Journal club 2013. May Journal club 2013. May Laboratory Assessment of Novel Oral Anticoagulants: Method Suitability and Variability between Coagulation Laboratories Tuukka A. Helin1, Anja Pakkanen2, Riitta Lassila1,3 and Lotta Joutsi-Korhonen1,* 1 2 3 Coagulation Disorders Unit, Clinical Chemistry, HUSLAB Laboratory Services, Helsinki University Central Hospital, Helsinki, Finland; Labquality Ltd., Helsinki, Finland; Aplagon Ltd., Helsinki, Finland. * Address correspondence to this author at: Clinical Chemistry and Hematology, HUSLAB Laboratory Services, POB 340, 00029 Helsinki, Finland. Fax +358-9-471-74016; e-mail: [email protected]. ジャーナルクラブ 新規経口抗凝固薬の検査室による評価:凝固検査間の適合性や変動性 の方法 要旨 背景:新規経口抗凝固薬(NOACs)を評価するための臨床検査は、現在まだ評価段階 である。習慣的なモニタリングは不要であるが、特別な環境下での生物活性の評価は非 常に重要である。我々は凝固検査に対する NOACs の効果や、様々な検査の特異的なア ッセイの可能性について検討した。 方法:ダビガトラン (Dabi;120 と 300 μg/L)またはリバーロキサバン(Riva; 60、 146、305 μg/L)を混ぜた血漿サンプルが、それぞれ 115 および 38 のヨーロッパの検査 ラボに送られた。国際標準化比(INR) と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT) は、全てのサンプルで測定した;、ダビガトランとリバーロキサバンのために調整した 抗活性因子 X(抗-Xa)活性測定のために、トロンビン時間(TT)を特別に測定した。 我々は患者サンプルの結果と比較した。 結果:ダビガトランサンプルの結果は、73 の検査ラボ(13 つの INR と 9 つの APTT 試 薬)から報告され、リバーロキサバンサンプルは 22 の検査ラボ(5 つの INR と 9 つの APTT 試薬)から報告された。両方の NOACs は INR 値を増加させた;増加はわずかで 1 Journal club 2013. May あったが、ダビガトランの方が大きく、特にクイック法(対オーエン)では CV がより 高かった。両方の NOACs は、用量依存的に APTT を延長した。また、延長と CV はダ ビガトランの方が大きかった。INR と APTT 結果は試薬に依存して変化し(P<0.005)、 患者サンプルでの延長は小さかった。TT の結果(ダビガトラン)と調整した抗-Xa の 結果(リバーロキサバン)は、それぞれ 11、8 の検査ラボだけから報告された。 結果:INR と APTT のスクリーニング検査は、NOACs 評価において準最適であり、試 薬依存性が高く、感受性と特異性が低い。もし、臨床検査がそれらの限界を認識した場 合、それらは情報を提供するだろう。臨床サンプルでは変動は増加し、感受性は異なる だろう。特定のアッセイは正確に NOACs を測定する;しかし、それを利用した検査ラ ボはほとんどなかった。 トロンビン阻害剤であるダビガトラン(Dabi)や、活性化第 X 因子(Xa)阻害剤であ るリバーロキサバン(Riva)などの新規経口抗凝固薬(NOACs)4 は、抗凝固剤に代わ る効果的なツールを提供する(1、2)。ビタミン K アンタゴニスト(VKAs)は、非常 に変化しやすい薬物動態と薬力学を示し、国際標準化比(INR)アッセイのモニタリン グが必用であり、NOACs の様相は予測可能であり、日常的なモニタリングは必要ない (3、4)。 時折、NOAC の生物活性評価は、例えば重篤な出血や血栓性合併症、急性感染、緊急 手術、過剰摂取の疑いの場合、変動幅が大きい。