1 DOS環境におけるBAS ICとAPの利用形態
のDOS環境においてはシングルタスクのため,DO Sの
データファイルを共有して,BA S I CとAPを相互利
用することは操作性が非常によくない。これは図1に示
*島根大学教育挙部技術科教育研究室
用してグラフ化する処理の流れを示している。このシス
テムではVBで記述したプログラムを実行すると,最初
の実行時を除いてグラフの作成までプログラムで制御す
2
Windows環境におけるBAS I C言語とアプリケーションの利用について
瀞indo㈱起動
カスタムコントロール
(*.VBX)
1−1。。。I。、…けF一一一■一’ 。。。。。舳
6R I l〕.VBX
V Bシステム
(グリツドコントローノレ)
〈
0LECL1ENl VBX
の起動 1「■■■■「EXCELの起動1 起動
(OLEコントローノレ)
11 1
プ1濤ム:11・・/一一タの遵{EXC日Lデータの連1
フ才一ムモジュール
(*.F脳)
iLINi
コードモジュール
(*.bas)
i l
テバツグ !グラフ作成
FuNCT.FR闘
APOPE靱.8AS
_._._、」 」_._.
FI L1三NA闘E.FR闘
GLOBAL.BAS
(関数フ才一ム)
(ファイルフォーム)
EXCEL EXCEL6RAPH
棄行
1L二=_」一r■一一
(AP起動モジュール)
(変数定義モジュール)
PA闘ET1三R.1:R闘
闘0I〕uLE1.BAS
(パラメータフ才一ム)
(ファイル処理
1 r■’一一r
’ ■はWindo榊sのタスク
↓
ユーザ作成
モジュール)
lE蚕ドL一二1一は・・の/ベンl
図3 システムプログラムの構成
Visual L一一一一一一一一」
BASlC 榊indo㈱環境
画面構成を図4に示す。ここで提案しているシステムの
図2 Windows環境におけるBASICと鯉を利川したシステム
フォームとして,“関数”,}ファイル”,.一パラメー
タ’・という種類を作成した。関数フォームはプログラム
ることが可能である。これにはVBの特徴的な機能であ
の起動時に表示される画面(フォーム)で,図5のよう
るWindows APの起動機能(She11)(2)jとDDE
になっている。このフォームはツールボックスの中のコ
(Dynamic Data Exchange)、機能(2)を利用してい.
る。また,EXCELとEXCELGRAPHのLINK機
能(3)も使用している。
マンドボタン,グリッド等から構成されている。これら
のツール(コントロー功はイベント駆動型(EventDriven)
のプログラムで各種のイベント(C1ick,DragDrop等)
212 プログラムの構成
によって起動され,これをイベントプロシージャという。
VBを使用した部分のプログラム構成は図3のように
そして,これらのフォームフツールをオブジェクト(Object)
なる。VBのプログラム構成は,主としてフォーム(Fom)
という。プログラムのコードはこのオブジェクトのイベ
という画面インターフヱースと,そのプログラムコードか
ントプロシージャ単位に作成するが,フォームに関する
ら構成されており,フォームはいわゆるGUI(GraPhica1
これらのコードをまとめてフォームモジュールという。
User Interface)環境を提供するものでこのための
また,フォームに属さないコードのみのモジュールをコ
各種のツール類がツールボックスに用意されている。この
ードモジュールという。
團 轟 騒
日1acko耐プ0グラ1ワトソン樽土
図4 VBの起動画面
技術 福島・塚本
3
レ//
図5 システムの起動画面
図6 関数の選択とパラメータの設定
2・3 プログラムの実行例
プログラムの実行は最初に関数フォームが表示される
ので,まずコンボボックスの中から関数を選択する(図6
では関数として3次元の関数
Z− 1イ2一ツ2,κ2+ツ2≦1 (1)
参照),その後,!一パラメータ”ボタンをクリックして
を選択してグラフ化している。これは球の表面の半分に
パラメータフォームを開ぎ,関数のパラメータを決定し
あたる・この場合,図6牟らわかるように,κ・ノの値
(図6参照),”実行’’ボタンをクリックすれば結果が
グリッドに表示される。これを図7に示す。この結果を
はそれぞれ一1から十1まで0.1の増分値で変化させて
いる。また,・ここで作成したグラフをEXCELのLINK
EXCELのワークシートにDDE機能によって連結すれ
機能でワークシートと連結しておけば,2回目以降から
ば(POKE.L INK),あとは,例えばEXCELの
は自動的にグラフが更新される。ただし,ワークシート
グラフウィザード機能(3)で対話的にグラフを作成できる。
の選択範囲が一致している必要があるということと,デ
ただし,このためにはEXCELのワークシート名,また
ータ更新と同時にグラフも書き換えるので,複雑なグラ
はファイル名をシス.テムに知らせておく必要がある。こ
フではこの書き換えのために時間がかかる。
れには図7に示すように,ファイルフォームを一一出カフ
ァイル”ボタンをクリックして開き選択決定する。デー
3.検 討
Wmdows環境におけるBAS I CとAPの相互利用の
タをEXCELに連結した結果は図8−10に示す。この図
一列を提案したが,このシステムにおける利点と問題点
4
Windows
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技術 福島。塚本
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図10 EXCELのグラフ(ツ軸を50%に縮小)
は以下のとおりである。
利点としては,1)効率的なグラフの作成が可能。2)
Windowsの利用により,GU Iによる操作の容易さと
言語とAPを含めた環境の統一性が優れている。3)AP
の利用例としても使用できる。
問題点としては,1)操作環境の違いによるDOS BASIC
からの移行,及びイベント駆動等の概念の理解に抵抗感
がある。2)BAS工Cの図形処理学習の取り扱いをどうす
るのかという問題が残される。3)システム構築にコスト
がかかる(最低でも60MBのハードディスク,6MBの
メモリ,486(16MHz)以上のC P Uが必要)。
以上のようなこ亡から考えて,現時点ではまだr般的
な教育用システムとは言えない。しかし,パーソナルコ
ンピュータの高速,高機能,低価格化はこれからも進行
していくことは確実である。パソコンの次世代のO Sと
しては,WindowsのようなGU I環境を備えたシステ
ムが主流になることが予想されている。従って,現在の
ようなDO S環境に限定されたBA S I Cシステムのみ
を対象にした教育では,将来的には不十分な学習である
ことは明らかである。ここで提案したようなシステムが,
教育機関でも一般的に使用できるような環境を整備する
ことが,今後の課題といえる。
文 献
(1)技術・家庭㊧,開隆堂,1992.
(2)Visua1 BAS I Cプログラミングガイド,
マイクロソフト,1993.
(3)エクセル機能辞典,マイクロソフト,1993.
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