●原著 口lIIlllIlIIlllIlI四llIllII悶lll帥1111整ll)11t1111111111111111bllllI巳lll帥111tlitt!llll帥胆日llI帥MllilllVINHIIIIIUI脚11bllIlIi帥1けll闘illtl乙111S闘1叶1時IIl囲OlllMll“f“iMMtlllMlt…tllStHIHIIIIilMlllMIUIIIIIllIIItltlll)t川11111111■1)lMtlll「tTltlMIMIIIHlItlllttttHlMIHM ミトコンドリア温度負荷による保存肝エネルギー生成能の検討 博二 研 博條山 義南小 沼明孝 浅秀 勤藤野 安斎 藤進聡 川田 面柴 佐 Influence of Heat Leading on the Energy Production of lsolated Mitochondria from Preserved Liver Tsutomu Sato, Yoshihiro Asanuma, Susumu Omokawa, Hideaki Andoh, Hiroshi Nanjo, Satoshi Shibata, Takashi Saito, Kenji Koyama 1)ゆ0ア勿¢ent of Surgery,ノlkita乙Xniv〃si砂School(ゾMediciηe [Summary] Functional reserve of energy production of the liver preserved in. cold EC solution and UW solution was studied by heat loading of isolated mitochondria. Mitochondrial function of preserved liver significantly decreased after 24 hours of preservation both in EC solution and UW solution. Mitochondria isolated from preserved liver were incubated in water bath at 400C for 8 minutes. lt was apparent that mitochondria of the liver preserved in EC solution for over 12 hours were more fragile than those of the liver immediate after procurement, while mitochondria of the liver in UW solution for over 24 hours were more fragile. The functional reserve of hepatic energy production can be detected easily by heat loading of isolated mitochondria and the viability of preserved liver can be evaluated more properly. Key words : Liver preservation, Heat loading of mitochondria, UW solution, Mitochondrial function (UW)液に低温浸漬保存した肝組織から分画したミト Lはじめに コンドリアに温度負荷1)を加え,負荷条件下でのミト 移植肝の血流を再開すると,肝には無三期に体液中 コンドリア機能の変化から保存肝エネルギー生成能を に蓄積したアンモニア,エンドトキシンなどの毒性物 より詳細に検討した. 質をはじめ,アシドーシス,輸血,肝血流障害など様々 II.対象と方法 な負荷がかかる.移植肝の生着は,これらの負荷に肝 がいかに耐えうるかに依存していると考えられる.そ 1)実験動物.及び肝保存方法 こで,Euro-Collins(EC)液, University of Wisconsin 実験動物は,体重250g前後のWistar系雄性ラット 秋田大 第1外科 (1991・11・25受領) (1992・2・28受理) 30匹を用いた.ラットをエーテル麻酔下で開腹し,門 脈から18Gの血管内留置針を挿入し,流速20 ml/ min,灌流圧10 cmH20以下の条件で0℃の乳酸加リ Presented by Medical*Online 334 移植(Vol.27 No.3) ンゲル液20 mlを灌流しながら肝を摘出した.摘出し III.成 績 た肝を0℃のEC液あるいはUW液30 mlで灌流し, 0℃の同保存液中に浸漬保存した.肝摘出直後,保存 1)EC液, UW液保存肝ミトコンドリア機能 6,12,24,48時間後に肝を0℃のうクトリンゲル液20 低温浸漬保存肝組織から分画したミトコンドリア機 m1で灌流して保存液をwash outした後,ミトコンド 能は,EC液保存では表1のごとく保存24時間から各 指標が低下し,ATP生成能でみると24時間,48時間 リア機能を測定した. 2)ミトコンドリア機能の測定法 には摘出時のそれぞれ76%,34%と有意に低下した. 上記の保存肝組織からHogeboomの方法2)に準じ UW液保存では, EC液と同様に24時間以降ミトコン てミトコンドリアを分画し,実験に供した.ミトコン ドリア機能が低下し,ATP生成能は24時間,48時間 ドリア機能の測定3)は,0.2Mコハク酸(pH 7.4)を基 には摘出直後のそれぞれ77%,67%と有意に低下し 質として,反応液に約2mgの蛋白に相当するミトコ ンドリアを加えて,Clark型酸素溶媒濃度記録計(Gil- た.EC液とUW液とを比較すると,保存24時間まで は両者に差を認めないが,保存48時間でUW液が有 son, Oxygraph, mode15/6)を用いて行った. Chance 意に高値であった. の定義に従いState 1~5までを記録し,呼吸調節比 2)温度負荷による保存肝ミトコンドリア機能の変 (RC), ADP/0比(P/0), State 3酸素消費量(S3), 化 ATP生成能を算定した.