治療中の典型的な血漿濃度は、50 か ら 400 μg/L(ng/mL)である;しかし、治療濃度域がないというわけではない(3、 4)。致命的で深刻な出血は、ダビガトランの高血漿濃度と関連し、特に腎機能障害と 関連している(5、6)。NOACs の効果は、貧血、血小板減少症、肝機能障害などの出 血性素因が増加する多くの他の臨床状態においては研究されていない(7、8)。 プロトロンビン時間(PT)、INR、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を含 む凝固活性スクリーニングアッセイは、広く入手可能である。PT 測定には、オーエン とクイックの両方の方法が用いられ、前者は完全な外因性および共通経路代わりに、凝 固系の第Ⅱ、Ⅶ、Ⅹ因子のみに影響される。血漿に混ぜると、ダビガトランは用量依存 的に APTT を延長させる。しかし延長は非線形であり、高濃度においては頭打ちになる (4、9)。INR の反応はより直線的であるが、十分に反応しない。トロンビン時間 (TT)は治療濃度においては反応しすぎであるが、ダビガトランの存在の指標として 有用である。希釈サンプルにおいてダビガトランを調整した TT は、直線的にダビガト ランを定量化することができる(9-11)。リバーロキサバンは非線形的に APTT を延長 するが、トラフ濃度においては穏やかである(12)。INR 反応はトロンボプラスチンア ッセイ試薬に依存して大きく変動するが、調整した抗 Xa アッセイはリバーロキサバン 濃度の決定に適した方法であると思われる。(13-16)。 2 Journal club 2013. May 我々は NOACs の凝固スクリーニング検査だけでなく、様々な検査間のより特異的なア ッセイに対する効果を評価することを目的とした。この調査は、試薬の多様性や多くの 検査ラボのより特異的な方法の有効性の評価するために、国際的な凝固に対する外部品 質評価(EQA)と併せて実施した。これらの試薬を混ぜたサンプルに加え、我々は臨 床の患者サンプルにおいて、知見の一部を制御した。 資材と方法 ダビガトランとリバーロキサバンと方法 集めた正常なヒト血漿サンプルに、最終濃度が 120、300 μg/L となるようにダビガト ラン(Aniara)を混ぜ、凍結乾燥し、2011 年 7 月に EQA オーガニゼーションラボクオ リティによって、115 のヨーロッパの検査ラボ(ポーランド 49、フィンランド 35、リ トアニア 17、ラトビア 9、エストニア 3、アイスランド 2)へ届けられた。サンプルは フィンランドのベーリンガーインゲルハイムから寄贈された。検査ラボでは、分析の前 に 1.0 mL の蒸留水で血漿をもどし、十分に撹拌し、室温で 30 分間インキュベートし、 定期的に混ぜるよう指示した。検査ラボには、2 つのサンプルで利用可能なスクリーニ ング検査と、より特異的なアッセイ(例えば TT)を用いるように求めた。全体で 73 の 検査ラボ(63.5 %)が結果を報告した;TT は 11 の検査ラボだけから報告された。 最終濃度が 60、146、305 μg/L となるようリバーロキサバン(Technoclone)を混ぜ、 凍結乾燥した正常なヒト血漿サンプルは、2012 年 1 月にラボクオリティによって、38 の検査ラボ(フィンランド 18、ノルウェー9、アイルランド 5、デンマーク 2、スウェ ーデン 2、エストニア 1、リトアニア 1)へ届けられた。サンプルはバイエルシェーリ ングファーマから寄贈された。検査ラボには、分析の前に 1.0 mL の蒸留水で血漿をも どし、泡立たないように注意して回転撹拌し、室温で 30 分間インキュベートするよう 指示した。検査ラボには、3 つのサンプルで利用可能なスクリーニング検査とより特異 的なアッセイ(例えば抗-Xa)を用いるように求めた;22 の検査ラボ(57.9 %)が結果 を報告した。さらに、0、15、60、100、150 μg/L のリバーロキサバンと一緒に、キャ リブレーターがリバーロキサバンの現地での抗-Xa アッセイのために、18 のフィンラン ドの検査ラボに送られた。リバーロキサバンで調整した抗-Xa の結果は 8 の検査ラボか ら報告された。 参加している検査ラボが用いた様々な試薬を、Table1 にまとめた。合計で 8 つの異なる 製造業者からの 23 種類の血液凝固分析装置が用いられた。