ロスアンジェルス VA 留学記 1.はじめに 仙台医療センター 救急科 加賀谷知己雄 2.教育システム 私は NHO 専修医海外留学制度を利用し、ロサ Attending doctor(指導医)、Resident(専門 ンゼルスの退役軍人病院(VA)とカリフォルニ 医)、Intern or Medical student(研修医もし ア大学ロサンゼルス校(UCLA)に 2013 年 11 月 くは医学生)の3者の関係が基本になっていま より約 2 ヶ月間臨床留学をしてきました。この す。外科においては、術者はほぼ全ての手術に 場を借りて留学中の経験を報告します。 お い て Resident で あ り 、 助 手 を Attending カリキュラムとしては、VA にて内科と外科の doctor が 行 っ て い ま し た 。 指 導 法 も 非 常 に 外来、病棟回診、カンファレンス、手術に参加 gentleman であり、怒ることは一切ありません。 し、UCLA にて救急を研修してきました。総じて 若い医師は多くの経験を積むことができるとの 医療レベルに関しては日本と米国で大きな違い ことでした。 はないと感じました。しかし、医療の内容より 内科外科ともに病棟管理は Resident が行い、 も目を見張った現場の違いを紹介したいと思い 治療方針を含めて指導医にプレゼンテーション ます。 を行い、アドバイスや最新の知見を教育すると いう内容の回診が日々行われていました。 Attending doctor は常に論文等に精通しなけれ ばならないと Dr.Kaunitz は仰っていました。ち なみに Dr. Kaunitz は2時間は回診に費やすそ うです。日本ではありえない光景でした。 外来診療も主に Resident が担当し、同様に指 導医にプレゼンテーションを行い、時にはそこ から他の Resident や Medical student と一緒に 議論をし、時にはホワイトボードで講義が始ま るということがありました。 Resident や medical student もそうですが、 皆 discussion をよく行います。どうしても日本 の医学生や研修医となると意見を発することが できず、症例検討会はつまらないものですが、 米国の case conference は非常に活発で盛り上 がっていました。 現状とのことです。医療のセーフティネットを ER が担っております。必ず診療を受けられる保 障がある代わりに、トリアージナースが軽症と 判断したら何時間も待ち、救急外来はいつも混 雑していました。 私が見学させてもらった UCLA の ER は、救急 車は年間 15000 台、救急外来来院患者数は年間 45000 人と非常に症例は豊富でした。医師は3交 代制(日勤、準夜勤、夜勤)で私は日勤帯と夜 3.時間の使い方 全ての科で開始・終了はとても早かったです。 勤帯に見学をしました。どの時間帯でも Attending doctor(指導医)が1人いて、5-6 外科の朝カンファレンスは朝6時開始でした。 人の Resident・Intern・Medical doctor が診察・ 心臓手術は朝7時には患者が手術室に入ります。 検査をし、指導医に報告するというシステムで 夕方には帰宅し、家族と有意義に過ごすとのこ 救急外来を回していました。診断が確定したと とでした。 ころで当該科のオンコールの医師に連絡し、各 また毎日の ように朝と 昼に conference や 科に引き継ぐという流れです。米国の救急医は lecture を行っておりました。朝と昼に軽食を食 全ての救急患者の入り口の診察を担当し、軽症 べながら教育の時間に費やすのは非常に効率的 から重症まで小児から老人まで様々な患者をみ なものと感じます。 ます。例えば日本においては小児の救急患者は 日本では医師の仕事とされている仕事を、米 小児科の医師が入り口を担当することが多いで 国ではある程度他職種に分担させていました。 すが、実際に生後2ヶ月の赤ちゃんも診察して Nurse Practitioner(NP)はその一つで日本に いる米国の救急医をみました。 も現在増えております。ER の軽症症例や簡単な 縫合などは NP が行っていました。当院救急科に も NP の研修で多くの看護師がきますが、この経 験を伝えていけたらと考えています。 4.米国の救急医療 自分の専門は救急なので米国の救急医療の現 場を経験できたのは非常に有意義でした。米国 の救急は病院を受診することができない貧困者 や無保険者にも医療を提供することが法律で義 務付けられており、紹介なしの初診を受け付け る部門が ER 以外はありません。家庭医は予約制 米国の救急医療にたらい回しはありません。 であり、予約をとるのも 2 ヶ月先と困難なのが 法律で決まっているとのことです。米国の救急 医も全ての患者を診れるように確立した教育を 受けているそうです。誰も断らない、まず自分 が診るんだという救急医は魅力的でした。 約2ヶ月間の留学の経験は非常に有意義でし た。最後の Dr.Kaynitz との面談で楽天の田中将 大を売り込むこともできました。このような機 会を与えてくれた仙台医療センターのスタッフ に感謝です。ありがとうございました。
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