反応終了時に反応槽内溶液 分画したミトコンドリア懸濁液を40℃,8分間 の蛋白量を色素結合法(Biorad, protein assay)4)で測 定し,ミトコンドリア蛋白量とした. incubationすると,懸濁液中のpHは7.42から7.29 に低下し,懸濁液中の酸素分圧は,117mmHgから0.4 3)ミトコンドリアの温度負荷法 ㎜Hgまで低下した.また,懸濁液中の蛋白量には変 分画したミトコンドリア懸濁液を,40℃の恒温槽に 化がなかった. 8分間incubationすることにより,分離ミトコンドリ 40℃,8分間の温度負荷により,ミトコンドリア機 アに温度負荷を加えた.温度負荷終了後,ミトコンド 能の各指標は低下したが,その低下率は,EC液保存肝 リア機能を測定し,各指標の負荷前に対する負荷後の 値を%で表した.また,incubation前後でミトコンド では図1のごとく12時間からRC, P/0及びATP生 成能が有意に増大した.温度負荷前に対するATP生 リア懸濁液内のpH, PO2, PCO2,蛋白量を測定した. 成能の保持率は,12時間保存で54%,24時間で53%, 48時間では温度負荷により呼吸能は消失した. 表1保存肝組織ミトコンドリア機能 Preservation RC S3 P/0 Time(hr) @ Solution 0 6 12 24 48 ATP Production inAtoms/mg/min) inmoles/mg/min) EC 3.73±0.2 1.62±0.1 162.7±19,8 265.2±32.4 UW 3.66±0ユ 1.56±0.1 144.2±8.5 231.7±17.3 EC 4.09±0.2 1.57±0.1 154.2±14.9 242.2±24.4 UW 3.79±0.1 1.58±0.1 143,4±3.9 227.4±7.4 EC 3.53±0.3 1.52±0.1 140.0±7.8 212.8±13.4 UW 3.73±0.1 1.56±0.1 149.2±13.1 232.3±23.3 EC 3.08±0.1* 1.46±0.05* 138.6±13.5 203.0±18.8* UW 2.75≠0,4* 1.36±0.1* 134.0±10.0 179.5±27.0* EC 翻:ll〕※ 1:ll圭1:ll〕※ tW 98.5±5.4* 雛11:ll〕 P14.4±15.2* * p〈O.05 compared with pres. time Ohr Xp〈0.05 between EC and UW solution Presented by Medical*Online 335 佐藤・ミトコンドリア温度負荷による保存肝エネルギー生成能の検討 (- 盾処 * 60一 40一 20・ * o 6 0 servation 12 24 48 time 6 6 ・ Preservat!on 24 12 S㌦) tirne (hr) (90) (qo) 100 OloChanges of ATP Synthesis OloChanges of P/O 1 80 80 00 co , Preservation time 20 o 6 * * * 60 o T 80・ * 殉oo8060⑳20 o %Changes of S3 %) Olo C hang es of R C 40 20 * 122448閣lt’on O 6 122448鴨留。n 伽) 侮) * p〈O.05 図1温度負荷によるミトコンドリア機能の変化(EC液保存) %) (%) 1@ %Changes of RC oひ 笏 W0 〒 U0・ S0・ Q0 0 0 6 12 24 48 撃盾潤E i%oo/ , O/oChanges of ATP Synthesis 80 S20 40・ 20・ 0 0 , 6 Preservation 24 12 //”.一”v” v o 6 12 24 48 48 * 60 60・ * * * 80 48 time (hr) tirne 伽) %Changes ofP10 (%) Preservation Preservation Preservation (hr) trme (hr) *pく0.05 図2 温度負荷によるミトコンドリア機能の変化(UW液保存) 一方,UW液保存肝では,図2のごとく24時間以降 P/0ならびにATP生成能の低下率が有意に増大し た.温度負荷前に対するATP生成能保持率は,12時 間65%,24時間53%,48時間49%であった.すなわ ち,EC液保存肝では12時間以降, UW液保存肝では 24時間以降に,温度負荷に対するミトコンドリアの抵 抗性が減弱していた. IV.考 察 肝移植において,移植肝の生着は肝の保存状態のみ Presented by Medical*Online 336 移植(VoL 27 No.3) ならず,肝が血流再開後にかかる様々な負荷にいかに ともに保存24時間以降低下した. 耐えうるかに依存している.また,低温浸漬保存に伴 2)温度負荷によるミトコンドリア機能の変化を検 う低酸素状態により肝エネルギー代謝の中心であるミ 討した結果,EC液保存では12時間から, UW液保存 トコンドリアが不可逆的障害をうけると,血流再開後 では24時間から,負荷に対するミトコンドリアの抵抗 に肝は十分なエネルギー供給をできずに機能不全に陥 性が減弱していた. る5・6).そこで,ミトコンドリアに簡便でかつ再現性が 文 献 高い方法である温度負荷1)を加えて,その機能の変化 から,保存肝エネルギー生成能の予備力について検討 1)大内慎一郎:温度負荷後の肝ミトコンドリア機能 した.元来,ミトコンドリア機能の測定7)は,至適温度 からみた肝予備能の新しい評価法.