分析装置の影響については、 本調査では評価しなかった。 3 Journal club 2013. May 患者サンプルと混ぜたサンプルとの差を比較するために、我々はヘルシンキ大学中央 病院から得た臨床の患者サンプルを用いた。ダビガトランを用いた患者から得た 10 の サンプルとリバーロキサバンを用いた 10 のサンプルは、PT、APTT、薬物濃度を決定 するための検査(ダビガトランで調整した TT またはリバーロキサバンで調整した抗Xa)で評価した。Nycotest PT®(アクシス・シールド、オーレン法)と Actin FSL®(シ ーメンスヘルスケアダイアグノスティクス)試薬は、それぞれ PT と APTT を測定する ために用いられた。患者は整形外科手術または心房細動の指標としてダビガトランを用 いた;リバーロキサバンでは、全てのサンプルは整形外科手術を受ける患者からであっ た。薬物摂取から採血までの時間間隔は不明であった。 統計解析 我々は分散分析(ANOVA)とスチューデント t 検定によって、試薬の効果を解析した。 様々なアッセイにおいて検査ラボ間のばらつきを調べるために CV を用いた。結果はボ ックスプロットで示し、バーの長さは四分位範囲(25 パーセントから 75 パーセント) を示している。外れ値(図中の丸印)は、ボックスの端からバーの長さの 1.5-3.0 倍の 値として定義し、極端な外れ値(アスタリスク)はバーの長さの 3.0 >と定義した。 APTT アッセイでは、ベースライン値が知られていなかったので、薬物濃度が増加する 際に APTT の延長を決定するために、検査ラボで報告された基準値の上限を用いた。 様々な試薬の比較において、1 箇所の検査ラボだけで使われた試薬で得られた結果は統 計解析から除外した。統計解析は Microsoft Excel®(2007)と IBM SPSS®(18.03)プロ グラムで実施した。 結果 ダビガトランとリバーロキサバンサンプルについて様々な検査ラボ、凝固スクリーニン グ検査である INR と APTT 結果を Table2 にまとめた。 ダビガトランと INR/PT ダビガトラン(120、300 μg/L)と一緒に観察した血漿サンプルの INR 値が、71 の検査 ラボから報告された。13 種類の異なるトロンボプラスチン試薬が用いられた(Table 1.)。両方の血漿サンプルにおいて、INR 値はわずかに増加したが、300 μg/L のダビガ トランでわずかに高いだけであった。検査ラボ間の一致は最適ではなかった(Table 2)。トロンボプラスチン試薬の間に感受性の差があった(ANOVA P < 0.001)。2 種類 のダビガトランサンプルの間の INR の平均相対変化は、1.21(範囲 1.11-1.55)であっ 4 Journal club 2013. May た。INR 分析のために用いられた方法の種類によって影響があった:オーレン法よりも クイック法では、ダビガトランの濃度が上昇するにつれて、高い INR レベルと INR の 大きな上昇の両方を示した(P < 0.001) (Fig. 1)。 Fig. 1. トロンボプラスチン試薬を用いて得られたダビガトランサンプルの INR 結果 ボックスプロットは中央値(ライン)、上位四分位点および下位四分位点(ボックス)、 全範囲(ひげ)、外れ値(〇)、極端な外れ値(*)を示している。これらの試薬を用 いた検査ラボの数は、括弧内に示している。オーレン法試薬は、クイック法試薬よりも 低い INR 値と少ない変動をしめした(P < 0.001)。SPA, SPA Stago;Nycotest, Nycotest PT;ThromboT, Thrombotest; Trel S, Thromborel S; RecombiPl, RecombiPlastin 2G; BiokselPT, Bioksel System PT; Neoplastin, STA Neoplastin CIPlus 秒単位の PT は、より高いダビガトラン濃度においていくらか長かったが、結果を報告 したのは 17 検査ラボだけだった。PT 延長は小さかった;21.3 秒(範囲 13.1-38.8 秒)、 27.5 秒(範囲 15.7-38.8 秒)と大きな変動(それぞれ、CV 36.4% and 39.0%)。 5 Journal club 2013. May ダビガトラン APTT ダビガトラン(120、300 μg/L)を混ぜた 2 種類の血漿サンプルの APTT 値は、72 の検 査ラボから報告された。