それでは,前回の解答です. F'(x) = 0 - f(x) = 0 を満たす x が区間 (- 1,c),(c,1) に少なくとも 1 つずつ存在する.ゆえに,f(x) = 0 を満たす 第1問(数Ⅲ) x が区間 (- 1,1) に少なくとも 2 個以上存在す 実数を係数とする多項式 f(x) に対して以下の る. 問いに答えよ . (1) f(x) が ∫ 1 -1 第2問(数 III) f(x) dx = 0 をみたせば , f(x) = 0 となる x が区間 (- 1,1) に存在する ことを示せ . (2) f(x) が ∫ 1 -1 ∫ f(x) dx = 0, 1 -1 n を 2 以上の自然数とする.相異なる n 個の 実数 a1,a2,ºº ,an に対して f(x) = (x - a1)(x - a2) ºº (x - an) xf(x) dx = 0 をみたせば ,f(x) = 0 となる x が区間 ( - 1,1) に 2 個以上存在することを示せ . とするとき,f(x) が極値をとる x の値は何個あ るか? <解答> (1) <解答> F (x) = ∫ x -1 n - 1 ( 個 ) であることを以下で示す. f(t) dt a1 < a2 < ºº < an とおくと,F(x) は微分可能であり として一般性を失わない. F(- 1) = F(1) = 0 から,平均値の定理より 区間 ak < x < ak + 1 において f(x) = 0 f ' (ck ) = 0 となる x が区間 (- 1,1) に存在する. F (x) = ∫ x -1 となる ck が平均値の定理より少なくとも 1 つ存在 する (f(x) は整式であるから微分可能である ).さ f(t) dt らに,f(x) が n 次の整式であることから,f'(x) は (n - 1) 次の整式であり,f'(x) = 0 を満たす実 とおくと,F(x) は多項式で F(- 1) = F(1) = 0 数 x は高々 n - 1 ( 個 ) である.よって上の ck は である.さらに ∫ 1 -1 f(ak) = 0 (k = 1,2,º,n) であるから,k = 1,2,º,n - 1 に対し, F (1) - F (- 1) F '(x) = 1 - (- 1) (2) □ F (x) dx = ∫ 1 -1 = [ xF (x) =- 各区間にちょうど 1 つずつ存在し,これですべて (x) ' F (x) dx ∫ 1 -1 である.すると ]- 1 - ∫- 1 xF ' (x) dx 1 1 f'(x) = n(x - c1)(x - c2) ºº (x - cn - 1) となり,f'(x) は x = ck (k = 1,2,º,n - 1) の xf(x) dx 前後で符号を変えるので,この点で極値をもつ. =0 以上より,f(x) が極値をとる x の値は であるから,(1) の結果を多項式 F(x) に適用して c1,c2,ºº,cn - 1 の n - 1 個である. F(c) = 0 (- 1 < c < 1) となる c が存在する. すると F(- 1) = F(c) = F(1) ( = 0) であるから,平均値の定理より 1 <コメント> 数学科の川﨑です.今回は「存在」を示す問題を ∫ f(x) dx = G(x) + C (C は積分定数 ) となる G(x) をとってみると,G(x) は微分可能 出題してみました.使う道具は分かりましたか? 2 で 問とも聞かれていることがほぼ同じだと気づけた人 G'(x) = f(x) は素晴らしいです. です.すると 高校数学において,「存在」を保証してくれる定 理としては,次の 2 つが有名です ( 以下 a < b とし ∫ 1 -1 ます ). - f(x) dx = 0 [ G(x) ] 1- 1 = 0 - G(1) = G(- 1) <定理> 中間値の定理 となります.よって,平均値の定理から 閉区間 a ≤ x ≤ b において連続な関数 f(x) が f(a) ≠ f(b) を満たすとき,f(a) と f(b) の中間値 a に対して a = f(c) (a < c < b) G(1) - G(- 1) = G ' (c) (- 1 < c < 1) 1 - (- 1) - f(c) = 0 (- 1 < c < 1) を満たす c の存在が言えるという流れです.こ を満たす実数 c が少なくとも 1 つ存在する. のように,積分の問題では上の G(x) (f(x) の原 始関数と言います ) をとり,G'(x) = f(x) を使っ <定理> 平均値の定理 て議論を進めていくことができる問題がありま 閉区間 a ≤ x ≤ b において連続,開区間 す.是非とも覚えておいてください.なお,解 a < x < b において微分可能な関数 f(x) に対し 答ではこの G(x) のうち,G(- 1) = 0 と定数の f(b) - f(a) = f ' (c) (a < c < b) b-a ところがきれいになるような関数を F(x) とお きました. を満たす実数 c が少なくとも 1 つ存在する. (2) 仮定が強くなった分,示すことも強くなりま した.ただし,考え方・使う道具は同じです.