秋田医学16= 下で十分なエネルギー基質と酸素の存在下でのエネル 271・一・282, 1989 ギー生成能をみるものであり,その結果はミトコンド 2) Hogeboom GH, Schneider WC : lsolation of リアが至適環境下で働きうる潜在的能力を表現してい intact mitochondria from rat liver. J Biol Chem る。その一方,ミトコンドリア機能は,ショック8},エ 172 : 619r-635, 1945 ンドトキシン9),アシドーシス10),低酸素11)などにより 3) Koyama K, lto K, Ouchi K, Sato T : Mitochon- 低下することが明らかにされており,分画したミトコ drial function of rat liver in biliary obstruction. ンドリアをこのような負荷の加わる異常環境下におく Tohoku J Exp Med 131:59-v69, 1980 ことにより,ミトコンドリア自体の障害をより鋭敏に 4) Bradford MM : A rapid and sensitive method 反映させることが可能になると考えられる. for the quantitation of microgram quantities of 保存肝組織から分画したミトコンドリアの機能は, protein utilizing the principle of protein-dye EC液, UW液ともに保存24時間以降に低下した.両 binding. Anal Biochem 72 : 248-v254, 1976 保存液の差は24時間までは認められず,48時間に至 5) Lambotte L : Liver preservation. ln : Basic りUW液が良好な結果が得られた.これは保存24時 concepts of organ procurement, perfusion and 間から48時間にかけてUW液では細胞内器官の障害 が比較的緩徐に進行するのに対し,EC液では細胞浮 preservation, for transplantation. Toledo-Per- 腫による細胞内器官の破壊が進みミトコンドリア自体 : pp. 225・N・257 の器質的障害も高度になるためと考えられる.一方, eyra LH (ed). New york : Academic Press 1982 6) Kono Y, Ozawa K, Tanaka J, Ukikusa M, 負荷に対するミトコンドリア機能の抵抗性は,EC液 Takeda H, Tobe T : Significance of mitochon- 保存では12時間から,UW液保存では24時間からそ drial enhancement in restoring hepatic energy れぞれ減弱しており,保存12時間から24時間にかけ charge after revascularization of isolated is- てのEC液, UW液両者のエネルギー生成能における chemic liver. Transplantation 33 : 150tv155, 相違が明らかになった.すなわち,EC液保存12時間 及び24時間では,至適条件下でのミトコンドリア機能 1982 の測定では明らかにならなかったミトコンドリア自体 polarography to mitochondrial respiration. Bio- の器質的障害がUW液保存に比較して進行している chin Biophys Acta 46 : 134-v142, 1961 ものと考えられる.また,この結果は,EC液保存12時 7) Hagihara B : Techniques for the application of 8) Donohoe MJ, Rush BF, Machiedo GW, Barillo 間以降,UW液保存24時間以降では,移植肝に負荷が DJ, Murphy TF : Biochemical and morphologic かかるとエネルギー生成能が低下しやすく,移植肝と changes in hepatocytes from the shock injured しての適性を欠いていることを示唆している.ミトコ liver. Surg Gynecol Obstet 162 : 323-v332, 1986 ンドリア温度負荷により,負荷に対するエネルギー生 9) Mela L, Bacalzo LV, Miller LD : Defective 成能の予備力を容易に推定でき,移植肝としての適性 oxidative metabolism of rat liver mitochondria をより的確に判断しうると考えられた. in hemorrhagic and endotoxin shock. Am J Physiol 252 : 362・”一368, 1987 V.結 語 10) Tobin RB, Mackerer CR, Mehlman MA : PH 1)保存肝組織ミトコンドリア機能は,EC液UW液 effects on oxidative phosphorylation of rat liver Presented by Medical*Online 佐藤・ミトコンドリア温度負荷による保存肝エネルギー生成能の検討 337 mitochondria. Am J Physiol 233 : 83・一v88, 1972 short term anoxia. Am J Physiol 252 : 349-v355, 11) Aw TY, Anderson BS, Jones DP : Suppression 1987 of mitochondrial respiratory function after Presented by Medical*Online
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