9 種類の異なる APTT 試薬が用いられた(Table 1.)。APTT は ダビガトランの存在をよく検出し、72 のうち 70 の検査ラボがダビガトラン 120 μg/L の 上限基準値を超える値を報告した。ダビガトランは用量依存的に APTT を延長した (Table 2)。APTT 延長の平均は 23.4 秒(範囲 65.5-41.7 秒)であり、ダビガトラン 300 μg/L(範囲 20.0-89.3 秒)において、上限基準値を 53.8 秒だけ超えた。しかし、検査ラ ボ間の変動は大きく試薬に依存した(P < 0.001)。APTT の相対的な延長は平均 1.36(範 囲 1.31-1.62)であり、ダビガトラン 300 μg/L での上限基準値を超える相対的な上昇は 平均 2.45(範囲 1.61-2.97)(Fig. 2)であった。 Fig. 2. 様々な試薬を用いて得られたダビガトランサンプルの APTT 結果 ボックスプロットは中央値(ライン)、上位四分位点および下位四分位点(ボックス)、 全範囲(ひげ)、外れ値(〇)、極端な外れ値(*)を示している。上限基準値はベー スラインをシュミレーションするために使われた。最も低いダビガトラン濃度において も、ほとんど全ての検査ラボ(72 のうち 70)が上限基準値を超える値を報告した。試 薬を使った研究室の数は括弧内に示している。Ref. range, 上限基準値の範囲; STA PTT, STA PTT Automate;HemosIL, HemosIL APTT SP; Pathromtin, Pathromtin SL; Cephascreen, STA Cephascreen; TriniCLOT, TriniCLOT aPTT HS; BiokselAPTT, Bioksel System APTT; Grifols, Grifols APTT 6 Journal club 2013. May ダビガトランと TT 11 の検査ラボ(結果を報告した 73 検査ラボの 15 %)だけが TT 結果を報告した。11 検 査ラボ全てがダビガトラン濃度の測定範囲を超える TT 値を報告したため(データは示 さず)、トロンビン阻害剤の存在を明示している。1 つの研究所だけが Hemoclot (Aniara) アッセイによって得られたダビガトラン濃度として結果を示した:110 と 320 μg/L。 臨床患者サンプルのダビガトラン 10 例の臨床患者血漿サンプルにおいて、ダビガトランで調整した TT によって測定され たダビガトランの平均濃度は 119 μg/L (範囲 100–135.5 μg/L)であった。同じ試薬 (Nycotest PT)を混ぜた 120 μg/L のサンプルにおいて、INR は平均が 1.16(P < 0.01) とわずかに平均が高かったが、患者サンプルでの INR は平均 1.08(範囲 0.96-1.17)で あった(Fig. 1)。臨床サンプルと混合サンプルにおいて、INR は基準範囲内であった。 同じ試薬(Actin FSL)を混ぜた 120 μg/L のサンプルにおいて平均は 54.2 秒と高かった が、患者サンプルの APTT 平均値は 39.8 秒(範囲 33-42.6 秒)であった(Fig. 2)。患 者サンプル群において APTT 延長はあまり顕著ではなく、1 つのサンプルは基準範囲内 であったため、この差は臨床的に関連性がある。 リバーロキサバンと INR/PT リバーロキサバン(60、146、305 μg/L)を混ぜた 3 種類の血漿サンプルの INR 値は、 22 の検査ラボから報告された。5 種類の異なるトロンボプラスチン試薬が用いられた (Table 1)。INR 値はリバーロキサバンにわずかに影響を受けただけだった。どの検査 ラボも INR 値 1.9 に到達しなかった。検査ラボ間の一致は比較的良好であり、変動係数 は低かった(Table 2)。しかし、試薬間に INR 反応性について有意な差があった(P < 0.005)。最も低いリバーロキサバン濃度と最も高いリバーロキサバン濃度の間の INR の相対的な変化は、平均 1.25(範囲 1.14-1.43)であった。方法(クイック対オーレン) は結果に対して、ほとんど影響を及ぼさなかった(Fig. 3)。 