心腎連関からみた尿酸トランスポーター管理 ∼URAT1/URATv1の最新

心腎連関からみた尿酸トランスポーター管理
∼URAT1/URATv1の最新知見より∼
久留 一郎
鳥取大学大学院医学系研究科 再生医療学分野 教授
高尿酸血症は痛風の発症リスクであるだけでなく、心腎連関障害の独立したリスクとして注目されて
いる。例えば健常者を対象とした検討では尿酸の上昇に従って収縮期・拡張期高血圧の頻度が増加
し、男性では血清尿酸値5.4mg/dlから、女性では4.3mg/dlから高血圧のリスクとなり、血清尿酸値の
コントロールは肥満を合併した正常高値血圧男性の体血管抵抗を下げて収縮期及び拡張期血圧を有意
に低下させる。また、降圧治療中に血清尿酸値が男性で7.5mg/dl、女性で6.2mg/dl以上で心血管イベ
ントが有意に増加することからも高尿酸血症は血管を障害する可能性がある。高尿酸血症が血管を障
害する機序として、キサンチン酸化酵素(XO)を介して産生される活性酸素に加えて、組織特異的な
尿酸トラントランスポーターの存在が注目されている。我々の検討では血管には尿酸取り込み型の尿
酸トランスポーターであるURATv1とMCT9及び尿酸排出型のトランスポーターであるABCG2と
MRP4が発現し、高尿酸血症になるとこれらのトランスポーターを介して細胞内に入った尿酸が血管
内皮細胞でのRASの活性化、炎症やNO合成低下を惹起する。URAT1およびURATv1を阻害できるベ
ンズブロマロンはこれらを抑制し高尿酸血症患者の血管内皮機能を改善できる。一方で高尿酸血症は
慢性腎臓病(CKD)と有意に関連し、一部の尿酸介入試験ではCKDの進展を抑制している。この機序
として高尿酸血症による腎でのRASの活性化とNO合成抑制を介して糸球体高血圧と腎の細動脈硬化に
よる虚血性腎症が注目されており、特に前者の機序での腎障害は尿酸コントロールにより改善する可
能性があり、実際ベンズブロマロンはその尿酸降下作用により中等度以上の腎障害のeGFRを改善出来
ている。以上の観察は高尿酸血症を介して心腎連関障害が生じることを示す。最近になって高尿酸血
症と心房細動の合併が注目されている。2012年の循環器疾患患者を対象とした報告では高尿酸血症は
女性の心房細動発症の危険因子と報告され、健常者を対象とした報告では男女ともに慢性心房細動の
予測因子と報告された。我々は心房筋には尿酸取り込み型のトランスポーターであるURATv1と
MCT9及び尿酸排出型のトランスポーターであるABCG2とMRP4が発現しており、高尿酸血症が直接心
房筋に作用して、カリウムチャネル(Kv1.5)の発現増加を惹起し、心房筋の活動電位持続時間を短縮す
る電気的リモデリングを起こすことを明らかとした。その機序として尿酸が心房筋内に取り込まれる
とXOを介してROSが発生しERKのリン酸化が促進することが挙げられる。実際に高尿酸血症による
Kv1.5の増加はABCG2阻害薬により増強し、XO阻害薬やNACならびにERK阻害薬により抑制され
る。さらにベンズブロマロンを始めとするURATv1阻害薬がイオンチャネルのリモデリングを抑制する
ことを明らかにした。以上は心房細動の発症機序としURATv1を介した高尿酸血症が関連する可能性
を示し興味深い。本セミナーでは臓器保護の観点から尿酸トランスポーター管理の重要性を議論したい。