(1) どちらも,c の具体的な値や正確な個数に関して でおいた F(x) について,F(x) = 0 を満たす x の情報は与えてくれませんが,「存在すること」を が - 1 < x < 1 に一つあることを示せば終わり 保証してくれるので,そこからうまく議論を進める ます ( 解答のように 2 つの区間に分けてそれぞ ことで解ける問題が結構あります. れ平均値の定理を使う ).そのために,(1) を利 用するのですが,この発想が難しいかもしれま それでは,それぞれの問題ごとに見ていきましょ せん.F(x) を (1) の f(x) だと思って う.設問毎に補足を述べていきます. ∫ 1 -1 第 1 問 F (x) dx を計算します.もちろん,具体的には計算でき (1) 直感的には明らかに成り立つことですが,そ ませんので,部分積分か置換積分で何かできな れをきちんと証明しなくてはいけません.f(x) いか考えるところです.特に は多項式なので,各次の係数をおいて,具体的 ∫ に積分を計算することもできますが,それは大 1 -1 変ですね.そこで,「存在証明」の道具として, xf(x) dx = 0 と (2) から増えた仮定を使うことを考えると, 上の 2 つの定理を思い出しましょう. xf(x) と積の形を作らなくてはいけないので, 2 してください ). 部分積分を疑うところです.部分積分してみる と,この積分が仮定からうまく 0 になることが 分かり,(1) から F(c) = 0 (- 1 < c < 1) となる c それでは,最後に 1 問,練習問題をつけておきます. の存在が言えます.これで証明終了です. 平均値の定理と中間値の定理をどちらも使う,良い (1) は当然 (2) のヒントとなるはずなので,ど 問題だと思います.挑戦してみてください. う利用するかを考えましょう. 第 2 問 問 極値をとる x の個数を聞かれています. 関数 f(x) は次の条件 (a),(b),(c) を満たす とする. (a) f(x) は第 2 次導関数 f''(x) をもつ (b) f''(x) は連続である (c) x ≤ 0 のとき f(x) = 0,x ≥ 1 のとき f(x) = 1 である このとき f''(c1) > 0,f''(c2) = 0,f''(c3) < 0 0 < c1 < c2 < c3 < 1 を満たす c1,c2,c3 が存在することを示せ. n = 2,3 ぐらいで実験をすれば,答えが n - 1 個になるのは容易に予想できますね ( むしろ, この予想はできないとダメです ).問題は,どう 証明するかです.極値をとる点は f'(x) の符号が 変化する点なので ・f'(x) を具体的に計算して,中間値の定理 ・f(x) = 0 となる x を使って,平均値の定理 などが方針として考えられます.どちらでも示せ ますが,記述が楽なのは平均値の定理を使うほう だと思います.第 1 問を解いた人であれば,平均 < 解答 > 値の定理が自然と思えたかもしれません. f(0) = 0,f(1) = 1 まず,論証を楽にするために であり,f(x) が微分可能であることから,平均値 a1 < a2 < ºº < an の定理より と順序を入れておくのが,細かいですが大事なポ f(1) - f(0) = f '(c) (0 < c < 1) 1- 0 イントです. - f(x) = 0 - x = a1,a2,ºº ,an なので区間 (a1,a2),(a2,a3),º,(an - 1,an) に f '(c) = 1 (0 < c < 1) となる c が存在する. おいて,f'(x) = 0 となる点が少なくとも 1 つずつ さらに 存在することが平均値の定理から言えます.この f'(x) = 0 (x < 0,1 < x) 段階では,「少なくとも 1 つ」なので個数を特定 であり,(a) より f'(x) は連続であるから することはできないのですが,f'(x) が n - 1 次式 f'(0) = f'(1) = 0 であることが効いてきて,各区間にある f'(x) = 0 である.f'(x) が微分可能であることから,平均 となる点は 1 つだけだということが言えます. 値の定理より 「n 次方程式の解は高々 n 個」 f '(c) - f '(0) = f ''(c1 ) (0 < c1 < c) c-0 1 \ f '' (c1 ) = ( > 0) (0 < c1 < c) c という,当たり前ながら強力な事実がここでは役 に立ちます.あとはこれら n - 1 個の点の前後で f'(x) の符号が変化することを述べれば証明完了 となる c1 が存在し,さらに となります ( 符号変化を言わずに f'(x) = 0 の実数 解が n - 1 個を示すだけでは不十分ですので注意 3 \ f ' (1) - f ' (c) = f '' (c3 ) (c < c3 < 1) 1- c -1 f '' (c3 ) = ( < 0) (c < c3 < 1) 1- c となる c3 が存在する. また,とり方から 0 < c1 < c < c3 < 1 であり,条 件 (b) から f ≤ ( c2 ) = 0 (c1 < c2 < c3 ) となる c2 が中間値の定理より存在する. 以上より,題意を満たす c1,c2,c3 が存在する ことが示された. □ それでは今回はここまでにしたいと思います.残 り半分,良い夏を過ごしてください.ではまた次回. (数学科 川﨑) 4
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