7 Journal club 2013. May Fig. 3. トロンボプラスチン試薬を用いて得たリバーロキサバン濃度サンプルの INR 結 果 ボックスプロットは中央値(ライン)、上位四分位点および下位四分位点(ボックス)、 全範囲(ひげ)、外れ値(〇)を示している。クイック法試薬を用いたのは 2 つの検査 ラボだけだった。試薬を用いた検査ラボの数は括弧内に示した。SPA, SPA Stago; Nycotest, Nycotest PT; ThromboT, Thrombotest 秒単位で PT 結果を報告したのは 11 検査ラボだけだった。リバーロキサバンの効果は わずかであった:それぞれ、23.3 秒(範囲 12.1-39.8 秒)、24.6 秒(12.8-46.1 秒)、31.2 秒(15.1-59.5 秒)であり、変動係数は 31.3 % 、35.3%、 35.7%と変動が大きかった。リ バーロキサバン濃度が増加するにつれ、PT は明らかに延長した。リバーロキサバンの 最も高い濃度では、全ての検査ラボにおいて PT は上限基準値を超えた。 リバーロキサバンと APTT APTT 値は 22 の検査ラボから報告された。4 種類の異なる試薬が用いられた(Table 1) 8 Journal club 2013. May 。APTT 延長は用量依存的であったが、3 種類のサンプル(リバーロキサバン 60、 146、 305 μg/L )ではわずかであった。しかし、上昇は非線形のようであった(Fig. 4)。ま た、検査ラボ間の変動は大きかった(P < 0.001)(Table 2)。用いられた試薬は APTT に対して異なる効果を持っていた:異なる試薬の間には、リバーロキサバンの濃度増加 に対する反応の大きさに、小さいが有意な差があった(P < 0.05)(Fig. 4)。 9 Journal club 2013. May Fig. 4. 様々な試薬を用いて得られたリバーロキサバンサンプルの APTT 結果 ボックスプロットは中央値(ライン)、上位四分位点および下位四分位点(ボックス)、 全範囲(ひげ)、外れ値(〇)を示している。最も低いリバーロキサバン濃度において、 ほとんどの試薬の APTT 結果は基準範囲内であった。最も高いリバーロキサバン濃度で は、ほとんど全ての検査ラボが上限基準値を超える値を報告した。本試薬を使った検査 ラボの数は括弧内に示している。Ref. range: 上限基準値の範囲 STA PTT, STA PTT Automate; HemosIL, HemosIL APTT SP; Cephascreen, STA Cephascreen リバーロキサバンとリバーロキサバンのために調整された抗-Xa 8 つの検査ラボ(結果を報告した 22 検査ラボの 36 %)が抗-Xa を報告した。恐らく、 最も高い調整サンプル濃度(150 μg/L)がこれらのサンプルにとって明らかに低すぎた ため、6 検査ラボが最も高い濃度を過小評価したが、2 つの検査ラボが全てのサンプル において正確な濃度結果を報告した。(Table 2)。2 検査ラボが外因性アンチトロンビ ン(Table 1 の Berichrom ヘパリン)と一緒に抗-Xa 試薬を使用し、6 検査ラボは使用し なかったが、結果に有意な差はなかった。アンチトロンビンを加えた場合の平均値は、 それぞれ 62.4、 148.3、 255.5 μg/L であり、アンチトロンビンを加えなかった場合は 68.2、129.5、188.1 μg/L (P 値 0.210、 0.043、0.203)であった。 10 Journal club 2013. May 2 検査ラボが外因性アンチトロンビン(表 1 中の Berichrom ヘパリン)と一緒に抗-Xa 試薬を使用し、6 検査ラボは使用しなかったが、結果に有意な差はなかった。アンチト ロンビンを加えた場合の平均値は、それぞれ 62.4、 148.3、 255.5 μg/L であり、アンチ トロンビンを加えなかった場合は 68.2、129.5、188.1 μg/L (P 値 0.210、 0.043、0.203) であった。 臨床患者サンプルのリバーロキサバン リバーロキサバンで調整した抗-Xa により測定した、10 例の臨床患者の血漿サンプル中 のリバーロキサバンの平均濃度は 63 μg/L (範囲 32–128 μg/L)であった。INR の平均 は 1.00(範囲 0.88-1.12)であった。結果は同じ試薬(Nycotest PT)を混ぜた 60 μg/L の サンプルと有意な差はなく、全ての INR 結果は基準範囲内であった。APTT の平均値は 27.3 秒(範囲 25.0-34.0 秒)であった。この場合も、同じ試薬(Actin FSL)を混ぜた 60 μg/L のサンプルと有意な差はなく、臨床サンプルおよび混ぜたサンプルの両方の全 APTT 結果は基準範囲内であった。 考察 この調査は、ヨーロッパの 10 か国において、多くの測定法と試薬に関して習慣的にな っている抗凝固アッセイと薬物特異的アッセイの両方に対する、NOACs であるダビガ トランとリバーロキサバンの効果を評価することを目的としている。抗凝固の程度に関 する検査ラボの評価は特殊な状況下で必要とされ、容易に用いることが出来るスクリー ニングアッセイが求められている。そのため、検査ラボは独自の PT、INR、APTT アッ セイの薬物特異的感受性に注意する必要がある(17)。予想したように、多種多様な凝 固スクリーニング試薬が用いられた:23 種類の異なる凝固系と多数の組合せで、合計 11 Journal club 2013. May 13 種類の INR 試薬と 9 種類の APTT 試薬が用いられた。ここでは、わずかな検査ラボ (15 %、36 %)だけが報告した特定のアッセイについて、ダビガトランとリバーロキ サバンに対する結果をまとめる。 習慣的になっている抗凝固検査の PT/INR は、NOACs の抗凝固効果の測定について有 用性は限られている。本調査は以前の研究と一致し(11、18)、INR 値は試薬によって 大きく変動し、特にダビガトランサンプルにおいて変動が大きかった。我々の新たな所 見は、オーレン方法の PT 試薬はダビガトランに対して特に感受性がなく、ほとんど変 動がなかったことである(Fig. 1)。さらに、ダビガトランを使った患者の小グループ において、全員の INR 値はオーレン法で測定された基準範囲内であった。対照的に、 クイック法試薬では、ダビガトランが低濃度であっても範囲は 3 倍であった。我々のデ ータは、ダビガトランの過剰摂取スクリーニングに対して提示された 1.5(オーレン)、 2.0(クイック)という INR レベルと矛盾する(18)。さらに、ダビガトランを用いた 患者にポイントオブケア INR デバイスを用いた場合、ポイントオブケア INR デバイス が誤って高い測定値を示すことがあるだろう(19)。リバーロキサバンサンプルでは、 最も高濃度である 305 μg/L においても、1.9 という INR 値に到達した検査ラボはなかっ た。Neoplastin CI Plus®試薬(Diagnostica Stago)はその感度により、定性試験の試薬と して適していることが示されている(13、20)。この調査によると、リバーロキサバン の結果を報告している検査ラボは概要を示しており、どこもその試薬を使っていないの で、それは現在、実用的に限られた価値がある。 INR は VKAs だけを測定するため、NOACs の効果を評価する際に、INR よりもむしろ PT が提唱される。国際感度指数(ISI)が高いトロンボプラスチン試薬によって、試薬 間の差は大きくなる(16、21)。我々の研究において試薬の ISI 値はかなり類似してお り、1.0 に近かった(メーカーによると、範囲 0.9-1.3)。PT 結果の差は、両方の NOACs の濃度上昇に伴い、わずかに大きくなった。最近、VKAs の ISA に類似してい るリバーロキサバンの ISA を作成することにより、PT 方法を標準化する努力がなされ ている。しかし、この調整はクイック法だけに適用され、限られた数の検査ラボのみで 利用可能である(21)。INR/PT は広く利用可能であるため、最適ではないにもかかわ らず、NOACs を測定するために使用されているようである。ここでは、低濃度の薬物 を用いた際、臨床患者サンプルと in vitro サンプルの間で、INR 結果は同様に不活性で あった。 全ての APTT 試薬はダビガトランの存在と用量依存性を良好に検出した。低濃度におい ても、ほとんど均一に APTT は延長されたが、試薬間の分散は 2 倍であった。最も頻繁 に用いられた試薬のうち、Stago PTT® (Stago) はしっかりと反応したが、Actin FSL® (Siemens Healthcare Dia は gnostics)は最も反応性が低い試薬の 1 つであった(Fig. 2)。 これらの試薬に関連する調査結果は、Lindahl ら(18)の結果と一致するが、Douxfils ら(10)の結果とは対立している。APTT の高い感受性や我々のダビガトランを混ぜた サンプルの結果によって支持される報告書のため、ダビガトランの存在の指標検査とし 12 Journal club 2013. May て推奨されている(17)。しかし患者サンプルにおいて、APTT は混ぜたサンプルより も感受性は低かった。実際に APTT は、治療域濃度においても正常であるため、臨床医 がダビガトランの効果を評価するために APTT を用いる際に注意が必用である(22)。 用量反応は曲線を示し、明らかに臨床症状の影響を受けていた。APTT に対するリバー ロキサバンの効果は、過去の研究と一致して緩やかであり非線形であった(13)。 特異的なアッセイは、比較的少数の施設で利用可能であった。TT の結果は 11 検査ラボ (15 %)によって提供されたが、そのうち 1 つの検査ラボのみが正確な、濃度を測定 するために利用可能な希釈調整された TT アッセイを有していた。抗-Xa は、特に調整 した場合、リバーロキサバンの濃度を測定することができ、これは過去の研究と一致し ている(16)。一般的に、抗-Xa アッセイは容易に利用でき広く用いられており、Xa 因子インヒビターの濃度を正確に測定するために、比較的容易に調整することができる。 それにも関わらず、病院の検査室は日常的な使用において抗凝固作用の検出に適した検 査の検証も行っている(11、13、15、16、18、23)。検量体や更なる EQA ラウンドの 利用増加は研究所が特異的なアッセイをセットアップし維持するために必要とされてい る。 我々の調査結果を調べると、サンプルの材料を限定することについて認識されるべきで ある。最適ではないが、凍結乾燥した血漿は凝固因子の活性を減少させ、新鮮な血漿と 比較して PT 値と APTT 値を延長させる(24、25)。しかし、異なる検査ラボに送った サンプルは同様の標準化された方法で作成された。さらに現在、混ぜた正常の血漿では なく患者の血漿を利用することができるのは限られた数の検査ラボだけであり、 NOACs のような物質はまだわずかであろう。そのため、これらのデータを臨床現場に 適用する際には慎重に行う必要がある。 NOACs を用いている患者からのサンプルは、混ぜたサンプルと若干異なっている。同 じような薬物濃度において、APTT は混ぜたサンプルよりも患者サンプル中のダビガト ランに対し感受性が低く、APTT として臨床的意義を持つという事実は必ずしもダビガ トランの存在を示していない。PT 試薬と APTT 試薬の間の有意な変動は、in vitro の正 常な血漿において観察されるため、患者サンプルとの間の変動も in vivo においてこの 変動幅を超える可能性がある。腎機能や肝機能障害、感染、手術、出血、血栓症などの 凝固状態を変える臨床症状は、世界的な凝固アッセイの結果と NOACs の有効性の両方 を変え、さらに解釈を複雑にする。残念ながら、出血している患者の検査モニタリング について、まだ限られたデータしかない(6、26)。日常的なモニタリングは実施され ていないため、適切な用量または治療域の用量以下/以上の NOACs の血漿濃度の経験は 蓄積しないだろう。ほとんどの場合、NOAS 濃度に関する知識は、オンコール時間中に 突然必要となる。特異的な解毒剤がない場合、非特異的な回避剤(例えば、プロトロン ビン複合体濃縮や組み換え FVIIa)が臨床的有益性を有するだろう(27、28)。しかし、 これらの試薬は PT と APTT の両方に影響し、逆の臨床効果を反映せず、さらに解釈を 13 Journal club 2013. May 複雑にするだろう。その代わりに、調整した TT と抗-Xa アッセイは、特殊な状況化で の特異的かつ正確な濃度モニタリングを提示する。 結論として、日常的な抗凝固アッセイの PT、INR、APTT は、試薬依存性が高く、正確 な NOACs の活性測定を示さない。従って、各検査ラボは NOSCs に対するアッセイの 感受性を検討するべきである。検査ラボはもっと広く調整した特異的アッセイをバリデ ーションする必要があると考えている。そのため、検査業務としてこれらの検査を行う 検査ラボの数が上昇するにつれて、検査業務の標準化および調和するために、NOACs のためにまとめた EQA が確立されなければならない。 (訳者:間下 有子) Acknowledgments Bayer Finland and Boehringer Ingelheim Finland are acknowledged for providing the Riva and Dabi plasma samples, respectively. Laboratories participating in these EQA surveys are acknowledged for their efforts. Footnotes The information in this article was previously presented as a poster in the ISTH SSC 2012 scientific meeting, June 29, 2012, Liverpool, UK. 4 Nonstandard abbreviations: NOAC, novel oral anticoagulant; Dabi, dabigatran; Xa, activated factor X; Riva, rivaroxaban; VKA, vitamin K antagonist; INR, international normalized ratio; PT, prothrombin time; APTT, activated partial thromboplastin time; 14 Journal club 2013. May TT, thrombin time; EQA, external quality assessment; ANOVA, analysis of variance; ISI, international sensitivity index. (see editorial on page 732) Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article. Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest: Employment or Leadership: None declared. Consultant or Advisory Role: None declared. Stock Ownership: None declared. Honoraria: None declared. Research Funding: Boehringer Ingelheim Finland and Bayer Schering Pharma Finland (study samples). Expert Testimony: None declared. Other Remuneration: T. Helin, Leo Pharma Ltd. Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and interpretation of data, or preparation or approval of manuscript. Received for publication November 4, 2012. Accepted for publication January 9, 2013. © 2013 The American Association for Clinical Chemistry 15 Journal club 2013. May References 1. Connolly SJ, Ezekowitz MD, Yusuf S, Eikelboom J, Oldgren J, Parekh A, et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009;361:1139–51. 2. Patel MR, Mahaffey KW, Garg J, Pan G, Singer DE, Hacke W, et al. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011;365:883–91. 3. Mueck W, Lensing AW, Agnelli G, Decousus H, Prandoni P, Misselwitz F. 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